いとしいしと†
概要†
解説†
ゴクリが一つの指輪を呼ぶ言葉。「いとしいひと」ではなく「いとしいしと」なのは、時折原文でmy precioussssと摩擦音が強調されているものを瀬田貞二が日本語的に再現したため。
ゴクリは自己と指輪を半ば同一視し、指輪に向かって絶えず独り言のように話しかけることを常としていた。そのため「いとしいしと」は指輪への呼びかけであると同時に彼自身への呼びかけでもあり、一人称も基本的に「わしら」と複数形を使用した。
「いてて、ス、ス、ス! 気いつけろ、いとしいしと! 急がば、まわれ。わしら、首根っこ折るようなしどいことしちゃなんねえぞ、いとしいしと、なんねえとも、いとしい――ゴクリ!」*2
「いとしいもの」†
『サウロンのありとある業のうちにて唯美しきはこれのみ。このものを
購 うに、大いなる傷手をはらいたるも、予にとりていとしきものなればなり。』*3
「いっときますが、これはわたしの物ですからね。わたしの持ち物、わたしのいとしいもの。そう、いとしいものなんだ。」*4
一つの指輪を「いとしい(precious)」と表現したのはゴクリだけではない。
イシルドゥルは、一つの指輪について記述した巻物の中でそれを予にとりていとしきもの(precious to me)と呼んでおり、これが彼の手に入ることになったサウロンとの戦いで弟アナーリオンと父エレンディルを喪ったにも関わらず、なおそう感じられると書き残している。
ビルボ・バギンズもまた、誕生祝いの後に指輪を手放すことをガンダルフに迫られた際、激昂してわたしのいとしいもの(my precious)と口走った。指輪に対してビルボがゴクリと全く同一の表現を用いたことはガンダルフを愕然とさせ、この指輪が健やかならざるものであるという彼の疑惑を確信に変える決定打となった。
コメント†
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