エルフ†
概要†
カテゴリー | 種族 |
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スペル | Elf(単) / Elves(複)*1 |
その他の呼び名 | クウェンディ(Quendi) エルダール(Eldar) エルダリエ(Eldalië) エゼルリム(Edhelrim)*2 イルーヴァタールの長子(Elder Children of Ilúvatar) 最初に生まれた者たち(Firstborn) (Elder Kindred) 長上族(Elder People) (Elder Race) 美しい者たち、美しい民(Fair Folk) 白い魔物(white-fiends) |
解説†
イルーヴァタールの長子。中つ国に最初に目覚めることを定められたアルダの住人であり、言葉を話す最初の種族であった。
そのため彼らは、自らのことを「声を出して話す者」の意であるクウェンディと呼んだ。また、月も太陽も生まれる以前の星空の下で生まれたため、ヴァラールのオロメからは「星の民」を意味するエルダールの名で呼ばれた。人間からは美しい民などと呼ばれる。
エルフはイルーヴァタールより、アルダの中にあって最高の美を創出し、かつ所有することを運命づけられていた。そのため恩寵として、アルダに生きる全ての存在の中で、最も美しくかつ優れた資質を与えられていた。
エルフが「不死」であるのもこのためである。エルフの運命はアルダと分かち難く結びついており、たとえ肉体が滅んでも魂がそこを離れることは無い。肉体を失ったエルフの魂はマンドスの館へ招集され、世界が終わるまでそこに留まり続けるか、あるいは再び肉体を持って生まれ変わることができた。
一方でこれは、アルダの運命に束縛されることでもあり、世界の環から逃れ出ることができないということでもあった。
エルフはヴァリエのエルベレスが星々を撒いた時に目覚め、上古の世に数々の偉業を成したが、月と太陽が昇り、世界が後に生まれた者達の時代へと移り変わっていくと、次第に地上からは姿を消していった。ある者は海の彼方のエルフ本国に去り、中つ国に留まった者も矮小化して消えていくか、目に見えない記憶のような存在へと変わっていった。
エルフたちは不死であり、かれらの智慧は時代を経るにつれていや増し、いかなる病も疫病もかれらに死をもたらすことはなかった。もっとも、かれらの肉体はこの世の物質からできていたから、これを滅ぼすことはできた。かれらの肉体は、その頃は今より人間の肉体に似ていた。かれらの肉体に精神の火が宿ってまだ間がなかったからである。その火は、時と共にかれらを内側から焼き尽くすのである。*3
特徴†
外見†
人間に似ているが男も女も非常に美しく、身長は人間と同じか長身。肌の色は少なくともノルドールは薄めで、髪の色は氏族にもよるが黒、金、銀など。*4*5
作中で「エルフの耳は尖っている」ということに触れられたことはないが、トールキンが残した資料から彼がそう想定していたことは伺える(それほど長いわけではない)*6。
エルフという種族が目覚めて最初に目にしたものが空の星であったため、かれらは目に明るい星の光を宿している。
能力†
アルダに生きる存在の中で、最高の能力を与えられている。とはいえ、氏族によって能力には差がある。
肉体的にも精神的にも極めて強靭かつ繊細であり、人間には不可能な様々なことを成し遂げることができる。特に美しいものを案出することに優れる。エルフの介在したものは、言語や工芸品、武具や国土そのものにいたるまで、魔法めいた性質を帯びるようになる。
病気にかかることもなければ、老いることも寿命もない。暑さや寒さなどに対する耐性も高く、困難な状況でもよく耐える。
最初のエルフは月も太陽もない、星々のみが世界を照らす時代に生まれたため、星明かり程度の光さえあれば遠方を見通す事ができる。またその視力も、人間より遙かに鋭い。睡眠の意味も人間とは異なり、瞑想によって休息をとることができる(たとえ走りながらでも可能)。身のこなしも非常にしなやかで、雪の上に足跡をつけずに歩いたり、草の茂る森林を音も立てずに進んだりすることができる。
エルフは武器などによって殺されるか、生に倦み疲れて逝かない限り死ぬことはない。その「死」の意味も人間とは異なり、魂はマンドスの館に招集され、そこで世界の終わりを待つか、再び肉体を得て転生することになる。明るい性格のエルフは多いが、年月と共に、叡智と哀しみが積み重なっていき、それとともにその美しさも増していく。
文明・文化†
人間より長い歴史を持ち、エルフ自身の技量の高さもあり、文化や技術は人間のそれを遙かに凌駕する。特にアマンに渡ったエルフ(上のエルフ)はヴァラールに直接教えを受けたため、その能力はずば抜けている。耳も聡いため、歌や音楽の技量も非常に高く、言葉も美しい。
エルベレスが天空に星々を撒いた時に目覚めたため、ヴァラールの内で彼女を最も崇拝しており、中つ国でも彼女への讃歌を歌いながら逍遥する姿がしばしば見られる。
住居†
天空の下、開けた土地や森林に都市を造るが、放浪の生活を送ることを好むエルフも少なくない。戦乱の時代による必要性によって、洞窟や要塞を住居とする事もあった。
氏族†
種族生誕の地クイヴィエーネンから西方のアマンへの移住を試みる大いなる旅でどのように行動したかによって分類される。旅に出た者はエルダールと呼ばれ、旅を拒んだ者はアヴァリと呼ばれる。エルダールの中で第一陣はヴァンヤール、第二陣はノルドール、第三陣はテレリ。テレリは更に分けられ、大海を渡ったものはファルマリ、大海を越えずベレリアンドに残った者はシンダール。ベレリアンドに入る以前に霧ふり山脈を西に越えなかった者はナンドールと呼ぶ。ナンドールのうち、後になって霧ふり山脈を南に迂回して青の山脈を越えオッシリアンドに住んだ者はライクウェンディ(緑のエルフ)、霧ふり山脈の東に残った者はタワルワイス(シルヴァン・エルフ)となる。
エルダールのうち、アマンに到達した者を指してアマンヤールといい、対してアマンに到達しなかった者を指してウーマンヤールという。全てのエルフはカラクウェンディ(光のエルフ)とモリクウェンディ(暗闇のエルフ)に分けられる。
クウェンディ(エルフ族)の分類 | |||||||
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エルダール | アヴァリ | ||||||
大いなる旅に出たエルフ。 | 大いなる旅を拒んだエルフ。 | ||||||
ヴァンヤール | ノルドール | テレリ | |||||
イングウェに率いられたエルダールの第一陣。全員がアマンに渡った。 | フィンウェに率いられたエルダールの第二陣。全員がアマンに渡ったが、後に多くがフェアノールに同調して中つ国への帰還を果たした。 | エルウェ(シンゴル)とその弟のオルウェによって率いられたエルダールの第三陣。 | |||||
ファルマリ | ファラスリム | シンダール | ナンドール | ||||
オルウェに率いられ、アマンへ渡ったテレリ。 | キールダンを領主とするテレリ。オッセに説得されて中つ国に残った。 | シンゴルを王として、ベレリアンドに留まった灰色エルフ。 | 霧ふり山脈の東で、レンウェに率いられてテレリの一行から離れた者。 | ||||
ライクウェンディ | タワルワイス | ||||||
ナンドールのうち、後にデネソールに率いられて西に移動、オッシリアンドに住むようになった緑のエルフ。 | 霧ふり山脈の東に住んだエルフ。 | ||||||
アマンヤール | ウーマンヤール | ||||||
アマンに到達したエルダール。 | アマンに到達しなかったエルダール。 |
この文字色はカラクウェンディ即ち「光のエルフ(上のエルフ)」で、二つの木がある時に、アマンに来たエルフである。
この文字色はモリクウェンディ即ち「暗闇のエルフ」で、アマンで二つの木の光を見なかったエルフである。ただしシンダールは「灰色エルフ」という意味で、暗闇のエルフとは分けて考えられることもある。詳細はシンダールの項目を参照。
言語†
元々は一つの言語であったが、エルフ族の分裂が続くうちにいくつかに別れた。カラクウェンディの言語はクウェンヤ。モリクウェンディのうち、霧ふり山脈の西に住むものはシンダリンを使う。中つ国に帰還したノルドールはシンダリンを使うようになったが、儀礼などの時にまれにクウェンヤを使った。
霧ふり山脈の東に住むシルヴァン・エルフの言葉はシルヴァン語であったが、シルヴァン語の単語は原作中には出てこない。
偏見†
オークを強く憎んでおり、冥王とその勢力を憎んでいる。エルフの中でもシンダールはドリアス滅亡の歴史的経緯(シルマリルとナウグラミールを巡る争い)からドワーフと確執がある。だがノルドールは、工人、職人としての共通点からか、ドワーフと比較的親しい(特にエレギオンのノルドールはドワーフと友好的だった)。人間に対しては基本的には友好的だが、「死すべき運命」によって世界を離れていくかれらを不可解な存在と感じており、無関心であったり蔑視したりすることもある。
中つ国におけるどのエルフも、海に対する強い憧れを持つ。金よりも銀を好み、テルペリオンやその雫から作られた星々、その最後の花である月を特に愛する。宝石の中では緑柱石を好む。
歴史†
星々の時代、エルベレスがテルペリオンの銀の雫から星々を作り終えた時、中つ国の東方にあるクイヴィエーネンの湖のほとりで目覚めた。しかしかれらはすぐに、当時中つ国を支配していた大敵メルコールの暗闇に脅かされるようになる。やがてヴァラのオロメもかれらを発見して、エルダールの名で呼ぶようになる。ヴァラールはエルフがメルコールに脅かされていることを知ると、かれらを救うために力の戦いを起こした。
メルコールが敗北すると、ヴァラールはエルフを危険の多い中つ国から西方の至福の国アマンへと移住させ、共に暮らす事を望む。しかし全てのエルフがそれに応じたわけではなかった。ヴァラールの招きに応じたエルフはオロメに先導され、三つの氏族に分かれて大いなる旅に出たが、その全てがアマンに到達したわけでもない。これによってエルフはいくつもの集団に分裂し、その言語もバラバラになっていった。
アマンに到達したエルフは二つの木の光とヴァラールの教えを受け、その能力を開花させて繁栄を迎える(光のエルフ)。一方中つ国に留まったエルフも、星空の下で自由に暮らしていた(暗闇のエルフ)。しかし釈放されたメルコール(モルゴス)は二つの木を枯死させ、その光が封じ込められた大宝玉シルマリルを奪って中つ国に逃亡する。このため中つ国のエルフは再びモルゴスの暗闇に脅かされるようになり、またアマンのエルフの内ノルドール族だけはシルマリルを取り返すために中つ国へと帰還した。エルフ達はベレリアンドにおいて冥王モルゴスを相手に望みない戦いを続けた(宝玉戦争)。
新たな光として月と太陽が出現し、太陽の第一紀となると、人間がベレリアンドに到達してくる。大部分の人間はモルゴスに与したが、少数のエルフに忠実な人間はエダインと呼ばれた。エルフとエダインの結び付きによって生まれた半エルフのエアレンディルはアマンへの航海を成し遂げ、彼の懇願を容れたヴァラールは怒りの戦いを起こして完全にモルゴスを打ち破る。しかしこの戦いによってベレリアンドは水没した。
第二紀になると、少なからぬエルフが西方へ去って行ったが、中つ国を去りがたく留まるエルフも多くいた。リンドンには最後の上級王ギル=ガラドの国が、エリアドールにはエレギオンが築かれた。しかしエレギオンの金銀細工師達はモルゴスの召使サウロンにつけ込まれて力の指輪を鍛造してしまう。サウロンは全ての指輪を統べる一つの指輪によって中つ国の覇権を握ろうとしたが、エルフ達はそれに気付いて指輪を隠し、そのためサウロンとの戦争がはじまる。
エダインの末裔であるヌーメノール人(ドゥーネダイン)の援助によって中つ国におけるサウロンの勢力は抑えられたが、やがてヌーメノール人はサウロンに誑かされて堕落し、ヴァラールの怒りを受けてヌーメノールは滅ぼされる。この時世界は作り直され、アマンは世界の圏外に移されたが、エルフにはまっすぐの道を通って西方へと去る恩寵が残されていた。しかしこのために中つ国は完全に人間の世界へと移り変わる。
ヴァラールとエルフに忠実であり続けたヌーメノール人は滅亡を逃れて中つ国に亡国の民の王国を築き、ドゥーネダインの上級王エレンディルとエルフの上級王ギル=ガラドは最後の同盟を結んだ。これによってサウロンは倒されたが、一つの指輪は破壊されず行方不明になる。
第三紀になると、エルフは三つの指輪の力によってかろうじて中つ国に踏み留まっていたが、それでも中つ国におけるエルフの力は確実に減じていった。やがてサウロンが蘇り、一つの指輪が再発見されると、エルフ達はサウロンの脅威を完全に除くために一つの指輪を破壊することを選ぶ。しかしそうすることは、三つの指輪の力が失われることも意味していた。指輪戦争によって一つの指輪の破壊が達成されると、エルフ達は三つの指輪による保護を失い、中つ国に倦んだ多くのエルフが西方へと船出して永遠に去って行った。
こうしてエルフの時代は終わった。第四紀以降も中つ国に留まったエルフは、やがては衰退して消えていくことになる。
多数の名の意味†
- エルフ (Elf)
- 「クウェンディ」及び「エルダール」を英語に訳したもの。英語のelfは元来は人間と背丈の変わらない妖精神族を指していた語だが、時代が下るにつれて小柄な小妖精を指すようになった。これをトールキンは「事実より矮小化されてしまった」としており、この語の古い意味を念頭に置いてこの上古の種族の名前に用いることにした。そのため複数形は英語で普通使われるelfsではなく、‘elves’が使われている。
- クウェンディ (Quendi)
- クウェンヤで「声を出して話す者(Those that speak with voices)」の意。エルフが自分たちを指して呼んだ語。また、エルダールとアヴァリの区別なく全エルフ族を指して使われることもある。
- エルダール (Eldar)
- クウェンヤで「星の民」の意。大いなる旅に踏み出したエルフ。詳細は当該項目を参照。
- エルダリエ (Eldalië)
- エルダールと同義。
- エゼルリム(Edhelrim)
- シンダリンにおいてエルダールに相当する語だが、もっぱら全てのエルフを指す。またシンダールの自称でもあった(「シンダール」は流謫のノルドールによって付けられたクウェンヤ名であるため)。
- イルーヴァタールの長子 (Elder Children of Ilúvatar)
最初に生まれた者たち (Firstborn)
長上族 (Elder People) - イルーヴァタールの子らのうち、最初に地上に目覚めることが定められていたため。
- 美しい民 (Fair Folk)
- 人間やホビットがエルフを呼ぶ語。実際の西欧伝承でも妖精族(エルフ、フェアリー等)は名指しを避けてこのように呼び習わされていた。
- 白い魔物(white-fiends)
- 第一紀にヒスルムに入植した東夷が呼んだ名。彼らはエルフを憎んでいたが、それ以上に恐れてもいた。
ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
片手剣及び弓の扱いが有利であり、俊敏(Agility)にボーナスを得られる。病気攻撃に耐性がある(完全に防げるわけではない)。弱点として、最初に生まれた者の衰退(Fading of the Firstborn)、最初に生まれた者の悲しみ(Sorrow of the Firstborn)があり、士気の高さや回復力が他の種族に比べて低め(ただし人間の友(Friend of Man)特性を入れることで補強できる)。森の影(Silvan Shadows)という特性で、姿を隠して行動できる。
他作品に与えた影響†
トールキン以前の近代におけるエルフは、小妖精としてとらえられることが多かったが、トールキンが描いたこのエルフの姿が他のフィクション作品にも大きく広まり、「美しく、長寿で、弓の扱いが得意」といった現在の一般的なファンタジー作品におけるエルフのイメージを作ることになった。
ただしダークエルフ(闇のエルフ)は、褐色肌であるとか邪悪であるとかいうケースが多く普及し、トールキンが描いた暗闇のエルフとは大きく異なっている(トールキンが書いた暗闇のエルフは邪悪でも色黒でもない)。
またハーフエルフも、トールキンが描いた半エルフとは異なっていることが多い。ハイエルフという言葉も、トールキンによる上のエルフとはやや違った形で普及している。
Include/エルフ†
エルフ(クウェンディ)の分類 | |||||||
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エルダール | アヴァリ | ||||||
ヴァンヤール | ノルドール | テレリ | |||||
ファルマリ | ファラスリム | シンダール (灰色エルフ) | ナンドール | ||||
ライクウェンディ (緑のエルフ) | タワルワイス (シルヴァン・エルフ) | ||||||
アマンヤール | ウーマンヤール | ||||||
上のエルフ | 暗闇のエルフ |
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