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-実写映画のホビット(The Hobbit)については、[[ホビット(映画)]]を参照してください。
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* ホビット [#r40e5cdb]
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** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[種族]]|
|~スペル|Hobbit(単) / Hobbits(複)|
|~その他の呼び名|小さい人(Halflings)、小さい人たち(Little Folk, Little People)、ホルビトラン(Holbytlan)、ペリアンナス(Periannath)|

** 解説 [#Explanation]

『[[ホビットの冒険]]』『[[指輪物語]]』の主人公[[ビルボ・バギンズ]]と[[フロド・バギンズ]]らが属する種族。
一般の[[人間]]よりもずっと小柄な小人で、地面に掘った穴の住居に住み、多くの者はたっぷりの食事と平穏な日常を何より愛する。だが、容易に逆境に屈しない芯の強さも隠し持っていた。

この種族がどうやって[[中つ国]]に生まれたのかは、[[アイヌリンダレ]]などには示されておらず、[[上古]]の歴史にも登場していないため、来歴ははっきりしていない。ただ、[[人間(イルーヴァタールの乙子)>人間]]の一支族であるのは間違いがないとされている。
奇妙な生き物に満ちていた当時の[[中つ国]]にあって、ホビットは内向的で[[ドゥーネダイン]]や[[エルフ]]の歴史に係わることがほとんどなかったため、[[ホビット庄]]のある[[エリアドール]]付近を除き、その存在は他の種族にまったく知られていないか、あるいは無視されていた。ただ[[ロヒアリム]]の間に「北方には、地面に穴を掘ってその中に住むホルビトランがいる」という伝承がわずかに伝わっているのと、[[ゴンドール]]に「ペリアンナス」という語彙が残されている程度であった。

賢者達の中で[[灰色のガンダルフ>ガンダルフ]]だけはホビットと親しく交流し、ホビット学に暁通するに至っていた。

>「ホビットというのは、まことに驚嘆すべきともがらじゃ。わしがかねていっておった通りじゃぞ。ホビットの暮らし方ぐらい一カ月もあれば知り尽くせる。ところが、百年つき合ってみたって、いざという場合のホビットたちには驚かされるほかはないな。」(((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]]』「過去の影」 [[ホビット庄]]を救うため旅立つ決意を固めた[[フロド>フロド・バギンズ]]への[[ガンダルフ]]の言葉。))
>「ホビットというのは、まことに驚嘆すべきともがらじゃ。わしがかねていっておった通りじゃぞ。ホビットの暮らし方ぐらい一カ月もあれば知り尽くせる。ところが、百年つき合ってみたって、いざという場合のホビットたちには驚かされるほかはないな。」((『[[旅の仲間]]』「過去の影」 [[ホビット庄]]を救うため旅立つ決意を固めた[[フロド>フロド・バギンズ]]への[[ガンダルフ]]の言葉。))

** 特徴 [#med6b9a7]

:外見|~美しいというより、人の好い顔立ち。髪の毛は巻き毛で、色は一般に茶色(ごく稀に金髪)。[[ストゥア]]のみ顎鬚が生え、その血を濃く受け継ぐ[[東四が一の庄>四が一の庄#East]]の住人も顎鬚を生やす。作中では触れられていないが、ホビットの耳は僅かに尖っているとする記述を[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]は残している。((『[[The Letters of J.R.R.Tolkien]]』 Letter 27(1938年)はアメリカで『[[ホビットの冒険]]』を出版する[[ホートン・ミフリン]]社からホビットのイラストを求められたことへの返信であり、それによると「耳は僅かに尖っていてエルフ的(ears only slightly pointed and 'elvish')」とある。))
身長は[[第三紀]]末では3フィート以上4フィート以下(約90~120cm)だったが、現代では2フィート以上3フィート以下(約60~90cm)と縮んでいる([[ランガ]]の項も参照)。大抵は太って腹が出ている。ホビットの間では痩せることは異常事態と見なされた。
足は臑から下が毛で覆われており((邦訳の「足の裏に毛が生えている」というのは誤訳))、足裏が革のように丈夫なため、靴は履かずに裸足で過ごす。ただし東四が一の庄では、雨でぬかるむ日には[[ドワーフ]]の長靴を履く。
足は足首から下が毛で覆われており((邦訳『[[ホビットの冒険]]』『[[旅の仲間]]』では足の裏に毛が生えていると読める文章に訳されているが、それは誤り))、足裏が革のように丈夫なため、靴は履かずに裸足で過ごす。ただし東四が一の庄では、雨でぬかるむ日には[[ドワーフ]]の長靴を履く。
:能力|~寿命は90~110歳程度。33歳で成人と見なされる。
身を隠す技に熟達しており、普通の[[人間]]や[[ドワーフ]]では不可能なほど密やかに動き、いざとなれば素早く姿をくらませることができる。視力と聴力も鋭い。
力は強くなく蛮勇を奮うこともないが、特に精神的な耐久力が高く、困難な状況や外圧に対しては驚くほどの頑強さを示し、いよいよの時は大胆不敵となる。やむを得ず戦う時には投石が得意で、また鋭い視力をもった優秀な射手にもなる。
手先は器用だが、過剰な細工物や工芸品に打ち込むということは少なく、水車や手漕ぎ車といった仕掛け以上に複雑なものを発明しようとはせず、好まなかった。
泳げない者が多いため、一般的に水場や舟に乗ることなどを恐れ([[ストゥア]]や、その流れをくむ[[ブランディバック一族]]などはこの限りではない)、海を「死のしるし」と捉えていた(もっとも実際に海を見て、その話を聞かせたというホビットは皆無に等しかった)。塔のような、二階以上の高さのある建物も好まず、高い場所にいると落ち着かなかった。
:文明・文化|~素朴な農耕民族。狩猟を行うものは弓矢を使う。食べることを好み、可能なら一日に6回食事をし、なるべく正餐を2回食べる。そのため料理も得意であり((もっとも全員が生肉を直接さばくことができたわけではないようで、肉は通常、さばいた状態で取引されていた。[[ビルボ・バギンズ]]は[[大鷲の巣>ワシの巣(霧ふり山脈)]]で[[大鷲]]から食べ物として動物を与えられたとき、肉がさばけないため、[[ドワーフ]]に料理を任せていた。))、時間の多くを食料を生産することと消費することに費やす。また[[パイプ草]]を吸うという芸当はホビットから始まり、他の種族に広がっていった。
親戚血縁関係を重視する。お茶会やパーティを頻繁に開くことを好み、自分の誕生日には他人に贈り物をする習慣がある。“今すぐ使うことはないが、捨てる気にはならないもの”を[[マゾム]]と呼んで溜め込む習性があり、マゾムを贈り物にすることも多い。
争い事を好まない。[[第三紀]]末には非常に内向的な種族になっており、[[ホビット庄]]の民は庄外の世界のことにはほとんど関心を示さなくなっていた。元来は[[アルノール]]の法などに由来する古くからのしきたりと、平凡な生活を非常に愛し、そこから外れるような行動を白眼視する傾向が強い([[トゥック一族]]は、ホビットの中でも「変わり者」が多いことで知られていた)。
服は明るい色(特に緑と黄色)のものを好む。
:住居|~緩やかな丘の斜面に、穴を掘って住居とした[[ホビット穴]]に住むことを好む。丸いドアと円い窓がホビット穴の特徴だった。[[袋小路屋敷]]のように屋敷と呼べるほど巨大なホビット穴は[[スミアル]]と呼ばれる。
やむを得ず地上に家を建てることもあるが(作業用の仕事場はいつも地上に建てていた)、できるだけホビット穴に似せて丸いドアと窓を付け、ずんぐりと横に膨らんだような外見にした。その場合でも城や塔のような、巨大で二階以上の高さのある建物は造らず、好まない。建築の技術は[[ドゥーネダイン]]からもたらされたものと思われるが、[[エルフ]]からもたらされた可能性もあるとされる。
:歴史|~他の種族の歴史には登場せず、彼ら自身による歴史も存在しないか散逸したため、詳しいことはわかっていない。
記録を遡れる限り、[[第三紀]]の初めから中頃にかけては[[アンドゥインの谷間]]の上流域に住んでいたらしい。近隣には[[北国人]]([[ロヒアリム]]の祖先)がおり、彼らの文化や[[言語>ローハン語]]から少なからぬ影響を受けたことがわかっている。1050年ごろから(おそらく[[緑森大森林]]の[[影>死人占い師]]を恐れて)西方への移動をはじめ、複数のルートに分かれて[[エリアドール]]に入った。1300年頃には[[ブリー郷]]にその最古の居住地を築く。
1601年、[[アルセダイン]]王[[アルゲレブ二世]]より許可を得て、ブリー郷から[[マルコ]]と[[ブランコ]]の兄弟に率いられた多くの者が[[バランドゥイン]]川より西の土地へ移住し、[[ホビット庄]]が作られる。
記録を遡れる限り、[[第三紀]]の初めから中頃にかけては[[アンドゥインの谷間]]の上流域に住んでいたらしい。近隣には[[北国人]]([[ロヒアリム]]の祖先)がおり、彼らの文化や言語から少なからぬ影響を受けたことがわかっている。1050年ごろから(おそらく[[緑森大森林]]の[[影>死人占い師]]を恐れて)西方への移動をはじめ、複数のルートに分かれて[[エリアドール]]に入った。1300年頃には[[ブリー郷]]にその最古の居住地を築く。
1601年、[[アルセダイン]]王[[アルゲレブ二世]]より許可を得て、ブリー郷から[[マルコ]]と[[ブランコ]]の兄弟に率いられた多くの者が[[バランドゥイン]]川より西の土地へ移住し、[[ホビット庄]]を築いた。
2941年の[[トーリンとその仲間]]の遠征と[[五軍の合戦]]、および3018~3019年([[大いなる年]])の[[指輪戦争]]によって、ホビットの存在は初めて他種族に注目されるようになり、ホビット自身も自らの歴史や文化への興味に目覚めていった。
現代でもホビットは彼らが当時から住んでいた地域、すなわち旧世界の北西部(ヨーロッパ)に住んでいる。だが今ではすっかり衰退してしまい、数も大変少なくなっている上、臆病な隠れ潜む民となっているため、発見するのは困難である。
:氏族|~[[アンドゥインの谷間]]にいた頃は[[ハーフット]]、[[ファロハイド]]、[[ストゥア]]の三つの種族があったが、第三紀末にはほとんど混血している。ハーフット系がホビットの大部分を占めるが、[[トゥック一族]]や[[ブランディバック一族]]など、ファロハイドやストゥアの特徴を強く受け継いでいる者達もあった。
:言語|~[[アンドゥインの谷間]]にいた頃は、近隣に住んでいた[[北国人]]の言葉である、[[ローハン語]]の古語に近い言葉を使っていたと思われるが、[[エリアドール]]への移住に伴い[[西方語]]を使い始め、[[ブリー郷]]に定住する頃には本来の言葉は廃れていった。だが、彼らの西方語にはホビット庄独特の響きや用法があり、[[アルノール]]や[[ローハン]]、[[ゴンドール]]等のそれとは違いがあった。また一部の古い固有名詞や名前には、かつての彼ら自身の言葉が残っていた([[マゾム]]、[[スミアル]]など)。一方それとは別に、[[ストゥア]]の流れを汲む者たちが用いた風変わりな名や語もあった。これはストゥアが[[褐色人の国]]の近くに住んでいた時に用いていた、[[褐色人]]の言葉に近い言語に由来する。
文字を書く習慣は、[[アルノール]]の[[ドゥーネダイン]]から学んだと思われる。文字を理解するホビットは全体の半数程度だが、その者達はしげしげと親戚縁者に手紙を書いた。
:偏見|~他の種族とほとんど関わりを持とうとしない。かつては[[人間]]や、[[街道>東街道]]を東西に旅する[[ドワーフ]]と交流があったが、それもどんどん少なくなっていった。しかし[[ブリー郷]]のホビットは[[人間]]と共に暮らしている。ホビットは人間のことを「[[大きい人]]」と呼び、しばしばその鈍重さを馬鹿にした。また一般的に、[[エルフ]]とかかわりを持つことを怖れる([[ファロハイド]]はこの限りではない)。

*** 主なホビット [#f12d5e44]

- [[ビルボ・バギンズ]]([[指輪所持者]])

- [[フロド・バギンズ]]([[指輪所持者]]、[[指輪の仲間]]、[[旅人たち]])
- [[サムワイズ・ギャムジー(サム)>サムワイズ・ギャムジー]]
- [[メリアドク・ブランディバック(メリー)>メリアドク・ブランディバック]]
- [[ペレグリン・トゥック(ピピン)>ペレグリン・トゥック]]

- [[フレデガー・ボルジャー]]
- [[ハムファスト・ギャムジー]]
- [[トム・コトン]]
- [[ローズ・コトン]]
- [[マゴット]]
- [[オソ・サックビル=バギンズ]]
- [[ロベリア・サックビル=バギンズ]]
- [[ロソ・サックビル=バギンズ]]
- [[テド・サンディマン]]

- [[バンドブラス・トゥック(牛うなり)>バンドブラス・トゥック]]
- [[ゲロンティウス・トゥック(トゥック翁)>ゲロンティウス・トゥック]]

** 種族名について [#x116d8f8]

ホビット(hobbit)とは、彼らが自らの種族を表すのに使った言葉であり、元々は[[ストゥア]]と[[ファロハイド]]が[[ハーフット]]に付けた名と考えられている。そしてその語源は[[ローハン語]]に''ホルビトラ''(holbytla)の形で残る語((複数形は「ホルビトラン(holbytlan)」))と思われる。他の種族からは主に[[西方語]]で''小さい人''(halfling)と呼ばれた(直訳は「半分の者」であり、この呼称に関しては[[ランガ]]の項を参照のこと。ただし、ホビット自身にしてみれば自分たちは何も半分(half)ではないため、このような呼称はあまり好まなかった)。[[ブリー郷]]の人間からは''小さい人''(Little Folk)と呼ばれた。
ホビットたちが[[ゴンドール]]を訪れたときには、[[シンダール語]]で'halfling'の意である''ペリアン''(perian)と呼ばれた((ペリアン(perian)は単数形で、複数形はペリアイン(periain)、集合名詞はペリアンナス(Periannath)。邦訳『[[指輪物語]] [[王の帰還]]』ではPeriainの語が「ペリアンたち」と訳されている。))。
ホビット(hobbit)とは、彼らが自らの種族を表すのに使った言葉であり、元々は[[ストゥア]]と[[ファロハイド]]が[[ハーフット]]に付けた名と考えられている。そしてその語源は[[ローハン語]]に''ホルビトラ''(holbytla)の形で残る語((複数形はホルビトラン(holbytlan)。))と思われる。他の種族からは主に[[西方語]]で''小さい人''(halfling)と呼ばれた(直訳は「半分の者」であり、この呼称に関しては[[ランガ]]の項を参照のこと。ただし、ホビット自身にしてみれば自分たちは何も半分(half)ではないため、このような呼称はあまり好まなかった)。[[ブリー郷]]の人間からは''小さい人''(Little Folk)と呼ばれた。
ホビットたちが[[ゴンドール]]を訪れたときには、[[シンダール語]]で'halfling'の意である''ペリアン''(perian)と呼ばれた((ペリアン(perian)は単数形で、複数形はペリアイン(periain)、集合名詞はペリアンナス(Periannath)。邦訳『[[王の帰還]]』ではPeriainの語が「ペリアンたち」と訳されている。))。

''ホビット''とは、[[ホビット庄]]および[[ブリー郷]]で用いられた''クドゥク''(kuduk)の名を[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]が英訳したものにあたる。クドゥクは、元々の[[ローハン語]]で「穴に住む者(hole-dweller)」の意の、kûd-dûkan(クード=ドゥーカン)が語源と考えられている。このkûd-dûkanを[[古英語]]として表現したのが「穴の家を造る者(hole-builder)」の意のホルビトラである。
小さい人(halfling)にあたる[[西方語]]の原語は''バナキル''(banakil)であった。

||~ローハン語での呼称|~ホビットの自称|~西方語での他称|~シンダール語での呼称|h
|~[[西境の赤表紙本]]における原文表記|kûd-dûkan|クドゥク(kuduk)|バナキル(banakil)|ペリアン(perian)|
|~トールキンによる翻訳表記|ホルビトラ(holbytla)|ホビット(hobbit)|小さい人(halfling)|ペリアン(perian)|

*** ハーフリング(小さい人) [#Halfling]

ハーフリングは、「小さい人」の英語表記であるHalflingをそのまま片仮名にしたもので、一部の翻訳ではこの表記になっている。この表記は、トールキンによるもの以外の作品でも使われており、特にテーブルトークロールプレイングゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ([[Wikipedia:ダンジョンズ&ドラゴンズ]])』の種族名として有名。これは一説には、ホビットという名前を使用することを著作権の問題で避けたためとも言われている。
一方、映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』『[[ホビット>ホビット(映画)]]』では、Halflingの言葉が使われているところも軒並み「ホビット」と訳されている([[ラーツ]]が'Halflings'を捕らえろと部下に命じている場面など)。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO]

[[プレイヤーの種族>ロード・オブ・ザ・リングス オンライン#race]]として選択が可能。マップには[[ホビット庄]]が再現されているほか、原作の設定を独自に解釈し、[[エテン高地]]や[[エネドワイス]]にも、小さなホビットの集落がある。
また冒険に出かけた、主に[[トゥック一族]]のホビットのNPCを、ホビット庄の外で見かけることがある。

** 備考 [#s67e9ea1]

インドネシアのフローレス島で2003年に発見された、小型のヒト属の可能性がある化石はホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)と命名されているが、ホビットの異名がある(([[Wikipedia:ホモ・フローレシエンシス]]))(([[ニュース - 古代の世界 - 走りは苦手なホビット、やはり新種か - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ):http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=5229628]]))。

** コメント [#Comment]

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