* サルマン [#e322834f]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Saruman|
|~異訳|サルーマン|
|~その他の呼び名|白のサルマン(Saruman the White)&br;クルニーア・ラーン(Curunir Lân)&br;白の賢者&br;クルニーア(Curunir)&br;クルモ(Curumo)&br;指輪造りのサルマン&br;多彩なるサルマン&br;シャーキー(Sharkey)(([[オーク語]]の「老人(sharkû)」に由来する言葉))|
|~その他の呼び名|白のサルマン(Saruman the White) &br; クルニーア・ラーン(Curunir Lân) &br; 白の賢者(the White) &br; クルニーア(Curunir) &br; クルモ(Curumo) &br; 指輪造りのサルマン(Ring-Maker) &br; 多彩なるサルマン(Many colours) &br; シャーキー(Sharkey)(([[オーク語]]の「老人(sharkû)」に由来する言葉))|
|~種族|[[イスタリ]]|
|~性別|男|
|~生没年|不明~[[第三紀]]3019年|
|~親||
|~兄弟||
|~配偶者||
|~子||

** 解説 [#Explanation]

[[サウロン]]と戦う[[中つ国]]の民を援助するため、[[ヴァラール]]によって中つ国に送り込まれた[[イスタリ]](魔法使い団)の一人で、イスタリの中で最も早く[[中つ国]]にやってきた。元々は[[アウレ]]に使えていた[[マイア]]であり、[[クウェンヤ]]での名はクルモ、[[シンダール語]]ではクルニーアと呼ばれ、サルマンとは[[北方の人間>北方の自由の民]]がつけた名である。名はいずれも「技巧者」の意((「[[ナン・クルニーア]]」が「魔法使いの谷(Wizard's Vale)」と訳されている例など、[[人間]]が呼ぶところの「[[魔法使い]]」の意味とも一部重なっている可能性がある。))。
[[白の会議]]の議長を務め、指輪学とサウロンの手管を研究していた。[[白の手]]を自らの印とする。
[[白の会議]]の議長を務め、指輪学とサウロンの手管を研究していた。[[ルーン文字>キアス]]の「S」および[[白の手]]を自らの印とする。
サルマンの力の一つはその声であった。彼の魔力が衰えた時ですら、サルマンが話すことは説得力ある道理がかなったものに思われ、よほど意志の強い人間でない限り、サルマンの言うことに納得して従ってしまうのだった。

>かれの顔は面長で、秀でた額を持ち、深い暗い目は測り難く底知れなかったのですが、今はまじめで優しげな、そしていくらか疲れた様子を帯びていました。かれの髪と顎鬚は白く、唇と両耳の周りにだけまだ黒いものが房になって残っていました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔]] 上』「十 サルマンの声」 和睦を求めてガンダルフらとローハンの騎士達の前に姿を現した時のサルマンの様子))
>耳に快く流れる低い声で、その響き自体に心をとろかす魔力がありました。 …… その声はその響きだけで、多くの者の心をとらえるのですが、その声にすっかり征服された者にとって、その呪縛の力はそこから遠く離れても続き、いつもそのものやわらかな声が耳に囁き促すのを聞くのでした。しかし冷静でいられる者は一人もいません。声の持ち主が自らその声を制している限り、その声の嘆願と命令を理性と意志の努力なしにはねつけることのできる者は一人もいないのです。

>大きなマントにくるまった老人で、マントの色は何色とも判じかねました。何故なら、かれらの目の動きにつれ、あるいはかれの身動きにつれて、色が変わるからでした。かれの顔は面長で、秀でた額を持ち、深い暗い目は測り難く底知れなかったのですが、今はまじめで優しげな、そしていくらか疲れた様子を帯びていました。かれの髪と顎鬚は白く、唇と両耳の周りにだけまだ黒いものが房になって残っていました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔]] 上』「十 サルマンの声」 和睦を求めてガンダルフらとローハンの騎士達の前に姿を現した時のサルマンの様子))

*** 第三紀のサルマン [#third]

イスタリの内、最初に中つ国に上陸したのがサルマンであった。彼は[[青の魔法使い>イスリン・ルイン]]らとともに中つ国の東方まで旅をしたが、戻って来たのはサルマン一人であったという。
サルマンは多くの者達から[[イスタリ]]の長と見なされており、2463年にはじめて召集された[[白の会議]]において、ガンダルフが議長の推薦を辞退すると、代わってサルマンが議長に選ばれた。
かつてサルマンは賢者達の中で最も[[ゴンドール]]と親密であり、[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]に保管されている伝承や記録に精通していた。
2759年にはゴンドールの[[執政]][[ベレン>ベレン(エガルモスの息子)]]より[[オルサンク]]の鍵を与えられ、[[アイゼンガルド]]を租借して居城とする。彼は、[[褐色人]]との戦いで疲弊していた、[[フレアラフ]]王の統治する[[ローハン]]の民を助けるなど、ゴンドール、ローハンの同盟者として働いた。

イスタリと白の会議の長として、彼は[[指輪学>力の指輪]]およびサウロンの手管を究明することを専らとしており、このために白の会議はサウロンを出し抜くことに成功したこともあったという。ガンダルフの再三の[[ドル・グルドゥア]]攻撃要請には反対の立場を表明し続けていたが、2941年にはとうとう同意してサウロンを[[闇の森]]から追い出すことに成功した(ただしこれには底意があったことが後に明らかになる)。

*** サルマンの堕落 [#corruption]

イスタリの最高位である白の賢者として、サルマンは元来は高貴な者であったが、ガンダルフに対する密かな妬みや恐れから次第に自尊心の虜となり、堕落していった。
ガンダルフが[[キーアダン]]より[[ナルヤ]]を授けられたことに気付いたのが、中つ国におけるその始まりであると言われている。
サウロンと力の指輪についての知識を深めていったことも堕落の危険につながっていた。サウロンの技を究明するにつれてそれに驚嘆していったサルマンは、ついにはその模倣者に成り下がり、[[一つの指輪]]を自分自身で用いることを望むようになった。

内心で白の会議を裏切る者となった彼は、一つの指輪を手に入れるための策を弄し、2851年には[[あやめ野]]一帯の捜索を開始する。その時[[イシルドゥア]]の遺骨と、[[エレンディルミア]]を発見している。一方で2939年には、サウロンもあやめ野付近の捜索を行っていることを知って驚愕するが、白の会議には報告しなかった。
ガンダルフによるドル・グルドゥア攻撃の提案を2851年に却下しているのも、放置したサウロンに引き寄せられた一つの指輪を発見できるかもしれないと考えたためであった。だが2941年になると、力を増したサウロンが[[アンドゥイン]]の捜索を行うことを妨げるため、ドル・グルドゥア攻撃に同意した。サルマンはこの攻撃で大きな役割を果たしたが、既に白の会議は時機を逸しており、サウロンのドル・グルドゥア放棄と敗走は見せかけにすぎなかった。

2953年にはサルマンはアイゼンガルドに引きこもり、(サウロンの[[バラド=ドゥーア]]を模倣して)[[アイゼンガルド]]の要塞化を推し進め、[[人間]]や[[オーク]]([[ウルク=ハイ]])からなる軍事力の構築に腐心するようになる(そのために[[ファンゴルンの森>ファンゴルン]]の木々を伐採し、[[エント]]の怒りを買うことになった)。
このように元来備わっていたはずの資質や良識に基づく知識や技能を捨てて、サウロンの技と知識を模倣していったサルマンは、彼自身それと気付かず大きく力を減じていった。

一方でガンダルフを妬み恐れたサルマンは、ガンダルフが[[ホビット]]と[[ホビット庄]]に多大なる関心を示していることを間者の情報によって知ると、[[ブリー郷]]とホビット庄への浸透を始め、手先のごろつき達を送り込むようになった。
また、[[ガンダルフ]]が[[パイプ草]]を嗜んでいることを馬鹿にしていたが、やがて自分でもその楽しみに気づくと密かに嗜むようになる。サルマンはパイプ草を調達するために[[袴帯家]]や[[オソ・サックビル=バギンズ]]所有の農園と取引を始め、これはオソの息子[[ロソ>ロソ・サックビル=バギンズ]]の代へと引き継がれて禍根を残すことになった。

3000年頃、サルマンはそれまであえて使わなかったオルサンクの[[パランティーア]]を使用。すると[[ミナス・モルグル]]のパランティーアを持つサウロンの目に捕らえられてしまい、さらに堕落することになる。サルマンはサウロンに対して、表向きは従っているように見せ掛けながら、実際は一つの指輪を手に入れ、その力により自分がサウロンに取って代わろうとしていた。

*** 指輪戦争におけるサルマン [#c16268ee]

>そこでわしはかれの長衣に目をやり、さっきまでは白く見えたその長衣がまことは、さまざまな色糸で織られ、かれが体を動かす度に、目を迷わすほど色が変わり、きらきら光るのに気づいた。((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]] 下」「二 エルロンドの会議」 オルサンクにてサルマンの裏切りが発覚した瞬間のガンダルフの視点))

[[指輪戦争]]が始まるまでに、サルマンは[[ローハン]]の[[グリマ(蛇の舌)>グリマ]]を間者として取り込む一方で、[[褐色人]]と同盟を結び、ローハンを攻略する準備をしていた。
[[大いなる年]]の7月には[[ラダガスト]]を騙してガンダルフをアイゼンガルドまでおびき寄せ、彼を自らの陣営に取り込もうと試みる。この時サルマンは自らを「指輪造りのサルマン」「多彩なるサルマン」と称し、白の衣を捨てて虹色に輝く衣を纏い、手に指輪を嵌めているのをガンダルフが目撃している。
ガンダルフの籠絡に失敗すると、彼を[[オルサンク]]の頂上に幽閉する。だがガンダルフは(良かれと思った)ラダガストより派遣された[[グワイヒア]]により救出され、白の会議への裏切りが露呈することになった。

するとサルマンは公然と一つの指輪を手に入れるべく行動を開始し、[[モルドール]]と連絡してローハンへの侵略を開始する。翌年2月には[[アイゼンの浅瀬の合戦]]が行われる。この合戦でローハンの王子[[セオドレド]]は討ち死にし、[[エドラス]]からの援軍はグリマの讒言に阻まれた。浅瀬での第二の合戦において、アイゼンガルドの大軍勢はいまだ浅瀬を守っていた[[エルケンブランド]]らを蹴散らし、[[角笛城]]へと攻撃を加えた。

その一方でサルマンは指輪を手に入れるため、大河へ[[ウルク=ハイ]]の手勢を差し向けて[[ホビット]]を捕えてくるよう命じていた。一隊はモルドールより派遣された部隊とともに[[パルス・ガレン]]にて[[指輪の仲間]]を襲撃し、[[ボロミア]]を打ち倒して[[メリー>メリアドク・ブランディバック]]と[[ピピン>ペレグリン・トゥック]]を捕えることに成功した。アイゼンガルドのウルク=ハイはモルドール部隊の意向を強引にねじ伏せ、アイゼンガルドまでホビットを連行していこうとしたが、一隊はその途上で[[エオメル]]率いる騎兵隊の攻撃を受けて全滅してしまう。
またグリマは、エドラスを訪れたガンダルフ一行によって間者としての素性を暴かれ、宮廷を追放される。ローハンは復帰した[[セオデン]]の指揮の下アイゼンガルドに抵抗し、[[角笛城の合戦]]が行われた。
一方で、サルマンにはまったく予想外なことに、取り逃がしたホビット二名がエントにもたらした情報によってエントが一大蜂起し、エントと[[フオルン]]の大軍によってアイゼンガルドはあっけなく陥落してしまう。角笛城を攻撃した大軍勢も、ローハン軍の頑強な抵抗にあった末にガンダルフが呼び集めたエルケンブランドの援軍によって打ち破られ、敗走したところを待ち構えていたフオルンによって全滅させられた。

こうしてほとんどの力を失ったが、サルマンはなおも[[オルサンク]]に立てこもったため、エントはアイゼンガルドの要塞を打ち崩して水没させ、サルマンを塔に閉じ込めた。交渉へやってきたガンダルフらとローハンの騎士に対しては、彼らからの和議の条件を拒み、わずかに残った声の魔力を弄して籠絡を試みるもことごとく失敗に終わる。白の賢者となったガンダルフはサルマンを[[賢人団>イスタリ]]と[[白の会議]]から追放し、その杖を折る。さらにその直後、グリマによってパランティーアまで失うこととなった。
こうして双方に裏切りの露呈したサルマンは、モルドールからの報復を恐れながら逃げることもできない立場に追い込まれた。

指輪戦争が続く内はそのまま塔に閉じ込められていたが、サウロンが滅ぼされた後の8月、ついに[[木の鬚]]を説き伏せてグリマとともにオルサンクを脱出する。そこで旅を終えて帰路についていたかつての指輪の仲間の一行と行き合ったサルマンは、ホビットへの復讐として、かねてから間者を浸透させていたホビット庄へ先回りし、ごろつき共の頭「シャーキー」として庄をめちゃくちゃにすることを思いつく。
だが[[水の辺村の合戦]]においてごろつき共は、帰還した[[フロド・バギンズ]]ら[[旅人たち]]の活躍によって一掃される。サルマンもその意気を挫かれて敗れ、指輪戦争は終結した。その直後サルマンは、奴隷のように自分に付き従わせて虐げていたグリマの手によって刺し殺された。

最期の瞬間、その霊魂は靄となって立ち上り、西方を仰ぎ見たが、そこから吹きすさぶ冷たい風に吹き払われて消失した。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

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|~俳優|[[クリストファー・リー]]|
|~日本語吹き替え|[[家弓家正]]|

原作では、[[サウロン]]とは対抗した勢力を打ち立てようとしたが、映画ではストーリーの単純化のためか、サウロンの配下と化した形になっている。
原作にあった「ホビット庄の掃蕩」はカットされた。『[[ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔]] [[劇場公開版(コレクターズ・エディション)>コレクターズ・エディション]]』では、エントによるアイゼンガルド破壊後は「すでに無力」として放置される。
『[[ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還]] [[スペシャル・エクステンデッド・エディション]]』では原作同様に、ガンダルフ達とサルマンが会話するシーンがある。ただしその場で[[グリマ]]に刺され、[[オルサンク]]の頂上から落下して死亡。

** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

|~俳優|クリストファー・リー|
|~日本語吹き替え|家弓家正|

原作には登場していないが出演。
[[ガンダルフ]]と[[トーリン二世]]たちの動きに気がつき、[[裂け谷]]に[[ガラドリエル]]も呼び寄せて[[白の会議]]を開き、ドワーフの行動に懸念を示す。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#Lotro]

サルマンは[[力の指輪]]の研究によって得た知識によって、自分用の指輪を作ろうとしている。
その行為を阻止するため、冒険者達が[[オルサンク]]に侵入するクエストがある。

** コメント [#Comment]

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