#author("2018-08-11T21:37:57+09:00","","")
#author("2024-03-03T13:11:05+09:00","","")
* モルゴス [#t18214f9]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Morgoth|
|~その他の呼び名|メルコール((旧訳ではメルコオル))(Melkor) &br; バウグリア(Bauglir) &br; [[冥王]]、暗黒の王(Dark Lord) &br; 世界の暗黒の敵、この世の黒き敵(the Black Foe of the World) &br; 大敵、大いなる敵(the Enemy) &br; 初代の大敵(the First Enemy) &br;強大な敵、大いなる敵(the Great Enemy) &br; かの大いなる影(the Great Shadow) &br; 暗黒の王(the Lord of the Dark, the Dark King) &br; 暗黒の主(the Lord of the Darkness) &br; 北方の暗黒の力、北方の冥王(Dark Power of the North) &br; 世界の王(King of the World) &br; マンドスの囚人(jail-crow of Mandos) &br; 大いなる闇の御方(Great Dark One)(([[ドルーエダイン]]の呼び名))|
|~種族|[[アイヌア]]([[ヴァラール]])|
|~その他の呼び名|メルコール(Melkor) &br; バウグリル、バウグリア(Bauglir) &br; [[冥王]]、暗黒の王(Dark Lord) &br; 世界の暗黒の敵、この世の黒き敵(Black Foe of the World) &br; 大敵、大いなる敵(the Enemy) &br; 初代の大敵(the First Enemy) &br;強大な敵、大いなる敵(the Great Enemy) &br; かの大いなる影(the Great Shadow) &br; 暗黒の王(Lord of the Dark, Dark King) &br; 暗黒の主(Lord of the Darkness) &br; 北方の暗黒の力、北方の冥王(Dark Power of the North) &br; 大いなる闇の御方(Great Dark One) &br; 世界の王(King of the World) &br; マンドスの囚人(jail-crow of Mandos)|
|~種族|[[アイヌル]]([[ヴァラール]])|
|~性別|男|
|~生没年||
|~兄弟|[[マンウェ]](兄弟)|

** 解説 [#Explanation]

[[アルダ]]の諸悪の根源。初代[[冥王]]。
元来この者は、[[クウェンヤ]]で「力にて立つ者(He who arises in Might)」を意味する''メルコール''の名((この名の[[シンダール語]]形は''ベレグーア''(Belegûr)だが、[[エルフ]]たちはこれを用いず、「大いなる死(Great Death)」の意味の''ベレグアス''(Belegurth)を用いた))で呼ばれた最も強大な[[アイヌア]]であった。だがメルコールは[[イルーヴァタール]]の主題に反逆し、兄弟たる[[マンウェ]]の[[王国(アルダ)>アルダ]]を力ずくで我が物にしようとして数限りない損害をアルダに加えた。そのためメルコールの名は剥奪され、もはや[[ヴァラール]]の一人には数えられない。
[[フィンウェ]]が殺されて[[シルマリル]]が奪い取られたことを知った[[フェアノール]]がこの者を[[シンダール語]]で「黒き敵(Black Enemy)」を意味する''モルゴス''と呼び、以後はその名で知られるようになった。シンダール語で「圧制者(Constrainer)」の意である''バウグリア''とも呼ばれた。
[[アルダ]]の諸悪の根源。[[上古]]の[[冥王]]。
元来この者は、[[クウェンヤ]]で「力にて立つ者(He who arises in Might)」を意味する''メルコール''の名((この名の[[シンダリン]]形は''ベレグーア''(Belegûr)だが、[[エルフ]]たちはこれを用いず、「大いなる死(Great Death)」の意味の''ベレグアス''(Belegurth)を用いた))で呼ばれた最も強大な[[アイヌル]]であった。だが彼は創造神[[イルーヴァタール]]の主題に反逆し、兄弟たる[[マンウェ]]の[[王国(アルダ)>アルダ]]を力ずくで我が物にしようとして数限りない損害をアルダに加えた。そのためメルコールの名は剥奪され、もはや[[ヴァラール]]の一人には数えられない。
[[フィンウェ]]が殺されて[[シルマリル]]が奪い取られたことを知った[[フェアノール]]がこの者を[[シンダリン]]で「黒き敵(Black Enemy)」を意味する''モルゴス''と呼び、以後はその名で知られるようになった。シンダリンで「圧制者(Constrainer)」の意である''バウグリル''とも呼ばれた。

アイヌアとしては酷寒と灼熱を生じさせた者だった。しかしモルゴスがアルダに害を加える上で最もよく用いたのが暗闇であり、彼と同一化された暗闇はすべての命ある者にとって甚だしい恐怖の対象となった。このために''[[冥王]]''の名で呼ばれる。
[[中つ国]]では[[ウトゥムノ]]、および[[アングバンド]]を拠点とし、その下には[[マイアール]]の悪霊([[サウロン]]や[[バルログ]]等)や被造物の怪物([[オーク]]、[[トロル]]、[[龍]]等)、邪悪な[[人間]]([[東夷]]等)からなるおびただしい数の堕落した召使が集っていた。これらの召使達の中で生き残った者はモルゴス亡き後も[[中つ国]]とそこに暮らす[[自由の民]]を害し続けたが、モルゴス自身はこういった勢力を構築してアルダを侵食することに力を費やしたため、晩期には[[アイヌア]]としての能力をほとんど失っていった。
アイヌルとしては酷寒と灼熱を生じさせた者だった。しかしモルゴスがアルダに害を加える上で最もよく用いたのが暗闇であり、彼と同一化された暗闇はすべての命ある者にとって甚だしい恐怖の対象となった。このために''[[冥王]]''の名で呼ばれる。

モルゴスは[[怒りの戦い]]によって[[虚空]]に放逐され、現存する目に見える姿では二度と[[アルダ]]に戻ってくることはない。しかし彼の投げかけた暗闇はいまだに[[アルダ]]を覆っており、その意思と虚言は依然として召使達を支配している。
[[中つ国]]では初めは[[ウトゥムノ]]、後には[[アングバンド]]を拠点とし、その下には[[マイアール]]の悪霊([[サウロン]]や[[バルログ]]等)や被造物の怪物([[オーク]]、[[トロル]]、[[龍]]等)、邪悪な[[人間]]([[東夷]]等)からなるおびただしい数の堕落した召使が集っていた。これらの召使達の中で生き残った者はモルゴス亡き後も[[中つ国]]とそこに暮らす[[自由の民]]を害し続けたが、モルゴス自身はこういった勢力を構築してアルダを侵食することに力を費やしたため、晩期には[[アイヌル]]としての能力をほとんど失っていった。

>「予こそ[[長上王]]なり。われはメルコール、全[[ヴァラール]]のうち、最初にあって最も力ある存在、[[世の開闢以前にあって世を創りし>アイヌリンダレ]]者。わがもくろむ影は[[アルダ]]を覆い、地上に起こるすべてのことはひそやかに、だが着実に、わが意を表してゆくであろう。 … 」((『[[終わらざりし物語]]』「[[ナルン・イ・ヒーン・フーリン]]」 [[フーリン>フーリン(ガルドールの息子)]]に向けられたモルゴスの大言壮語))
モルゴスは[[上古]]の終わりに[[怒りの戦い]]によって[[虚空]]に放逐され、[[ヴァラール]]が玉座にある限り現存する目に見える姿では二度と[[アルダ]]に戻ってくることはない。しかし彼の投げかけた暗闇はいまだに[[アルダ]]を覆っており、その意思と虚言は依然として召使達を支配している。

>そこでモルゴスは現れた。地下の玉座からゆっくり登ってきた。その足音は、地の下を揺るがす雷の如く轟いた。
立ち現れたモルゴスは、黒の鎧に身を固め、塔のように王の前に立ちはだかった。頭には[[鉄の王冠>鉄の冠]]を戴き、紋章のない黒一色の巨大な盾が、嵐を孕む雲のように王の上に影を落とした。 …
モルゴスは、地獄の鉄槌[[グロンド>グロンド(武器)]]を高々と振り上げ、雷光の如く打ち下ろした。((『[[シルマリルの物語]]』「ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと」 [[フィンゴルフィン]]との一騎打ちに現れたモルゴスの姿。))

>「予こそ[[長上王]]なり。われはメルコール、全ヴァラールのうち、最初にあって最も力ある存在、[[世の開闢以前にあって世を創りし>アイヌリンダレ]]者。わがもくろむ影はアルダを覆い、地上に起こるすべてのことはひそやかに、だが着実に、わが意を表してゆくであろう。」((『[[終わらざりし物語]]』「[[ナルン・イ・ヒーン・フーリン]]」 [[フーリン>フーリン(ガルドールの息子)]]に向けられたモルゴスの大言壮語。))

*** 最も力ある者 [#i56125a0]

>「げにアイヌアは力ある者なり。アイヌアのうちにありて、この上なき力を持つ者はメルコールなり。」((『[[シルマリルの物語]]』「[[アイヌリンダレ]]」 [[イルーヴァタール]]の言葉))
>「げにアイヌルは力ある者なり。アイヌルのうちにありて、この上なき力を持つ者はメルコールなり。」((『[[シルマリルの物語]]』「[[アイヌリンダレ]]」 [[イルーヴァタール]]の言葉。))

[[イルーヴァタール]]より、メルコールは全[[アイヌア]]の中で最大の力と知識が与えられており、そればかりでなく他の[[ヴァラール]]の資質をもいくらかずつ分け与えられていた。
しかし彼はやがて自らの手で創造を成したいと欲すようになり、[[不滅の炎]]を求めてただ独り[[虚空]]をさ迷うようになる。そのため彼は、他のアイヌアとは異なる独自の考えを抱くようになった。
[[イルーヴァタール]]が最初に創り出した聖霊[[アイヌル]]の最強者がメルコールであった。
メルコールには全アイヌルの中で最大の力と知識が与えられており、そればかりでなく他の[[ヴァラール]]の資質をもいくらかずつ分け与えられていた。

[[アイヌアの音楽>アイヌリンダレ]]が奏せられた時、メルコールは自分に与えられた&ruby(パート){声部};の栄光をさらに大きなものにしたいと思い、歌唱に自らの考えを織り込んで不協和音を生じさせた。メルコールの力はあまりに大きく、他のアイヌアの斉唱は圧せられ、イルーヴァタールの提示した主題が二度もかき消されるほどであった。中には、むしろ彼に同調して共に不協和音を起こす者達すらいた。
しかし彼はやがて自らの手で創造を成したいと欲すようになり、[[不滅の炎]]を[[虚空]]に求めてただ独りさ迷うようになる。そのため彼は、他のアイヌルとは異なる考えを抱くようになった。

[[アイヌルの音楽>アイヌリンダレ]]が奏せられた時、メルコールは自分に与えられた&ruby(パート){声部};の栄光をさらに大きなものにしたいと思い、歌唱に自らの考えを織り込んで不協和音を生じさせた。メルコールの力はあまりに大きく、他のアイヌルの斉唱は圧せられ、イルーヴァタールの提示した主題が二度もかき消されるほどであった。中には、むしろ彼に同調して共に不協和音を起こす者達すらいた。
しかしイルーヴァタールが三度目に示した主題は力では決してかき消されることのない悲しみと美が基調となっており、メルコールとその同調者達の不協和音すら取り込んで一つの音楽となった。
歌が終わると、イルーヴァタールはメルコールをはじめ[[アイヌル]]にその身の丈を説いたが、これにメルコールは心中密かに怒りを懐いた。

アイヌアの音楽が[[アルダ]]の歴史としてかれらの眼前に幻視されると、メルコールはアイヌアの誰よりもその場所に心を奪われ、[[アルダ]]とそこに暮らす[[イルーヴァタールの子ら]]([[エルフ]]と[[人間]])を思うがままに支配したいと望むようになる。
彼は本心を隠し、子らのために自らの不協和音から生じた酷寒と灼熱を統御するという口実を自分でも信じ込んで、[[エア]]に下向した最初のアイヌアの一人となった([[ヴァラール]])。
アイヌルの音楽が[[アルダ]]の歴史としてかれらの眼前に幻視されると、メルコールは他の誰よりもその場所に心を奪われ、[[アルダ]]とそこに暮らす[[イルーヴァタールの子ら]]([[エルフ]]と[[人間]])を思うがままに支配したいと望むようになる。
彼は本心を隠し、自らの不協和音から生じた酷寒と灼熱を統御するという口実を自分でも信じ込んで、[[エア]]に下向した最初のアイヌルの一人となった。

*** ヴァラールの反逆者 [#bbe99756]

>かれの心中に燃える悪意と鬱屈した気分のため、その形は暗く、恐ろしかった。そしてかれは、ほかのヴァラールの誰よりも強大な力と威厳を見せてアルダに降り立ったが、さながら、頭を雲の上に出し、氷を身にまとい、煙と火を頭上に戴き、海を渡る山のようであった。メルコールの目の光は、熱をもって萎らせ、死の如き冷たさで刺し貫く炎のようであった。((『[[シルマリルの物語]]』「[[アイヌリンダレ]]」 最初に形をまとった時のメルコールの様子))
>かれの心中に燃える悪意と鬱屈した気分のため、その形は暗く、恐ろしかった。そしてかれは、ほかのヴァラールの誰よりも強大な力と威厳を見せてアルダに降り立ったが、さながら、頭を雲の上に出し、氷を身にまとい、煙と火を頭上に戴き、海を渡る山のようであった。メルコールの目の光は、熱をもって萎らせ、死の如き冷たさで刺し貫く炎のようであった。((『[[シルマリルの物語]]』「[[アイヌリンダレ]]」 最初に形をまとった時のメルコールの様子。))

[[エア]]に下向した[[ヴァラール]]達は、やがて生まれ来る[[イルーヴァタールの子ら]]のために世界を築くという大事業に取り掛かる。しかしメルコールは世界は自分のものだと宣言して思いのままにそれを形作ろうとし、兄弟の[[マンウェ]]を筆頭とした他のヴァラールと争った。やがてヴァラールが[[アルダ]]の形を造り上げてそれに準じた姿を纏うと、メルコールもそれに応じて強大な姿を纏うようになる。

マンウェは自らの下に[[アイヌア]]を招集し、成されることすべてを自分の思う方向にねじ曲げようとするか、あるいは全く損ねてしまおうとするメルコールの妨害に対抗した。メルコールは熱と冷気によって[[ウルモ]]の領域を侵犯しようとするが、ウルモはマンウェと力を合わせてそれを退ける。また、[[アウレ]]の仕事を妬んだメルコールはこれに絶えず損害を与えようとし、アウレはメルコールが加える傷を修復することに次第に消耗するようになった。
マンウェは自らの下に[[アイヌル]]を招集し、成されることすべてを自分の思う方向にねじ曲げようとするか、あるいは全く損ねてしまおうとするメルコールの妨害に対抗した。メルコールは熱と冷気によって[[ウルモ]]の領域を侵犯しようとするが、ウルモはマンウェと力を合わせてそれを退ける。また、[[アウレ]]の仕事を妬んだメルコールはこれに絶えず損害を与えようとし、アウレはメルコールが加える傷を修復することに次第に消耗するようになった。

だが[[トゥルカス]]の到来によってメルコールは完全に打ち負かされ、外なる暗闇に逃亡した。
これによってようやくアルダの構造と秩序は形を成したが、メルコールの絶えざる妨害のためにヴァラールの当初の構想が完全に実現されることはなかった。
だが[[トゥルカス]]の到来によってメルコールはついに打ち負かされ、外なる暗闇に逃亡した。
これによってようやくアルダは形を成したが、メルコールの絶えざる妨害のためにヴァラールの当初の構想が完全に実現されることはなかった。

*** 暗闇の支配者 [#u61ab75b]

>かれは最初、光を強く欲したが、それを独占できないとなると、火と憤怒に身を焼き、熾烈に燃えさかって大暗黒の中に下っていった。((『[[シルマリルの物語]]』「[[ヴァラクウェンタ]]」))

外なる暗闇に逃れたメルコールだが、彼は[[ヴァラール]]に仕える[[マイアール]]の中に多くの間者を持っていた。そのためメルコールは同胞が成し遂げたことを全て把握し、いよいよ憎悪を強くする。
ヴァラールが[[アルダ]]を照らす[[二つの灯火]][[イルルイン]]と[[オルマル]]を完成させ、[[アルマレン]]に宮居を築いてそこに住まうようになると、メルコールは[[夜の壁]]を越えて北方に[[鉄山脈]]を築き、それを防壁として[[ウトゥムノ]]の地下城砦を築き上げる。([[灯火の時代]])
ヴァラールが[[アルダ]]を照らす[[二つの灯火]][[イッルイン]]と[[オルマル]]を完成させ、[[アルマレン]]に宮居を築いてそこに住まうようになると、メルコールは[[夜の壁]]を越えてアルダに戻り、北方に[[鉄山脈]]の防壁と[[ウトゥムノ]]の地下城砦を築き上げた。([[灯火の時代]])

メルコールはまず北方からアルダを浸食し、[[ヤヴァンナ]]が目覚めさせた動植物([[ケルヴァール]]と[[オルヴァール]])を汚染してアルダの春を台無しにする。そしてヴァラールの機先を制し、[[二つの灯火]]を強襲してこれを打ち倒した。灯火が倒壊した衝撃のためにアルダは大損害を被り、その混乱にまぎれてメルコールは[[マンウェ]]の怒りと[[トゥルカス]]の追跡を免れてウトゥムノに逃げ帰る。
メルコールの存在はアルダに影を落とし、その悪意は瘴気のように[[ヤヴァンナ]]の被造物たる動植物([[ケルヴァール]]と[[オルヴァール]])を汚染して、[[アルダの春>灯火の時代]]を台無しにする。そのためヴァラールはメルコールの帰還に気づいたが、メルコールはヴァラールの機先を制して[[二つの灯火]]を強襲してこれを打ち倒した。灯火が倒壊した衝撃のためにアルダは大損害を被り、その混乱にまぎれてメルコールは[[マンウェ]]の怒りと[[トゥルカス]]の追跡を免れてウトゥムノに逃げ帰る。

ヴァラールはアルダがこれ以上破壊されることを恐れ、[[大海]]を隔てた[[アマン]]へ撤退。以後[[中つ国]]は非常に長い期間、ウトゥムノに君臨するメルコールの支配下に置かれることとなる。
ヴァラールはアルダがこれ以上破壊されることを恐れ、[[大海]]を隔てた西方の[[アマン]]へ撤退。以後[[中つ国]]は非常に長い期間、ウトゥムノに君臨するメルコールの支配下に置かれることになった。

*** ウトゥムノの冥王 [#n8415dee]

>暗闇にはメルコールが住まい、さまざまな力と恐怖の形をとり、依然としてほしいままに出歩いていた。かれは、山々の頂から山々の下なる深い溶鉱炉に至るまで、冷気と火を支配した。何であれ、残酷なもの、暴力的なもの、死に至るものは、当時、すべてかれの管理のもとにあったのである。((『[[シルマリルの物語]]』「世の初まりのこと」))

[[ヴァラール]]はアマンを照らす新たな光として[[二つの木]]を生み出したが、中つ国は星々の薄明の下にとどめおかれた。([[二つの木の時代(星々の時代)>二つの木の時代]])
当時の中つ国北方は、地下にメルコールの火と召使達で満たされたウトゥムノが穿たれていたため、無残に荒れ果てていたといい、その力は絶えず南へと伸長していた。メルコールは周囲に[[バルログ]]達を集め、[[鉄山脈]]の西の外れには[[ヴァラール]]の攻撃に対する備えとして[[アングバンド]]を築いて[[サウロン]]をその守りにあたらせる。そして変節させた悪霊や怪物達を放ち、アルダを侵食していった。
[[ヴァラール]]は[[アマン]]を照らす新たな光として[[二つの木]]を生み出したが、[[中つ国]]は星々の薄明の下にとどめおかれた。([[二つの木の時代(星々の時代)>二つの木の時代]])
当時の中つ国北方は、地下にメルコールの火と召使達で満たされた[[ウトゥムノ]]が穿たれていたため、無残に荒れ果てていたといい、その力は絶えず南へと伸長していた。メルコールは周囲に[[バルログ]]達を集め、[[鉄山脈]]の西の外れには[[ヴァラール]]の攻撃に対する備えとして[[アングバンド]]を築いて[[サウロン]]をその守りにあたらせる。そして変節させた悪霊や怪物達を放ち、アルダを侵食していった。

[[ヴァラ]]の[[オロメ]]は、こういったメルコールの怪物を狩り立てる狩人であった。メルコールはしばしば中つ国に馬を進めてくるオロメを非常に恐れ、その進行を妨げるために[[霧ふり山脈]]を隆起させた。
他のヴァラールも中つ国のことを見捨てたわけではなく、[[ヴァルダ]]はメルコールに対する挑戦の印として[[メネルマカール]]、[[ヴァラキアカ]]といった新たな天空の星々を築いた。そしてヴァルダが仕事を終えた時、中つ国東方の[[クイヴィエーネン]]湖のほとりに[[エルフ]]が誕生する。
[[ヴァラ]]の[[オロメ]]は、こういったメルコールの怪物を狩り立てる狩人であった。メルコールはしばしば中つ国に馬を進めてくるオロメを恐れ、その進行を妨げるために[[霧ふり山脈]]を隆起させた。
他のヴァラールも中つ国のことを見捨てたわけではなく、[[ヤヴァンナ]]はメルコールの害から生類を守るためにかれらを眠らせ、[[ヴァルダ>エルベレス]]はメルコールに対する挑戦の印として空に[[メネルマカル]]、[[ヴァラキルカ]]といった星々を築いた。そしてヴァルダが仕事を終えた時、中つ国東方の[[クイヴィエーネン]]湖のほとりに[[エルフ]]が誕生する。

警戒怠りないメルコールは、目覚めたエルフの存在を真っ先に察知したと言われている。そこでメルコールは暗闇と狩人の姿をした悪霊を送り込んでエルフを狩り立て、かれらの心に影を投じるとともに、オロメを恐れるように仕向けた。遠くまでさまよい出たエルフはこの狩人に捕らえられ、仲間たちの許に戻ってくることは二度となかったという。
警戒怠りないメルコールは、目覚めたエルフの存在を真っ先に察知したと言われている。そこでメルコールは暗闇と狩人の姿をした悪霊を送り込んでエルフを狩り立て、かれらの心に影を投じるとともに、オロメを恐れるように仕向けた。遠くまでさまよい出たエルフはしばしば二度と戻ってくることはなく、狩人に捕らわれたのだと信じられた。
後の[[エルダール]]の賢者達が推測したところによると、捕らわれたエルフ達はウトゥムノの地下牢に連れて行かれ、そこでメルコールの緩慢かつ残忍な術によって心身共に捻じ曲げられた。かくしておぞましい[[オーク]]族が作り出されたのだと考えられている。

やがてオロメがエルフを発見し、かれらがメルコールに脅かされていることが判明すると、[[ヴァラール]]は[[イルーヴァタール]]の声に従ってエルフを救い出すべくメルコールに戦いを仕掛けた。([[力の戦い]])
オロメがエルフを発見したことにより、この行状は[[ヴァラール]]の知るところとなり、ヴァラールはエルフを救い出すために[[力の戦い]]を起こした。
メルコールは中つ国北西部でヴァラールを迎え撃ったが打ち破られ、アングバンドは陥落、ウトゥムノは長く熾烈な包囲戦の末ついに落城して徹底的に破壊された。その地下抗は残らずむき出しにされ、最深部に逃れたメルコールは再び[[トゥルカス]]に打ち負かされると、アウレの鍛えた[[アンガイノール]]の鎖で縛られて[[アマン]]へと連行された。
敗れたメルコールはこれがエルフのために起こされた戦いであることを決して忘れなかった。

*** マンドスの囚人 [#r51e0385]

>「わたしもまたヴァラではないか。げにわれこそ、ヴァリマールの玉座に得意然と坐する[[かの者たち>ヴァラール]]に勝る者であり、アルダの民の中で最も技にすぐれ、最も勇敢なるノルドール族の&ruby(かわ){渝};らぬ友であるのだぞ」((『[[シルマリルの物語]]』「シルマリルとノルドール不穏のこと」 [[フェアノール]]を懐柔しようとするメルコールの言葉))
>「わたしもまたヴァラではないか。げにわれこそ、ヴァリマールの玉座に得意然と坐する[[かの者たち>ヴァラール]]に勝る者であり、アルダの民の中で最も技にすぐれ、最も勇敢なるノルドール族の&ruby(かわ){渝};らぬ友であるのだぞ」((『[[シルマリルの物語]]』「シルマリルとノルドール不穏のこと」 [[フェアノール]]を懐柔しようとするメルコールの言葉。))

[[審判の輪]]に引き出されたメルコールは和睦を乞うたが聞き入れられず、[[マンドス]]の砦に三紀の間投獄された。かくして[[アマン]]と[[中つ国]]はその間平和な時代を謳歌することができた。
三紀の刑期が過ぎた後、再び引き出されたメルコールは許しを請うて[[アルダ]]の傷を癒すことを誓い、[[ニエンナ]]の口添えもあって釈放される。[[マンウェ]]はこれでメルコールの悪は矯正されたと考えたが、彼は内心では妬みと憎しみをますます募らせていた。
[[審判の輪]]に引き出されたメルコールは和睦を乞うたが聞き入れられず、[[マンドス]]の砦に三期((300[[ヴァラール年]]。))の間投獄された。かくして[[アマン]]と[[中つ国]]はその間平和な時代を謳歌することができた。
三期の刑期が過ぎた後、再び引き出されたメルコールは許しを請うて[[アルダ]]の傷を癒すことを誓い、[[ニエンナ]]の口添えもあって釈放される。[[マンウェ]]はこれでメルコールの悪は矯正されたと考えたが、彼は内心では妬みと憎しみをますます募らせていた。

メルコールは自身の敗北の原因になった[[エルダール]]を憎み、その間に甘言と虚言を混ぜて不和の種を蒔き、[[ヴァラール]]から引き離そうと腐心した。中でも[[ノルドール]]がその標的となり、またノルドールの王子[[フェアノール]]が作り出した[[シルマリル]]を激しく渇望するようになる。
このためフェアノールと[[フィンゴルフィン]]は互いにいがみ合い、メルコールの知識によってもたらされた武器を密かに鍛えて蓄えるようになる。さらにノルドール族は「[[ヴァラール]]は[[中つ国]]を[[人間]]に与えるつもりで、エルダールを[[アマン]]に連れて来て閉じ込めているのだ」と不平を漏らすようになった。
メルコールは自身の敗北の原因になった[[エルフ]]を憎み、アマンに住む[[エルダール]]の間に虚言を蒔いて[[ヴァラール]]から引き離そうと腐心した。中でも[[ノルドール]]がその標的となった。さらにノルドールの王子[[フェアノール]]が作り出した[[シルマリル]]をメルコールは激しく渇望するようになる。
不和を煽り立てられたフェアノールとその異母弟[[フィンゴルフィン]]は互いにいがみ合い、密かに武器を鍛えて蓄えるようになる。さらにノルドールは「ヴァラールは[[中つ国]]を[[人間]]に与えるつもりで、エルダールを[[アマン]]に連れて来て閉じ込めているのだ」と不平を漏らすようになった。
こうして[[ヴァリノール]]の至福は汚され、[[二つの木]]の光は陰って影が長く伸びるようになる。

フェアノールが公衆の面前でフィンゴルフィンに剣を突きつけるに及んでついにヴァラールは調査に乗り出し、メルコールの悪意が明らかとなる。メルコールはヴァリノールから姿をくらまし、二つの木の光は再び明るく輝いた。しかしアマンの民の心中から不安が去ることはなかった。
フェアノールが公衆の面前でフィンゴルフィンに剣を突きつけるに及んでついにヴァラールは調査に乗り出し、メルコールの悪意が明らかとなった。メルコールはヴァリノールから姿をくらまし、二つの木の光は再び明るく輝いた。しかしアマンの民の心中から不安が去ることはなかった。

*** 光の簒奪者 [#c3681919]

>さて、メルコールは、[[アヴァサール]]に来て[[かの女>ウンゴリアント]]を探し出すと、かつてかれが[[ウトゥムノ]]の圧制者として見せていた姿を再びとった。丈高く、見るだに恐ろしい暗黒の王の姿である。その後かれは、ずっとこの姿をとったまま変わらなかった。((『[[シルマリルの物語]]』「ヴァリノールに暗闇の訪れたこと」))
>さて、メルコールは、アヴァサールに来て[[かの女>ウンゴリアント]]を探し出すと、かつてかれがウトゥムノの圧制者として見せていた姿を再びとった。丈高く、見るだに恐ろしい[[暗黒の王>冥王]]の姿である。その後かれは、ずっとこの姿をとったまま変わらなかった。((『[[シルマリルの物語]]』「ヴァリノールに暗闇の訪れたこと」))

メルコールは[[アマン]]から逃走したと見せかけて、その近隣の[[アヴァサール]]にひそんで[[ウンゴリアント]]を呼び出し、「協力するならお前の飢えを癒やすどんなものでも与える」と空約束をして協力を取り付けた。[[ヴァリノール]]の祝祭日に舞い戻ったメルコールは、[[テルペリオン]]と[[ラウレリン]]の[[二つの木]]に黒い槍を突き立てて瀕死の傷を負わせ、その傷口からウンゴリアントが樹液をすすり毒を流し込むことで、二つの木を枯死させるに至る。こうしてアマンにはそれまでになかった恐るべき暗闇が招来された。
さらにメルコールとウンゴリアントは[[フォルメノス]]を襲撃して[[フィンウェ]]を殺害。その地下宝物庫にあった[[シルマリル]]を奪い取った。これを知った[[フェアノール]]が彼を''モルゴス''と呼び、以後はその名で呼ばれるようになる。
メルコールは[[アマン]]から逃走したと見せかけて、その近隣の[[アヴァサール]]に潜んで[[ウンゴリアント]]を呼び出し、「協力するならお前の飢えを癒やすどんなものでも与える」と空約束をして協力を取り付けた。[[ヴァリノール]]の祝祭日に舞い戻ったメルコールは、[[テルペリオン]]と[[ラウレリン]]の[[二つの木]]に黒い槍を突き立てて瀕死の傷を負わせ、その傷口からウンゴリアントが樹液をすすり毒を流し込むことで、二つの木を枯死させるに至る。こうしてアマンにはそれまでになかった恐るべき暗闇が招来された。
さらにメルコールとウンゴリアントは[[フォルメノス]]を襲撃して[[フィンウェ]]を殺害、[[シルマリル]]を奪い取った。これを知った[[フェアノール]]が彼を''モルゴス''と呼び、以後はその名で呼ばれるようになる。

モルゴスとウンゴリアントは暗闇に紛れて[[ヴァラール]]の追跡をかわし、[[ヘルカラクセ]]を渡って[[中つ国]]まで逃亡する。だがそこでウンゴリアントが報酬としてシルマリルを要求すると、シルマリルに魅了されていたモルゴスはこれを拒否、二人は仲違いを起こした。ウンゴリアントは網にかけてモルゴスを殺そうとしたが、モルゴスは恐ろしい叫び声を上げて[[アングバンド]]から[[バルログ]]達を呼び出し、ウンゴリアントを追い払った。(このため一帯は「大谺」を意味する[[ランモス]]と呼ばれるようになる)
モルゴスはアングバンドを再建・強化して[[サンゴロドリム]]の塔を築き上げると、そこに拠って再び[[中つ国]]の制圧を目論んだ。
モルゴスはウンゴリアントが紡ぎ出す暗闇に紛れて[[ヴァラール]]の追跡をかわし、[[ヘルカラクセ]]を渡って[[中つ国]]まで逃亡する。だがそこでウンゴリアントが報酬としてシルマリルを要求すると、シルマリルに魅了されていたモルゴスはこれを拒否、二人は仲違いを起こした。ウンゴリアントは網にかけてモルゴスを殺そうとしたが、モルゴスは恐ろしい叫び声を上げて[[アングバンド]]から[[バルログ]]を呼び出し、ウンゴリアントを追い払った。(このため一帯は「大谺」を意味する[[ランモス]]と呼ばれるようになる)

*** アングバンドの圧制者 [#zf568f66]
モルゴスは[[アングバンド]]に戻るとそこを再建・強化して[[サンゴロドリム]]の塔を積み上げ、昔日の召使たちを呼び集めると、そこに拠って再び[[中つ国]]の制圧を目論んだ。

>かれはその高慢の鼻をへし折られる[[ウトゥムノ]]時代にも増して、今や完全に憎悪の虜となり、召使いを駆使し、邪悪なる欲望をかれらに吹き込むことに精魂を傾けていたからである。とはいえ、ヴァラールの一員としてのかれの威光は久しく痕を留め、畏怖というより恐怖すべき対象になり果てたのであるが、かれの面前では、最も力ある者以外には、黒々とした恐怖の穴に落ち込まない者はなかったのである。((『[[シルマリルの物語]]』「ノルドール族の逃亡のこと」))
*** アングバンドの制圧者 [#nfdbba93]

アングバンドに君臨したモルゴスは、巨大な[[鉄の冠]]を鍛えるとそれに奪った[[シルマリル]]をはめ込み、「世界の王」を僭称した。
>アングバンドでは、モルゴスが己のために巨大な[[鉄の冠]]を鍛え、自ら世界の王を称した。その印に、かれは王冠にシルマリルを填め込んだ。聖められたこれらの宝玉に触れたことで、かれの手は黒く焦げ、その後も黒い焦げ痕は消えず、火傷の苦痛からも、苦痛からくる怒りからも、ついに遁れることはできなかった。この鉄の冠は耐えがたいほど重かったが、かれは、絶対に頭上から取ろうとはしなかった。((同上「第九章 ノルドール族の逃亡のこと」))

[[第一紀]]の[[宝玉戦争]]は、シルマリルを戴いてアングバンドに立て篭もるモルゴスに、復讐とシルマリル奪回のため中つ国に帰還してきた[[ノルドール]]、モルゴスの圧制にあくまで抵抗しようとする[[シンダール]]、そしてモルゴスの暗闇を拒んだ[[人間]]である[[エダイン]]達が挑んだ望みなき戦いである。
モルゴスの力は大きく、アングバンドの地下坑からはおびただしい数の[[オーク]]や[[トロル]]、恐るべき力を持つ[[龍]]や[[バルログ]]、寒気や火炎流などが繰り返し解き放たれ、[[ベレリアンド]]は次第に疲弊していった。
[[第一紀]]の[[宝玉戦争]]は、[[シルマリル]]を戴いて[[アングバンド]]に立て篭もるモルゴスに、復讐とシルマリル奪回のため中つ国に帰還してきた[[ノルドール]]、モルゴスの圧制にあくまで抵抗しようとする[[シンダール]]、そしてモルゴスの暗闇を拒んだ[[人間]]である[[エダイン]]達が挑んだ望みなき戦いである。

一方でモルゴス自身はそうした勢力を構築することに力を費やしたため、次第にアイヌアとしての力を失い、ますます大地に縛り付けられて地下の玉座から動くのを厭うようになる。
[[ヴァラール]]が空に放った[[月]]と[[太陽]]もまた、モルゴスにとっては大きな脅威であった。モルゴスは一度影の精を差し向けて月を襲撃したことがあったが撃退され、太陽の光に対してはもはや為す術を知らなかった。そのためモルゴスは暗闇と噴煙で自分の居所と召使達を隠すことを余儀なくされる。[[オーク]]や[[トロル]]が太陽の光を忌むのはこのためである。
モルゴスはまず[[オーク]]の大軍を築き上げると黒煙と共に送り出し、[[ベレリアンド]]を手中に収めようとした。だがこの大軍は[[ドリアス]]の[[魔法帯]]に拒まれ、あるいは[[シンダール]]と[[ドワーフ]]に撃退され([[ベレリアンド最初の合戦]])、ついには中つ国に帰還した[[ノルドール]]によって完全に壊滅させられた([[第二の合戦>ダゴール=ヌイン=ギリアス]])。
ノルドールがべレリアンドに領国を築く構えを見せると、モルゴスは彼らの力を試すため、突如としてオークの大軍を送り出したが、これも徹底的に撃退され殲滅されるに及び、オークだけでは[[エルダール]]に抗し得ないことを思い知ることになった([[第三の合戦>ダゴール・アグラレブ]])。
そこでモルゴスは間者を放ってエルダールの間に不和を広げると共に、アングバンドの地下で長い時間をかけて[[龍]]の祖[[グラウルング]]を育て上げた。
モルゴスはアングバンドより突如として火の川を解き放って[[アルド=ガレン>アンファウグリス]]と[[ドルソニオン]]を焼き払うと、グラウルングと[[バルログ]]を先陣にしたオークの大軍勢を解き放ち、[[アングバンドの包囲]]を打ち破る。この時のモルゴスの勝利は大きく、以後べレリアンドでは戦いが絶えることがなかった([[第四の合戦>ダゴール・ブラゴッラハ]])。
モルゴスを敵とする者達の勢いは[[マエズロスの連合]]が提唱されるまで盛り返すことはなく、それすらモルゴスは虚言と不和のたくらみを用いて打ち砕き、べレリアンドの全土を事実上制圧するに至った([[第五の合戦>ニルナエス・アルノエディアド]])。

太陽の光と、[[ノルドール]]族の武勇のため、モルゴスの伸長は阻まれその力は一時北方に封じ込められたことがあった。([[アングバンドの包囲]])
だがそれでも、エルダールはアングバンドそのものを攻め落とすことはできないでいた。一方でモルゴスは地の底深くで腹黒い企みを懐き、眠ることなく次なる禍事の準備を続けていた。
モルゴスの権勢は大きく、[[アングバンド]]は難攻不落で、その悪意のたくらみによって[[エルダール]]と[[エダイン]]は一つ、また一つと滅ぼされていった。

*** フィンゴルフィンとの一騎打ち [#h5742484]
*** 堕ちたヴァラ [#wb2b523e]

>そこでモルゴスは現れた。地下の玉座からゆっくり登ってきた。その足音は、地の下を揺るがす雷の如く轟いた。&br; 立ち現れたモルゴスは、黒の鎧に身を固め、塔のように王の前に立ちはだかった。頭には[[鉄の王冠>鉄の冠]]を戴き、紋章のない黒一色の巨大な盾が、嵐を孕む雲のように王の上に影を落とした。 … &br;モルゴスは、地下世界の鉄槌[[グロンド>グロンド(武器)]]を高々と振り上げ、雷光の如く打ち下ろした。((『[[シルマリルの物語]]』「ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと」))
>とはいえ、ヴァラールの一員としてのかれの威光は久しく痕を留め、畏怖というより恐怖すべき対象になり果てたのであるが、かれの面前では、最も力ある者以外には、黒々とした恐怖の穴に落ち込まない者はなかったのである。((『[[シルマリルの物語]]』「ノルドール族の逃亡のこと」))

[[アングバンドの包囲]]は[[ダゴール・ブラゴルラハ]]で破られる。これを[[ベレリアンド]]と[[ノルドール]]王家の滅亡と信じた[[フィンゴルフィン]]は、憤怒に駆られて単身アングバンドの門前にまで馬を進め、大音声でモルゴスを呼ばわり一騎打ちの挑戦をした。フィンゴルフィンは公然とモルゴスを侮辱したため、モルゴスは乗り気ではなかったが挑戦に応じて姿を現した。
モルゴスは元々は強大な力を持つ[[ヴァラ>ヴァラール]]であったが、その力をアルダを侵食し他者を支配することに費やしたため、次第に持てる力を失って弱体化していった。
憎悪の虜となった彼は、自らの悪意を怪物や虚言の形で外へ送り出すことで勢力を構築した。こうしてモルゴスは恐るべき支配力を持つ暴君となったが、それとともに彼の力は分散して彼自身は小さくなり、[[アイヌル]]としての霊性を失って肉体に縛られるようになった。

フィンゴルフィンは彼の剣[[リンギル]]によってモルゴスに七つの傷を与え、今際のきわにモルゴスの左足に斬り付けて深手を与えた。さらにフィンゴルフィンの亡骸を救出しに飛来した[[ソロンドール]]はモルゴスの顔に消えることのない傷跡を残した。
モルゴスの苦悶のたびにその全軍勢は動揺し、モルゴスがこの時受けた傷の痛みは以後癒えることがなく、ずっと左足を引きずって歩くようになったという。
[[ヴァラール]]が空に放った[[月]]と[[太陽]]の光は、モルゴスにとって大きな脅威であった。
モルゴスは一度影の精を差し向けて月を運ぶ[[ティリオン>ティリオン(マイア)]]を襲撃したことがあったが撃退され、太陽を運ぶ[[アリエン]]に対してはもはや為す術を知らなかった。そのためモルゴスは暗闇と噴煙で自分の居所と召使達を光から覆い隠した。[[オーク]]や[[トロル]]が太陽の光を忌み、その下で力を失うのはそのためである。

モルゴスが自ら姿を現して武器を振るったのはただこの一度のみであった。現身の肉体に縛られるに至っていたモルゴスは傷つくことを極度に恐れるようになっていたのである。
モルゴスが[[宝玉戦争]]で自ら戦ったのもただの一度に過ぎない。[[フィンゴルフィン]]との一騎打ちにおいて、モルゴスは[[グロンド>グロンド(武器)]]を振るってフィンゴルフィンを打ち倒したが、モルゴス自身もフィンゴルフィンの振るう[[リンギル]]の剣で七つの傷を負い、その苦悶のたびにモルゴスの全軍勢は動揺した。フィンゴルフィンは今際の際にモルゴスの左足に斬り付け、また王の亡骸を救出しに飛来した[[ソロンドール]]はその顔に傷跡を残した。
この時受けたモルゴスの傷の痛みは以後癒えることがなく、ずっと左足を引きずって歩くようになったという。

*** シルマリルの一つを失う [#i688c838]
*** 人間を呪う者 [#g4eb0e1c]

>かの女は、かれの目の前に黒髪のマントを投げかけ、夢を注ぎかけた。かつてかれが独り歩いた外なる空虚のように暗い夢である。突然かれは、丘が山崩れを起こすようにくずおれたかと思うと、雷のように玉座からもんどり落ちて、地獄の床にうつ伏した。鉄の冠が音立てて転げ落ちたあとは、すべてが音もなく静まりかえった。((『[[シルマリルの物語]]』「ベレンとルーシエンのこと」))
>「汝は人間の王に非ず、またそうなること能わず。[[アルダ]]と[[メネル]]すべてが、汝の軍門に下ることがあろうともな。あくまでも汝を拒んだ者たちを、[[世界の圏外>世界の圏]]にまで追うことかなうまじと。」
「世界の圏外にまで追うことはせぬ。」とモルゴスは言った。「世界の圏外には[[虚無>虚空]]しかないからだ。だがこの世界にあってはわしから逃れることはかなわぬぞ。」((『[[終わらざりし物語]]』「ナルン・イ・ヒーン・フーリン」 モルゴスと[[フーリン>フーリン(ガルドールの息子)]]の論争。))

三つの[[シルマリル]]は依然としてモルゴスの[[鉄の王冠]]に嵌っており、[[アングバンド]]は不落であったが、その守りが破られる事態が起こる。
[[太陽]]が初めて空に昇った時、[[中つ国]]の東方[[ヒルドーリエン]]で[[人間]]族が目覚めた。このことも直ちに察知したモルゴスは、[[アングバンド]]の指揮を[[サウロン]]にまかせて自ら密かに人間たちの許に赴き、かれらを誘惑したと言われている。
それゆえ、人間はその歴史のはじめからモルゴスの投じた暗闇と虚言に付きまとわれている。モルゴスは人間に贈られた[[死すべき運命]]を暗闇と混同させ、人間が死を恐れるように仕向けた。

シルマリル奪回の誓いを立てた[[ベレン>ベレン(バラヒアの息子)]]と[[ルーシエン]]が、幾多の困難を潜り抜けてアングバンドの最奥にあるモルゴスの玉座にまで到達し、ルーシエンが眠りの魔法でモルゴスと下僕達を眠らせている間にベレンが鉄の王冠に嵌ったシルマリルの一つをこじり取ったのであった。このことは[[レイシアン]]に歌われている。
目覚めて事態に気づいたモルゴスは憤怒し、[[サンゴロドリム]]を噴火させたが、ベレンとルーシエンはついにその魔の手を逃れてシルマリルの一つが奪回された。
モルゴスの暗闇を拒み、そこから逃れようと西方を目指した人間の一派が[[エダイン]]である。人間の中で、かれらのみが公然とモルゴスを敵として戦うことを選んだが、そのかれらと言えどもモルゴスの暗闇から完全に自由ではなかった。
一方、[[東夷]]の[[ウルファング]]の一族はモルゴスの言葉に耳を傾け、[[ニルナエス・アルノエディアド]]において同胞と[[エルダール]]を裏切ってモルゴスに勝利をもたらした。

この一件は[[フェアノールの息子たち]]に、不可能と思われていたアングバンド攻略の望みを呼び起こし、[[マイズロスの連合]]が提唱される要因となった。だがモルゴスはかねてから間者を通じた不和と裏切りの準備をしていたのである。
そうした中でも、エダインの勇者[[フーリン>フーリン(ガルドールの息子)]]だけは、モルゴスを眼前にしても屈することはなかった。そのためモルゴスは彼を呪い、彼と彼の一族に非業の運命を生ぜせしめた([[ナルン・イ・ヒーン・フーリン]])。

*** 人間を呪う者 [#g4eb0e1c]
*** 光を失った者 [#rf573143]

>しかし、人間の心に暗い影がさしていることを([[同族殺害]]と[[マンドスの下した宣告>マンドスの呪い]]の影がノルドール族にのしかかっているように)、エルダールは、自分たちが初めて知り合った[[エルフの友たる人間たち>エダイン]]の中にさえ、はっきりと認めたのである。((『[[シルマリルの物語]]』「西方に人間の来住せること」))
>かの女は、かれの目の前に黒髪のマントを投げかけ、夢を注ぎかけた。かつてかれが独り歩いた[[外なる空虚>虚空]]のように暗い夢である。突然かれは、丘が山崩れを起こすようにくずおれたかと思うと、雷のように玉座からもんどり落ちて、地獄の床にうつ伏した。鉄の冠が音立てて転げ落ちたあとは、すべてが音もなく静まりかえった。((『[[シルマリルの物語]]』「ベレンとルーシエンのこと」))

[[太陽]]が初めて空に昇った時、[[中つ国]]の東方[[ヒルドーリエン]]で[[人間]]族が目覚めた。このこともまた、直ちにモルゴスの知るところとなる。これを大事件と思ったモルゴスは、[[アングバンド]]の指揮を[[サウロン]]にまかせて自ら密かに人間たちの許に赴き、かれらを誘惑したと言われている。
それゆえ、人間族はその歴史のはじめからモルゴスの投じた暗闇に付きまとわれている。[[東夷]]をはじめとした多くの人間がモルゴスとその召使の側に与しがちなのもそのためであった。
[[ニアナイス・アルノイディアド]]において、東夷の[[ウルファング]]の一族は[[エルダール]]を裏切り、モルゴスに勝利をもたらした。この戦いによって[[ベレリアンド]]のほぼ全土がモルゴスの手に落ちた。
三つの[[シルマリル]]は依然としてモルゴスの[[鉄の冠]]に嵌っており、[[アングバンド]]は不落であったが、その守りが一度だけ破られる事態が起こる。

モルゴスの暗闇を拒み、そこから逃れようと西方を目指した人間の一派が[[エダイン]]である。人間族の中で、かれらのみが公然とモルゴスを敵として戦うことを選んだが、そのかれらと言えどもモルゴスの暗闇から完全に自由になったわけではなかった。
モルゴスは、エダインの勇者[[フーリン>フーリン(ガルドールの息子)]]が、自らの責苦と呪言にも不屈であるのを見て取ると、彼と彼の一族を呪い、非業の運命を生ぜせしめた。このことは[[ナルン・イ・ヒーン・フーリン]]に歌われている。
さらにこれらのことからモルゴスは、ニアナイスの後も存続していたエルダールの[[隠れ王国]]である[[ナルゴスロンド]]、[[ドリアス]]、[[ゴンドリン]]を滅亡させる禍をも生じさせた。
シルマリル奪回の誓いを立てた[[ベレン>ベレン(バラヒルの息子)]]と[[ルーシエン]]が、幾多の困難を潜り抜けてアングバンドの最奥にあるモルゴスの玉座にまで到達し、ルーシエンが眠りの魔法でモルゴスと召使達を眠らせている間にベレンが鉄の王冠に嵌ったシルマリルの一つをこじり取ったのであった。このことは[[レイシアン]]に歌われている。
目覚めて事態に気づいたモルゴスは激怒し、[[サンゴロドリム]]を噴火させたが、ベレンとルーシエンはその魔の手を逃れ、ついにはモルゴスの手の届かないところに去っていった。

*** モルゴスの没落 [#c8121a1a]
かくしてシルマリルの一つが[[自由の民]]の手に戻った。
このシルマリルを受け継ぎ、ついにはその輝きを永遠に空に掲げることになったのが、[[明星>エアレンディルの星]]として知られる[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]である。

かくしてベレリアンドの全王国は滅び、[[エルダール]]と[[エダイン]]はわずかに[[シリオンの河口]]と[[バラール島>バラール]]に持ちこたえるのみとなった。
モルゴスの勝利は目前となったが、そのシリオンの河口より船出した[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]が、[[ベレン>ベレン(バラヒアの息子)]]と[[ルーシエン]]に奪い返された一個の[[シルマリル]]によって[[ヴァリノール隠し>ヌアタレ・ヴァリノーレヴァ]]を突破して[[アマン]]に到達し、その嘆願を聞き入れた[[ヴァラール]]によって[[エオンウェ]]率いるヴァリノールの軍勢が中つ国へと進軍してくる。
この[[怒りの戦い]]において、モルゴスの築き上げた膨大な勢力はまたたく間に滅ぼされ、最後の切り札である[[アンカラゴン]]を祖とした翼ある龍らも、エアレンディルの[[ヴィンギロト]]と[[大鷲]]によって打ち破られ、[[サンゴロドリム]]はアンカラゴンの下敷きとなって毀れた。[[アングバンド]]は徹底的に破壊され、その奥底に逃れたモルゴスは和睦を求めたが赦されず、再び捕らえられた。
*** 没落 [#c8121a1a]

>かれの増上慢は今や止まるところを知らず、かれに公然たる戦いを仕掛けてくる者はあるまいと高を括っていたのである。 … 憐れみの心を持たぬ者には、憐れみの行為は常に未知なる、推測不可能なことなのである。((『[[シルマリルの物語]]』「エアレンディルの航海と怒りの戦いのこと」))

モルゴスは堕ちたとはいえ[[ヴァラ]]であり、[[アルダ]]の中にあっては何人も彼を完全に打ち負かすことはできない。

やがてベレリアンドの全王国は滅び、[[エルダール]]と[[エダイン]]はわずかに[[シリオンの河口]]と[[バラール島>バラール]]に持ちこたえるのみとなった。モルゴスはもはや勝利を疑っていなかったが、そのシリオンの河口より船出した[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]が、[[ベレン>ベレン(バラヒルの息子)]]と[[ルーシエン]]に奪い返された一個の[[シルマリル]]を掲げて[[ヴァリノール隠し>ヌルタレ・ヴァリノーレヴァ]]を突破して[[アマン]]に到達し、[[ヴァラール]]に助力を懇願する。
ヴァラールは嘆願を聞き入れ、[[エオンウェ]]を総大将とするヴァリノールの軍勢が[[中つ国]]に進軍してきた。この[[怒りの戦い]]において、モルゴスの築き上げた膨大な戦力はまたたく間に滅ぼされ、最後の切り札である[[アンカラゴン]]ら翼ある龍たちも、[[ヴィンギロト]]に乗ったエアレンディルと[[ソロンドール]]率いる大鳥たちによって倒され、[[サンゴロドリム]]はアンカラゴンの下敷きとなって毀れた。[[アングバンド]]は徹底的に破壊され、その奥底に逃れたモルゴスは再び捕らえられた。

モルゴスは両足を切断されると再び[[アンガイノール]]の鎖で縛り上げられ、[[鉄の王冠]]から作られた首輪をはめられた。彼は[[ヴァラール]]によってこの世の外なる[[虚空]]に投げ出されて、[[ヴィンギロト]]で天空を航行する[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]([[明星>エアレンディルの星]])がその見張りに立った。
こうしてモルゴスは打ち破られ、その没落がもたらされた。

*** その後 [#m19c5c93]
*** アルダを覆う影 [#m19c5c93]

モルゴスは両足を切断されれると再び[[アンガイノール]]の鎖で縛り上げられ、この世の外なる[[虚空]]に投げ出されて、現存する目に見える姿では二度と戻ってくることはないという。天空を航行する[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]([[明星>エアレンディルの星]])がその見張りに立った。
>「それでも後世に生じるかもしれぬ災いはほかにいくらもあろう。なぜならサウロン自身、一個の召使、あるいは使者にすぎぬからじゃ。」((『[[指輪物語]] [[王の帰還>指輪物語/王の帰還]]』「最終戦略会議」 [[ガンダルフ]]の言葉))

だがモルゴスの蒔いた邪悪な種子は中つ国に残り続けていつまでも果実をつけ、彼の意志は依然として召使い達を支配している。
[[バルログ]]や[[オーク]]、[[龍]]といった堕落した怪物たちは一部が生き残り、後世に禍根を残した。[[ヌーメノール人]]の堕落も、[[大海]]を渡ってきたモルゴスの影に端を発すると言われている。最強の召使[[サウロン]]はモルゴスの後を継いで[[冥王]]となり、再び[[中つ国]]に暗闇を広げた。
[[虚空]]に追放されたモルゴスは、[[ヴァラール]]が玉座にある限り、現存する目に見える姿では二度と[[アルダ]]に戻ってくることはない。しかしモルゴスの投じた暗闇はいまだに[[アルダ]]を覆っており、モルゴスの蒔いた悪の種子は中つ国に残り続けていつまでも果実をつけ、彼の意志は依然として召使達を支配している。
[[バルログ]]や[[オーク]]、[[龍]]といった堕落した怪物たちは一部が生き残り、後世に禍根を残した。[[ヌーメノール人]]の堕落も、[[大海]]を渡ってきたモルゴスの影に端を発すると言われている。[[サウロン]]は第二の[[冥王]]となり、モルゴスの所業を引き継いだ。

>「それでも後世に生じるかもしれぬ災いはほかにいくらもあろう。なぜならサウロン自身、一個の召使、あるいは使者にすぎぬからじゃ。」((『[[指輪物語]] [[王の帰還]]』「最終戦略会議」 [[ガンダルフ]]の言葉))
世界の終末における最終戦争[[ダゴール・ダゴラス]]においてモルゴスは[[アルダ]]に帰還すると言われている。

世の終わり[[ダゴール・ダゴラス]]において彼は[[アルダ]]に帰還すると言われている。

** 画像 [#db87ddfc]

&ref(johnhowe KillingoftheTrees.jpg,,30%,ジョン・ハウ作画による二つの木を枯らすモルゴスとウンゴリアント); &ref(johnhowe FinglofinsChallenge.jpg,,30%,ジョン・ハウ作画によるフィンゴルフィンと戦うモルゴス);

#include(Include/アイヌル,notitle)

** コメント [#Comment]

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