なぞなぞ遊び

概要

カテゴリー歴史・事件
スペルRiddle-game
その他の呼び名なぞくらべ(riddle-competition)

解説

ホビットの冒険』において、ゴブリン町で一人はぐれて迷子になったビルボ・バギンズが、地底湖で遭遇したゴクリとの間で行ったなぞなぞ問答。
ゴクリはビルボが持つエルフの短剣を警戒して、時間を稼ぐためにこの勝負を申し込んだ。一方のビルボは出口がわからずどうしようもなくなっていたため、この勝負を受けた。ビルボが勝ったらゴクリがビルボを出口まで案内するが、ゴクリが勝ったらゴクリがビルボを食べてしまうという条件だった。
なぞなぞは古い歴史を持つ神聖な遊びであり、悪質な者であっても不正行為は許されなかったという。

両者は一進一退の攻防を繰り広げたが、ビルボの出題する地上の明るい物事を扱ったなぞはゴクリを苦戦させるとともに、かつて仲間たちと暮らしていた昔の記憶を呼び起こす。だがそれでゴクリはみるみる機嫌を損じ、ビルボを食べようという意思を露骨に大きくしていったため、しまいにビルボは恐慌状態に陥って上手くなぞが考え出せなくなっていった。
なぞに臆したビルボはポケットをまさぐっていて、さっき拾った指輪が手に触れたことから、つい「このポケットにあるものは、何だ?」と頭に浮かんだただの「問い」をそのまま口にしてしまう。これを「なぞ」と見なしたゴクリが答えを当てようとして失敗したため、なし崩し的にビルボの勝利で終わった。*1

だが長い地下生活で性根の曲がったゴクリは約束を反故にしてビルボを襲おうとした。すんでのところで逃げ出したビルボは偶然指に指輪がはまったことから身体が透明になり、ゴクリの目を逃れて無事にゴブリン町から脱出することができた。

なぞなぞ一覧

なぞなぞ、なんだ、
木よりも高いが、根を見た者なし、
ぐんとそびえて、のびっこないもの。

What has roots as nobody sees,
Is taller than trees,
 Up, up it goes,
 And yet never grows?

赤い丘の上に、白馬 三十ならんで、
足ぶみしたり、すっくと立ったり、
なんだ?

Thirty white horses on a red hill,
 First they champ,
 Then they stamp,
Then they stand still.

声がないくせに、しいしい泣くし、
はねがないくせに、ばたばた飛ぶし、
歯がないくせに、きりきりかむし、
口がないくせに、ぶつぶついうもの、は?

Voiceless it cries,
Wingless flutters,
Toothless bites,
Mouthless mutters.

青いお顔の一つ目が、
緑のお顔の一つ目に、
「お目々は似てるが、立場がちがう。
こっちは高い、あっちは低い。」
といったとさ、なあーんだ?

An eye in a blue face
Saw an eye in a green face.
“That eye is like to this eye”
Said the first eye,
“But in low place,
Not in high place.”

見ても見えず、さわってもふれず、
きいてもきこえず、かいでもにおわぬ。
星のうしろと、山のしたにいて、
がらんどの穴に、はいりこむ。
いちばんはじめにやってきて、いちばんあとからやってくる。
いのちをなくす。わらいをころす。
こんなもの、なんじゃ?

It cannot be seen, cannot be felt,
Cannot be heard, cannot be smelt.
It lies behind stars and under hills,
 And empty holes it fills.
It comes first and follows after,
 Ends life, kills laughter.

この箱には、ちょうつがいも、
かぎも、ふたも、ありません。
それでも、なかには黄金の宝ものが
かくしてある。なんでしょう?

A box without hinges, key, or lid,
Yet golden treasure inside is hid,

息もしないで 生きていて、
死んでるように つめたくて、
のどかわかぬが 水をのみ、
よろい着てても 音もせぬ。*2

Alive without breath,
As cold as death;
Never thirsty, ever drinking,
All in mail never clinking.

足なしが一本足の上にねて、
二本足が三本足の上にすわり、
四本足がなにかを食べてるものは?

No-legs lay on one-leg, two-legs sat near on three-legs, four-legs got some.

どんなものでも 食べつくす、
鳥も、獣も、木も草も。
鉄も、いわおも かみくだき、
勇士を殺し、町をほろぼし、
高い山さえ、ちりとなす。

This thing all things devours:
Birds, beasts, trees, flowers;
Gnaws iron, bites steel;
Grinds hard stones to meal;
Slays king, ruins town,
And beats high mountain down.

このポケットにあるものは、何だ?

What have I got in my pocket?

改訂と異伝について

ホビットの冒険』の初版では、この部分はビルボが勝ったらゴクリがビルボに「贈り物」をする約束だったが、既にビルボはその贈り物である指輪を拾っていたため、代わりにゴクリに出口まで案内させた、という内容になっていた。
1951年の第二版で現在の形に改訂されたが、これは1954~55年に出版される『指輪物語』の内容に合わせたものだった。

この変更は『指輪物語』において物語の一要素として取り入れられた。
指輪の魔力に捉えられたビルボはそれを入手した経緯を隠したがり、自らの日記兼回顧録(後の赤表紙本)に上述のような「嘘」の記録をしたのであった。後にビルボはガンダルフに問い詰められて真相を告白し、エルロンドの会議においてもなぞなぞ一つ省略せずに真相を語ったが、回顧録の記録はついに修正しなかった。そのため赤表紙本の原本は無論のこと、幾つかの写本や抄本でもビルボの嘘の話がそのまま記載されているが、多くの写本ではフロドサムワイズの手記に基づいた真相が別伝として記載されているという。

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

冒頭、ビルボが去った後でガンダルフが一人で考え込んでいる時に、なぞなぞ遊びの事を呟いている。

映画『ホビット』における設定

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作中でこの場面がかなり忠実に再現されている。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • 映画のゴラムは表情やリアクションがいちいち面白かった。 -- 2017-01-29 (日) 01:45:30
  • Ringwinnerは「勝って指輪を手に入れた者」の意味。「指輪ひろっ太郎」は誤訳。 -- 2017-01-29 (日) 02:40:49
    • ビルボがゴクリから指輪を盗んだのをごまかしている表現が「winner」なんだから、日本語訳もそれに準じて盗んだを「ひろった」に変えてごまかしているのが深いんだよ。 -- 2017-01-29 (日) 21:18:39
      • ねこばばした指輪→いや、勝負に勝ったんだから戦利品として持っててもいい物→自分は勝負で指輪を勝ち取った、正当な所持者。→私のもの、わたしのいとしいひと。「拾った、もらっとこ」のようなものではなく、ビルボは指輪の所有を積極的に正当化したいのです。 -- 2017-01-30 (月) 04:18:46
      • 翻訳というものは単に外国語が読めるだけでは出来ないのだとよくと言われるんですが、これはそれを示す具体例としていいかもしれませんね。 -- 2017-02-04 (土) 07:52:12
  • ヒナギクの上に照るおひさま のなぞなぞですが、英語圏ではヒナギクと太陽をセットにして表現するんでしょうか?ハリーポッターでも「お日様・ヒナギク・とろけたバター」という呪文のフレーズがありましたが。 -- 2020-11-13 (金) 22:11:04
    • デイジーdaisyと日dayの言葉のつながりではないかと思います -- 2020-11-13 (金) 22:17:33
  • 面白そうですけど、失敗したら大変そうですね・・。 -- 2021-10-19 (火) 13:15:55
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