#author("2025-03-17T14:17:27+09:00;2025-03-14T23:46:55+09:00","","")
* エルフの生涯 [#c1e0e110]
** 『[[Morgoth's Ring>The History of Middle-earth/Morgoth's Ring]]』「Laws and Customs among the Eldar」 [#s626e488]
#author("2025-04-03T00:08:44+09:00","","")
以下は「Laws and Customs among the Eldar」に記述された[[エルダール]]([[エルフ]])の生涯に関する記述である。
*** エルダールの幼少期 [#ldbd6727]
エルダールと[[人間]]の子供時代は違いが少ない。ただしエルダールは身体の成長は人間より遅いが精神の成長は早く、一歳になる前に話せるようになり、同時に歩きと踊りを覚えた。人間がエルダールの子供を見れば、幸せそうな人間の子供に見えるが、外見の幼さに反する早熟さに驚くであろう。
身体の成長の点で人間の子供は三歳を過ぎると同齢のエルフの子供を追い越す。そして人間の背丈が完全に伸び切る頃、同齢のエルフは人間でいうと七歳の身体である。エルフがその後の生涯で持ち続ける背丈と体つきを得る(身体的に成熟する)のは五十歳を過ぎてからである。ただし百歳を過ぎるまで完全な大人とは見なされなかった。
*** 結婚の作法 [#f3c29c69]
結婚は(稀な不運や奇妙な運命を除いて)全てのエルダールにとって人生の自然な道程だった。彼らは生涯に結婚を一度しかせず、愛か、少なくとも両者の自由意志に基づいて結婚した。彼らの霊魂は身体の支配者であり、体の欲望だけに駆られるようなことは滅多になく、自制心があり、身持ちは固い。[[中つ国]]のエルダールの多くは堕落し、彼らの心は[[アルダ]]の上に横たわる影によって暗くなったが、彼らの間での肉欲に関する物語はほとんど語られない。
エルダールの間でも失恋や、一人に対し複数人が求婚することはあり、誰もが望む結婚を成就できるわけではなかった。至福の国[[アマン]]においてですらこういったことは起き、それはアマンの至福に悲しみが入り込んだのではと[[ヴァラール]]が疑った唯一の根拠だった。ある者はそれは[[メルコール]]がもたらしたアルダの傷付きから、エルダールが目覚めた時に彼らを覆っていた影から来たと考えた(曰く、そこからしか悲しみや無秩序は生まれないため)。ある者はそれは愛そのものから、霊魂が自由であるからこそ生まれるのであり、[[イルーヴァタールの子ら]]の本質に関する謎であると考えた。
ほとんどの場合、エルダールの男女は若い頃に結婚相手を選び(時には子供時代に。これは平和な時代にはよくあった)、五十歳を過ぎてからすぐに結婚した。だが二人が結婚適齢期に達しておらず、また早い結婚を望まないならば、婚約はお互いの両親の承認が出るまで待った。
しかるべき時に、お互いの家族が同席する会合で婚約が宣言され、婚約者同士で銀の指輪を贈りあった。エルダールの法によると婚約期間は最低でも一年間とされ、大抵はもっと長かった。この間に指輪を公に返却すれば婚約を解消することができ、その指輪は溶かされて二度と婚約には使われなかった。とはいえ、エルダールは婚約者選びを軽率にはしないので、婚約の解消は滅多になかった。
婚約期間を経た後、再び両家が同席する宴において結婚が祝われた。宴の最後に婚約者たちは前に出て、新婦の母親と新郎の父親が新郎新婦の手を結ばせ、祝言を述べる。この祝言には人間は聞いたことがない神聖な作法があった。エルダール曰く、母親によって[[ヴァルダ]]が、父親によって[[マンウェ]]が証人として名を挙げられた上で、[[エル]]の名が唱えられた(これは他のいかなる場合でも滅多に行われないことだった)。新郎新婦は銀の指輪を互いに返却し、代わりに金の細い指輪を互いに贈り、右手の人差し指に嵌めた(銀の指輪は大事に保管した)。
[[ノルドール]]族の間では、新婦の母親が新郎に鎖か首飾りに付いた宝石を贈り、新郎の父親が新婦に同様の品を贈る慣習があった(([[ガラドリエル]]から[[アラゴルン>アラゴルン二世]]への[[贈り物>ガラドリエルの贈り物]]であった[[緑の石]]は、この慣習を踏まえたものでもあった))。
だがこれらの儀式は結婚に必要なものではなく、あくまで親たちの愛を示し、新郎新婦だけでなく両家をも結びつける結合を承認する丁重な流儀であった。すなわち、エルダールの結婚は身体的結合(性交)によって成されるものだった。結合後の両者は解くことのできない絆で結ばれた。
平和な時代では結婚の儀式を行わないことは親族に対する無作法と見なされたが、儀式や証人なし(祝言の交換とエルの名前を唱えることを除く)でも、両者とも未婚であり、お互いの自由意志に基づく同意により結婚することは、どんな時でも全てのエルダールにとって合法だった。そのような結婚も同様に解くことができないものだった。遠い昔の受難の時代、すなわち逃走の、流謫の、放浪の時代ではそのような結婚がよく行われた。
*** 子作りについて [#g047b56d]
エルフの男女が子作りをしてから出産するまでの間には一年が経過する。一年後のちょうどその日か、それに近い日であるため、子作りをした日が記憶される。子作り日と出産日はほとんどの場合、春である。
エルダールは身体が老いないので、人生において何歳であっても子供を生むことができる、と人間は考えがちだが、エルダールもゆっくりとだが年をとっている。彼らの寿命は[[アルダ]]の寿命であり、人間には計り知れないほどに長いが無限ではない。その上、彼らの肉体と霊魂は別れずに密着している。歳月の重みゆえに、彼らの欲望や思考の全ての変化が霊魂に溜まるにつれて体の衝動や心持ちは変化する。これこそがエルダールの言う、自らの霊魂が自身を消耗する、という状態である。そして彼ら曰く、アルダが終わる前に地上の全てのエルダールは定命の者の目には見えない精霊になるという。
またエルダール曰く、子作りをする時、ましてや出産する時は、人間のそれらよりも心身の力を持っていかれる。
こういった理由により、エルダールはあまり子供を生まなかった。彼らの子作り期間は、奇妙で不幸せな運命が降りかからない限り、若年期か人生の初期だった。だが何歳で結婚しようとも、結婚してから短い期間で子供を産んだ(エルダールの時間感覚での短さである。人間から見れば、エルダールの結婚から第一子誕生までの間隔は大抵は長い。続く第二子、第三子を産むまでの間隔はもっと長い)。
子供を多くは持たずとも、彼らは子供をとても愛し、家族は同族への愛と深い感情により結びついた。子供の管理と教育に手間はあまりかからなかった。一つの家庭に四人以上の子供がいることは滅多になく、時代が経つにつれて子供の数は減少した。しかし古い時代ではエルダールの数がまだ少なく、彼らには同族を増やす意欲があった。歴史上での子沢山の最多記録は、[[七人の息子>フェアノールの息子たち]]をもうけた[[フェアノール]]である。
エルダールの生殖能力は子を産む意思と不可分であり、その意思と欲求が満たされなければ長年にわたって保たれるが、能力を行使すると欲求はすぐに治まり、心は別の事へ向かう。愛の結合は実際に大きな喜びであり楽しみであり、彼らが言うところの「子供の日々」は人生で最も楽しい事として記憶に残るが、彼らにはエルフとしての本性が成し遂げるように急き立てる、他の多くの能力を心と身体に持っている。そのため、婚姻関係はずっと続くが、夫婦が常に同居する必要は無かった。夫婦は結婚後も、それぞれが心と身体に異なる才能を持った個人であり続けるからである。しかし夫婦が子作り期間中や、産んだ子供がまだ幼年期にある時に引き離されるのは、全てのエルダールにとって痛ましいことである。そのため、彼らはできるならば平和な時代にのみ子作りをする。
*** エルダールの性差について [#i9468b24]
生殖以外でエルダールの男女は基本的に対等である。ただしエルダール曰く、以下のことは除く。
女にとって何かを新しく生み出すことは、ほとんどの場合子供を産むことに発揮される。発明と変化は多くの場合、男によってなされる。
男だけにできることや、女だけが関与すること、といったものは存在しない。しかし性別による傾向の違いは存在し、慣習として確立されたものもある(それらは時と場所、エルダールの種族毎により異なる)。例えば全てのエルダールにおいて、癒しの術や身体を労わることに関する全ての事は基本的に女が担った。対して、いざという時に武器を取るのは男である。エルダールは死を扱うことはそれが何であれ、癒しの能力を減じさせると考えたので、癒しを担うのが主に女であるのは、女としての特別な能力というより、彼女たちが狩猟や戦争を避けた為であるとされた。治癒師の男も多くいたが、彼らは狩猟を避け、窮地に追い込まれない限り戦争には行かなかった。実際のところ、苦境や絶望的な防衛戦では女も勇敢に戦った。エルダールの男と子を産んだことがない女との間にある力の強さと素早さの性差は、人間のそれよりも小さかった。
[[ノルドール]]族での慣習では以下の通り。
ノルドール族の間ではパン作りは大抵は女が行う。そして[[レンバス]]作りができるのは、古い法により女に限られる。しかし料理や他の食品の加工は一般には男の仕事であり、彼らの楽しみでもある。
女は畑や庭の手入れ、楽器の演奏、糸紡ぎ、機織り、仕立て、糸と布を使った全ての装飾に熟達していることが多い。そして知識のこととなると、女たちはエルダールとノルドール族の家の歴史を最も愛し、家系に関する知識は彼女たちの記憶に留められている。
一方、男は鍛冶師、大工、木工、石工、宝石職人としてより熟達している。ほとんどの場合、音楽を作曲し、楽器を作り、新しい楽器を発明するのは男である。彼らは詩人であり、言語の研究者であり、新しい言葉の考案者である。彼らの多くは林学と自然の知識を喜び、そこで自由に育ち生きるもの全てとの友好を求める。
しかし上記の全てのこと、労働や遊戯についての他のこと、そして知識の探求は、性別に関係なく全てノルドール族が追い求め得ることである。
** コメント [#vbd41744]
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