#author("2022-09-10T20:43:09+09:00;2021-10-29T12:58:43+09:00","","")
* 王の暦法 [#r2c8cbc4]
** 概要 [#b0077350]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[暦]]|
|~スペル|Kings' Reckoning|
|~異訳||
|~その他の呼び名||

** 解説 [#zce44155]
** 解説 [#Explanation]

[[第二紀]]1年から[[第三紀]]2059年までの計5500年の間、[[ヌーメノール]]及び[[亡国の民の王国]]([[アルノール]]と[[ゴンドール]])で使用された、ヌーメノールの太陽暦((太陽年は365.2422日、365日5時間48分46.08秒))。
[[ヌーメノール]]及び[[亡国の民の王国]]([[アルノール]]と[[ゴンドール]])で使用されていた、[[ドゥーネダイン]]の太陽暦。『[[追補編>指輪物語/追補編]]』に記述されている。

[[エルダールの暦>裂け谷暦法]]が基だが、[[エダイン]]の伝統を受け継ぎ、一年の始まりは冬至(mid-winter)である。一日を東の海の日の出から次の日の出までの間とし、7日で1週間とした。平年は365日で、これを12のアスタール(astar)(([[クウェンヤ]]で月(month)の複数形。単数形アスタ(asta) ))、つまり月に分けた。
年の最初の日イェスタレ(yestarë)((クウェンヤで最初の日(first day)の意))、中日(middle day、183日目)のロエンデ(loëndë)((クウェンヤでロア(loa)の真ん中(middle)の意))、最後の日メッタレ(mettarë)((クウェンヤで終わりの日(end day)の意))の3日は、どの月にも属さない。ロエンデを挟むナーリエ(6月)とケアミエ(7月)が31日で、他の月は30日。4年ごとの閏年にはロエンデが2日間のエンデリ(enderi)((クウェンヤで真ん中の日々(middle days)の意))となる。ただし1世紀の最後の年(つまり100で割り切れる年)であるハランイエ(haranyë)((世紀(century)の意味の可能性もある))は除く。([[暦の比較表]])
[[エルダールの暦>裂け谷暦法]]に起源を持ち、ドゥーネダインはそれにいくつかの変更を加えた。[[第二紀]]1年から[[第三紀]]2059年までの計5500年間使用されたが、第二紀から第三紀に移行する混乱で誤差が累積したため、第三紀2060年に[[執政]][[マルディル]]は改定暦を発効した([[執政の暦法]])。
[[ホビット庄暦]]は、改定前の王の暦法が基になっている。

この暦法は1000で割り切れる年に2日を加えることで調整する。だがそれでも0.2日、つまり4時間48分の不足が残った。
*** ドゥーネダインの暦 [#f7cb431f]

[[第二紀]]3441年に[[サウロン]]が[[最後の同盟]]によって倒されたことで、翌3442年が[[第三紀]]1年となった。そして3441年分の不足(1.4102日、つまり1日と9時間50分41.28秒)を残したまま、閏年や1000年ごとの調整の周期がリセットされた上で、第三紀2060年の[[執政の暦法]]による改定まで引き続き使用された。
[[ドゥーネダイン]]が[[エルダールの暦>裂け谷暦法]]に加えた変更は以下の通りである。
[[エダイン]]の伝統に則り、一年を''冬至''(mid-winter)から始まるようにした。さらにロア(loa)すなわち[[太陽年]]を、[[エルフ]]の「季節」よりも短くまた日数の一定した''12の月''に分割した。エルフの週は6日であるが、ドゥーネダインはそれに1日を加えて''7日''とした。そして一日を、[[ヌーメノール]]の東の海の日の出から次の日の出までと定めた。

[[クウェンヤ]]の月名は[[西方語]]の月名として[[中つ国]]で広く使用されたが、[[ドゥーネダイン]]だけは[[シンダール語]]の月名を用いた。月名の意味の「火」とは[[太陽]]を指している。
''[[月>月(暦)]]''(month)のことを[[クウェンヤ]]で''アスタール''(astar)((単数形アスタ(asta)。))と呼ぶ。12のアスタールにはクウェンヤで名がつけられており、おおよそ我々の12の月に対応する。クウェンヤの月名がそのまま[[西方語]]でも月名として使用されていたが、[[ドゥーネダイン]]だけは[[シンダリン]]の月名を用いた。月は30日からなるが、中日を挟んだ二つの月だけは31日ある。
年の初めと終わりと中間には月に含まれない日が計3日あり、それぞれ[[クウェンヤ]]で''イエスタレ''「最初の日」、''メッタレ''「終わりの日」、''ロエンデ''「ロアの中間」と呼ぶ。4年ごとの閏年にはロエンデが倍の2日にされ''エンデリ''「中間の日々」となる。ただし''ハランイエ''(haranyë)すなわち世紀((このハランイエは「世紀(century)」の意味ではなく、世紀の最後の年を指す語の可能性もある。原文‘the last of a century (haranyë)’))の最後の年は平年とする。([[暦の比較表]])

|~月|~日数|~月名の意味|~クウェンヤ名|~シンダール語名|
||RIGHT:1||>|イェスタレ(Yestarë)|
|~月|~日数|~月名の意味|~クウェンヤ名|~シンダリン名|
||RIGHT:1||イエスタレ(yestarë)||
|RIGHT:1月|RIGHT:30|新たな火(new fire)|ナルヴィンイエ(Narvinyë)|ナルワイン(Narwain)|
|RIGHT:2月|RIGHT:30|水(water)|ネーニメ(Nénimë)|ニーヌイ(Nínui)|
|RIGHT:3月|RIGHT:30|風(wind)|スーリメ(Súlimë)|グヮイロン(Gwaeron)|
|RIGHT:3月|RIGHT:30|風(wind)|スーリメ(Súlimë)|グヮイロン((『[[終わらざりし物語]]』での訳は「グワイロン」))(Gwaeron)|
|RIGHT:4月|RIGHT:30|若(youth)|ヴィーレッセ(Víressë)|グウィリス(Gwirith)|
|RIGHT:5月|RIGHT:30|花(flower)|ローテッセ(Lótessë)|ロスロン(Lothron)|
|RIGHT:6月|RIGHT:31|火(fire)|ナーリエ(Nárië)|ノールイ(Nórui)|
||RIGHT:1||>|ロエンデ(Loëndë)|
||RIGHT:1 or 2||ロエンデ(loëndë)/エンデリ(enderi)||
|RIGHT:7月|RIGHT:31|不明|ケアミエ(Cermië)|ケアヴェス(Cerveth)|
|RIGHT:8月|RIGHT:30|暑(heat)|ウリメ(Urimë)|ウルイ(Urui)|
|RIGHT:8月|RIGHT:30|熱(heat)|ウリメ(Úrimë)((『[[指輪物語]]』英語原著2004年版でUrimë>Úrimëに改訂された。))|ウルイ(Urui)|
|RIGHT:9月|RIGHT:30|果実の贈り物(fruit-gift)|ヤヴァンニエ(Yavannië)|イヴァンネス(Ivanneth)|
|RIGHT:10月|RIGHT:30|火の衰え(fire-fading)|ナルクウェリエ(Narquelië)|ナルベレス(Narbeleth)(([[裂け谷の暦>裂け谷暦法]]における「褪」の季節の別名と同じ))|
|RIGHT:10月|RIGHT:30|火の衰え(fire-fading)|ナルクウェリエ(Narquelië)((『[[終わらざりし物語]]』の索引の説明では「日の翳り(Sun-fading)」の意味。))|ナルベレス(Narbeleth)(([[裂け谷の暦>裂け谷暦法]]における「褪」の季節の別名と同じ。))|
|RIGHT:11月|RIGHT:30|霧(mist)|ヒーシメ(Hísimë)|ヒスイ(Hithui)|
|RIGHT:12月|RIGHT:30|クウェンヤ名は寒(cold)&br;シンダール語名は震え(shivering)|リンガレ(Ringarë)|ギリスロン(Girithron)|
||RIGHT:1||>|メッタレ(Mettarë)|
|RIGHT:12月|RIGHT:30|クウェンヤ名は寒(cold)&br;シンダリン名は身震い(shuddering)|リンガレ(Ringarë)|ギリスロン(Girithron)|
||RIGHT:1||メッタレ(mettarë)||

曜日名は[[エルダール]]のものを用いたが、四日目の名称を「一つの木」の意味に変更した。ヌーメノール人は王宮の庭に植えられた[[ニムロス>ニムロス(植物)]]を、[[二つの木]]の白の木([[テルペリオン]])の子孫と信じていた。また彼らは航海者として天の日の次に海の日を加えた。
月名と同じく、クウェンヤ名が西方語の曜日名として中つ国で広く使用された。
以上、平年は365日であり、閏年には366日となる。
なお月名にある「火」は[[太陽]]を指す。

||~曜日名の意味|~クウェンヤ名|~シンダール語名|
|1|星(Stars)|エレンヤ(Elenya)|オルギリオン(Orgilion)|
|2|[[太陽]](Sun)|アナルヤ(Anarya)|オラノール(Oranor)|
|3|[[月]](Moon)|イシルヤ(Isilya)|オリシル(Orithil)|
|4|[[木>テルペリオン]](Tree)|アルデア(Aldëa)|オルガラズ(Orgaladh)|
|5|[[天>メネル]](Heavens)|メネルヤ(Menelya)|オルメネル(Ormenel)|
|6|海(Sea)|エアレンヤ(Eärenya)|オライアロン(Oraearon)|
|7|[[ヴァラール]](Valar)|ヴァランヤ(Valanya)&br;ターリオン(Tárion)|オルベライン(Orbelain)&br;ロディン(Rodyn)|
''週''(week)の曜日名とその順番は[[エルダールの暦法>裂け谷暦法]]に由来するが、[[二つの木]]を指す第4日の名称を[[ヌーメノール人]]は一つの木を指す名称に変えた。これは彼らが、[[アルメネロス]]の王宮の庭に植えられていた[[ニムロス>ニムロス(植物)]]を、[[白の木]]([[テルペリオン]])の子孫と信じていたからである。また優れた航海者であったことから、天の日(Heavens' Day)の後に新たに''海の日''(Sea-day)を挿入し、週を7日とした。

** コメント [#l3dc16c9]
||~曜日名の意味|~クウェンヤ名|~シンダリン名|
|~1|星(Stars)|エレンヤ(Elenya)|オルギリオン(Orgilion)|
|~2|[[太陽]](Sun)|アナルヤ(Anarya)|オラノール(Oranor)|
|~3|[[月]](Moon)|イシルヤ(Isilya)|オリシル(Orithil)|
|~4|[[木>テルペリオン]](Tree)|アルデア(Aldëa)|オルガラズ(Orgaladh)|
|~5|[[天>メネル]](Heavens)|メネルヤ(Menelya)|オルメネル(Ormenel)|
|~6|海(Sea)|エアレンヤ(Eärenya)|オライアロン(Oraearon)|
|~7|[[ヴァラール]](Valar)|ヴァランヤ(Valanya)&br;ターリオン(Tárion)|オルベライン(Orbelain)&br;ロディン(Rodyn)|

#pcomment_nospam(,,noname,,,,reply)
月名と同じく、クウェンヤ名が西方語の曜日名として[[中つ国]]で広く使用された。

『[[終わらざりし物語]]』によると、[[ヌーメノール]]では年に三回、王が[[メネルタルマ]]の山頂で[[エル・イルーヴァタール>イルーヴァタール]]への祈りを捧げる儀式が行われた。すなわち、春の初めに行われる[[エルキエアメ]]、夏至に行われる[[エルライタレ]]、秋の終わりに行われる[[エルハンタレ]]である。

*** 不足と誤差 [#v9c0eec0]

上述の通り、王の暦法では平年は365日であり、4年ごとの閏年は366日とするが、世紀の最後の年(100で割り切れる年)は平年とする。
[[太陽年]]は365日5時間48分46秒であるから、これだと1000年毎に2日と4時間46分40秒の不足が累積する。そこで[[第二紀]]の[[ヌーメノール]]では、千年紀の最後の年(1000で割り切れる年)を、平年に2日を加えた367日とすることで調整した。だがそれでも4時間46分40秒の不足分が残った。これを''一千年分の不足''(millennial deficit)と呼ぶ。

[[第二紀]]3441年に[[最後の同盟]]が[[サウロン]]を倒し、翌3442年が[[第三紀]]1年となって紀年が革まったことで、大きな混乱が生じることになった。4年ごとの閏年の計算を、第三紀の紀年を基準にして行うようになったのである。つまり第三紀4年が閏年となったのだが、その前の閏年は第二紀3440年だったため、前回の閏年から5年の間が空いてしまった。これによって平年1年分の不足が生じた。さらに1000年ごとの調整も第三紀の紀年を基準にして行うようになったため、これに441年分の誤差が加わった。

[[ゴンドール]]の統治権を持つ初代の[[執政]][[マルディル]]は、こうして累積した誤差を修正するため、第三紀2060年に[[執政の暦法]]を発効した。

*** その他 [#w9f59270]

『[[追補編>指輪物語/追補編]]』での暦の説明の一部には原著初版(1955年)と邦訳の底本である第二版(1966年)では相違があり、以下にその相違と初版の内容を参考として記す。

-初版では一千年分の不足の調整として、千年紀の最後の年に2日を追加することが触れられている。第二版では調整の具体的な内容は述べられていない。
-初版では[[クウェンヤ]]での閏年の名称、'''atendëa'''(アテンデア)が言及されている。第二版ではこの名称は登場しない。
-初版では[[マルディル]]が暦の調整するために2日を加えたのは、[[執政の暦法]]を導入した第三紀2060年とされている。第二版では第三紀2059年とされている。

>この方式は[[ヌーメノール]]建国の第二紀32年ではなく、第二紀1年から起算した。千年紀の調整は第二紀1000年、2000年、3000年に2日を加えることで成された。しかしながら、新しい紀年は第三紀1年から始まった。第三紀1000年まで追加はなかった(2000年までも同様)。また第二紀3440年はアテンデア(「倍の中間」すなわち閏年)だったが、第三紀の最初のアテンデアは第三紀4年(すなわち3445年)だった。このことや第二紀3000年から生じていた他の誤差を修正するためか、[[執政]][[マルディル]]は第三紀2060年に2日を加えた。[[ハドル>ハドル(トゥーリン一世の息子)]]は2360年に1日を加えた。これらの変更は最終的には西方諸国で広く承認されたようだが、第三紀中ではこれ以上の修正はなかった。
マルディルは同じく2060年に[[執政の暦法]]と呼ばれる改訂暦を導入し、これは最終的には[[ホビット]]を除く[[西方語]]話者の多くに受け入れられた。月は全て30日で、月に含まれない2日は第三と第四の月(三月、四月)の間と、第九と第十の月(九月、十月)の間に1日が入れられた。月に含まれないこれら五つの日、イエスタレ、トゥイレーレ、ロエンデ、ヤーヴィエーレ、メッタレは祝日だった。((項目編集者訳。以下原文。This system was originally reckoned from Year 1 of the Second Age, not from 32, the date of the foundation of Númenor. Millennial adjustments were made by adding 2 days to S.A. 1000, 2000, and 3000. A new numeration, however, was begun with Third Age 1. No addition was made until T.A. 1000 (repeated 2000). Also S.A. 3440 had been an atendëa (‘double-middle’ or leap-year), but the first atendëa of the Third Age was in T.A. 4 (that is, in 3445). It was probably to correct this and other inaccuracies accruing since S.A. 3000 that Mardil the Steward added 2 days to T.A. 2060. Hador added another in 2360. These alterations seem to have become recognized eventually throughout the west-lands; but there were no further corrections during the Third Age. Mardil also in the same year, 2060, introduced a revised system which was called Stewards' Reckoning and was adopted eventually by most of the users of the Westron language, except the Hobbits. The months were all of 30 days, and 2 days outside the months were introduced between the third and fourth months (March, April) and 1 between the ninth and tenth (September, October). These 5 days outside the months, yestarë, tuilérë, loëndë, yáviérë, and mettarë, were holidays.))

『[[The Letters of J.R.R.Tolkien]]』のLetter#176(1955年)には暦の誤差について以下の記述がある。

>ヌーメノールの暦はグレゴリオ暦より少しだけ優れていた。後者は一年につき平均で26秒早く、ヌーメノール暦では17.2秒遅い。((項目編集者訳。以下原文。‘the Númenórean calendar was just a bit better than the Gregorian: the latter being on average 26 secs fast p. a., and the N[úmenórean] 17.2 secs slow.’))

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