#author("2017-09-20T04:43:17+09:00","","")
* アマン [#lfbb780e]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[地名]]|
|~スペル|Aman|
|~その他の呼び名|至福の国、浄福の国(Blessed Realm) &br; 不死の国、不死の地(Undying Lands) &br; 不死の国(Deathless Land(s)) &br; 西方、西方王土(the West) &br; 極西の地、さいはての西方世界、最果ての西の地、最果ての西方王土(Uttermost West) &br; さい果ての西の地(Far West)&br; 古の西方王土(Ancient West)|

** 解説 [#Explanation]

[[クウェンヤ]]で「至福の、悪のない(Blessed, free from evil)」の意。[[アルダ]]の[[大海]]を超えた彼方にある極西の土地の名前。単に''西方''とも呼ばれる。
[[アイヌア]]([[ヴァラール]]と[[マイアール]])および[[エルフ]]が住んでおり、アマンにおけるヴァラールの国は[[ヴァリノール]]、エルフの住む地域は[[エルダマール]]と呼ばれる。

アマンは[[中つ国]]のエルフにとっても精神的な故国であり、いつの日か中つ国を去ってエルフが行くべき場所とされている。そのため中つ国における主方位は、現在のような「北」ではなく「西」とされている。

>そして遂にある雨の夜、[[フロド>フロド・バギンズ]]は大気にみなぎるかんばしい香りをかぎ、水を渡ってくる歌声を聞きました。するとその時、[[ボンバディル>トム・ボンバディル]]の家で見た夢の中でのように、灰色の雨の帳がすっかり銀色のガラスに変わり、またそれも巻き上がって、かれは白い岸辺と、その先にはるかに続く緑の地を、たちまち昇る朝日の下に見たのでした。((『[[指輪物語]] [[王の帰還]]』「灰色港」))

*** 地理 [#n822dc05]

>それから遂にかれは、楽の音をきいた。そこはこの世の果てる真珠の浜辺、とわに泡立つ波が 黄金と青い宝石をなぶるところ。 &br; かれは見た。山々が黙してそびえ、ヴァリノールの裾根に黄昏がこもるのを。またエルダマールが海の彼方をのぞむ姿を。 … &br; そこはイルマリンの山のふもと、空気は鋭く、ガラスのように澄んで 切りたつ谷間にきらきらと 燈りともしたティリオンの塔が、暗い海に照り映えていた。((『[[旅の仲間]]』「数々の出会い」 [[ビルボ]]作の[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]の詩より))

アマンの東岸に沿って[[ペローリ]]の山脈があり、山脈の内側が[[ヴァリノール]]、外側の[[カラキルヤ]]周辺と[[トル・エレッセア]]の島が[[エルダマール]]となっている。アマンの西の果ては[[外なる海]]に接し、その岸辺近くに死者の霊魂が集められる[[マンドスの館]]がある。

-[[ペローリ]]山脈
--[[タニクウェティル]]
---[[イルマリン]]
--[[カラキルヤ]]
--[[ヒャルメンティア]]

-[[エルダマール]]
--[[トル・エレッセア]]
---[[アヴァルローネ]]
--[[アルクウァロンデ]]
--[[トゥーナ]]
---[[ティリオン>ティリオン(地名)]]
---[[ミンドン・エルダリエーヴァ]]

-[[ヴァリノール]]
--[[ヴァルマール]]
---[[エゼルロハール]]
---[[審判の輪]]
--[[ローリエン]]
---[[ローレルリン]]
--[[マンドス>マンドス(地名)]]
---[[マンドスの館]]
--[[フォルメノス]]

-[[ハイラスト]]
--[[オイオムーレ]]
--[[アラマン]]
--[[アヴァサール]]

-[[惑わしの島々]]

-[[ヘルカラクセ]]

-[[外なる海]]
-[[夜の扉]]

*** 歴史 [#b40c21ac]

>この要衝の地に、[[ヴァラール]]はたくさんの光と、破滅から救われた最も美しいものをすべて集め、さらに美しい種々の品を新たにこしらえた。かくて[[ヴァリノール]]は、アルダの春に際会した[[中つ国]]よりさらに美しくなった。これは、祝福された地であった。ここに住まうのは不死の者たちだからである。この地では、色褪せるものも萎れるものもなく、花にも葉にも一点の傷もなかった。また、生ある者が病むことも、堕落することもなかった。なぜなら、石や水に至るまで聖められていたからである。((『[[シルマリルの物語]]』「世の初まりのこと」))

[[ヴァラール]]は、[[灯火の時代]]の終わりに[[アルマレン]]の島が破壊された後、これ以上の破滅が[[アルダ]]に加えられることを恐れて[[中つ国]]から撤退し、[[大海]]を渡った先にあるアマンに住まうようになる。その時ヴァラールは、[[メルコール(後のモルゴス)>モルゴス]]の攻撃に対する防壁として[[ペローリ]]の山々を築き、その内側にメルコールによる破壊や堕落を免れたすべての善きものを避難させた。

そして新たに楽園を照らす光として[[二つの木]]を生み出す。こうして[[二つの木の時代]]が始まった。
一方、見捨てられた[[中つ国]]においては[[星々の時代]]であり、[[クイヴィエーネン]]に[[エルフ]]が誕生すると、ヴァラールは中つ国に存在する危険や堕落からかれらを守るため、エルフをアマンに移住させようとした。必ずしも全てのエルフがこの勧告に応じたわけではなく、また応じたエルフの全員が[[大いなる旅]]を成し遂げてアマンに辿り着いたわけでもなかったが、このためにアマンは中つ国に残ったエルフにとっても精神的な故国となった。(詳細は[[項目「エルフ」の氏族を参照>エルフ]])

しかしこの時、ヴァラールはエルフを救い出すため、かれらに暗闇を投じていたメルコールを[[力の戦い]]で打ち破り、虜囚としてアマンに連行してくる。三紀の刑期を終えて[[マンドス]]の砦から釈放されたメルコールは、改悛したと見せかけて内側からこの楽園を損ねようと目論む。
メルコールはアマンに移住した[[上のエルフ]]の間に虚言を蒔いて[[ノルドール]]の離反を招き、さらに大蜘蛛[[ウンゴリアント]]と結託して二つの木を汚染して枯死させ、アマンに暗闇を招来する。こうして二つの木の時代は終わり、悪に汚染されたことのない光はただ[[シルマリル]]の中にのみ保存されることとなった。

[[太陽の第一紀>第一紀]]、ヴァラールはさらなるモルゴスの攻撃を恐れて、ペローリの山並みを強化するとともに大海に[[惑わしの島々]]を設置。アマンは[[ヌアタレ・ヴァリノーレヴァ(ヴァリノール隠し)>ヌアタレ・ヴァリノーレヴァ]]に歌われる通り、中つ国のエルフと[[人間]]には到達できない場所となった(これを突破したのは[[航海者エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]である)。

[[怒りの戦い]]でモルゴスが敗北して[[第二紀]]になると、ヴァリノール隠しは解除され、エルフにはアマンへの帰還が許されるとともに、大海に新たに築かれた[[ヌーメノール]]の[[人間]]との間で交流が行われるようになる。ただし人間がアマンに直接航海することは禁じられていた([[ヴァラールの禁]])。
[[ヌーメノール人]]は、[[中つ国]]から[[大海]]を渡ってきた暗闇に再びとらわれて死を恐れるようになり、アマンの民の不死性を羨むようになる。[[アカルラベース]]に語られている通り、やがてモルゴスの召使[[サウロン]]の甘言にたぶらかされた王[[アル=ファラゾーン]]は神々から不死を奪取することが可能だと信じ込んでヴァラールの禁を破り、堕落したヌーメノール人の大軍を率いてアマンに攻め入った。
その時世界は[[イルーヴァタール]]の手によって作り替えられる。世界は湾曲し、アマンは[[人間]]には永久に到達できない領域に移された。

このため、[[第三紀]]以後のアマンはもはや[[中つ国]]と同じ地平には存在していない。
しかし[[エルフ]]にだけは、[[中つ国]]を離れて[[まっすぐの道]]を通り、湾曲した海を越えてアマンへと渡っていくことができる恩寵が残された。中つ国に倦み疲れたエルフはこの恩寵によってアマンへと立ち去っていったため、エルフは次第に中つ国から姿を消し、中つ国は[[人間]]の世界となっていった。

*** 「不死の国」 [#f36dbd7b]

>「たとえ、[[あなた方>ヌーメノール人]]がすべての惑わしと罠を逃れて航海し、至福の国たるアマンに到り着いたとしても、あなた方にはほとんど益はないであろう。なぜなら、その地の住民を不死なるものにしているのは[[マンウェ]]の土地ではなく、そこに住む不死なる者たちがその土地を聖めているからである。あなた方は、そこでは、あまりにも強く、揺らぐことなき光の中の蛾のように、一層早く衰え、倦み疲れるに過ぎないだろう」((同上「アカルラベース」 アマンからの使者の言葉))

アマンは不死の国とも呼ばれるが、それはその土地自体に不死性があるわけではなく、その土地の住人が不死の者([[アイヌア]]と[[エルフ]])であることによる。
したがって、死すべき運命の下にある[[人間]]がアマンへ渡ったとしても、不死を得ることはできない。''[[死すべき運命]]''は[[イルーヴァタール]]から[[人間]]に与えられた恩寵であり、ヴァラールにはその恩寵を取り上げる権限はないからである。

*** アマンへと去った人物 [#cd4f5c85]

『[[指輪物語]]』作中および『[[追補編]]』の年表の記述によれば、[[エルロンド]]、[[ガラドリエル]]、[[ギルドール>ギルドール(フィンロド王家)]]、[[レゴラス]]といったエルフがこの地へと去っている。
またエルフではないが、[[ビルボ・バギンズ]]、[[フロド・バギンズ]]、[[サムワイズ・ギャムジー]]といった[[指輪所持者]]はこの地へと去っていくことができた。さらに[[ギムリ]]も(恐らく[[ガラドリエル]]の力添えによって)この地へ去ったのではないかと言われる。
また[[ガンダルフ]]も使命の達成によってこの地へと帰っていった。

『[[シルマリルの物語]]』では、[[トゥオル]]と[[イドリル]]はアマンへ向かって船出し、後世では[[人間]]であるトゥオルは[[ノルドール]]に加えられたとされた。また二人の息子である[[半エルフ]]の[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]とその妻[[エルウィング]]もアマンへ渡り、エアレンディルは[[明星>エアレンディルの星]]となった。

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