ホビット †
概要 †
カテゴリー | 映像化作品等 |
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スペル | The Hobbit |
解説 †
『ロード・オブ・ザ・リング』の原作となった小説『指輪物語』の前作にあたる小説『ホビットの冒険』の、実写映画作品。2012年から全3部作で公開されている*1。
『ロード・オブ・ザ・リング』の時代から約60年前、フロド・バギンズの養父であるビルボ・バギンズが、一つの指輪を手に入れるきっかけともなった、エレボール(はなれ山)への冒険を描く。
制作総指揮・監督を、『ロード・オブ・ザ・リング』も手がけたピーター・ジャクソンが担当。
ストーリー †
袋小路屋敷にて平穏無事に暮らしていたホビットである、若き日のビルボ・バギンズは、魔法使いガンダルフの訪問を受ける。これをきっかけに、トーリン・オーケンシールドとバーリン、ドワーリン、フィーリ、キーリ、ドーリ、ノーリ、オーリ、オイン、グローイン、ビフール、ボフール、ボンブールの13人のドワーフと共に、龍のスマウグに奪われた、エレボールにあるドワーフの王国と財宝を奪回するための冒険に参加する。
第1部『ホビット 思いがけない冒険 (The Hobbit: An Unexpected Journey)』 †
略称AUJ。2012年12月14日公開。原作のうち、物語の始まりから、一行がゴブリン町を抜けたあとアゾグとトーリンの対決が行われ、そのあと皆が大鷲に救出されてカーロックに運ばれるまでが描かれている。
第85回アカデミー賞には、美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞でノミネートされたが、受賞は逃している。
- 本編DVDだけの1枚のみバージョン
- 2D Blu-ray版の本編ディスク、DVD版の本編ディスク、映像特典Blu-rayの3枚セットバージョン
- 3D Blu-ray版の本編ディスク(2枚組み)、2D Blu-ray版の本編ディスク、映像特典Blu-rayの4枚セットバージョン
以上の3種が存在する。
エクステンデッド・エディションも、BD、DVDでそれぞれ発売されている。追加シーンが約13分あり、本編にはオーディオコメンタリーが追加され、約9時間分の映像を収録した特典ディスクが2枚付属する。エクステンデッド・エディションのBD版は、3D BDも付属している。
第2部『ホビット 竜に奪われた王国 (The Hobbit: The Desolation of Smaug)』 †
略称DoS。2013年12月13日公開。日本公開2014年2月28日。一行がビヨルンの屋敷を訪れた後闇の森を抜け、湖の町からエレボールに到着。スマウグと戦うが、スマウグは湖の町を襲撃に行くため飛び去っていくまでが描かれている。
第86回アカデミー賞には、音響編集賞、録音賞、視覚効果賞でノミネートされたが、受賞は逃している。
当初、サブタイトルの邦題は、原作地図中にも登場する単語である*2'The Desolation of Smaug'の直訳『スマウグの荒らし場』とされていたが、日本側とピーター・ジャクソンとの話し合いの結果、より観客の注目を引くようにと変更された*3。
エクステンデッド・エディションでは、本編に約25分のシーンが追加され、本編ディスクにはピーター・ジャクソンらによるオーディオコメンタリーが追加。『思いがけない冒険』と同じく、DVD版、Blu-ray版がそれぞれ発売され、Blu-ray版は2D版ディスクと3D版ディスクが同梱されている。映像特典ディスクは、BD版が2枚、DVD版が3枚に分けて収録される。
第3部『ホビット 決戦のゆくえ (The Hobbit: Battle of the Five Armies)』 †
略称BoFA。北米公開2014年12月17日公開。日本公開2014年12月13日。湖の町でのスマウグとバルドの対決、五軍の合戦に至るまでとその終結、ビルボの帰郷までが描かれている。
第87回アカデミー賞には、音響編集賞でノミネートされたが、受賞は逃している。
当初のサブタイトルは、原作のサブタイトルでもあったThere and Back Again(ゆきて帰りし物語)と発表されていたが、Battle of the Five Armies(五軍の合戦)に変更されたと2014年4月24日に発表された。ピーター・ジャクソンは、第2部ですでにはなれ山に到着してしまっているため、「ゆきて帰りし」ではなくなったからだとしている*4*5。正式な邦題は『決戦のゆくえ』となった*6。DVD/BDのamazon.co.jp限定版はポスター付き。
エクステンデッド・エディションでは約20分のシーン追加が行われている。
映画の設定や完成までの変遷 †
映画化に関する訴訟、制作開始の遅延 †
ジャクソンは、『ロード・オブ・ザ・リング』(1作目)の収益と分配利益が不当であるとして、ニュー・ライン・シネマを告訴。ニュー・ライン・シネマからは、訴訟の取り下げと引き替えにジャクソンに映画版『ホビットの冒険』の監督をオファーしたが、ジャクソンはこれを拒否。そのためニュー・ライン・シネマは、ジャクソン抜きで『ホビットの冒険』映画化を進めるとしていた。だがジャクソンとニュー・ライン・シネマは和解にいたり、ニュー・ライン・シネマとMGM製作、ピーター・ジャクソン製作総指揮で『ホビットの冒険』が映画化されることが発表された。
その後2008年2月、今度はクリストファー・トールキンが『ロード・オブ・ザ・リング』利益分配が不当として提訴し、利益が支払われるまで『ホビットの冒険』映画化を差し止めるよう求めていた。だが2009年9月に和解に達し、『ホビットの冒険』映画化の権利的問題は消滅した。和解内容の詳細は発表されていない。*7
一方で2009年9月、MGMが財政危機となり、『ホビットの冒険』映画化の資金が得られない可能性があると報じられた。だが10月、MGMは資金調達に成功して『ホビットの冒険』の映画制作は続行されると発表された。*8
だがその後も、MGMの再建問題、さらには俳優協会とのギャランティについての対立問題、ジャクソンの緊急入院*9などがあり撮影開始は遅れていたが、2011年3月21日より撮影が開始された*10。
監督について †
『ロード・オブ・ザ・リング』を監督したピーター・ジャクソンは、『タンタンの冒険(Wikipedia:タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密)』の製作などのため多忙であり、今回の映画では共同脚本と制作総指揮にとどまることになっていた。そのため監督は、ギレルモ・デル・トロが担当すると発表される。だが制作開始の遅れにより、スケジュールの調整がつかなくなったデル・トロは監督を降板したと、2011年5月に発表された(デル・トロの名は共同脚本者としては残っている)*11。その後、ピーター・ジャクソンが監督に就任して撮影を開始すると改めて発表された*12。
また撮影開始後、自分の出演分の収録が終わったゴラム(ゴクリ)役のアンディ・サーキスが、セカンド・ユニットの監督を務めることになったと発表された*13。
スタッフについて †
『ロード・オブ・ザ・リング』で音楽を担当したハワード・ショア、コンセプトデザインを担当したアラン・リーおよびジョン・ハウ、特殊効果を担当したリチャード・テイラー、美術監督のダン・ヘナ*14などが、引き続きこの映画にも参加している。
キャスティングについて †
前作『ロード・オブ・ザ・リング』にてガンダルフを演じたイアン・マッケラン、ゴラム(ゴクリ)を演じたアンディ・サーキス、エルロンドを演じたヒューゴ・ウィーヴィングが出演することになった。また、原作には登場していないフロド・バギンズ、サルマン、ガラドリエルやレゴラスが、イライジャ・ウッド、クリストファー・リー、ケイト・ブランシェットおよびオーランド・ブルームという『ロード・オブ・ザ・リング』と同じキャストで演じられている。*15。
さらに以下のキャストが発表された*16*17*18*19*20*21。
また吹き替えも、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作公開後に死去した有川博(ガンダルフ役)以外は、引き続いて同一人物が吹き替えを担当している。ただしサルマンの吹き替えを行った家弓家正は『思いがけない冒険』収録後に死去したため、『決戦のゆくえ』では大木民夫が後任を勤めた。尚、吹き替えを担当する声優はその殆どが第一線で活躍するベテランで占められており、関係者も「これほど豪華な吹き替え版はもう作れないだろう」とコメントしている。
映画独自の設定について †
原作小説『ホビットの冒険』を執筆したとき、原作者のトールキンはあくまで自分の子供向けの児童文学として書いた。さらに続編(『指輪物語』)の構想もなく、ビルボが手に入れた魔法の指輪についての詳しい設定もなかった。そのため『ホビットの冒険』では、トールキンの神話体系である『シルマリルの物語』などに登場した要素はほとんど登場せず描写も子供向けであり、『指輪物語』では重要な要素になってくる、白の会議が死人占い師をドル・グルドゥアから追い出した攻撃なども、簡単に触れられているだけで直接描写されていない。だが映画では、原作に登場しないガラドリエルやサルマンも出演し、さらに原作『ホビットの冒険』の時代(第三紀2941年)では既に死亡している設定のアゾグ(2799年死亡)も登場しているなど、『指輪物語』追補編の記述などを元に、話が大きく膨らまされている。また、童話的・子供向けな描写はかなりカット・アレンジされ、『ロード・オブ・ザ・リング』との地続き感、融和性を図るための、大きな変更が図られている。
主な変更点は以下の通り。
- 13人のドワーフの個性の強化。
- ラダガスト、白の会議が直接登場。
- ビルボの魔法の指輪の演出の強調。
- アゾグとボルグの設定変更。
- 原作ではガンダルフは、エレボールへの旅は途中でビルボたちに任せて、自分は死人占い師との戦いに行くつもりだった。だが映画では、エレボールまでずっと同行する予定でいたことになった。
- ドル・グルドゥアと死人占い師の直接描写の追加。ナズグールの原作からの設定変更と登場。
- スランドゥイルの描写の変更。レゴラスと、オリジナルキャラクターのタウリエルの登場。タウリエルとキーリのエピソードの追加。
- バルドや湖の町の統領など、湖の町(エスガロス)の住人の設定補強。
- 五軍の合戦の描写の変更。
二部作から三部作への変更 †
当初この映画は、『ホビット 思いがけない冒険 (The Hobbit: An Unexpected Journey)』『ホビット ゆきて帰りし物語 (The Hobbit: There and Back Again)』の二部作品として公開されると発表されていた。だが編集作業の結果、ドル・グルドゥアの戦いなどをカットしないようにするため、三部作に変更するとジャクソンは2012年7月30日にFacebookで発表した*22。改めて、第二部のタイトルは『スマウグの荒らし場(The Desolation of Smaug)』になり、第三部が『ホビット ゆきて帰りし物語』になると発表された*23。
その後第二部サブタイトルの邦題は『竜に奪われた王国』に変更され、また第三部サブタイトルは原題が『Battle of the Five Armies』、邦題が『決戦のゆくえ』に変更された。
撮影について †
本作は3D上映を前提として撮影されている。さらに商業映画では初の試みとして、秒間48コマのハイフレームレート(HFR)による撮影が行われている。通常の映画は秒間24コマだが、秒間48コマで撮影・上映することにより、より動きが滑らかな映像になり、また3D上映時のちらつきも少なくなるという。
秒間48コマのハイフレームレートで映画を見るには、ハイフレームレートの上映方式に対応した映画館で鑑賞する必要がある。
ニュージーランドでのタイアップ †
ニュージーランド航空(http://www.airnewzealand.jp/)はロード・オブ・ザ・リング公開時に引き続き、『ホビット』塗装の機体を飛行させる。さらに『ホビット』版の機内安全ビデオ(http://www.youtube.com/watch?v=XFfEbWVZYi8)を作成。ピーター・ジャクソン、ゴラム、ディーン・オゴーマンのほか、ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンの孫息子であるマイク・トールキンとロイド・トールキンが出演している。
また『決戦のゆくえ』公開前に新たな機内安全ビデオを制作・公開(http://www.youtube.com/watch?v=xDQnCQlFoXc)。こちらでは前回に引き続きジャクソン、オゴーマンのほかに、イライジャ・ウッド、シルヴェスター・マッコイ、リチャード・テイラーが出演。また野球ニュージーランド代表を務める清水直行(Wikipedia:清水直行)も特別出演している。
ニュージーランド政府は、記念硬貨や記念切手を発行。
ニュージーランド政府観光局(http://www.newzealand.com/jp/)も、ロケ地観光ツアー(http://www.newzealand.com/jp/feature/middle-earth/)を実施。ニュージーランド公営放送テレビジョン・ニュージーランドでは映画プレミア初日、シンダール語による天気予報(http://www.youtube.com/watch?v=7UhqNt98tsY)を放送。国を挙げての一大キャンペーンが行われている。
一方映画製作会社は、中央ヨーロッパに撮影現場を移動する可能性を示唆することで、ニュージーランド政府より5600万ドルの助成金を受け取ったが、映画の興行的成功によりこの助成金の返還を求める声が上がっているという*24。
関連書籍 †
ガイドブック †
デザイン・設定資料集 †
サウンドトラック †
輸入盤 (Special Edition) †
日本版 †
デジタルダウンロード版 †
外部リンク †
- WarnerBros.com | The Hobbit: An Unexpected Journey | Movies
- WarnerBros.com | The Hobbit: The Desolation of Smaug | Movies
- WarnerBros.com | The Hobbit: The Battle of the Five Armies | Movies
- 日本語公式サイト
- ホビット通信 映画.com
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