躍 る小馬亭 †
概要†
カテゴリー | 地名 |
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スペル | The Prancing Pony |
その他の呼び名 | 小馬亭(The Pony)、ブリー村の宿屋(Inn of Bree, Inn at Bree) |
解説†
ブリー村にある古旅籠。数えられないほどの昔から代々バタバー一家によって経営されてきた宿屋で、後ろ脚で立つ肥えた白い小馬の看板を掲げる。指輪戦争の時代にはバーリマン・バタバーが亭主で、彼の下でボブやノブが働いていた。
ドアは開け放たれたままで、そこから明かりが流れ出ていました。アーチの真上にランプが一つついていて、その下に大きな看板が揺れていました。肥った白い小馬が後ろ肢で立っている看板です。ドアには白い字で「躍る小馬亭、バーリマン・バタバーの宿」と書いてありました。階下の窓には、厚いカーテンの向こうから明かりの洩れているところがたくさんありました。*1
ブリー村は緑道と東街道の交差点の近くに位置するため、この宿はブリー郷の人間やホビットだけでなく、街道を旅するドワーフやアルノールの野伏、さらには魔法使いガンダルフやトム・ボンバディルといった存在までもが立ち寄る稀有な場所だった。だが夜ごと小馬亭の集会室でかれらと寄り合うブリー郷の住人にとっては日常の風景であり、さして意識されていなかった。
ブリー郷で始まった喫煙の習慣は、この宿からブリー村に立ち寄る者たちの間に広まったという。
構造†
ブリー山の西の麓、東街道が南へ向きを変えるところで街道に面して立つ。
沢山の窓がある三階建ての建物で、両翼館が後ろへ伸び、建物正面の両翼の間に広いアーチがくり抜かれて中庭に通じていた。アーチに入って左手に玄関がある。建物は背後の丘裾を一部削って建てられており、翼館の後部では三階の窓*2は地面と同じ高さになる。北の翼館の一階には丸い窓も備えたホビット用の部屋が一、二部屋ある。
内部には、客やブリー郷の民が集う集会室(Common Room)、フロドたちが最初に案内され、馳夫と語らい、寝室を避けて泊まった休憩室/客室(the parlour)が登場している。この他、客の馬や小馬を繋ぎ留めておく厩がおそらく中庭にある。
指輪物語での記述†
裂け谷に向かうフロド・バギンズ達が、トム・ボンバディルの勧めによってここに立ち寄り、馳夫(アラゴルン二世)に出会うこととなる。
フロドはガンダルフの指示通り「山の下」の偽名を使ったが、集会室でホビット庄の世間話を始めて調子に乗ったペレグリン・トゥックが「バギンズ」の名を出してしまいそうになったため、咄嗟にごまかそうとしたフロドはテーブルの上に乗って歌を歌い、足を踏み外して“偶然”一つの指輪を指にはめてしまう。フロドの姿がかき消えたことで集会室は騒然となり、結果、おそらくしだ家のビルと南から来た男の密告によって黒の乗手の注意を引くことになってしまった。
その晩、宿は黒の乗手の襲撃を受ける。馳夫の忠告で寝室を避けたフロド達は危機を免れたが、黒の乗手によって厩につながれていた馬や小馬がすべて逃げてしまったため、宿泊客や亭主のバタバーは大損害を被った(バタバーはメリアドク・ブランディバックをはじめ馬を失った客に弁償するはめになったが、その後ほとんどの馬が無傷で戻ってきたため、結局バタバーは格安で馬を手に入れた形となった)。
指輪戦争後、フロド達はホビット庄へ帰る道中にもこの宿に立ち寄り、二泊した。その頃ブリー郷は南から来たよそ者たちの影響で治安が悪化しており、宿も不況であったが、フロド達が戻ってきたという噂を聞きつけた人々が集まり、久々の盛況となった。
その他†
『追補編』「ドゥリンの一族」によると、第三紀2941年3月15日に旅から帰る途中でブリー村に宿泊していたソーリン二世と、休養のためにホビット庄へ向かっていたガンダルフがブリー村で偶然出会い、はなれ山への遠征(『ホビットの冒険』)が計画される切っ掛けになった。
この時に二人が出会った場所は躍る小馬亭と推測されるが、直接の言及はない。
なお日本ではしばしば「踊る子馬亭」と表記されることもあるが、原語はdancing(舞踊)ではなくprancing(躍り上がる)であり、child horse/foal(子供の馬)ではなくpony(小さな馬)であるため、「躍る小馬亭」とするのが正しい。
画像†
映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定†
フロドたちがホビット庄から外界へと抜け出て、ホビットと人間が混在する混沌とした場所に入り込んだことなどを示すため、最初から不穏な空気を強調した演出になっている。
フロドとバタバーのやりとりはほぼカットされており、ガンダルフの手紙や、馬がいなくなった話もなく、フロドたちが帰郷時に立ち寄る場面も出てこない。
ピピンが口を滑らすのを防ぐため、フロドが歌を歌ってごまかそうとするシーンもない。原作と異なり、フロドが本名を隠していることなどの状況をよく知らないままついてくることになったピピンとメリーが、そのままフロドを紹介しようとして、あわてて止めに行こうとしたフロドが転んだ拍子に一つの指輪が指にはまって姿が消えてしまい、騒ぎとなる。その直後再び姿を現したフロドが馳夫にいきなりつかまって部屋に連れて行かれるという展開となっている。また黒の乗手は、フロドが指輪をはめたことを直接感じ取ったように描かれており、宿に侵入した黒の乗手におびえてバタバーが隠れている場面がある。
グッズ†
#amazon(B004KLPL9A) #amazon(B00AY7PRFW) #amazon(B004KLPL9A)映画『ホビット』における設定†
原作小説『ホビットの冒険』ではこの宿やブリー郷、ブリー村についての言及はないが、『追補編』にある記述を元に、第二部『竜に奪われた王国』冒頭で、ソーリンとガンダルフがこの宿で出会う回想場面が描かれている。だが原作と異なって偶然ではなく、ガンダルフがソーリンに会いに来た形になっている。当時の宿の亭主はバーリマンの父(Butterbur Snr)で、ソーリンの注文に応じたウェイトレスはバーリマンの母のベッツィ・バタバー(Betsy Butterbur)*3という設定。また店内でソーリンのことを睨んでいたごろつきのひとりは、しだ家のビルの父(Bill Ferny Snr)という設定になっている。
そこではソーリンは、行方不明になっている父スラーインが焦茶の国の近くにいたという噂を聞いて探しに行き、発見できずに戻ってきた途中という設定になっている。エクステンデッド・エディションでは、さらにソーリンとガンダルフの会話シーンが長くなっており、スラーインについて語っている。
ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
コメント†
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