二 つの木 の時代 †
概要†
カテゴリー | 年表・暦 |
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スペル | Years of the Trees |
異訳 | 二本の木の時代 |
その他の呼び名 | 二つの木の長い年月(the long Years of the Trees)、星々の時代(ages of the stars) |
解説†
灯火の時代の後、アマンにテルペリオンとラウレリンという二つの木が誕生してヴァリノールを照らしていた、1500ヴァラール年(太陽年で約1万4400年)の時代。
また、中つ国においては星々の光の下、エルフが目覚めた時代でもあることから、星々の時代とも呼ばれる。
二つの木の時代の後は、人間が誕生する太陽の第一紀となる。
エルフの目覚めとメルコールの捕縛†
メルコールによって二つの灯火(イッルインとオルマル)が破壊された後、アマンに撤退したヴァラールは、ペローリの山脈を作ってメルコールに対する防壁とする一方、ヴァリノールに自分たちの都ヴァルマールを作った。そしてエゼッロハールでヤヴァンナが歌うと、銀の木テルペリオンと金の木ラウレリンという二つの木が育って光り輝きはじめた。
一方中つ国では、ウトゥムノを居城とするメルコールが中つ国の北方から徐々に南へと暗黒、堕落、恐怖を振りまいていた。またアマンからの攻撃を阻止するため、中つ国の北西の海岸近くにアングバンドを築いて、副官のサウロンに統治させていた。
ヴァラールは、アルダにエルフの目覚めの時が近づいているのを、イルーヴァタールの示した構想により知っていた。ヴァルダ(エルベレス)は、エルフが中つ国の闇の中に生まれないようにと、空にテルペリオンの雫から新しい星々を創り、古い星々で印となる星座を作った。そしてヴァルダの仕事が終わると同時に、クイヴィエーネンのほとりにエルフが目覚めた。
いち早くエルフが目覚めたことを知ったメルコールは、エルフがヴァラールを恐れるように仕向けさせる一方で、一部のエルフを捕らえてオークを作り出したという。一方で、オロメはたまたま中つ国で狩りをしていたときに、エルフを発見した。オロメから他のヴァラールのもとにこの知らせがもたらされると、ヴァラールは中つ国のエルフを守るため、メルコールを打倒することを決意。中つ国の北西部で緒戦が行われてこの地域は大きく破壊され、地形が変わった。だがついにヴァラールはウトゥムノを攻略し、トゥルカスがメルコールを捕らえ、アンガイノールの鎖で縛り上げ、メルコールを捕虜としてヴァリノールに連れ去った(力の戦い)。
エルダールの大いなる旅†
メルコールがヴァリノールに連行され、三期の間マンドスの砦に幽閉されることが決まると、ヴァラールはエルフの処遇を討議した。多くのヴァラールはかれらと親しく交わることを望み、評議の結果エルフをアマンへ招致することが決まった。だがウルモなどはこれに反対したほか、マンドスは決定がなされるまで口を閉ざしていた。
オロメがヴァラールの先導者として遣わされ、エルフはアマンへの招致を受けたが、全てのエルフがこれに応じたわけでも、また旅に出た者の全てがアマンへ辿りついたわけでもなかった。招致に応じたエルフはエルダールと呼ばれ、アヴァリ「応ぜざるもの」とは区別される。
オロメの先導の下、エルフは三つの集団に分かれてアマンを目指す大いなる旅に出た。第一の集団はもっとも数が少なく、速やかに進行した、イングウェに率いられたヴァンヤール族であった。第二の集団はフィンウェに率いられたノルドール族であった。第三の集団はもっとも数が多く、足も留まりがちな、エルウェとオルウェの兄弟に率いられたテレリ族であった。
エルダールは行く先々で目にする事物や土地に名前を付けつつ旅を続け、大海をウルモの曳くエレッセアの島を渡し船としてアマンへ到達した。アマンへ到達したエルフは二つの木の光を受け、カラクウェンディ「光のエルフ」と呼ばれるようになり、ヴァラールの教えを受けたこともあり、中つ国に留まったモリクウェンディ「暗闇のエルフ」を大きく凌ぐ能力を獲得した。
テレリ族は旅を中断して中つ国に留まった分派が多く、アマンへ到達した者たちはファルマリと呼ばれる。中つ国に留まった者たちはナンドール族やファラスリムといったウーマンヤールである。エルウェはマイアールのメリアンと出会ったことで中つ国に留まり、彼の一派はシンダール族「灰色エルフ」と呼ばれ、暗闇のエルフとは区別される。
メルコールの釈放と、そこからもたらされたヴァリノールでの不和†
アマンでは、イングウェ(ヴァンヤール族)、フィンウェ(ノルドール族)、オルウェ(ファルマリ)がそれぞれの氏族の上級王となり、エルダールはヴァラールの薫陶を受けてその才能と技能を開花させ、繁栄を迎えた。
フィンウェの妻ミーリエルは、息子フェアノールを生んだ際に精神を消耗し尽くし、肉体をローリエンに横たえたまま、魂はマンドスの館に去ってしまった。フィンウェは嘆き悲しみ、やがて後妻としてインディスを娶り、彼女との間にフィンゴルフィン、フィナルフィンらをもうけた。フェアノールは父の再婚を喜ばず、父の後妻にも異母弟らにもほとんど愛情を抱かなかった。
フェアノールは全エルダール史上で才能・技量ともに最も優れた者となった。やがて彼は二つの木の混じり合った光を不壊の器に封じ込め、世に類のない至宝シルマリルを作りだした。
このヴァリノールの春に、メルコールが三期の刑期を終えて、釈放された。メルコールは憎しみを隠して恭順と改心を示し、マンウェはメルコールの悪は矯正されたものと考えた。
メルコールはヴァリノールの繁栄と、喜び栄えるエルダールを激しく憎み、とりわけシルマリルに垂涎の思いを抱いた。メルコールは本心を隠してノルドール族に接近し、甘言と虚言でかれらがヴァラールに不満を抱くように、またフィンウェの息子たちが互いにいがみ合うように仕向けた。
その結果、ノルドール族は薄闇に取り残されている広大で、未踏な中つ国へ憧憬を抱くようになり、ヴァラールがかれらを不当にアマンに閉じ込めているのだと次第に不平を漏らすようになった。
フェアノールとフィンゴルフィンは、互いに相手が自分を排斥しようとしていると疑い、密かに武具を蓄え始めた。
とうとう公衆の面前でフェアノールがフィンゴルフィンに剣を突き付ける事態におよんで、ヴァラールは調停に乗り出し、調査の末にメルコールの悪意が明らかとなった。メルコールはヴァラールの追跡を逃れて行方をくらませ、虚言に惑わされていたとはいえフェアノールは罪を問われて12年の間ティリオンから追放された。
追放されたフェアノールはヴァリノールの北方にフォルメノスの砦を築き、父フィンウェと七人の息子たち、そしてシルマリルと共にそこに閉じこもった。
二つの木の殺害とシルマリルの強奪、ノルドール族の中つ国帰還†
逃れたメルコールは密かにアマン南方のアヴァサールに赴くと、そこに巣食っていた大蜘蛛ウンゴリアントの助力を得る。ヴァラールの祝祭日に二人はヴァリノールを強襲し、二つの木を枯死させると、フォルメノスを襲撃してフィンウェを殺害し、シルマリルを奪って中つ国へと逃亡した。
マンウェの膝元ではフェアノールとフィンゴルフィンの形の上での和解がなされようとしていたが、その最中に二つの木が失われ、ヴァリノールに暗闇が訪れる。この時にフォルメノスの使者より、父フィンウェが殺害されたこととシルマリルが奪われたことを知ったフェアノールは、メルコールをモルゴス「黒き敵」と呼び、タニクウェティルより走り去る。
やがてティリオンに再び現れたフェアノールは、全ノルドール族を相手に演説を行い、ヴァラールを非難し、仇敵モルゴスへの復讐とシルマリル奪還のためあくまで中つ国へ帰還するよう説得した。フェアノールと彼の七人の息子たちはこの時、シルマリルを奪還することを誓った停止することのできない恐ろしい誓言を立てた。
フェアノールに率いられたノルドール族には中つ国へ帰還する船を必要としたが、アルクウァロンデのテレリ族(ファルマリ)はかれらに船と水夫を貸し与えることを拒否する。この時の諍いが同族殺害にまで発展し、ノルドール族はアラマンにおいてマンドスの呪いを受け、ヴァラールからの怒りと追放を受けることになる。
この時、フィナルフィンと彼の率いる者たちは後悔し、進軍を取り止めてヴァリノールへ引き返し、ヴァラールの赦しを得た。だがフェアノールはあくまで進軍することを主張し、フェアノールと和解した際、フェアノールに従うと誓言したために、フィンゴルフィンも進軍を止めなかった。またフィナルフィンの子らも、フィンゴルフィンの子らへの愛から彼らとともに進軍することを選んだ。
だが、進軍が遅れて不満分子が増えることを恐れたフェアノールは、フィンゴルフィンたちを裏切り、自分に忠実な者たちだけ船で中つ国に渡ると、ロスガールで船を燃やし、フィンゴルフィンの一団をアラマンで置き去りにする。
フィンゴルフィンたちは引き返すこともできず、苦難の末にヘルカラクセの海峡を横断することになる。
一方、中つ国ではモルゴスがアングバンドを新たな本拠地とし、ベレリアンドにオークの軍勢を送り込んでテレリ族を攻撃した(ベレリアンド最初の合戦)。今やシンゴルと呼ばれ、ベレリアンドの王となっていたエルウェは多くのテレリ族を自身の王国に避難させ、メリアンがその周りを魔法帯で囲って隠した。
最初の合戦から間もなく、中つ国に帰還したフェアノールの一団が進軍してきた。モルゴスの軍が彼らを攻撃したが、ノルドール族である彼らの敵ではなかった。だが突出したフェアノールはバルログのゴスモグに致命傷を負わされ、息子たちに誓言の死守と父の仇を討つことを託して死んだ(ダゴール=ヌイン=ギリアス)。
その後、モルゴスはフェアノールの息子たちに偽りの和平交渉を持ち掛け、長男のマエズロスを捕らえて人質とし、サンゴロドリムの絶壁に吊り下げた。
その後、ヴァリノールで準備されていた月が初めて空に昇り、フィンゴルフィンの一団は角笛を高らかに吹き鳴らすとともに、月を背後に背負い長い影を前に落として、中つ国への上陸を果たした。
そして月に続いて太陽がヴァリノールから飛び立った時、中つ国東方のヒルドーリエンで人間が目覚め、太陽の第一紀が始まった。
年表†
以下の年表は『シルマリルの物語』、『Morgoth's Ring』の「The Annals of Aman」、『The War of the Jewels』の「The Grey Annals」に基づく。
灯火の時代から続く
ヴァラール年 | 事象 |
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1000 | ヴァラールが中つ国とイルーヴァタールの子らについて会議を開く。会議を抜けたヴァルダ、これより1050年にかけて新しい星々と星座を作る。 |
1050 | エルフがクイヴィエーネンで目覚める。この頃メリアンが中つ国に来る。 |
1080 | この頃メルコールの間者がエルフを発見し、彼らを悩ます。*1 |
1085 | オロメがエルフを発見する。 |
1086 | オロメがヴァリノールに戻り報告する。ヴァラールがエルフの保護について会議を開く。 |
1090 | マンウェがメルコールとの開戦を決意。力の戦いが勃発。 |
1092 | ウトゥムノの包囲が始まる。 |
1099 | ウトゥムノが陥落。メルコールが捕縛される。 |
1100 | メルコールがヴァリノールに連行され、投獄される。 |
1101 | ヴァラールが会議を開き、エルフをアマンへ召し出すことを決定する。 |
1102 | エルフの三人の使節(イングウェ、フィンウェ、エルウェ)がヴァリノールを訪れる。 |
1104 | 三人の使節がクイヴィエーネンに戻る。*2 |
1105 | エルフがエルダールとアヴァリに分裂。大いなる旅が始まる。 |
1115 | 霧ふり山脈とアンドゥインを前にしてテレリ族からナンドール族が分裂。 |
1125 | ヴァンヤール族とノルドール族がベレリアンドに入る。*3 |
1128 | テレリ族がベレリアンドに入る。 |
1130 | エルウェがナン・エルモスでメリアンと出会い、失踪する。 |
1132 | ヴァンヤール族とノルドール族がウルモの引く島に乗って大海を渡る。後を追うテレリ族はオルウェを王とし、沿岸部に住んでオッセとウイネンから教えを受ける。 |
1133 | ヴァンヤール族とノルドール族がアマンに到着。ペローリ山脈にカラキルヤの谷が開かれる。エルダールがトゥーナの丘と都のティリオンを築き始める。 |
1140 | ティリオンが完成。イングウェと多くのヴァンヤール族はヴァリノールへ移住し、その後もヴァンヤール族の移住は続く。 |
1142 | ヤヴァンナがエルダールにガラシリオンを与える。 |
1149 | フィンウェの願いを受け、ウルモがテレリ族を迎えに行く。オッセの嘆願を聞いて一部のテレリ族は中つ国の沿岸に留まる(ファラスリム)。 |
1150 | オルウェの率いるテレリ族がウルモの引く島に乗って大海を渡る。しかしエルウェを捜し求める者は中つ国に残る(エグラス)。 |
1151 | オッセの声を聴いたテレリ族の願いを受け、ウルモが彼らの乗る島をアマン近海に留める(トル・エレッセアの誕生)。 |
1152 | エルウェが目覚める。彼はベレリアンドのエルダール(シンダール族)の王に、メリアンはその王妃になる。 |
1161 | トル・エレッセアのテレリが船を建造してアマン本土へ渡る。 |
1162 | フィンウェとノルドール族の援助を受けてオルウェがアルクウァロンデの建造を始める。 |
1165 | 最後のヴァンヤール族がティリオンを去る。以降、ノルドール族はテレリ族(ファルマリ)と親交を持つ。 |
1169 | ティリオンでフェアノール誕生。ルーミルが文字を発明。この頃ノルドール族はアウレとその民から学び、技能を高め、地中から宝石を見出す。 |
1170 | ミーリエルが眠りにつく。 |
1172 | マンウェの宣告。 |
1185 | フィンウェとインディスが結婚する。 |
1190 | フィンゴルフィン誕生。 |
1200 | この頃にネルドレスの森でルーシエン誕生か。 |
1200~1250年頃にかけて、シンゴルとメリアンの力がベレリアンド全土に及ぶようになる。 | |
1230 | フィナルフィン誕生。 |
1250 | この頃フェアノールの才能が開花し始め、ルーミルの文字を基にした新しい文字を考案し、宝石作りを学び始める。この頃ドワーフがベレリアンドに入り、同地のエルダールにその存在が知られる。 |
1280 | フィナルフィンとエアルウェンが結婚する。 |
1300 | トゥルゴンとフィンロド誕生。この頃にメリアンの助言を受けてシンゴルがメネグロスを造営する。 |
1330 | ベレリアンドにオークが初めて現れる*4。シンゴルがドワーフにシンダール族のための武器を鍛えさせる。 |
1350 | この頃デネソール率いるナンドールがベレリアンドに来て、オッシリアンドに住む(緑のエルフ)。 |
以降、1495年までベレリアンドでは平和な時代が続く。この間、ダエロンがキルスを考案する*5。 | |
1362 | エルダマールでガラドリエル誕生。ティリオンでアルエゼル誕生。 |
1400 | メルコールが釈放される。 |
1410 | メルコールが知識を求めるノルドール族に接近する。 |
1449 | フェアノールがシルマリルの製作を始める。 |
1450 | フェアノールがシルマリルを完成させる。 |
1450-1490 | この間、メルコールがノルドール族を扇動する。 |
1490 | フェアノールがヴァラールの裁きを受け、ティリオンから追放される。フェアノールはフォルメノスを築いてフィンウェと共に籠る。メルコールが姿をくらます。 |
1492 | メルコールがフォルメノスに現れ、フェアノールが追い払う。逃亡したメルコールは、アヴァサールでウンゴリアントと出会う。 |
1495 | メルコールとウンゴリアントがヴァリノールを襲撃する。二つの木の殺害。フォルメノスでメルコールがフィンウェを殺し、シルマリルを奪う。二人は中つ国へ逃亡するが仲間割れを起こし、ウンゴリアントは追い払われる。メルコールがアングバンドを新たな本拠地とする。 |
フェアノールがティリオンで演説を行い、ノルドール族を奮い立たせる。フェアノールの誓言が立てられる。ノルドール族の逃亡が始まる。アルクウァロンデで同族殺害が起こる。 | |
1496 | ノルドール族にマンドスの宣告が下される。フィナルフィンが引き返す。 |
1497 | アングバンドのオークの軍勢がベレリアンドに侵入する。ベレリアンド最初の合戦。ドリアスが魔法帯に囲まれる。 |
フェアノールの一党がフィンゴルフィンの一党を置き去りにして船で中つ国へ渡る。フィンゴルフィンたちはヘルカラクセの海峡を横断して中つ国へ向かう。フェアノールたちが中つ国に上陸*6。ダゴール=ヌイン=ギリアス。フェアノールの死。モルゴスの偽りの交渉でマエズロスが捕えられる。 | |
1498 | モルゴスがマエズロスをサンゴロドリムに吊るす。他のフェアノールの息子たちは引き上げてヒスルムに野営する。 |
1500 | フィンゴルフィンたちがヘルカラクセの海峡を渡り終える。 |
第一紀へ続く
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