-- 雛形とするページ -- Template * エーオウィン [#mb95403a] #contents ** 概要 [#Summary] |~カテゴリー|[[人名]]| |~スペル|Éowyn((『[[The Lord of the Rings A Reader's Companion]]』によると、[[古英語]]の'eoh'([[馬]])と'wyn'(喜び)を組み合わせた名。))| |~異訳|エオウィン| |~その他の呼び名|デルンヘルム(Dernhelm) &br; ローハンの盾持つ乙女(Shieldmaiden of Rohan)((shieldmaiden(古ノルド語のskjaldmær)とは北欧の民話やサガに登場する女戦士のこと。)) &br; 盾の腕の姫(Lady of the Shield-arm)(([[魔王]]によって盾を持つ腕を折られたことにちなむ、[[ローハン]]での名。)) &br; ローハンの白い姫君(White Lady of Rohan)(([[ファラミル]]の妻として[[イシリエン]]に住まったことで呼ばれた、[[ゴンドール]]での名。))| |~種族|[[人間]]([[ロヒルリム]])| |~性別|女| |~生没年|[[第三紀]]2995~不明| |~親|[[エーオムンド]](父)、[[セーオドウィン]](母)、[[セーオデン]](養父)| |~兄弟|[[エーオメル]](兄)| |~配偶者|[[ファラミル]]| |~子|[[エルボロン]](息子)| ** 解説 [#Explanation] [[ローハン]]の王[[セーオデン]]の妹[[セーオドウィン]]と軍団長[[エーオムンド]]の間に生まれた娘で、[[エーオメル]]の妹。 両親の死後はセーオデンの養子として育てられたローハンの姫君。 勇猛かつ武芸に秀で、戦勲を求める心は男子に劣らなかったが、女の身であるため長らく戦いに赴くことを許されず、それが彼女の不満と鬱屈の種になっていた。[[指輪戦争]]において彼女は男装して軍に紛れ込み、何人も成し得なかった偉大な勲を勝ち得ることになった。 >その顔は際立って美しく、長い髪は金色の川のようでした。銀の帯を腰に締めた白い長衣のその姿は背が高くほっそりしていましたが、けっして弱々しくは見えず、鋼のように強固な王家の娘と見えました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔>指輪物語/二つの塔]]』「黄金館の王」)) *** ローハンの姫君 [#LadyofRohan] >「しかし姫が眠りもやらず過ごされた耐えがたい夜の時間、姫がただ一人暗闇に向かってどのようなことを口にされたかだれが知ろう? 姫には己が人生がただ萎みゆく一方に思えたじゃろう。寝室の壁は四方から迫り、野生のものを閉じ込めておく檻のように思えたことじゃろう。」((『[[指輪物語]] [[王の帰還>指輪物語/王の帰還]]』「療病院」)) 父[[エーオムンド]]が[[オーク]]に殺され、間もなく母[[セーオドウィン]]も病を得て亡くなると、兄[[エーオメル]]と共に伯父である王[[セーオデン]]に引き取られ、[[エドラス]]の宮廷で彼の養子として育てられた。 エーオメルは長じると軍団長となり、勇敢な騎士として重きを置かれるようになったが、エーオウィンもまた兄に劣らぬ勇気と気力を備え、[[ロヒルリム]]の姫として武芸に誇りを見出す気質の持ち主だった。 しかしセーオデンが[[蛇の舌グリーマ>グリーマ]]の策略により気力を萎えさせられて健康を害すると、エーオウィンは世話役として王の傍に付き添い、敬愛する養父が酷く耄碌していく姿を間近で見続けることになる。さらに蛇の舌は腹黒い下心を抱いて彼女に近づき、ローハンの王家が取るに足らない下賤の輩であるとの思いを植え付けようとした。 そのためエーオウィンは己が境遇に人知れず鬱屈した思いを抱えるようになった。 [[大いなる年]]、[[ガンダルフ]]の一行が[[エドラス]]にやってきたことで蛇の舌の企みは挫かれ、セーオデンは癒やされる。この時エーオウィンは[[アラゴルン>アラゴルン二世]]に初めて出会い、[[西方の高貴な血>ドゥーネダイン]]を引く偉大な勇者である彼に自分が求めるあらゆるものを感じ取り、憧憬を覚えるようになった。 *** デルンヘルム [#Dernhelm] [[セーオデン]]が[[アラゴルン>アラゴルン二世]]と[[エーオメル]]を連れて[[角笛城の合戦]]を戦っている間、エーオウィンは非戦闘民の指揮を任されて[[やしろ岡]]に避難していた。 合戦に勝利したアラゴルンが[[灰色の一行]]を率いてやしろ岡にやってきた時、彼女は喜びとともに彼を出迎えたが、アラゴルンが[[死者の道]]を行軍するつもりであることを知らされて衝撃を受ける。はじめエーオウィンはアラゴルンを思いとどまらせようと努めたが、それができないと悟ると自らの心の内を打ち明け、共に戦場に連れて行ってくれるよう懇願する。しかしアラゴルンの立場ではその願いを聞き届けることはできず、彼はエーオウィンを振り切って死者の道へ旅立った。 [[ローハン]]の全軍はやしろ岡に集結し、[[セーオデン]]の許に[[ゴンドール]]から援軍を求める使者[[ヒルゴン]]がやってくると、セーオデンはエーメオルを連れてゴンドールへの長征に出発する。エーオウィンにはローハンに留まって残った国民を指揮することが命じられた。 この時、セーオデンに小姓として召し抱えられた[[ホビット]]の[[メリアドク・ブランディバック]]もまた、望みに反して[[エドラス]]に留め置かれることになったのを知ると、エーオウィンは彼に武具一式を与えて武装させる。そして自らは人知れず男装してデルンヘルムを名乗ると、メリアドクを連れて[[エルフヘルム]]麾下の[[騎馬隊>エーオレド]]に紛れ込み、密かにセーオデンの長征に同行した。 >一同がこの隊列のほとんど終わりまで来た時、その中に&ruby(おもて){面};を上げ、鋭い視線をホビットに投げかけた者がいました。若い男だなと、視線を返しながらメリーは思いました。背の高さも横幅も他の者ほどないようだ。メリーは若者の澄んだ灰色の目がきらっと光るのをとらえました。そしてその時かれは思わず身震いしました。というのは、その若者の顔が望みを持たぬ者の顔、死地を求めに行く者の顔であることがとっさに感じられたからでした。((『[[指輪物語]] [[王の帰還>指輪物語/王の帰還]]』「ローハンの召集」)) *** ローハンの盾持つ乙女 [#Shieldmaiden] >しかしかの女の秘密を守っていた&ruby(かぶと){兜};は落ち、その輝く髪が、&ruby(そくばく){束縛};から&ruby(と){解};き放たれて、薄い金色にきらめいて両肩にこぼれ落ちていました。海のような灰色を帯びた目はきびしく&ruby(ようしゃ){容赦};がありませんでしたが、その&ruby(はお){頰};には涙が流れていました。片手には剣を握り、もう一方の手には&ruby(たて){盾};を持ち上げて恐ろしい敵の&ruby(ぎょうし){凝視};に対していました。 … ロヒルリムの乙女、王家の子の、細づくりながら&ruby(はがね){鋼};の刃のように、美しいが、&ruby(せいぜつ){凄絶};なことよ。((『王の帰還』「ペレンノール野の合戦」)) デルンヘルムは[[メリアドク>メリアドク・ブランディバック]]を乗馬[[&ruby(ウインドフォラ){風の子};>風の子]]に同乗させ、ローハンの全軍が[[ペレンノール野>ペレンノール]]に展開すると密かに隊を離れて[[セーオデン]]のそばにぴったりと付き添う。 [[魔王]]がセーオデンに襲いかかった時、セーオデンの供廻りは全て打ち倒されるか恐怖に駆られた馬に遠くに運び去られていたが、ただ一人デルンヘルムだけは馬を降りて踏みとどまり、魔王に立ち向かった。この時魔王は'''生き身の人間の男にはおれの邪魔立てはできぬわ!'''と威嚇したが、この言葉を受けてエーオウィンは兜を脱ぎ去って自分が女であることを明かした。 エーオウィンは魔王の乗る[[怪鳥>恐るべき獣]]の首を一刀の下に切り落としたが、魔王が振るう矛の一撃を受けて盾を左腕の骨ごと砕かれる。しかしエーオウィンが正体を明かしたことに、恐怖に打たれてうずくまっていたメリアドクは勇気を取り戻し、背後から魔王の膝の裏を[[塚山出土の剣]]で突き刺すことで彼を不死身にしていた呪力を打ち破る。エーオウィンは最後の力を振り絞って敵の見えざる首のあるあたりに剣を突き刺し、魔王にとどめを刺した。 かくして'''人間の男の手では討たれぬだろう'''('''not by the hand of man will he fall.''')((英語のmanは、人とも人間とも男とも解釈できることに由来する。詳細は[[魔王の項目>魔王#prophecy]]を参照。))という予言は成就され、エーオウィンは偉大な勲を勝ち得た。 *** ローハンの白い姫君 [#WhiteLady] [[魔王]]を打ち倒したエーオウィンだが、剣を通して敵に触れた右腕から[[黒の息]]に冒され、さらに長年の心労と絶望のために意識不明に陥って[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の[[療病院]]に運び込まれる。[[アラゴルン>アラゴルン二世]]は[[アセラス]]を用いて黒の息を治療したものの、その心まではいかんともしがたかった。[[西軍]]が[[黒門]]に遠征している間、エーオウィンは療病院に留まっていたが、依然として戦いと死を願う心があり、希望を持てないでいた。 そんな中、同じく絶望と黒の息に冒されてアラゴルンに治療された[[ファラミル]]と知り合って彼に愛されるようになる。[[指輪所持者]]の使命が達成された日、エーオウィンはファラミルの愛を受け入れ、戦いの外に望みを持てるようになったことで、心も癒やされた。 彼女は[[療病院]]に留まって他の患者たちの看病に従事した後、[[コルマッレンの野>コルマッレン]]から帰還してきた西軍を迎え、[[エレッサール王>アラゴルン二世]]の戴冠式に参列。その後は[[エーオメル]]と共に戦後処理のために一時[[エドラス]]へ帰郷するが、[[セーオデン]]の亡骸を引き取るために再訪し、参列者とともに[[ローハン]]へ凱旋してセーオデンの葬儀に参列した。その宴の席上で、エーオウィンとファラミルの婚約が発表された。この時、[[メリアドク>メリアドク・ブランディバック]]に合戦での勲を称え、[[マークの角笛]]を贈った。 ファラミルと結婚したエーオウィンは、夫の領国である[[イシリエン]]の[[エミュン・アルネン]]に住まったという。『[[The Peoples of Middle-earth>The History of Middle-earth/The Peoples of Middle-earth]]』によると、二人の間には息子[[エルボロン]]が生まれた。 *** 画像 [#l51f1e83] &ref(アラゴルン二世/AlanLee-37-EowynAndAragorn.jpg,,25%,アラン・リー作画によるアラゴルンとエーオウィン); &ref(eowynandnazgulbyjohnhowe.jpg,,25%,ジョン・ハウ作画による恐るべき獣と戦うエーオウィン); &ref(eowynbyterashima.jpg,,30%,寺島龍一作画による恐るべき獣と戦うエーオウィン); ** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie] |~俳優|[[ミランダ・オットー]]| |~日本語吹き替え|[[本田貴子]]| 字幕及び吹替での名前は『[[指輪物語]]』書籍[[新版]]に従い''エオウィン''。 『二つの塔』で初登場。[[角笛城の合戦]]の前には、非戦闘員の女子供と[[やしろ岡]]ではなく[[燦光洞]]に避難した(メイキング映像では、燦光洞内で[[ウルク=ハイ]]を相手に戦っているシーンもあるが、映画ではカットされている)。また[[エクステンデッド・エディション]]では、[[セーオドレド]]の葬儀の歌を[[古英語]]で歌っている。[[ヘルム峡谷]]への移動の際、[[レンジャー(野伏)>野伏]]として粗食に慣れているであろう[[アラゴルン>アラゴルン二世]]をして苦渋の反応をさせるほどの料理の腕前を披露するシーンがあり、独自の性格付けがなされた。 『王の帰還』では、デルンヘルムの名は登場せず、[[メリー>メリアドク・ブランディバック]]は最初から自分を馬に乗せた乗手の正体がエーオウィンだと気がつく。また、[[魔王]]と対峙した時に正体を明かすタイミングが大きく異なっている。 [[ファラミル]]とのエピソードは省略されているが、アラゴルンの戴冠式・結婚式で、ファラミルとエーオウィンが笑顔で並んでいる姿が登場する。また『王の帰還 [[エクステンデッド・エディション]]』では、[[療病院]]でエーオウィンとファラミルが見つめ合うシーンや、[[西軍]]が[[黒門]]に出撃した後に語らうシーンが追加されており、その後の関係を示唆している。 *** 画像 [#eb2555d8] &ref(Eowyn2.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン); &ref(Eowyn.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン(ペレンノール野の合戦時)); &ref(Eowyn3.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン(セーオドレドの葬儀時)); *** グッズ [#p0547663] #amazon(B00092H6KG) #amazon(B0002ZGVPQ) #amazon(B000BWDKTK) ** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い]]』における設定 [#jd6fca98] |~俳優|ミランダ・オットー| |~日本語吹き替え|[[坂本真綾]]| 画面には登場しないが、物語の語り部としてナレーションを担当。声を担当するのは映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』でエオウィンを演じた[[ミランダ・オットー]]。日本語吹き替えは、エオウィンの吹き替えを担当した[[本田貴子]]ではなく、[[坂本真綾]]に変更となっている(本田は代わりに[[オルウィン]]の声を担当)。 ** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO] 角笛城の合戦前後のエドラス及びやしろ岡、ローハン軍の長征、ペレンノール野の合戦、療病院にて原作とほぼ同じ描写のエーオウィンと遭遇できる。 またサウロンの敗北と[[黒門]]の破壊後、ファラミルに[[ミナス・モルグル]]の調査と制圧の任があてられたとき、愛する人の手助けになりたいと思いつつ心配もかけたくないとして、Dolentholを名乗って正体を隠し、ファラミルの部下の[[イシリエンの野伏]]たちの中に混ざっている。 &ref(ScreenShot00602.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるエーオウィン); &ref(ScreenShot00663.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における武装したエーオウィン); &ref(ScreenShot00427.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるデルンヘルムとメリアドク・ブランディバック); &ref(ScreenShot_2021-05-30_170122_0.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における、Dolentholを名乗るエーオウィン); ** コメント [#Comment] #pcomment(,,,,,,reply) タイムスタンプを変更しない(管理者パスワードが必用) * エーオウィン [#mb95403a] #contents ** 概要 [#Summary] |~カテゴリー|[[人名]]| |~スペル|Éowyn((『[[The Lord of the Rings A Reader's Companion]]』によると、[[古英語]]の'eoh'([[馬]])と'wyn'(喜び)を組み合わせた名。))| |~異訳|エオウィン| |~その他の呼び名|デルンヘルム(Dernhelm) &br; ローハンの盾持つ乙女(Shieldmaiden of Rohan)((shieldmaiden(古ノルド語のskjaldmær)とは北欧の民話やサガに登場する女戦士のこと。)) &br; 盾の腕の姫(Lady of the Shield-arm)(([[魔王]]によって盾を持つ腕を折られたことにちなむ、[[ローハン]]での名。)) &br; ローハンの白い姫君(White Lady of Rohan)(([[ファラミル]]の妻として[[イシリエン]]に住まったことで呼ばれた、[[ゴンドール]]での名。))| |~種族|[[人間]]([[ロヒルリム]])| |~性別|女| |~生没年|[[第三紀]]2995~不明| |~親|[[エーオムンド]](父)、[[セーオドウィン]](母)、[[セーオデン]](養父)| |~兄弟|[[エーオメル]](兄)| |~配偶者|[[ファラミル]]| |~子|[[エルボロン]](息子)| ** 解説 [#Explanation] [[ローハン]]の王[[セーオデン]]の妹[[セーオドウィン]]と軍団長[[エーオムンド]]の間に生まれた娘で、[[エーオメル]]の妹。 両親の死後はセーオデンの養子として育てられたローハンの姫君。 勇猛かつ武芸に秀で、戦勲を求める心は男子に劣らなかったが、女の身であるため長らく戦いに赴くことを許されず、それが彼女の不満と鬱屈の種になっていた。[[指輪戦争]]において彼女は男装して軍に紛れ込み、何人も成し得なかった偉大な勲を勝ち得ることになった。 >その顔は際立って美しく、長い髪は金色の川のようでした。銀の帯を腰に締めた白い長衣のその姿は背が高くほっそりしていましたが、けっして弱々しくは見えず、鋼のように強固な王家の娘と見えました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔>指輪物語/二つの塔]]』「黄金館の王」)) *** ローハンの姫君 [#LadyofRohan] >「しかし姫が眠りもやらず過ごされた耐えがたい夜の時間、姫がただ一人暗闇に向かってどのようなことを口にされたかだれが知ろう? 姫には己が人生がただ萎みゆく一方に思えたじゃろう。寝室の壁は四方から迫り、野生のものを閉じ込めておく檻のように思えたことじゃろう。」((『[[指輪物語]] [[王の帰還>指輪物語/王の帰還]]』「療病院」)) 父[[エーオムンド]]が[[オーク]]に殺され、間もなく母[[セーオドウィン]]も病を得て亡くなると、兄[[エーオメル]]と共に伯父である王[[セーオデン]]に引き取られ、[[エドラス]]の宮廷で彼の養子として育てられた。 エーオメルは長じると軍団長となり、勇敢な騎士として重きを置かれるようになったが、エーオウィンもまた兄に劣らぬ勇気と気力を備え、[[ロヒルリム]]の姫として武芸に誇りを見出す気質の持ち主だった。 しかしセーオデンが[[蛇の舌グリーマ>グリーマ]]の策略により気力を萎えさせられて健康を害すると、エーオウィンは世話役として王の傍に付き添い、敬愛する養父が酷く耄碌していく姿を間近で見続けることになる。さらに蛇の舌は腹黒い下心を抱いて彼女に近づき、ローハンの王家が取るに足らない下賤の輩であるとの思いを植え付けようとした。 そのためエーオウィンは己が境遇に人知れず鬱屈した思いを抱えるようになった。 [[大いなる年]]、[[ガンダルフ]]の一行が[[エドラス]]にやってきたことで蛇の舌の企みは挫かれ、セーオデンは癒やされる。この時エーオウィンは[[アラゴルン>アラゴルン二世]]に初めて出会い、[[西方の高貴な血>ドゥーネダイン]]を引く偉大な勇者である彼に自分が求めるあらゆるものを感じ取り、憧憬を覚えるようになった。 *** デルンヘルム [#Dernhelm] [[セーオデン]]が[[アラゴルン>アラゴルン二世]]と[[エーオメル]]を連れて[[角笛城の合戦]]を戦っている間、エーオウィンは非戦闘民の指揮を任されて[[やしろ岡]]に避難していた。 合戦に勝利したアラゴルンが[[灰色の一行]]を率いてやしろ岡にやってきた時、彼女は喜びとともに彼を出迎えたが、アラゴルンが[[死者の道]]を行軍するつもりであることを知らされて衝撃を受ける。はじめエーオウィンはアラゴルンを思いとどまらせようと努めたが、それができないと悟ると自らの心の内を打ち明け、共に戦場に連れて行ってくれるよう懇願する。しかしアラゴルンの立場ではその願いを聞き届けることはできず、彼はエーオウィンを振り切って死者の道へ旅立った。 [[ローハン]]の全軍はやしろ岡に集結し、[[セーオデン]]の許に[[ゴンドール]]から援軍を求める使者[[ヒルゴン]]がやってくると、セーオデンはエーメオルを連れてゴンドールへの長征に出発する。エーオウィンにはローハンに留まって残った国民を指揮することが命じられた。 この時、セーオデンに小姓として召し抱えられた[[ホビット]]の[[メリアドク・ブランディバック]]もまた、望みに反して[[エドラス]]に留め置かれることになったのを知ると、エーオウィンは彼に武具一式を与えて武装させる。そして自らは人知れず男装してデルンヘルムを名乗ると、メリアドクを連れて[[エルフヘルム]]麾下の[[騎馬隊>エーオレド]]に紛れ込み、密かにセーオデンの長征に同行した。 >一同がこの隊列のほとんど終わりまで来た時、その中に&ruby(おもて){面};を上げ、鋭い視線をホビットに投げかけた者がいました。若い男だなと、視線を返しながらメリーは思いました。背の高さも横幅も他の者ほどないようだ。メリーは若者の澄んだ灰色の目がきらっと光るのをとらえました。そしてその時かれは思わず身震いしました。というのは、その若者の顔が望みを持たぬ者の顔、死地を求めに行く者の顔であることがとっさに感じられたからでした。((『[[指輪物語]] [[王の帰還>指輪物語/王の帰還]]』「ローハンの召集」)) *** ローハンの盾持つ乙女 [#Shieldmaiden] >しかしかの女の秘密を守っていた&ruby(かぶと){兜};は落ち、その輝く髪が、&ruby(そくばく){束縛};から&ruby(と){解};き放たれて、薄い金色にきらめいて両肩にこぼれ落ちていました。海のような灰色を帯びた目はきびしく&ruby(ようしゃ){容赦};がありませんでしたが、その&ruby(はお){頰};には涙が流れていました。片手には剣を握り、もう一方の手には&ruby(たて){盾};を持ち上げて恐ろしい敵の&ruby(ぎょうし){凝視};に対していました。 … ロヒルリムの乙女、王家の子の、細づくりながら&ruby(はがね){鋼};の刃のように、美しいが、&ruby(せいぜつ){凄絶};なことよ。((『王の帰還』「ペレンノール野の合戦」)) デルンヘルムは[[メリアドク>メリアドク・ブランディバック]]を乗馬[[&ruby(ウインドフォラ){風の子};>風の子]]に同乗させ、ローハンの全軍が[[ペレンノール野>ペレンノール]]に展開すると密かに隊を離れて[[セーオデン]]のそばにぴったりと付き添う。 [[魔王]]がセーオデンに襲いかかった時、セーオデンの供廻りは全て打ち倒されるか恐怖に駆られた馬に遠くに運び去られていたが、ただ一人デルンヘルムだけは馬を降りて踏みとどまり、魔王に立ち向かった。この時魔王は'''生き身の人間の男にはおれの邪魔立てはできぬわ!'''と威嚇したが、この言葉を受けてエーオウィンは兜を脱ぎ去って自分が女であることを明かした。 エーオウィンは魔王の乗る[[怪鳥>恐るべき獣]]の首を一刀の下に切り落としたが、魔王が振るう矛の一撃を受けて盾を左腕の骨ごと砕かれる。しかしエーオウィンが正体を明かしたことに、恐怖に打たれてうずくまっていたメリアドクは勇気を取り戻し、背後から魔王の膝の裏を[[塚山出土の剣]]で突き刺すことで彼を不死身にしていた呪力を打ち破る。エーオウィンは最後の力を振り絞って敵の見えざる首のあるあたりに剣を突き刺し、魔王にとどめを刺した。 かくして'''人間の男の手では討たれぬだろう'''('''not by the hand of man will he fall.''')((英語のmanは、人とも人間とも男とも解釈できることに由来する。詳細は[[魔王の項目>魔王#prophecy]]を参照。))という予言は成就され、エーオウィンは偉大な勲を勝ち得た。 *** ローハンの白い姫君 [#WhiteLady] [[魔王]]を打ち倒したエーオウィンだが、剣を通して敵に触れた右腕から[[黒の息]]に冒され、さらに長年の心労と絶望のために意識不明に陥って[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の[[療病院]]に運び込まれる。[[アラゴルン>アラゴルン二世]]は[[アセラス]]を用いて黒の息を治療したものの、その心まではいかんともしがたかった。[[西軍]]が[[黒門]]に遠征している間、エーオウィンは療病院に留まっていたが、依然として戦いと死を願う心があり、希望を持てないでいた。 そんな中、同じく絶望と黒の息に冒されてアラゴルンに治療された[[ファラミル]]と知り合って彼に愛されるようになる。[[指輪所持者]]の使命が達成された日、エーオウィンはファラミルの愛を受け入れ、戦いの外に望みを持てるようになったことで、心も癒やされた。 彼女は[[療病院]]に留まって他の患者たちの看病に従事した後、[[コルマッレンの野>コルマッレン]]から帰還してきた西軍を迎え、[[エレッサール王>アラゴルン二世]]の戴冠式に参列。その後は[[エーオメル]]と共に戦後処理のために一時[[エドラス]]へ帰郷するが、[[セーオデン]]の亡骸を引き取るために再訪し、参列者とともに[[ローハン]]へ凱旋してセーオデンの葬儀に参列した。その宴の席上で、エーオウィンとファラミルの婚約が発表された。この時、[[メリアドク>メリアドク・ブランディバック]]に合戦での勲を称え、[[マークの角笛]]を贈った。 ファラミルと結婚したエーオウィンは、夫の領国である[[イシリエン]]の[[エミュン・アルネン]]に住まったという。『[[The Peoples of Middle-earth>The History of Middle-earth/The Peoples of Middle-earth]]』によると、二人の間には息子[[エルボロン]]が生まれた。 *** 画像 [#l51f1e83] &ref(アラゴルン二世/AlanLee-37-EowynAndAragorn.jpg,,25%,アラン・リー作画によるアラゴルンとエーオウィン); &ref(eowynandnazgulbyjohnhowe.jpg,,25%,ジョン・ハウ作画による恐るべき獣と戦うエーオウィン); &ref(eowynbyterashima.jpg,,30%,寺島龍一作画による恐るべき獣と戦うエーオウィン); ** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie] |~俳優|[[ミランダ・オットー]]| |~日本語吹き替え|[[本田貴子]]| 字幕及び吹替での名前は『[[指輪物語]]』書籍[[新版]]に従い''エオウィン''。 『二つの塔』で初登場。[[角笛城の合戦]]の前には、非戦闘員の女子供と[[やしろ岡]]ではなく[[燦光洞]]に避難した(メイキング映像では、燦光洞内で[[ウルク=ハイ]]を相手に戦っているシーンもあるが、映画ではカットされている)。また[[エクステンデッド・エディション]]では、[[セーオドレド]]の葬儀の歌を[[古英語]]で歌っている。[[ヘルム峡谷]]への移動の際、[[レンジャー(野伏)>野伏]]として粗食に慣れているであろう[[アラゴルン>アラゴルン二世]]をして苦渋の反応をさせるほどの料理の腕前を披露するシーンがあり、独自の性格付けがなされた。 『王の帰還』では、デルンヘルムの名は登場せず、[[メリー>メリアドク・ブランディバック]]は最初から自分を馬に乗せた乗手の正体がエーオウィンだと気がつく。また、[[魔王]]と対峙した時に正体を明かすタイミングが大きく異なっている。 [[ファラミル]]とのエピソードは省略されているが、アラゴルンの戴冠式・結婚式で、ファラミルとエーオウィンが笑顔で並んでいる姿が登場する。また『王の帰還 [[エクステンデッド・エディション]]』では、[[療病院]]でエーオウィンとファラミルが見つめ合うシーンや、[[西軍]]が[[黒門]]に出撃した後に語らうシーンが追加されており、その後の関係を示唆している。 *** 画像 [#eb2555d8] &ref(Eowyn2.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン); &ref(Eowyn.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン(ペレンノール野の合戦時)); &ref(Eowyn3.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン(セーオドレドの葬儀時)); *** グッズ [#p0547663] #amazon(B00092H6KG) #amazon(B0002ZGVPQ) #amazon(B000BWDKTK) ** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い]]』における設定 [#jd6fca98] |~俳優|ミランダ・オットー| |~日本語吹き替え|[[坂本真綾]]| 画面には登場しないが、物語の語り部としてナレーションを担当。声を担当するのは映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』でエオウィンを演じた[[ミランダ・オットー]]。日本語吹き替えは、エオウィンの吹き替えを担当した[[本田貴子]]ではなく、[[坂本真綾]]に変更となっている(本田は代わりに[[オルウィン]]の声を担当)。 ** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO] 角笛城の合戦前後のエドラス及びやしろ岡、ローハン軍の長征、ペレンノール野の合戦、療病院にて原作とほぼ同じ描写のエーオウィンと遭遇できる。 またサウロンの敗北と[[黒門]]の破壊後、ファラミルに[[ミナス・モルグル]]の調査と制圧の任があてられたとき、愛する人の手助けになりたいと思いつつ心配もかけたくないとして、Dolentholを名乗って正体を隠し、ファラミルの部下の[[イシリエンの野伏]]たちの中に混ざっている。 &ref(ScreenShot00602.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるエーオウィン); &ref(ScreenShot00663.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における武装したエーオウィン); &ref(ScreenShot00427.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるデルンヘルムとメリアドク・ブランディバック); &ref(ScreenShot_2021-05-30_170122_0.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における、Dolentholを名乗るエーオウィン); ** コメント [#Comment] #pcomment(,,,,,,reply) テキスト整形のルールを表示する