* &ruby(ししゃ){死者};の&ruby(ぐんぜい){軍勢}; [#c1941ec7]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|事象|
|~スペル|Shadow Host, the Dead (Men)|
|~異訳|幽霊部隊、亡霊たちの軍勢|
|~その他の呼び名|誓言破りし者ら(Oathbreakers) &br; 灰色の軍勢(Grey Host) &br; 死者たち(Dead Men) &br; 山々の人間(Men of the Mountains)|
|~種族|[[人間]]の亡霊|

** 解説 [#Explanation]

死者の王(The King of the Dead)に率いられた、[[死者の道]]に巣食う亡霊の軍勢。
[[エレヒ]]にて[[アラゴルン二世]]によって招集され、[[ペラルギア]]方面にいたサウロン軍を駆逐。[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]救出に大きな役目を果たした。

>「死者たちがついて来る。」レゴラスがいいました。「わたしには人間と馬たちの影が見える。それからちぎれ雲のような色うすい旗が、そして霧の立ちこめる冬の夜の木立ちのような槍が。死者たちがついて来る。」((『[[指輪物語]] [[王の帰還]] 上』「二 灰色の一行、罷り通る」))

*** 誓言破りし者ら [#laf73ad6]

生前彼らは、後に[[死者の道]]と呼ばれる[[ドゥイモルベルグ]]付近に住んでいた、[[褐色人]]と近い関係にある''山々の人間''(Men of the Mountains)と呼ばれる未開の民族だった。
彼らは[[第二紀]]末、[[サウロン]]が[[中つ国]]で大きな勢力を持っていたころは、サウロンを崇拝していた。だがサウロンが[[ヌーメノール]]の捕虜として連れ去られ、さらにその後[[イシルドゥア]]によって[[ゴンドール]]が建国されると、彼らは[[エレヒ]]にてイシルドゥアに忠誠を誓う。
やがて、[[最後の同盟の戦い>最後の同盟]]が始まると、イシルドゥアは彼らをサウロンとの戦いに召集する。だが彼らは、かつて崇拝していたサウロンと戦うことを拒否。
するとイシルドゥアは怒り、かれらの王に向かい、

>『汝は最後の王たるべし。して西方が汝の黒き主人より強きことの判明せし時は、われこの呪いを汝と汝の民とにかけん。汝らの誓言の果たされんまで、永遠の眠りにつくことなからんと。そのゆえは、この戦いの年月数えがたく続きて、終局以前に今一度呼び出さるべきためぞ。』((同上))

と呪いをかけた。彼らはイシルドゥアの怒りの前に逃げ出し、山の中に隠れ住むようになって次第に減少していき、やがて人々から忘れられた民となる。

しかし彼らは死の安らぎを得ることができず、亡霊となってこの世に留まることを強いられ続けた。

*** 誓言の成就 [#v1f1d48f]

>「[[黒の石>エレヒ]]から馬を進めて四日四晩、そして五日めにかかった。」と、かれはいいました。「するとどうだ! モルドールの送ってよこす暗闇の中でわたしの望みが強まってきたのだ。なぜならその薄闇の中で亡霊たちの軍勢はしだいに強く、また見るも恐ろしくなってきたように見えたからだ。馬にまたがっているのもあれば、徒歩の者もいた。しかし全員がいちように非常に速い速度で進んでいた。かれらは黙したまま何の音もたてなかったが、その目にはかすかに光るきらめきがあった。 …… 」

[[指輪戦争]]のおり、[[ゴンドール]]南部沿岸に迫る脅威を早急に除く必要に駆られた[[アラゴルン二世]]は、[[灰色の一行]]と共に[[死者の道]]を通過して[[エレヒ]]に向かい、そこで[[イシルドゥア]]の世継として死者たちを召集することを考える。すると死者たちは誓言を果たすために自らエレヒの周りに集結し、アラゴルンの意向に従った。
アラゴルンに率いられた死者の軍勢は[[ペラルギア]]まで遠征し、そこを襲撃していた[[海賊]]や[[ハラド人>ハラドリム]]たちからなる[[モルドール]]の同盟軍に著しい恐怖を与えることで潰走させて駆逐した。

>「しかしアラゴルンはここで立ち止まると、大音声で呼ばわった。『いざや来たれ! 黒の石にかけ、われはなんじらを召し出すぞ!』すると突然それまで一番後ろで動きかねていた幽霊部隊が灰色の潮のように押し寄せて、その前にあるものは何もかも一掃してしまった。わたしはかすかな鬨の声を聞いた。かすかに角笛の吹き鳴らされる音も無数の遠い声のざわめきも聞いた。あたかも遠い昔の暗黒時代の今は忘れられた合戦のこだまのようだった。薄青い剣が抜かれた。だがその刃が昔と変わらず敵に切りつけようとしたかどうか、それはわたしにはわからない。なぜなら死者たちはもはや恐怖以外のどんな武器も必要としなかったのだから。何者もかれらに抵抗しようとはしなかったから。」
>「しかしアラゴルンはここで立ち止まると、大音声で呼ばわった。『いざや来たれ! 黒の石にかけ、われはなんじらを召し出すぞ!』すると突然それまで一番後ろで動きかねていた幽霊部隊が灰色の潮のように押し寄せて、その前にあるものは何もかも一掃してしまった。わたしはかすかな鬨の声を聞いた。かすかに角笛の吹き鳴らされる音も無数の遠い声のざわめきも聞いた。あたかも遠い昔の[[暗黒時代]]の今は忘れられた合戦のこだまのようだった。薄青い剣が抜かれた。だがその刃が昔と変わらず敵に切りつけようとしたかどうか、それはわたしにはわからない。なぜなら死者たちはもはや恐怖以外のどんな武器も必要としなかったのだから。何者もかれらに抵抗しようとはしなかったから。」

このために、ゴンドール南部諸侯国の軍勢が[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]救援のため[[ペレンノール野の合戦]]に駆けつけることが可能となった。
誓言を果たした死者たちは、アラゴルンによって呪いから解放され、この世から去って安らかな眠りを得ることになった。

>「『今ぞイシルドゥアの世継の言葉を聞け! なんじらの誓言は成就せられたり。戻りて二度とかの谷間の地を騒がすことなかれ! 行きて永遠の眠りにつくべし!』とね。 &br; 「するとすぐに死者たちの王が亡霊たちの前にくっきりと姿を現わし、持っている槍を折って捨てた。それからいかれは低く一礼して去っていった。するとたちまち灰色の大軍は一人残らず突風に追い払われた靄のように撤退して消え失せた。わたしはまるで夢から覚めたような気がしたものだ。」((以上 同上「九 最終戦略会議」 レゴラスによる回想))

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

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死者の王は、ポール・ノレル(Paul Norell)が演じている(吹き替えは[[納谷六朗]])。
死者の軍勢は原作とは異なり、[[死者の道]]で召集され、船に乗って[[ペレンノール]]にまでやってきて、[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]を攻撃していたモルドール軍を直接攻撃して壊滅させている。

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