#author("2018-12-04T13:18:33+09:00","","")
* マンウェ [#me2ea2cf]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Manwë|
|~その他の呼び名|スーリモ(Súlimo)&br; 長上王(Elder King) &br; アルダの風の王(Lord of the Breath of Arda) &br; アルダの支配者(Ruler of Arda) &br; 西方の王(Lord of the West) &br; ヴァラールの王(Lord of the Valar)|
|~種族|[[アイヌア]]([[ヴァラール]])|
|~性別|男|
|~生没年||
|~兄弟|[[メルコール]](兄弟)|
|~配偶者|[[ヴァルダ(エルベレス)>エルベレス]]|

** 解説 [#Explanation]

[[アラタール>ヴァラール#Aratar]]の一人に数えられるヴァラで、[[ヴァラール]]の最高位者。大気と風の支配者であり、[[クウェンヤ]]で「風を吹かすもの(the Breather)」を意味する''スーリモ''とも呼ばれる。
マンウェは[[中つ国]]を含む全世界[[アルダ]]の''長上王''である。創造神[[イルーヴァタール]]の考えを最もよく理解するものであり、イルーヴァタールの代理人として、平和のためにアルダを統治する。
詩と歌を愛し、青い衣を纏って目に青い炎を燃やし、サファイアの王笏を持つ(このサファイアの王笏は[[ノルドール]]がつくった)。その声はさながら烈風やトランペットの如く喨々と響き渡る。

[[メルコール]]とは兄弟。メルコールが最も力ある[[アイヌ]]であるなら、マンウェは最も高貴なアイヌであった。
后である[[ヴァルダ>エルベレス]]と共に、[[タニクウェティル]]の最高峰[[オイオロッセ]]にある宮居[[イルマリン]]に住まっている。滅多に彼女と離れることはなく、ヴァルダと共にいれば他の誰よりも遠くを見ることが出来ると言われている。
自身の伝令使として[[マイア]]の[[エオンウェ]]をもち、使者として[[鷲>大鷲]]を使う。

>「そうあるであろう! 歌は高価な犠牲によって贖われるであろう。しかし、よくぞ贖ったと見なされよう。それだけの対価を支払うほかないからである。かくて、まさに[[エル>イルーヴァタール]]がわれらに言われた如く、以前には考えられたこともない美が[[エア]]にもたらされ、悪しきものもいつかはよくなるであろう」((『[[シルマリルの物語]]』「太陽と月とヴァリノール隠しのこと」 [[ヴァラール]]の制止を振り切り[[アマン]]を出ていこうとする[[フェアノール]]の啖呵を聞いたマンウェの言葉))

*** 最も高貴な者 [#e2a86cbf]

[[イルーヴァタール]]は、マンウェを[[メルコール]]の兄弟として創造した。[[メルコール]]が最も力あるものであったのに対し、マンウェは[[イルーヴァタール]]の意図を最も理解するものであった。
[[創世の音楽>アイヌリンダレ]]においてメルコールが不協和音を生じさせて〈第一の主題〉をかき消してしまうと、マンウェは〈第二の主題〉の主要な奏者としてメルコールに対抗する。〈第二の主題〉には次第に高まる力強さと美があったが、結局メルコールの力に勝利することはできなかった。

そのためイルーヴァタールは決してかき消されることのない悲しみと美しさを有する〈第三の主題〉を提示。アイヌア達はそこにイルーヴァタール自身から生じた[[エルフ]]と[[人間]]([[イルーヴァタールの子ら]])の存在が含まれていることを知って驚嘆する。

*** 風の王マンウェ [#r51e0385]

マンウェは[[創世の音楽>アイヌリンダレ]]の中で、大気と風にもっとも配意した。その心は[[アルダ]]を被う大気の層から芝生にそよぐ微風に到るまでくまなく及んでいる。
また、彼は[[ヴァリノール]]ができるまでは[[ウルモ]]と最も親しく、マンウェの治める大気は、ウルモの治める水とともに、雲や雨、雪を形づくって[[メルコール]]の猛威に対抗した。こうしてメルコールの暴力からも美と恵みが生じた。

*** アルダの王マンウェ [#r51e0385]

[[創世の音楽>アイヌリンダレ]]が終わり、[[イルーヴァタール]]が[[虚空]]の中に物質世界[[エア]]を置くと、多くの[[アイヌア]]は[[世界>アルダ]]とそこに暮らすはずの[[イルーヴァタールの子ら]]([[エルフ]]と[[人間]])への愛にひかれ、エアへ下向することを選ぶ。かれらの使命は、いずれ生まれくる子らのために、いまだ幻視されたのみで実現していない世界とその歴史を準備することであった。
しかし[[メルコール]]は世界と子らを支配することを欲し、[[地球>アルダ]]は自分のものだと宣言してこれを思うままに形づくろうとする。マンウェは[[アイヌア]]の力を集めてメルコールに対抗し、地球の形を整え続けたが、メルコールの絶えざる妨害のために世界は創造の歌にあったほど美しくはならなかった。

とはいえマンウェの下で[[ヴァラール]]と[[マイアール]]はメルコールを退け、地球の建造を成し遂げる。時がくると、マンウェはすべての王たちの第一位、アルダの''長上王''に任じられた。
マンウェの統治する領域である地球は、''[[アルダ]]''すなわち「王国」と呼ばれる。

*** 西方の王マンウェ [#re9c90fc]

[[ヴァラール]]と臣下である[[マイアール]]ははじめ、[[中つ国]]の中央にある[[アルマレン]]の島に住まっていた。その南北には[[アルダ]]を照らす[[二つの灯火]]が立てられた。灯台は[[アウレ]]が築き、明かりは[[ヴァルダ]]が点し、マンウェがそれを聖めた。
しかしアルダに舞い戻った[[メルコール]]は二つの灯火を急襲してこれを破壊する。マンウェの怒号と[[トゥルカス]]の足音はメルコールを怯えさせたが、ヴァラールは灯火の倒壊により生じた混乱を鎮めるのに精一杯であった。このために[[アルダ]]の秩序は大きく損ねられる。

ヴァラールは、[[エルフ]]と[[人間]]が目覚める前にこれ以上の破壊が引き起こされるのを避けるため、アルダの西の果てにある大陸[[アマン]]へ撤退し、そこに破滅から救われた善きものを集めて楽園となる[[ヴァリノール]]を築く。二つの灯火に代わるものとして[[ヤヴァンナ]]が[[二つの木]]を生じさせ、アマンの海岸沿いには防壁として[[ペローリ]]の山脈が隆起させられた。

しかしマンウェが中つ国を見棄てることはなく、ペローリ山脈の最高峰[[タニクウェティル]]に据えられた玉座から、その目は絶えず東の方に向けられ、鳥たちが彼の許に便りを届けるのである。

*** イルーヴァタールの代弁者マンウェ [#r51e0385]

[[エア]]の中に入った[[アイヌア]]たちは、時の外にいる[[イルーヴァタール]]とは隔絶され、その意志をうかがい知ることはできなかった。しかし[[アルダ]]の王たるマンウェだけは、心の奥に問いかけることで、イルーヴァタールの言葉を聞くことが出来た。

:エントと大鷲の誕生|[[アウレ]]が独断で創造した[[ドワーフ]]が[[イルーヴァタール]]に嘉納されたことを知った[[ヤヴァンナ]]は、彼女の愛するする[[植物>オルヴァール]]たちが、ただドワーフや[[イルーヴァタールの子ら]]に利用されて虐げられるのをおそれ、植物のうちとくに木々を守るものの存在を望む。ヤヴァンナは[[創世の音楽>アイヌリンダレ]]に「木々の守り手」のことが歌われていたのを覚えていたが、かれらが確かに現れるのかをマンウェにたずねた。
マンウェが思案していると、イルーヴァタールがそれに応えて[[創世の音楽>アイヌリンダレ]]が歌われた時のことを再度マンウェに体験させ、当時は気付かなかった様々な[[アイヌア]]の思いが歌に編み込まれていたこと、そしてイルーヴァタールはそれらの思いを全て承知していることが告げられる。
かくして、[[ヤヴァンナ]]は[[エルフ]]が目覚める時、[[エント]]もまた目覚めることを知った。そしてまた、マンウェも[[大鷲]]たちがエルフよりも前に[[中つ国]]を訪れることを知った。

:メルコールの捕縛|[[中つ国]]に[[エルフ]]が目覚めると、[[メルコール]]はかれらに害をなした。[[オロメ]]がこれに気づき、[[ヴァリノール]]に知らせをもたらすと、[[ヴァラール]]はいかにしてエルフを救い出せばよいのか[[審判の輪]]に集って話し合った。
マンウェが[[イルーヴァタール]]に問いかけると、'''たとえいかなる犠牲を払おうと、もう一度[[アルダ]]の支配権を手に入れ、[[クウェンディ]](エルフ)をメルコールの影より救い出すべきである'''、との答えを得る。かくしてヴァラールとメルコールの合戦が行われた([[力の戦い]])。
メルコールは捕らえられて[[マンドス]]の砦に投獄され、エルフたちはヴァラールの住む[[アマン]]の地へと招かれて共に住むことを勧告された。

:ベレンとルーシエンの生還|[[レイシアン]]に語られている通り、死んだ[[ベレン>ベレン(バラヒアの息子)]]を追って[[マンドスの館]]に来た[[ルーシエン]]は[[二つの種族>イルーヴァタールの子ら]]の悲嘆を歌にこめて歌い、[[マンドス]]の心を動かした。マンドスからこのことを知らされたマンウェは、イルーヴァタールに問いかけ、ルーシエンには選択が与えられることとなった。つまり[[エルフ]]として[[ヴァリノール]]で暮らす代わりにベレンと別れるか、[[人間]]としてベレンと共に[[中つ国]]に戻るかという選択である。
ルーシエンはベレンと共に生きることを選び、やがて時がくると「人間として死んだ」。この二人から[[半エルフ]]の血筋が生じ、[[アイヌア]]と[[エルフ]]の血が後代の[[人間]]の中にも受け継がれることとなった。

*** ヴァンヤールの友マンウェ [#r51e0385]

[[アマン]]の地へ至った[[エルフ]]のうち、[[イングウェ]]に率いられてやってきた[[ヴァンヤール]]をマンウェは最も愛した。
マンウェはかれらに歌と詩を授け、[[ヴァンヤール]]は[[タニクウェティル]]のかれの膝下に住んだ。

*** 悪を知らぬ者マンウェ [#r51e0385]

[[メルコール]]の刑期であった三紀が過ぎ、ふたたび[[審判の輪]]に引き出された彼がへりくだって許しを乞うと、マンウェは彼の悪は矯正されたものと信じた。マンウェは悪を知らなかったため、メルコールがまた悪をなすとは思わなかったためである。
釈放された[[メルコール(モルゴス)>モルゴス]]は[[二本の木]]を枯死させ、さらに[[エルフ]]と[[人間]]とのあいだに虚言を蒔き、かれが[[虚空]]に投げ出されたあとも、[[イルーヴァタールの子ら]]の心に影を落としている。

*** 怒りの戦い [#r51e0385]

[[フェアノール]]に率いられた[[ノルドール]]の叛乱に、マンウェはひどく心を痛め、落涙した。かれらのことを愛していたためである。しかし[[同族殺害]]の罪を犯し、[[中つ国]]へと渡った叛逆者のためにかれは助力を与えず、かれらが[[アマン]]の地へと逃げ帰ることも禁じた。

[[イルーヴァタールの子ら]]が[[モルゴス]]を相手に敗北の歴史を重ね、ついにかれらの運命が極まろうとしたとき、[[エルフ]]と[[人間]]のあいだに生まれた[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]は、運命に守られて[[アマン]]の地へと航海し、[[ヴァラール]]の眼前で両種族への許しと助力を乞うた。
ヴァラールは懇願を聞き入れて立ち上がり、マンウェは両種族のために危険を冒したエアレンディルに報いるため、彼と彼の妻[[エルウィング]]、そしてかれらの子である[[エルロンド]]と[[エルロス]]に、エルフと人間いずれかの運命を選択すべしとの宣告を下した([[半エルフ]])。

モルゴスの打倒に、マンウェは自身の伝令使である[[エオンウェ]]を派遣し、エオンウェは[[ヴァリノール]]の軍勢を率いてモルゴスを打ち破った([[怒りの戦い]])。再び捕らえられたモルゴスはまたもへりくだって許しを乞うたが今度は許されず、[[虚空]]へと追放された。
ノルドールへの怒りは停止され、[[アマン]]はすべての[[エルダール]]の故郷として開放され、多くのエルフが船出していった。
かくして[[第一紀]]は終わった。

*** ヌメノールの没落 [#r51e0385]

[[人間]]で唯一[[モルゴス]]を敵として戦った[[エダイン]]に、[[ヴァラール]]は報償として[[アマン]]に近い[[大海]]の島[[ヌーメノール]]を与える。
加護を受けたヌーメノールの島と[[ヌーメノール人]]は他の人間を遥かにしのぐ繁栄を手にしたが、かれらはアマンの地に近づくことを禁じられていた([[ヴァラールの禁]])。マンウェはそうすることによって、かれらが手にすることのできない不死に焦がれるのを回避しようとしたのだった。
だが、モルゴスが人間に投げかけた影はヌーメノールまでかれらを追い、ヌーメノール人はやがて限りある命に不平を漏らし、[[エルフ]]とヴァラールを敵視するようになる。

モルゴスの召使[[サウロン]]にたぶらかされたヌーメノール人はとうとう力ずくで「不死」を奪おうと[[アマン]]へと進軍してきた。この時マンウェとヴァラールは[[アルダ]]の統治を一時的に手放し、[[イルーヴァタール]]の采配をあおいだ。するとイルーヴァタールはヌーメノールの島をその民と文明もろとも沈め、さらにアルダを球形に造り替え、アマンを[[世界の圏外>世界の圏]]へ移した。

*** イスタリの派遣 [#r51e0385]

[[サウロン]]の力が増し[[中つ国]]の危険が高まると、マンウェは会議を開き、中つ国の民を助ける使者を[[マイア]]のうちから募った。しかし、かれらは[[中つ国]]の民を支配して、[[サウロン]]に直接挑むことは許されなかった。使者たちは聖なる力を捨て、[[人間]]の弱い肉体をまとい、助言をもって中つ国の民を助け、民の力でサウロンの打倒を実現しなければならなかった([[イスタリ]])。
マンウェは[[オローリン]]を選び、かれを中つ国へ送った。オローリンは[[ガンダルフ]]として二千年にも渡る旅を続け、彼によってサウロンの打倒はなされた。
かくして[[第三紀]]は終わった。

*** タニクウェティルに坐する者 [#h8711ee9]

今でもマンウェは[[イルマリン]]の玉座に坐し、その御代は無窮に続いているが、[[世界が終わる時>ダゴール・ダゴラス]]まで[[タニクウェティル]]から降りてくることはないという。

** マンウェの民の[[マイアール]] [#ob2a22dd]

マンウェの民として言及があるのは以下のマイアールである。

-[[エオンウェ]]
マンウェの旗持ちにして伝令使。全マイアールの長でもある。
-[[オローリン]]
マイアールの中で最も賢明な者。[[ヴァルダ]]にも属する。

** コメント [#Comment]

#pcomment(,,noname,,,,reply)