角笛つのぶえ城の合戦;

概要

カテゴリー歴史・事件
スペルBattle of the Hornburg
その他の呼び名

解説

第三紀3019年(大いなる年)の3月3日から4日にかけて、ローハンアイゼンガルドの間で行われた戦い。
サルマンはアイゼンガルドより1万を超す大軍を送り出してアイゼンの浅瀬を突破し、ヘルム峡谷角笛城に籠城して抵抗するセーオデン王らの軍勢を包囲攻撃した。
両軍は夜を徹して戦い、数の上でアイゼンガルド軍が優勢であったが、夜明けとともにガンダルフに呼び集められたエルケンブランド率いるウェストフォルドの軍団が援軍として到着したことで形勢は逆転し、ローハン側の勝利に終わった。

参戦国、勢力

ローハン
ロヒルリムフオルン
アイゼンガルド
オークウルク=ハイを含む)、半オーク褐色国人ダンレンデイング

戦況

開戦にいたるまで

サルマンローハンを手中にするため、あらかじめグリーマを間者に取り込んでエドラスの宮廷に送り込み、セーオデンを弱体化させるとともに、セーオドレドエーオメルらが王の信任を失うよう仕向けるなど多年にわたって工作を行った。また、長年ローハンと確執のある褐色国人ダンレンデイングを同盟者に引き入れ、さらにファンゴルンの木々を伐採して物資の備蓄を行うなど、密かに戦争の準備を進めていた。
しかし、3018年9月にガンダルフオルサンクから脱出したことで、サルマンの裏切りが露呈する。そのためサルマンは公然と一つの指輪を手に入れるべく行動を開始した。

3019年2月25日のアイゼンの浅瀬の最初の合戦では、サルマンはアイゼンガルドからオーク褐色国人ダンレンデイングなどからなる軍勢を送り出して、浅瀬の通行権を奪おうとした。この戦いでかろうじてサルマンの軍勢の進撃は阻止されたものの、セーオドレドは討死にする。

その一方でサルマンは浅瀬の攻撃に先立ってモルドールと結託し、アンドゥインを通過するであろう指輪の仲間を待ち伏せし捕らえるため、ウルク=ハイの部隊を派遣していた。
アイゼンガルドとモルドールのオークの部隊は2月26日にパルス・ガレンで指輪の仲間を襲撃し、二人のホビットメリアドク・ブランディバックペレグリン・トゥック)を捕らえることに成功する。部隊は(モルドール隊の意向を無視して)ホビットをアイゼンガルドまで連行しようとしたが、途中ファンゴルンの森のきわで、東マークの軍団長エーオメルの攻撃を受けて全滅してしまう。
ホビット二人は辛くもこの混乱の最中に森に逃げ込み、そこでエント木の鬚に出会う。

また、ホビットを救出するべくオークの部隊の後を追っていたアラゴルン二世レゴラスギムリは、オークたちを掃討した後のエーオメルと出会い、さらにファンゴルンの森でガンダルフと再会する。ホビットの無事を知った一行はそのままエドラスに向かい、ガンダルフはセーオデンを癒やすとともにグリーマの裏切りを暴露し、グリーマは宮廷から追放される。

送り出したウルク=ハイが何の報せももたらさないまま全滅したことに気付いたサルマンは大いに焦り、直ちにローハンを蹂躙すべく1万を超す大軍勢を送り出した。
3月2日のアイゼンの浅瀬の第二の合戦で、アイゼンガルドの大軍はエルフヘルムグリムボルドの部隊を蹴散らし、エルケンブランドの部隊も敗走させる。このためローハンウェストフォルドの軍団は散り散りになる。

エドラスから西へ進軍してきたセーオデンらは、そこで浅瀬が突破されたこととエルケンブランドが敗走したことを知り、サルマンの大軍を迎え撃つために急ぎヘルム峡谷へ拠ることを決める。一方、ガンダルフは事態を確かめ、また散り散りになった西マークの諸軍団を呼び集めるため、飛蔭に乗って走り去った。

かくして両軍は、3月3日にヘルム峡谷にて対決することになった。

角笛城の合戦

セーオデンエーオメルらに率いられたエドラスの軍団は、3月3日の夜に奥出での谷ヘルム峡谷を守る角笛城に到着する。エルケンブランドが城に残していたウェストフォルドの1000名ほどの徒歩の者達と併せれば、角笛城と峡谷を塞ぐ奥出での防壁に配置するには十分な数だったが、1マイル以上あるヘルムの堤防を守るには少なすぎ、また兵士は幼すぎるか歳を取りすぎたものばかりであった。そのためエーオメルは王の兵とウェストフォルドの男たちの多くを城内に、自身の兵の大部分を奥出での防壁とその背後に配置し、堤防にはわずかな後衛だけを残して敵軍に備える。
炬火をかかげて進軍してくるアイゼンガルド軍は、籠城側の何倍もの兵力があり、堤防に置かれていたローハンの後衛はすみやかに城へ撤退した。

アイゼンガルド軍は角笛城に肉薄し、奥出での防壁を鉤縄と梯子で攻撃するとともに、城の大門へ通じる土手道への攻撃を執拗に繰り返し、破城鎚で城門を打ち壊そうとする。これに対しローハン側は、矢を射かけ、石を投げつけ、鉤縄を切断し、梯子を倒すなどして応戦。エーオメルアラゴルンギムリらは城門への攻撃に対して城の裏口から出撃し、攻め寄せてきたオーク褐色国人ダンレンデイングの山男らを撃退すると、破壊された城門に代わって障害物を築いた。
そこでオーク達は、上の戦闘が熾烈を極めている隙をつき、奥出での渓流が流れる奥出での防壁の暗渠から密かに防壁の内側に侵入して、奇襲を仕掛ける。しかしこの侵入に気付いたギムリを筆頭とする者たちの熾烈な反撃に遭い、奇襲は不首尾に終わった。暗渠はその後、ギムリの指示の下で塞がれる。

だがアイゼンガルド軍は暗渠に「」を投入して吹き飛ばし、奥出での防壁に割れ目をあける。これを合図に一斉攻撃を開始したアイゼンガルド軍の猛攻に押され、防壁は敵の手に落ち、そこを守っていたローハン軍は城内への退却を余儀なくされる。また、峡谷内に敵が侵入したことでローハン軍の一部(ギムリ、エーオメル、ギャムリングらを含む)が分断され、かれらは燦光洞へと退却した。

アイゼンガルド軍はその後も繰り返し鉤縄と梯子で角笛城への攻撃を続け、「火」を用いて城を揺るがし、ついに夜明けに城門のアーチを爆破する。
しかしオーク達が城内へ攻め入ろうとした瞬間、ヘルムの大角笛の音が峡谷に響き渡り、雪の鬣に打ち跨ったセーオデンを先頭に、アラゴルンやローハンの諸侯が城門から突撃する。それに応えて峡谷の燦光洞からも鬨の声が上がり、ローハン軍は一斉に反撃を開始。夜明けの光と突然の強力な反撃に圧倒されたアイゼンガルド軍は押し戻され、セーオデンらはヘルムの堤防まで至ると、奥出での谷がすっかりフオルンの森で覆われているのを目にする。
さらに奥出での谷の西の尾根に飛蔭にまたがったガンダルフと、彼によって呼び集められたエルケンブランドウェストフォルドの徒歩の軍勢が姿を見せる。籠城軍と、援軍と、フオルンの森に挟み撃ちにされたアイゼンガルド軍は総崩れとなり、褐色国人らは降伏し、オークらはフオルンの森に逃げ込んで一人残らず殲滅された。

戦後

合戦に並行してアイゼンガルドは、メリーピピンに触発されたファンゴルンエントと、それに率いられたフオルンの攻撃を受けて陥落していた。
この戦いで大きな勝利を得たローハンは、サルマンの脅威を取り除いたことで、ゴンドールからの援軍要請に大きな戦力を割くことができた。

敗北した褐色国人ダンレンデイングらは武器を取り上げられ、戦死者の埋葬といった仕事に従事されられた後で国へ返された。
角笛城の前には二つの塚山が築かれ、そこに戦死したウェストフォルドイーストフォルドの乗手たちが葬られた。また、フオルンたちの手によって二つの塚から離れて堤防の外に死んだオークの塚山が築かれ、これは死の丘と呼ばれた。

また、アイゼンの浅瀬の合戦でのローハン側の戦死者は、ガンダルフが呼び集めたエルフヘルムグリムボルドの部下の手によって浅瀬の中ノ島に埋葬され、石で囲みいくつもの槍を立てた塚が築かれた。

画像

アラン・リー作画による角笛城の合戦

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

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基本的な流れは原作をなぞっているが、主に以下のような違いがある。

画像

『ロード・オブ・ザ・リング』における角笛城の合戦 『ロード・オブ・ザ・リング』における角笛城の合戦 『ロード・オブ・ザ・リング』における角笛城の合戦 『ロード・オブ・ザ・リング』における角笛城の合戦 『ロード・オブ・ザ・リング』における角笛城の合戦

ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定

ヘルムの堤防での戦い、奥出での防壁上での戦い、破壊された防壁の裂け目を守る戦い、燦光洞の戦い、角笛城での戦いがそれぞれエピックバトルで再現され、体験することができる。

『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における角笛城の合戦(ヘルムの堤防) 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における角笛城の合戦(防壁) 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における角笛城の合戦(防壁が爆破された瞬間) 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における角笛城の合戦(爆破された防壁の裂け目) 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における角笛城の合戦(城からの光景)

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • 映画版の、梯子が掛かる瞬間にバーサーカーが先陣を切って城壁に飛び移るシーン好き。 -- 2019-03-02 (土) 17:38:59
  • レゴラスが「鎧の隙間を狙え(?)」と言った後の、アラゴルンのセリフがなんて言っているのかが気になります・・。 -- 2019-08-07 (水) 10:25:00
    • 「弓を放て!」という意味のエルフ語?の事です。 -- 2019-08-07 (水) 10:26:06
  • 映画と原作で展開が大きく異なるので映画を見て感じた疑問が原作を読んでも分からないのが困り所です。ロスローリエンから援軍に来たエルフ達は果たして何人ほど居て、合戦が終わるまでどれほど生き延びる事が出来たのか?ハマの息子、ハレスなど老人と子供ばかりだったローハンの兵士達は果たして何人が生き残れたのか? -- 2021-08-27 (金) 14:05:50
  • 映画だと原作以上に逃げ場のなさが絵的にわかってよかった。
    やっぱこの時のセオデンはサルマンの呪いから脱したとはいえ、いわばまだ寝ぼけてる感じで判断力鈍ってたのかな。
    自らを民ごと網に追い込む行為だもんな。 -- 2021-08-27 (金) 15:41:22
    • 原作と違い映画のエドラスにはサルマンの軍勢と戦えるほどの戦力はありませんでしたから、民を守るためにヘルム峡谷に逃げ込むのは仕方なかったように思えます。原作ではセオデン王が率いる騎士達が千余人、角笛城を守っていた老人や子供を中心とした騎士達が千余人、角笛城を救援に来たエルケンブランドが率いる騎士達が千余人で合わせて三千人居ましたが、映画でセオデン王が率いていた兵士達は多く見積もっても百~二百人ほどでしょうし、これでは逃げたくなるのも無理はない…と同情を禁じ得ませんでした。 -- 2021-08-28 (土) 12:10:15
      • 手勢が少ない分、ガンダルフが連れてきた騎士たちの方が割り増しされてるんじゃ?パッと見、五千人以上はいるように見えた。 -- 2021-08-28 (土) 18:49:45
  • これもペレンノール野の合戦もそうだが、援軍や解囲軍がいないと大半の籠城は無理ゲーってのがよくわかる。 -- 2022-06-04 (土) 05:31:00
    • それは攻め手に物資や兵器が十分にあって戦意も十分で地元住民の調略にも成功、他戦線でも勝っている場合の話ですよね?? -- 2022-06-04 (土) 12:18:42
      • 話ですよね??
        と言われましても…。 -- 2022-06-04 (土) 12:50:01
      • 全く煽るつもりはないしそもそも自分はそこまで戦史に詳しいわけではないですが、北条vs上杉の話や本願寺の話、日露戦争の話その他のイメージで少数の孤立無援の戦力を数十倍の味方で攻略できるような贅沢な戦場ってなかなか与えてもらえないイメージを植え付けられておるので。自分が指揮官だったら上司の督促や国元の世論や味方士気の低下(さらに食料枯渇に伝染病)に余程悩みそうな悪寒が。あと一週間の猶予があれば攻略できるのにこれらの要因により歩兵部隊のみでの吶喊を余儀なくされ失敗して処罰と相成りそうな。なので確かに援軍や敵勢力が全くなければ勝ち確定ですがそこまでもっていく努力も評価しなきゃ片手落ちではないかとおもったのです。 -- 2022-06-04 (土) 13:01:21
      • なんか深読みしすぎじゃないですか?もちろん、読み取り方は個々人の自由ですが
        “援軍や解囲軍がいないと大半の籠城は無理ゲー”
        という単なる記載に対して、「自分が指揮官だったら色んなプレッシャーから無理に押して処罰」とか「勝ち確でなくともそこまで持っていく努力も評価しなきゃ片手落ち」って話膨らませすぎではないでしょうかね…。
        なぜそんなとこまで触れなきゃならないのかが全くわかりません。 -- 2022-06-04 (土) 13:28:50
      • 味方が圧倒的優勢で軍隊としての準備がしっかりできている場合で準備万端城を取り囲んだら大半は勝利でき、逆にすでに圧倒的劣勢な勢力が苦し紛れに籠城しても大半が負けますという意味ですよね?と言いたかっただけでそこまで批判したかったわけではないですよ。気に障ったら申し訳ありません。 -- 2022-06-04 (土) 13:49:42

      • 批判に感じているわけでも、気に障ったわけでも全くないですよ!ご心配なく…。純粋に戸惑っているだけで。
        なんというか例えばですが、『一夜漬けでの志望校の受験は無理ゲー』という一般論を話したときに、
         ・それは受験生がグレードの高い志望校を受け、ろくに寝ず体調も悪く、かつ周りの受験生は万全に準備をしていた場合の話ですよね?
         ・経済的理由や部活など、勉強以外の周りのプレッシャーで受験直前までそれらに注力する学生もいるのでは?
         ・一夜漬けでなくきちんと努力していても何かの漏れで落ちる学生はいるのだから、それまでの努力も評価しないと片手落ちでは?
        と言われた時のような感覚ですw -- 2022-06-04 (土) 15:06:12
      • 一言で悲惨な籠城戦といっても守る方が孤立無援で全滅するまで戦うところに求めるか、攻め手がろくな兵器もなく人海戦術で吶喊して大損害を出すところに求めるかというイメージの違いが人それぞれあるような気もします。援軍や解囲軍ですからここは孤立無援の話なのは分かります。どうもすみません。 -- 2022-06-04 (土) 20:55:56
  • 映画観て思ったんですけど、エルフ兵案外弱くないですか?弓をもたせりゃ最強ですけど、接近戦だと普通にオークに押されてました。レゴラスみたいにばっさばっさ敵をなぎ倒すエルフは一握りなのでしょうか。 -- 2023-12-12 (火) 16:53:42
    • あれはエルフは不老だけど不死身ではないという事を観客に示す演出という側面もあるからね。 -- 2023-12-12 (火) 20:32:11
      • 数万年続いているのに、数千年で人間レベルまで衰退するんですね… -- 2023-12-12 (火) 20:53:27
    • 映画はエルフ兵の弱さもそうですが、全般的に深く考えて作られているものではないので、真剣な考察には向かないです。その場の演出の都合で設定や整合性がコロコロ変わるような映画なので。
      原作でレゴラスはエルフのなかで特に強い戦士だとは描写されていません。むしろ森エルフ一般の代表のような立ち位置。
      原作のレゴラスは映画のようなデタラメな活躍をするわけではありませんが、それを割り引いても森エルフ兵の一団がオークや褐色人相手に一方的に蹂躙されるというのは本来は考えづらい。 -- 2023-12-12 (火) 22:45:42
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