#author("2017-04-09T23:45:06+09:00","","")
* &ruby(ごぐん){五軍};の&ruby(かっせん){合戦}; [#w6283d9f]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[歴史・事件]]|
|~スペル|Battle of Five Armies|
|~異訳|五軍の&ruby(いくさ){戦};、五軍の戦い|
|~その他の呼び名|最初の谷間の合戦(first Battle of Dale)|

** 解説 [#Explanation]

[[第三紀]]2941年に[[エレボール(はなれ山)>エレボール]]で行われた、『[[ホビットの冒険]]』作中で語られている戦い。
[[スマウグ]]の財宝を奪回した[[トーリン二世]]ら[[13人のドワーフ>トーリンとその仲間]]及び[[くろがね連山]]の[[ドワーフ]]と、財宝の分け前を要求する[[湖の町の人間>湖の人]]及び[[森の王国]]の[[森エルフ>シルヴァン]]が睨み合いになっている最中、スマウグが死んでドワーフが[[はなれ山]]に戻ってきたことを聞きつけた[[オーク]]([[ゴブリン]])と[[ワーグ(アクマイヌ)>ワーグ]]の連合軍が襲来。そのためドワーフ・エルフ・人間は休戦、同盟してオーク・ワーグの軍と戦った。
闘いはドワーフ・エルフ・人間の勝利となり、その後はなれ山にドワーフの[[山の下の王国>エレボール#kingdom]]と人間の[[谷間の国]]が再建された。
だがこの戦いによって、[[ビルボ>ビルボ・バギンズ]]と共に旅立った13人のドワーフのうち、[[トーリン二世]]、[[フィーリ]]、[[キーリ]]が討ち死にした。

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|>|>|>|~三軍|
|~種族|~国・勢力|~指導者・参戦者|~兵力|
|[[エルフ]]([[シルヴァン・エルフ]]、[[シンダール]])|[[森の王国]]|[[スランドゥイル(エルフ王)>スランドゥイル]]|槍兵と弓兵|
|[[人間]]([[湖の人]])|[[エスガロス]]|[[バルド]]|不明|
|[[ドワーフ]]([[長鬚族]]ほか)|[[トーリンの館]]|†[[トーリン・オーケンシールド>トーリン二世]]と[[その仲間達>トーリンとその仲間]]|13|
|~|[[くろがね連山]]|[[鉄の足のダイン>ダイン二世]]|つるはし兵500以上|
|>|>|>|~三軍の援軍|
|[[大鷲]]|[[霧ふり山脈]]|[[ワシの王]]|多数|
|[[人間]](皮をとりかえるひと)|[[ビヨルンの家]]|[[ビヨルン]]|1|
|>|>|>|~二軍|
|[[オーク]]([[ゴブリン]])|[[霧ふり山脈]]および[[グンダバド]]|†[[ボルグ]]|多数。[[用心棒>ボルグの用心棒]]、[[狼乗り>狼#wolfrider]]含む|
|[[狼]]([[ワーグ]])|[[ロヴァニオン]]||不明|
|>|>|>|~二軍の援軍|
|蝙蝠|||多数|

** 戦況 [#situation]

*** 開戦にいたるまで [#m85897f1]

[[スマウグ]]に[[エスガロス(湖の町)>エスガロス]]を破壊された[[エスガロスの人間>湖の人]]は、町の復興の資金とすべく、スマウグが死んで手つかずになっているはずのはなれ山の財宝を求め、スマウグを討った[[バルド]]を統率者に[[はなれ山]]へ進軍した(彼らは[[トーリン達>トーリンとその仲間]]もスマウグに殺されたと思っていた)。[[スランドゥイル(エルフ王)>スランドゥイル]]もまたスマウグ死亡の噂を聞きつけて財宝を求め、[[森のエルフ>シルヴァン]]の軍勢を率いて進軍してきたが、湖の町の窮状を知ると彼らに同情し、行動を共にする。
一方、はなれ山の[[トーリン二世]]ら[[13人のドワーフ>トーリンとその仲間]]と[[ビルボ・バギンズ]]は、[[大ガラス]]の諜報によりスマウグ死亡の噂がすでに方々に広がり、人間やエルフがその財宝を求めて動き出していることを知ると、財宝を守るために山の表門に障壁を築くとともに、[[くろがね連山]]の[[ダイン>ダイン二世]]に援軍の要請を出し、籠城の準備を始める。

両陣営は、はなれ山の門前でにらみ合う形となる。スマウグを討ち取ったことの報酬と、ドワーフが目覚めさせたスマウグがエスガロスを攻撃したことの賠償を受け取る権利を主張するバルドだが、トーリンは拒否。ビルボを通じて[[アーケン石]]が人間・エルフ陣営の手に渡ったことからトーリンはさらに態度を硬化させ、表面上は賠償に応じる構えを見せる一方で時間を稼ぎ、ダインの援軍が到着するのを待って、バルド達と戦ってでも、より多くの財宝を自分達のものにしようとしていた。
一方、食料などの備蓄がなくなればトーリン達は譲歩してくると考え、門前に陣取っていたバルドとスランドゥイルだが、そこにダインの率いるドワーフの援軍が到着する。
くろがね連山のドワーフ軍は[[ドワーフとオークの戦争>ナンドゥヒリオンの合戦]]の従軍経験者であり、士気が高く、多くの備蓄を携え、さらに山の防備や入口を新設する技術力を持っていた。人間・エルフ陣営は山を包囲するには数が少なく、もしダインがトーリンと合流して賠償を翻せば圧倒的に不利になると悟ったバルドは、ダイン勢の進行を阻む。
かくして一触即発の事態となった。

この一方で、[[大ゴブリン]]を殺害された[[霧ふり山脈]]の[[オーク]]([[ゴブリン]])は[[ボルグ]]を大将に立て、[[ワーグ(アクマイヌ)>ワーグ]]と連合して復讐を果たすべく[[グンダバド]]山に軍を集結させていた。かれらはスマウグ死亡の報を知ると、すみやかに[[闇の森]]と[[灰色山脈]]の間を抜けてはなれ山に接近、北側から両陣営を強襲しようと目論んだ。

これを察知していた[[ガンダルフ]]の説得によって、バルド、スランドゥイル、ダインは直ちに休戦・合議して共同戦線を張り、オークとワーグの連合軍を迎え撃つ作戦を立てる。かくして五軍の合戦となった。

*** 合戦 [#m3e540e6]

三軍は、[[森のエルフ>シルヴァン]]軍が南の尾根([[からすが丘]])に、[[湖の人間>湖の人]]と[[くろがね連山]]の[[ドワーフ]]軍が東の尾根にそれぞれ陣取り、[[オーク]]・[[ワーグ]]の二軍を谷あいに誘い込んで挟み撃ちにする作戦をとった。
作戦にはまって谷あいに誘い込まれた二軍は、そこでエルフ軍・人間軍・ドワーフ軍の挟み撃ちにあい、大混乱に陥る。このまま三軍の勝利かと思われたが、二軍の別動隊が北から山の斜面をよじ登って南へ駆け下ってきたことで、三軍は逆に挟み撃ちにされる形となり、形勢が逆転。
三軍はやっと敵の第一波を退けたものの、数で優る二軍の本隊は谷あいで体勢を立て直すと三軍を圧倒。[[バルド]]は東の尾根に押し返され、[[スランドゥイル]]は南のからすが丘に追い詰められる。

だがここで籠城し沈黙を守っていた[[トーリン>トーリン二世]]率いる[[13人のドワーフ>トーリンとその仲間]]が、表門の障壁を破って撃って出る。
彼らの出撃は寡勢であったが各陣営の士気に大きく影響し、三軍はいきり立って二軍を押し返すと、トーリンはそのまま[[ボルグの用心棒]]の隊列に切り込んだ。しかし用心棒の守りを突破することはできず、逆に敵に囲まれて孤立したトーリンは致命傷を負い、彼を守ろうとして[[フィーリ]]と[[キーリ]]も討ち死にする。三軍は依然として数の上で不利だった。

この窮状に、ずっと二軍の動静を監視していた[[ワシの王]]率いる[[大鷲]]達が三軍を援助すべく参戦。上空からオークとワーグを追い立て、分断されていた三軍が集結する余裕を与える。
だが戦況を決定的に覆したのは[[ビヨルン]]の参戦であった。どこからともなく現れたビヨルンは怒りにふくれあがった大熊の姿で暴れ回り、瀕死のトーリンを運び出すと、ボルグの用心棒を蹴散らして、オーク軍の大将[[ボルグ]]を踏み潰す。
これで勝敗が決し、総崩れとなった二軍は三軍の追撃を受け、[[早瀬川]]や[[たての湖(沼地)]]に追い込まれて討ち果たされた。一部は[[闇の森]]に逃げ込み、[[森の王国]]で討たれるか、森の中で消息を絶った。

*** 戦後 [#l40cd2cb]

この戦いの勝利によって[[山の下の王国>エレボール#kingdom]]は再建されたものの、[[トーリン二世]]は討ち死し、王位は[[ダイン>ダイン二世]]が受け継いだ。
[[バルド]]は[[ビルボ]]の取り分であったエレボールの財宝の14分の1を受け取り、後の[[第三紀]]2944年に[[谷間の国]]を再建して王となった。さらにバルドは財宝の一部を使って、[[エスガロス]]の再建を援助した。また、[[エスガロスの民>湖の人]]への援助の謝礼として、[[ギリオンのエメラルド]]を[[スランドゥイル]]に贈った。
財宝が引き起こした諍いに嫌気が差していたビルボは、最初は財宝を受け取ることを固辞したが断り切れず、[[小馬]]で運べる程度(金と銀が入った小箱を一箱ずつ)を、謝礼としてバルドから受け取った。また[[ダイン>ダイン二世]]から贈られた真珠と銀の首飾りを、[[エルフ王の岩屋]]で盗み食いして食を繋いでいたことの謝罪としてスランドゥイルに贈り、彼から[[エルフの友]]と称された。

この戦いによって北方の[[オーク]]軍の四分の三が殲滅されといわれ、[[ワーグ]]もしばらく姿を消したことにより[[ロヴァニオン]]の治安は大いに改善された。
同時期に[[白の会議]]によって、[[ドル・グルドゥア]]から[[死人占い師]]が追い払われた。

とはいえ、後の[[指輪戦争]]の時代になるとドル・グルドゥアは敵に奪い返され、オークも北方で再び数を増やして、かの地の危険は再度増大する。
だがこの戦いによって、一度北方のオークが一掃され、[[スマウグ]]が滅び、エレボールの山の下の王国と谷間の国が再建され、[[人間]]・[[エルフ]]・[[ドワーフ]]・[[熊人>ビヨルン一党]]の結束が強まり、北方の交通の安全が保障されたことで、指輪戦争で北方に加えられた攻撃による損失が大幅に軽減されたのだと考えられている(指輪戦争では、[[東夷]]による東方からの攻撃を、[[谷間の国の人間]]とエレボールのドワーフが食い止めた形となった)。

>「じゃが事態はずっと別の方向に進み、はるかに悪化したかもしれぬところじゃった。お前さんたちが、[[ペレンノール野の大合戦>ペレンノール野の合戦]]のことを考える時は、[[谷間の国]]の戦いと[[ドゥリン一族の武勇>エレボール]]を忘れるんじゃないぞ。ひょっとしたらあり得た事態を考えてもみるがいい。[[エリアドール]]を[[竜>スマウグ]]の火と野蛮な剣が荒れ狂い、[[裂け谷]]には夜が訪れる。[[ゴンドール]]に[[妃>アルウェン]]はおわさぬことになったかもしれぬ。わしらにしてもこの地における勝利からただ廃墟と灰の中に戻ることを望むしかなかったかもしれぬ。じゃが、これはさけられた。それももともとはといえば、ある春の初めの夕べ、[[ブリー村]]でわしが[[トーリン・オーケンシールド>トーリン二世]]に出会ったからじゃ。[[中つ国]]でいうめぐり会いというやつじゃのう。((『[[指輪物語]] [[追補編]]』[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]における[[ガンダルフ]]の言葉))

** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

サブタイトルの原題などに“五軍の合戦(Battle of Five Armies)”という言葉がそのまま使われているものの、映画の設定では、[[ワーグ]]は単純に[[オーク]]の[[馬]]がわりの動物のように描かれているため、「五軍」とは「人間/エルフ/ドワーフ/オーク/ワーグ」ではなく、「人間/エルフ/ドワーフ/[[ドル・グルドゥア]]の軍勢/[[グンダバド]]の軍勢」を指すことにされた。ドル・グルドゥアの軍勢の中には[[トロル]]、グンダバドの軍勢の中には[[ゴブリン町]]出身と思われる[[ゴブリン]]や、蝙蝠(([[吸血蝙蝠]]との関係は不明))も含まれている。

演出のため、戦闘の流れは大幅に変更されている。

-[[ドル・グルドゥア]]の[[死人占い師]]は、[[エレボール]]の地理的価値に目を付けて、軍勢を派遣する。
-ドル・グルドゥアの軍勢は、[[化けミミズ]]を使って密かにエレボールに接近する。
-[[アゾグ]]は背後を襲うために[[デイル(谷間の国)>谷間の国]]にも軍勢を送り込んで、デイルの廃墟も戦場となり、[[エスガロス]]から避難していた[[湖の人間>湖の人]]も戦闘に巻き込まれる。
-不利な戦況を打開すべく、[[からすが丘]]に陣取った敵大将アゾグを直接討ち取るために、[[トーリン>トーリン二世]]、[[フィーリ]]、[[キーリ]]、[[ドワーリン]]が向かうが、敵の罠にかけられる。
-[[ビルボ>ビルボ・バギンズ]]が、敵の増援が[[グンダバド]]から向かっていることを知らせるためトーリンの元に向かう。
-自軍の損害の大きさにショックを受けた[[スランドゥイル]]が撤退を考える。
-[[ボルグ]]とキーリ、[[タウリエル]]、[[レゴラス]]が戦う。
-トーリンとアゾグの一騎打ちが行われる。
-[[大鷲]]は[[ラダガスト]]に呼ばれて彼と[[ビヨルン]]を戦場に運び、[[グンダバド]]からやって来た新手のオークを壊滅させている。

また、戦後処理の財宝分配などはほぼ完全にカットされている。

[[エクステンデッド・エディション]]では、主に以下のシーンが追加されている。

-オークが現れる前、エルフの軍勢とドワーフの軍勢が実際に衝突する。
-山羊を使った、ドワーフの騎兵や戦車の登場。
-[[トーリンたち13人のドワーフ>トーリンとその仲間]]の、戦闘シーンの追加。
-からすが丘へ向かうトーリンを追い、フィーリ、キーリ、ドワーリンと、さらに[[バーリン]]が、最初戦車に乗っている。
-[[アルフリド]]の追加シーン。
-トーリン、フィーリ、キーリの葬儀と、[[ダイン>ダイン二世]]の戴冠(この時トーリンの遺体に、アーケン石が返却されている)。

** コメント [#Comment]

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