* &ruby(まおう){魔王}; [#oda94f9f]

#contents

** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Witch-king|
|~その他の呼び名|アングマールの魔王(King of Angmar)&br;指輪の幽鬼の首領(Lord of the Ringwraiths)&br;黒の総大将(Black Captain)&br;ナズグールの王(Lord of the Nazgûl)&br;モルグル王(Morgul-lord, Lord of Morgul, Morgul-king)|
|~種族|[[ナズグール]]|
|~性別|男|
|~生没年|[[第二紀]]1820年((生年は[[ICE>Iron Crown Enterprises]]設定による))~[[第三紀]]3019年|
|~親|[[タル=キアヤタン]](父)(([[ICE>Iron Crown Enterprises]]設定による))|
|~兄弟|[[タル=アタナミア]](兄)(([[ICE>Iron Crown Enterprises]]設定による))|
|~配偶者|不明|
|~子|不明|

** 解説 [#Explanation]
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[[アングマール]]の魔王と言われる。時折混同されるが、[[冥王(Dark Lord)>冥王]]([[サウロン]])と魔王(Witch-king)は別の存在。
魔王は[[ナズグール(指輪の幽鬼、黒の乗手)>ナズグール]]の首領であり、ナズグールの中で最強の存在。ナズグールの弱点である、[[太陽]]の光や水に対しても耐性があり、他のナズグールと比べてある程度自立的に行動することも出来る。だが結局は魔王の意思は[[サウロン]]に完全に支配されている。

>「賢人たちでさえ、九人がその恐るべき首領の下に一団となった時、抵抗しきれないのではあるまいかと思われたからじゃ。この首領たるや、その昔は、偉大なる王であり、悪しき魔術師であったが、今ではたえがたい恐怖の主じゃ。」((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]] 下」「二 エルロンドの会議」[[ガンダルフ]]の台詞))

>この[[怪鳥>恐るべき獣]]の上に人間の姿をした者が乗っていましたが、これは黒いマントを着ていて、非常に大柄で、不気味でした。この者は鋼の王冠を載せていましたが、冠のふちと長衣の間には何一つ見えるものはなく、ただ死のように恐ろしい光を湛えた目があるだけでした。これぞナズグルたちの首領でした。((『指輪物語 [[王の帰還]] 上』「六 ペレンノール野の合戦」))

*** アングマールの魔王 [#k2f400cf]

魔王はナズグールの一人として、[[第二紀]]2251年頃に姿を現す。第二紀末の[[最後の同盟]]の戦いで[[サウロン]]が敗れると、一時姿を消す。だが[[第三紀]]になり、サウロンが[[ドル・グルドゥア]]で再び形を取ると魔王もまた現れた。

魔王は[[第三紀]]1300年頃、分裂した[[ドゥーネダイン]]の[[北方王国]]を滅ぼすため[[サウロン]]の意志によって北方に出現し、[[アングマール]]の王となって[[カルン・ドゥーム]]を拠点とした。
1409年には魔王は[[アルノール]]を攻撃する。[[フォルンオスト]]及び[[ティルン・ゴルサド]]を陥落させることには失敗したが、この戦いで[[アモン・スール]]が毀たれる。
その後も戦闘は続き、ついに魔王の軍勢は1974年に[[フォルンオスト]]を陥落させて、アルノール([[アルセダイン]])は終焉を迎えた。
だが1975年、遅ればせながらも[[ゴンドール]]からの援軍を率いて、[[エアルヌア]]が[[灰色港]]、[[フォルロンド]]、[[ハルロンド>ハルロンド(リンドン)]]より上陸。さらに[[キーアダン]]の軍勢と、[[アルノール]]の生き残りの軍勢が彼らに合流し、魔王のアングマールの軍勢に反撃を開始する。

魔王は占領していたフォルンオストから打って出て、[[ネヌイアル]]湖と[[北連丘]]の間で大合戦が行われるが、アングマール軍は多大な被害を被る。そのためアングマール軍はフォルンオストへ退却しようとするも、ゴンドール軍に攻撃されて蹴散らされた。[[エテン高地]]に追いつめられたアングマール軍は、アングマールの[[カルン・ドゥーム]]に向かって遁走したが、[[エアルヌア]]を先頭にしたゴンドールの軍勢と、[[グロールフィンデル]]に率いられた[[裂け谷]]の[[エルフ]]の軍勢に追いつかれ、アングマール軍は壊滅した。

>しかしいい伝えによれば、敵軍が全滅した時、突然魔王その人が黒の&ruby(ローブ){長衣};に黒の&ruby(マスク){仮面};をつけ、黒い馬に打ちまたがって姿を現わしたという。かれを目にした者はみな恐怖に打たれた。((『指輪物語 [[追補編]]』「エリアドール、アルノール、そしてイシルドゥアの後継者たち」))

だが最後に魔王自身が現れ、[[エアルヌア]]に襲いかかった。この時、エアルヌアの乗っている馬が恐怖により発狂して、魔王と戦う前にエアルヌアを運び去ってしまった。
それを見て魔王は笑ったが、グロールフィンデルがやってくると、魔王は再び遁走に転じて姿を消した。エアルヌアは魔王を追おうとしたがグロールフィンデルは彼を留めて、次のように予言した。

>かれを追跡なさるな! かれはこの土地には戻らぬだろう。かれの滅びる日はまだ遠い先のことだ。それにかれは[[人間]]の男の手では討たれぬだろう。

この戦いでアングマールは滅び、魔王は北方から駆逐されたものの、北方王国は滅亡し北方の[[ドゥーネダイン]]は野山をさすらう[[野伏]]となった。
だが魔王は、自らの軍勢を敗北せしめたエアルヌアへその後も強い憎しみを向け続けていた。

*** エアルヌアへの復讐 [#hf504d1e]

やがて魔王は[[モルドール]]に帰還する。魔王は他の指輪の幽鬼を集め、2000年にモルドールから[[キリス・ウンゴル]]を越えて出撃し、[[ミナス・イシル>ミナス・モルグル]]への攻撃を開始。2002年にはこれを陥落させた。以後幽鬼の棲む都と化したミナス・イシルはミナス・モルグルと呼ばれるようになる。

2043年に[[ゴンドール]]で[[エアルヌア]]が戴冠すると、魔王はエアルヌアに対し'''北方の戦いでは自分の前に立つこともできなかったではないか'''と嘲ってミナス・モルグルで自分と一騎打ちをするように挑発してきた。この時は[[マルディル]]がエアルヌアを制止したが、2050年に魔王は再びエアルヌアを挑発して'''若年の頃の意気地のなさに今では老齢の弱気を加えている'''((『追補編』「ゴンドール、またアナリオンの後継者たち」))と嘲りを重ねた。この時はマルディルも王を制止しきれず、エアルヌアは僅かな連れの騎士だけを伴ってミナス・モルグルへ向かい、そのまま行方不明となる。

こうして魔王は復讐を果たし、エアルヌアには子がいなかったため、ゴンドールの王の血筋は絶えた。

*** 一つの指輪の追跡 [#y5d3948d]

以来魔王は配下の[[ナズグール]]と共に[[ミナス・モルグル]]に潜み、2942年に[[サウロン]]が[[モルドール]]に帰還するまでその準備を進めていた。

やがて、[[ゴクリ]]を拷問して得られた情報から、[[一つの指輪]]が発見されたことが判明すると、魔王は他の指輪の幽鬼と共に、黒の乗手の姿に身を包んで[[モルドール]]から出撃した。
[[大いなる年]]の3018年、魔王はモルドール軍を指揮して[[オスギリアス]]を攻撃し、[[ボロミア]]と[[ファラミア]]の部隊に打撃を与えた。ナズグールは衣装をまとわず目に見えない姿で密かに橋をわたり[[大河]]を越え、その先で馬と装束を受け取って指輪の追跡を開始した。

魔王の指揮の下、[[ホビット庄]]に到達したナズグールは庄境を守る[[野伏]]を追い散らした後は分散行動を取り、魔王自身は[[ブリー村]]の南に野営していた。(『[[終わらざりし物語]]』によれば、その時に[[古森]]と[[塚山丘陵]]一帯の悪霊を呼び起こしたという)

>かれらの青白い顔には無慈悲な目が燃えていました。黒いマントの下には灰色の長衣をまとっていました。灰色の頭には銀の兜がかぶせられていました。やせさらばえた手には鋼の剣が握られていました。……三人目はあとの者より背がいっそう高く、長い髪をきらめかし、兜の上に冠をいただいていました。かれは片手に長い剣を持ち、もう一方の手に[[ナイフ>モルグルの刃]]を握っていました。ナイフもそれを握る手も青白い光を放っていました。((『指輪物語 旅の仲間 上』「十一 闇夜の短剣」 [[一つの指輪]]を身につけたときのフロドからの視点))

その後、[[風見が丘]]において指輪をはめた[[フロド・バギンズ]]を、魔王は[[モルグルの短剣>モルグルの刃]]によって刺し、瀕死の深手を負わせる。魔王たちナズグールは、モルグルの刃の傷によって幽界に引きずり込まれようとするフロドを追跡し、[[ブルイネンの浅瀬>ブルイネン]]において九人全員でフロドを追い詰めたものの、[[エルロンド]]と[[ガンダルフ]]の起こした水流に押し流されて馬と外見を失い、追跡は失敗に終わった。

*** [[指輪戦争]] [#r8124a20]

モルドールへ逃げ帰ったナズグールは、今度はサウロンに与えられた[[恐るべき獣]]の背に乗って再び現れる。[[ミナス・モルグル]]より出陣した魔王はモルドール軍の総大将として[[ゴンドール]]攻撃を指揮し、[[ペレンノール野の合戦]]においてその姿を見せた。

>うず高い死者の山の上に見るも恐ろしい姿の者が現れました。馬に乗って、背が高く、頭巾をかぶり、黒いマントを着ていました。死んだ者たちを踏みつけながら、かれはゆっくりと馬を進め、いかなる矢もものともしませんでした。かれは立ち止まり、微かな光を放つ長い剣を示しました。かれがそうすると、守る側にも敵側にも等しなみに、非常な恐怖が全員を襲いました。……
その時、黒の総大将が鐙に足をかけて立ち、恐ろしい声で叫びました。今は忘れられた昔の言葉で、人の心をも石をもくだくかと思われる力と恐怖に満ち満ちた言葉でした。……
馬を城へ、ナズグルの王は乗り進めました。かなたの火を背に、かれは大きな黒々とした姿となって浮かび上がり、その姿そのものがもうどうしようもない絶望の脅威となっていました。……
黒の乗手は頭巾を後ろに払いました。すると、いかに! かれは王冠をいただいていました。それなのに、その王冠は目に見える頭の上にのっているのではないのです。王冠とマントを羽織った大きな黒い肩との間には赤い火が燃えさかっていました。見えざる口から死の笑いが聞こえてきました。
「年老いた虚け者よ!」と、かれは言いました。「年老いた虚けよ! わが時が来た。お前は死を目にして死を知らぬのか? さあくたばって、空しく呪うがいい!」そういうと同時にかれは剣を大上段に振りかざしました。焔が刀身を走りました。((『指輪物語 王の帰還 下』「四 ゴンドールの包囲」ゴンドールの門を打ち破り、ガンダルフと対峙した場面))

[[グロンド]]と呪文によって城門を破壊した魔王は、騎馬姿でミナス・ティリス入城を果たし、そこで[[白のガンダルフ>ガンダルフ]]と対峙する。しかしペレンノール野に[[ローハン]]の軍勢がやってくると、魔王は城門から身を翻して立ち去り、[[恐るべき獣]]を呼び出してローハン軍と[[セオデン]]を強襲した。このためにセオデンは斃れたが、魔王自身も[[エオウィン]]と、[[塚山出土の剣]]を手にした[[メリアドク・ブランディバック]]によって斃された。

かくして、グロールフィンデルの「人間の男の手」によっては倒されないという予言は成就したと言われている。

*** グロールフィンデルの予言 [#i4969c14]

[[グロールフィンデル]]が予言した言葉「かれ(魔王)の滅びる日はまだ遠い先のことだ。それにかれは人間の男の手では討たれぬだろう。」は、原語では'Far off yet is his doom, and not by the ''hand of man'' will he fall.'となっている。

ここにあるmanは、英語としては「人」とも「人間」とも「男」とも解釈することができる。そのため、当初この言葉は([[エルフ]]などを含めた)「人」と思われていたが、魔王を倒したのは「女」であるエオウィンと、人間ではない「[[小さい人]]」であるメリアドク・ブランディバックであったため、予言の通りになったと言われている。

日本語にはこのmanを適切に訳せる言葉が存在しないため、「そして&ruby(いにしえ){古};にいわれた言葉が真実なら、&ruby(ますらお){丈夫};の手によってはかれは倒れぬという。かれを待つ運命は賢者の目からも隠されていますわい。(And if words spoken of old be true, not by the hand of man shall he fall, and hidden from the Wise is the doom that awaits him.)」((『[[指輪物語]] [[王の帰還]]』四 ゴンドールの包囲でのガンダルフのセリフ))など、「hand of man」は「丈夫の手」「人間の男の手」などと訳されている。

なおこの解釈は[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]が、シェイクスピアの『マクベス』における、「女から産み落とされた者」では倒せないと言われた者を「帝王切開で取り出された者は“女から産み落とされた”とは言えないため倒せた」という解釈に不満があったため作られたという。((『[[J.R.R.トールキン 或る伝記]]』などより))

*** 画像 [#w1cf47e3]

&ref(CPMKA2eVEAEbWsy.jpg,,20%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における魔王);
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** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

|~俳優|Shane Rangi、Brent McIntyre(旅の仲間)&br;[[ローレンス・マコーレ]](王の帰還)&br;[[アンディ・サーキス]](声)|
|~日本語吹き替え|[[小林清志]]|

[[ペレンノール野の合戦]]のシーンに登場する魔王は、[[サウロン]]と混同されるのを防ぐため、見えない頭部に目のみが燃えているような原作の描写とは異なる、黒の乗手の黒いローブを継承したデザインになっている。
魔王がミナス・ティリスの城門から入場するシーンはないが、『[[ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還]]』の[[エクステンデッド・エディション]]において、恐るべき獣に乗った魔王が[[ガンダルフ]]と対峙するシーンが挿入されている。
[[メリアドク・ブランディバック]]が魔王を刺した武器は[[塚山出土の剣]]ではない。([[スペシャル・エクステンデッド・エディション]]においてメリーが[[ロスローリエン]]で[[ガラドリエル]]から受け取った[[ノルドール]]のナイフであるという説と、柄の形状からローハン製の短剣であるという説とがあり、映像からは判然としない)

*** グッズ [#Goods]

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** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

当初、[[ドル・グルドゥア]]の[[ネクロマンサー(死人占い師)>死人占い師]]が、この魔王ではないかと疑われた。
だが[[ガラドリエル]]などのセリフによると、魔王は遥か昔に倒され、死体は[[ルダウア]]の塚に葬られて、呪文で封じられたはずだったという。

ちなみに『竜に奪われた王国』の魔王が塚に葬られる回想シーンでは、[[ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]の曾孫ロイド・トールキンがカメオ出演している(墓に剣を投げ込んでいる人物)。
ロイド・トールキンは『[[ロード・オブ・ザ・リング]] [[王の帰還]]』でもカメオ出演していたほか、ニュージーランド航空の機内安全ビデオにも出演している。

** [[Iron Crown Enterprises]]による設定 [#yfe0afe4]

[[ICE>Iron Crown Enterprises]]設定によると、[[ヌーメノール]]の王[[タル=キアヤタン]]の第二王子であるティンドムル(Tindomul)([[クウェンヤ]]で「黄昏の子」の意)が正体である。彼は[[エルフ]]への敵意を募らせ、[[アドゥーナイク]]で「黒き王子」の意であるエル・ムーラゾール(Er-Mûrazor)と呼ばれるようになった。彼は[[中つ国]]に勢力を伸ばしていた。そこを[[サウロン]]につけ込まれ、彼に忠誠を誓って[[九つの指輪]]の一つを与えられたことにより、[[ナズグール]]と化したという。

** 外部リンク [#Links]

- [[彼方の島 ICE設定の翻訳:http://homepage2.nifty.com/lotr/naz/Witchk.html]]

** コメント [#Comment]

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