* ハラド [#j871e85f]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[地名]]|
|~スペル|Harad|
|~その他の呼び名|[[ハラドワイス]](Haradwaith)、南方国(Sutherland)、太陽の国(Sunlands)((『[[二つの塔]]』で[[サム]]が[[スワート人]]がいる場所として言及する名。『[[Guide to the Names in The Lord of the Rings]]』によると、[[ゴンドール]]や[[中つ国]]北西部では、遠い南の国々を指す[[共通語]]や他言語での一般的な名前とされる))|

** 解説 [#Explanation]

[[シンダール語]]で「南」の意。[[ゴンドール]]と[[モルドール]]の南にある地を指す。その中で比較的北側は[[近ハラド]]、さらに遠い南側は[[遠ハラド]]とも言う。この土地に住む[[人間]]は[[ハラドリム]]や南方人と呼ばれる。
「ハラド国」と訳される場合があるが、実際には複数の国家や勢力が存在し、それらのハラド諸国の間でも戦争や勢力争い((『[[終わらざりし物語]]』「キリオンとエオル」の註九によると、[[ゴンドール]]30代目の王[[カリメフタール>カリメフタール(ナルマキル二世の息子)]]が[[第三紀]]1889年に[[馬車族]]を破った時、「ハラド国人たちはこの時代国内の反目と争いに忙しかった。」とあるが、原文は'''the peoples of Harad were at this period engaged in wars and feuds of their own.'''であり、ハラドの諸民族間で戦争や対立があったと読むのが正しい))があった模様である。
「ハラド国」と訳される場合があるが、あくまでも地域名である。この地には複数の国や勢力が存在し、それらのハラド諸国の間でも戦争や勢力争い((『[[終わらざりし物語]]』「キリオンとエオル」の註九によると、[[ゴンドール]]30代目の王[[カリメフタール>カリメフタール(ナルマキル二世の息子)]]が[[第三紀]]1889年に[[馬車族]]を破った時、「ハラド国人たちはこの時代国内の反目と争いに忙しかった。」とあるが、原文は'''the peoples of Harad were at this period engaged in wars and feuds of their own.'''であり、ハラドの諸民族間で戦争や対立があったと読むのが正しい))があった模様である。

>「わしらそっちには行ったことない。だけど百[[リーグ]]もあるっていうよ。そのうち決して静かにならない大きな水の見えるとこに出るっていうよ。そこにはさかながたくさんいて、大きい鳥がさかなを食べてるんだよ。おいしい鳥だよ。だがわしらそこに行ったことない。(中略)それからその先にはまだまだ国があるっていうよ。だけどそこじゃ[[黄色い顔>太陽]]がとっても熱くて、雲がめったに出ない、そして[[人間]]はとっても荒々しくて黒い顔をしてるっていうよ。わしらその国は見たくないよ。」((『[[指輪物語]] [[二つの塔]] 下』 「三 黒門不通」 [[ハラド街道]]の先にある国について語る[[ゴクリ]]の言葉))

『[[終わらざりし物語]]』によると、[[タル=アルダリオン]]が[[中つ国]]への航海を行った時に彼はハラドの港を訪れたという。その後の事ははっきりしないが、恐らく[[第二紀]]の中期以降は沿岸部に[[ヌーメノール]]の植民地が作られ、[[ヌーメノール人>ドゥーネダイン]]の[[王党派]]による圧制と搾取を受けるようになったと思われる。2280年には天然の良港である[[ウンバール]]にヌーメノールの大要塞が築かれた。3261年には[[アル=ファラゾーン]]の大艦隊がウンバールに上陸し、[[サウロン]]をヌーメノールへ連行した。
3319年のヌーメノールの没落後、[[モルドール]]に戻ったサウロンは[[亡国の民の王国]]の打倒を画策し始めた。この時、[[黒きヌーメノール人]]の諸侯の多くが、ヌーメノールの植民地があった遠い南の国々に居を構えていたが、[[ヘルモール]]と[[フイヌア]]の二人は[[ハラドリム]]の中で権力を握るようになった。

[[第三紀]]のハラドは[[ゴンドール]]からほぼ独立を維持している一方で、[[サウロン]]の影響により[[モルドール]]の属国と化していった。ゴンドールと通商関係があったこともあるが、その関係は友好的とは言えず、戦闘状態にあることが長かった。ハラドはゴンドールの[[ヒャルメンダキル一世]]によって一時征服されたこともあるが、ゴンドールの国力の衰退と共にその影響から離れ、[[ウンバール]]や[[ハロンドール]]などを巡ってゴンドールと争うようになった。ハラド人が[[ウンバール]]を支配するようになると、[[海賊]]としてゴンドールを悩ませた。詳細は[[ウンバール]]の項目を参照。
[[第三紀]]のハラドは[[ゴンドール]]からほぼ独立を維持している一方で、[[サウロン]]の影響により[[モルドール]]の属国と化していった。ハラドはゴンドールと通商関係があったこともあるが、その関係は友好的とは言えず、戦闘状態にあることが長かった。ハラドはゴンドールの[[ヒャルメンダキル一世]]によって一時征服されたこともあるが、ゴンドールの国力の衰退と共にその影響から離れ、[[ウンバール]]や[[ハロンドール]]などを巡ってゴンドールと争うようになった。ハラド人が[[ウンバール]]を支配するようになると、[[海賊]]としてゴンドールを悩ませた。詳細は[[ウンバール]]の項目を参照。

>「話によれば、その昔には[[ゴンドール]]と南のさいはての国、ハラドの王国との間には通商関係があったということだ。といっても友好関係は一度もなかったが。その当時は[[われらの&ruby(くにざかい){国境};>ハルネン]]は[[アンドゥイン]]の河口を越えて南のかなたにまで伸びていた。そしてかれらの国土の中でも一番わが国境に近い[[ウンバール]]はわれらの主権を認めていた。しかしそれからもう久しくなる。両国の間に往来があった頃から何代もの年月が経った。そして最近になって知ったのだ。[[われらの敵>サウロン]]がかれらの間に影響力を持ち&ruby(きた){来};り、かれらはかの者に乗り換えた、いやかの者のもとに帰参したということを――かれらは昔からいつでもかの者の意を甘受しておったからな――[[東に住む者>東夷]]もまた多くがそうであるように。」((『[[指輪物語]] [[二つの塔]] 下』 「四 香り草入り兎肉シチュー」 [[ハラドリム]]について語る[[ダムロド]]の言葉。「ハラドの王国」の原文は'''kingdoms of the Harad'''で複数形))

ただし『[[終わらざりし物語]]』によると、[[イスタリ]]によって[[ハラドリム]]を[[自由の民]]の側に引き込める可能性があったことが示唆されている。

>それゆえハラド「南」はあいまいな言葉である。[[ヌーメノールの民>ドゥーネダイン]]は没落以前に[[中つ国]]の遥か南の海岸まで足を踏み入れていたが、[[ウンバール]]より南の植民地は併合されたか、あるいはすでに[[ヌーメノール]]で[[サウロンに堕落させられていた人間>黒きヌーメノール人]]が植民していたので、敵地となり[[サウロン]]の領土となった。しかし、[[ゴンドール]]に接した(ゴンドール人が近も遠もなくただハラド「南」と呼んだ)南の国はいくらか「抵抗勢力」へと転向させやすい地域であったが、同時にゴンドールに対する即戦力を手に入れる場所として、[[第三紀]]、サウロンがもっとも活発に働きかけた地域でもあった。使命の当初[[ガンダルフ]]がこの地域に旅したのももっともである。((『[[終わらざりし物語]]』「イスタリ」より、[[ガンダルフの異名>ガンダルフ#o82e2c47]]と彼の行動範囲について。ただし同書では続けて、ガンダルフはハラドへ行かなかったとする別の覚書きも併記されている))

*** [[第三紀]]のハラドの年表 [#z2e27f84]

|~年|~事象|h
|RIGHT:933|第13代[[ゴンドール]]王[[エアルニル一世]]が[[ウンバール]]を陥落させ、[[ゴンドール]]の拠点とする。|
|RIGHT:1015|[[ウンバール]]を追放された諸侯に率いられた[[ハラド国人>ハラドリム]]がウンバールを攻撃し、第14代[[ゴンドール]]王[[キアヤンディル]]が戦死。ウンバール自体はゴンドール海軍により陥落せず。|
|RIGHT:1050|第15代[[ゴンドール]]王[[キアヤヘア>ヒャルメンダキル一世]]が[[ハルネン]]川を渡ってハラドを攻撃し屈服させ、ヒャルメンダキル(南の勝者)の名を得る。|
|>|[[ヒャルメンダキル一世]]の治世で[[ゴンドール]]の国威は絶頂に達し、南は[[ウンバール]]の半島と港を含む海岸沿いと[[ハルネン]]川までの地域を支配する。&br;ハラドの王たちはゴンドールに忠誠を誓い、息子たちを人質としてゴンドールの宮廷に送ることになる。|
|RIGHT:1448|簒奪者[[カスタミア]]の息子たちとその一党が船で[[ペラルギア]]から[[ウンバール]]へ去る。以降ウンバールは[[海賊]]の根拠地となる。|
|>|[[ウンバール]]を失ったことで[[ハロンドール]]は[[海賊]]との領有権係争地となり、[[ハラド国民>ハラドリム]]への支配が弱まる。|
|RIGHT:1540|第23代[[ゴンドール]]王[[アルダミア]]が[[ハラド人>ハラドリム]]と[[ウンバール]]の海賊との戦いで討ち死にする。|
|RIGHT:1551|第24代[[ゴンドール]]王[[ヴィンヤリオン>ヒャルメンダキル二世]]が[[ハラド国人>ハラドリム]]を撃退し、ヒャルメンダキル二世を名乗る。|
|RIGHT:1634|第25代[[ゴンドール]]王[[ミナルディル]]が[[ペラルギア]]を荒らした[[ウンバール]]の[[海賊]]によって殺害される。海賊を率いていたのは[[カスタミア]]の曾孫の[[アンガマイテ]]と[[サンガヒャンド]]。|
|RIGHT:1810|第28代[[ゴンドール]]王[[テルメフタール]]が[[ウンバール]]を奪取して[[カスタミア]]の子孫を滅ぼし、[[海賊]]を駆逐する。彼はウンバールダキルの称号を名乗る。|
|>|1851年に[[馬車族]]の侵攻が始まり、その後の混乱の中[[ウンバール]]が[[ハラド国人>ハラドリム]]の手に落ちる。|
|RIGHT:1944|[[ハンド]]人・[[近ハラド]]人が[[馬車族]]と同盟を結び[[ゴンドール]]へ攻め込む。南軍の指揮官[[エアルニル>エアルニル二世]]がハラド軍を南[[イシリアン]]で破る。|
|RIGHT:2758|[[ウンバール]]とハラドの三つの大艦隊([[海賊]])が[[ゴンドール]]沿岸部に来寇し、[[アイゼン]]川の川口でも上陸する。&br;第19代執政[[ベレン>ベレン(エガルモスの息子)]]の息子[[ベレゴンド>ベレゴンド(ベレンの息子)]]はこの年の[[長い冬]]が終わる前にこれを撃退する。|
|RIGHT:2759|[[ベレゴンド>ベレゴンド(ベレンの息子)]]が同時期に攻撃を受けていた[[ローハン]]に援軍を送る。|
|RIGHT:2885|[[サウロン]]の密使に扇動された[[ハラドリム]]が、占領していた[[ハロンドール]]から[[ポロス]]川を越えて[[イシリアン]]を襲撃する。&br;第14代[[ローハン]]王[[フォルクウィネ]]はエオルの誓いに基づいて援軍を送り、第23代[[執政]][[トゥーリン二世]]は[[ポロスの渡し]]で勝利するが、ローハン王の息子[[ファストレド]]と[[フォルクレド]]が戦死する。|
|RIGHT:2980|第25代[[執政]][[エクセリオン二世]]に仕えていた[[ソロンギル>アラゴルン二世]]が小艦隊を率いて[[ウンバール]]を奇襲し、海賊船の大半に火を放ち、港の大将を波止場の合戦で倒す。|

*** [[指輪戦争]]でのハラド [#c7b23f22]

指輪戦争においてハラド及び[[ウンバール]]の[[海賊]]は[[モルドール]]の同盟軍として参戦した。

|~年|~月|~日|~事象|h
|RIGHT:3018|RIGHT:6|RIGHT:20|[[ハラドリム]]、[[東夷]]を含む[[モルドール]]軍が[[オスギリアス]]を攻撃。[[ゴンドール]]軍の駐屯部隊が全滅する。|
|RIGHT:3019|RIGHT:3|RIGHT:5|[[ハラドリム]]の部隊が[[黒門]]を通過する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:7|[[イシリアン]]の街道で[[ファラミア]]率いる[[イシリアンの野伏]]と[[ムーマク]]を伴った[[ハラドリム]]の戦闘が発生する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:11|[[灰色の一行]]が[[リンヒア]]に着き、[[ラメドン]]領主[[アングボール]]と戦っていた[[ウンバール]]とハラドの敵を遁走させる。&br;[[ハラドリム]]の大部隊が[[ミナス・モルグル]]を発った部隊と合流し、[[オスギリアス]]へ進軍する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:13|退却中に[[ファラミア]]がハラドの矢で負傷する。&br;[[灰色の一行]]が[[ペラルギア]]で[[ウンバール]]の[[主力艦隊(黒の艦隊)>海賊]]を捕捉し、[[ハラドリム]]の敵を[[死者の軍勢]]で破る。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:14|[[ハラドリム]]を含む[[モルドール]]軍によって[[ミナス・ティリス]]が包囲される。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:15|[[ペレンノール野の合戦]]。ペレンノール野に展開していた[[モルドール]]軍が壊滅し、戦場には多くの[[ムマキル]]の死骸が残される。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:25|[[黒門の戦い]]。[[サウロン]]の消滅により[[モルドール]]軍が崩壊。&br;[[ハラドリム]]と[[東夷]]の一部は最後の抵抗を示すが大部分の者は東へ逃げるか投降する。|
|~|RIGHT:4|>|[[ハラドリム]]と[[東夷]]の残党による西軍への抵抗が続く。|
|~|RIGHT:5|RIGHT:1|[[エレスサール]]王が即位。その後王はハラドの国民と和を結ぶ。|

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