ガンダルフ

概要

カテゴリー人名
スペルGandalf
その他の呼び名灰色のガンダルフ (Gandalf the Grey)
灰色の放浪者 (Grey Pilgrim, Grey Wanderer)
灰色の使者 (Grey Messenger)
白のガンダルフ (Gandalf the White)
白の乗手 (White Rider)
ミスランディア (Mithrandir)
サルクーン (Tharkûn)
オローリン (Olórin)
インカーヌス (Incánus)
灰色衣 (Greyhame)
疫病神 (Stormcrow)
ラススペル (Láthspell)
種族マイアールイスタリ
性別
生没年不明

解説

灰色のガンダルフとして知られるイスタリ(魔法使い)の一人。エルフ及びゴンドール人間からは「灰色の放浪者」を意味するミスランディアと呼ばれた。
その正体は、サウロンと戦う自由の民を助けるためにヴァラールによって遣わされたマイアであり、本来の名はオローリンである。

彼は中つ国では自分の家というものを持たずに広く放浪を続け、白の会議の一員として、あるいは単独で、サウロンと戦う人々を援助し、困窮する者には誰にでも手を差し伸べて歩いた。迫り来る危難を誰よりも早くに予測して対策を立て、また他に助けが望めない者には進んで力を貸し、多くの破局から人々を救ったが、一方で「不吉の運び手」というような不名誉な見方をされることもあった。
任務に従事する中ではあくまで何者にも束縛されず、また何者も束縛しない援助者・助言者の立場に徹することを望んだ。白の会議の議長となることを辞退した一件や、デネソール二世に向けたわしもまた執政ですからなといった言葉などにそれが表れている。そのため、統治者の立場にある者からはしばしば不興を買ったが、力なき者や市井の者からは信望を集めた。

花火の製造やパイプ草の煙遊びをはじめとして、火、煙、光にまつわる技に熟達しており、いざとなれば火薬や火種に頼らずにそれらを生じさせることができた。
ルーン文字の「G」を自らの印とする。筆跡は雄勁にして優美。エルフの名剣グラムドリングの使い手であり、名馬飛蔭のこよなき友。

長くて先のとんがった青い帽子をかぶり、灰色の長いマントを着て、銀色のスカーフを巻いた老人でした。長い白い顎鬚と帽子のつばより長く突き出したもじゃもじゃ眉毛の持ち主でした。*1

…荒れ地の国から西の海辺にかけて、北の荒野から南の山中にかけて、あの人は歩きまわった、思いのままに、竜の臥所も隠し戸も、暗い森も。
 ドワーフやホビットにも、エルフや人にも、死すべき者にも、不死の者にも、枝の小鳥にも、ねぐらの獣にも、他には知られぬそれぞれの言葉でかれは話した。
 必殺の剣、生命いやす手、重荷に折れたわむ背、われ鐘の声、火をふく杖、疲れた漂泊人は、旅にあった。
 智恵の王者の御座に坐して、たちまち怒り、たちまち笑う、ひしゃげ帽子のこの老人は、とげある木の杖にすがっていた。 … *2

かれは心温かく熱意にあふれ、 … 望みが萎えて尽きんとする時燃え上がる救いの炎となって、貪りつくす滅びの炎に対峙しサウロンの敵として立ち向かった。だが喜びも激しやすい気性も灰の衣の下に隠されていたがゆえに、内なる炎に気づくのはかれをよく知る者だけだった。*3

ガンダルフは、中つ国にやってきた時に灰色港で彼を迎えたキーアダンから密かに火の指輪ナルヤを譲り受けており、第三紀を通じてその守護者であった。

第三紀のガンダルフ

「第三紀はわしの時代じゃった。わしはサウロンの敵じゃったからな。」*4

第三紀1050年頃、復活したサウロンによって緑森大森林に影が差し始めると、西方からイスタリが船に乗ってやってきた。イスタリの中で最後にやってきたのがガンダルフであった。
ガンダルフは中つ国北西部をあまねく歩きまわって自由の民の友となったが、中でもエルフと親しく交流した。

2063年には力を増した闇の森の影を憂慮して、死人占い師の正体を見極めるために単身ドル・グルドゥアへ潜入した。その結果死人占い師は要塞を捨てて逃亡し、警戒的平和がもたらされた。
死人占い師がドル・グルドゥアに帰還し、警戒的平和が終わると、賢人達はこれに対処するため2463年に白の会議を結成、ガンダルフもその一員となる。発起人のガラドリエルは当初ガンダルフを議長に推したが、ガンダルフが辞退したため、白のサルマンが議長となった。
2850年、ガンダルフは再びドル・グルドゥア潜入を決行し、死人占い師の正体がサウロン本人であることを確認するとともに、その土牢で今際のきわにあったスライン二世から、エレボール(はなれ山)の隠し戸の鍵とスロールの地図を受け取る。後にガンダルフはこの鍵をトーリン二世に渡し、彼らがはなれ山に潜入するのに使われることになった。
これに相前後する時期、スラインの消息を追い求めてモリアを東から西へ通過したようであり、この経験が後に指輪の仲間を同地へ導く助けとなった。

2758年から翌年に渡って到来した長い冬は、各地に甚大な被害をもたらしたが、ホビットも例外ではなく、その折にガンダルフは彼らを援助するためにホビット庄へやって来た。以来、多年に渡ってホビットと親しく交友し、この種族の真価を見抜くに至ったおそらく唯一の人物となる。ホビットの間では、ガンダルフはもっぱら巧みな花火師として名声を得ており、その打ち上げ花火は語り草となっていた。ガンダルフは、トゥック翁として知られるゲロンティウス(2790~2920)と親しかったが、彼の死後は上述のドル・グルドゥア潜入等の任務のため、長らくホビット庄をおとなうことがなかった。

約20年ぶりとなる2941年、ガンダルフはホビット庄を訪れ、ドワーフのエレボール遠征のためにトゥック翁の孫であるビルボ・バギンズを旅に連れ出した(『ホビットの冒険』)。
さらにエレボール遠征の途上で発見された一つの指輪の存在にもいち早く気づき、3018年から3019年(大いなる年)にかけて、一つの指輪の破壊を任務とした指輪の仲間の一員にもなり、第三紀を締めくくる指輪戦争においても中心的かつ主導的な役割を果たした。その中で一度は戦いに傷つき倒れるも、「白のガンダルフ」として復活。任務を完遂した唯一のイスタリとなった(『指輪物語』)。

ホビットの冒険』におけるガンダルフ

「ガンダルフ! ガンダルフですって! これはしたり。では、旅から旅へ、ところさだめぬ魔法使いではありませんか。 … おとなしい若者たちを、見知らぬ土地へ船出する船につれこんで、青海原へむかわせ、むこうみずな冒険へとかりたてたのが、ガンダルフではありませんか。」*5

当時ガンダルフは、サウロンドル・グルドゥアから機先を制してロリアン裂け谷を攻撃する準備を進めていること、すでに北方自由の民ゴブリンによって分断されており、もしサウロンの攻撃が実行に移されればそれに抗しきる望みがないこと、加えてこの攻撃にスマウグが破滅的な役割を果たすかもしれないことなどを思い悩んでいた。
2941年、休息のためホビット庄へ向かっていた途上、ブリー村で偶然トーリン二世と出会う。トーリン二世のスマウグへの復讐計画に事態を打開する望みを見出したガンダルフは、彼の遠征を手助けすることを約束するとともに、(サウロンの妨害を避けるため)遠征は隠密任務とするべきであることと、助っ人としてホビットビルボ・バギンズを連れて行くべきであることをトーリンに説得した。

ビルボを連れて行くことを思いついたのは、ホビットが隠密任務に大いに役立つだろうという見込みと、少年時代のビルボが外界への憧れを抱いていたことを見抜いていたためだったが、主として説明のつかない虫の知らせによるものであった。だが中年に達したビルボはすっかり腰を落ち着けてしまっており、そのためトーリンの説得とビルボを焚き付けるのに大いに苦慮するはめになる。
思いがけないお茶会を演出し、スロールの地図と鍵を切り札に使うことでその二つをなんとか切り抜けたガンダルフは、そのままトーリンとその仲間の旅に同行し、彼らを助けた。だが白の会議を動かすため、闇の森入り口でトーリンらと別れる。

サウロンがトーリンらの遠征を妨害することを阻止する必要性から、ガンダルフはドル・グルドゥアへ攻撃を加えるよう会議を説得し、彼自身も攻撃に加わった。この攻撃によって、死人占い師ロヴァニオンから追い出すことに成功する。
その後、五軍の合戦がはじまろうとするはなれ山においてビルボと再会。また、ゴブリンアクマイヌの連合軍が迫っていることを各陣営に警告するなど、自由の民が合戦を切り抜けられるよう尽力した。

結果として、トーリンの戦死をはじめとしたいくつもの犠牲はあったものの、エレボール遠征は上首尾に終わり、はなれ山の山の下の王国谷間の国は再建され、スマウグと霧ふり山脈のゴブリンの多くは滅び、北方の安全と交通、諸種族の束帯は大いに回復された。
これによってサウロンの当初の計画は頓挫したばかりでなく、後の指輪戦争においてモルドールが動員するはずだった兵力を減らし、その被害を大幅に食い止めることができた。

「ひょっとしたらあり得た事態を考えてもみるがいい。エリアドールの火と野蛮な剣が荒れ狂い、裂け谷には夜が訪れる。ゴンドールはおわさぬことになったかもしれぬ。わしらにしてもこの地における勝利からただ廃墟と炎の中に戻ることを望むしかなかったかもしれぬ。じゃが、これはさけられた――それももとはといえば、ある春の始めの夕べ、ブリー村でわしがトーリン・オーケンシールドに出会ったからじゃ。中つ国でいうめぐり会いというやつじゃのう。」*6

指輪物語』におけるガンダルフ

「そしてガンダルフには敬意を表して最後をしめくくってもらうことをお願いする。それはまた、この件に関してはガンダルフが始終指揮をとられたからでもある。」*7

ガンダルフはビルボとの親交を保ち続けていたが、ビルボが冒険で手に入れた「魔法の指輪」について当初から懸念を抱いていた。ビルボを問い詰めて彼が指輪を手に入れた経緯の真相を聞き出したガンダルフは、これを不安に思い、さらにいつまでも老いないように見えるビルボの様子にも不安を抱く。
この不安はビルボの111歳の誕生日(3001年)、指輪が彼に決定的に邪悪な影響を与えているのを目の当たりにしたことで、切迫した恐怖に変わった。指輪を手放してフロドに譲るようビルボを説得することに成功したガンダルフはホビット庄を後にし、疑念を確かめるために多年を費やすことになる。

友人アラゴルン二世に恐れを打ち明けたガンダルフは、野伏にホビット庄の守りを任せる一方、自らアラゴルンと共に十数年にわたってゴクリを捜索。3017年には捜索の目を転じてゴンドールで古文書を渉猟し、イシルドゥアが書き残していた巻物から一つの指輪の判別法の知識を得る。時を同じくしてアラゴルンがゴクリを捕獲したことにより、ゴクリの口から指輪がイシルドゥアの没したあやめ野で発見されたいきさつを聞き出した。

大いなる年の3018年4月、ホビット庄のフロドを再訪したガンダルフは、彼の所持する指輪がまさしくサウロン一つの指輪に他ならないことを確認し、その正体と危険性をフロドに明かす。フロドの従者にサムワイズ・ギャムジーを選ぶと、危険を逃れるためにホビット庄を旅立って裂け谷へと向かうよう忠告した。

そのままガンダルフはフロドに同行するつもりで袋小路屋敷に滞在していたが、6月、サウロンのオスギリアス攻撃の報が届いたことで大きな不安に満たされ、情報を集めにブリー村まで足を伸ばしたところ、そこで茶のラダガストに出会った。ラダガストは、ナズグールが出現したことを告げると共に、白のサルマンが助力を申し出ていることを伝える。不安が的中したガンダルフは、フロドに直ちに裂け谷へ出発するよう警告する手紙をバーリマン・バタバーに託し、自分はナズグールに対抗する助力を乞うため急遽アイゼンガルドへ向かう必要に迫られた。
だがこれは裏切り者サルマンの罠であり、サルマンは一つの指輪を我が物とするためにガンダルフをアイゼンガルドへ呼び寄せたのであった。サルマンへの協力を拒絶したガンダルフは、そのままひと月あまりオルサンクの頂上に監禁されてしまう。しかし、これはラダガストの善意で飛来したグワイヒアによって難を救われる。

9月下旬、ローハン飛蔭を借り受けたガンダルフはフロドを救うべくホビット庄に急行したが、既に黒の乗手はフロドの間近に迫っている絶望的な状況であった。アラゴルンがフロド達に合流したとの報せに希望を託したガンダルフは、ナズグールを撹乱しつつ裂け谷に向かうことを決意。この結果、風見が丘でナズグールと交戦し、かれらの力をフロド達から逸らすことに成功している。
10月下旬、裂け谷に到達したガンダルフはエルロンドと共にブルイネンの水流を操ってナズグールを押し流し、間一髪でフロドを救出した。

フロドがエルロンドの会議においてあらためて指輪所持者に指名されると、ガンダルフは指輪の仲間の統率者として、フロドの旅の導き手となる。
彼は地上の旅においてはアラゴルンの、地下の旅においてはギムリの助けを借りつつ、モルドールへの道を探し求めた。しかしモリアにおいて一行がバルログに襲撃された時、ガンダルフはただひとりバルログと対峙して共にドゥリンの橋から奈落に落ち、姿を消す。そのため仲間たちには、ガンダルフは死んだものと思われた。

白のガンダルフ

かれは任務の最終段階ではひどく傷つきさらには斃されたが、死の淵をさまよったのも束の間、呼び戻され、白の装束を纏い輝く炎となって蘇った。*8

だがガンダルフは落下後もバルログと戦い続けており、モリアの地の底、いやはての石の土台から無限階段を通ってケレブディルの頂にあるドゥリンの塔にいたるまで、バルログを追い詰める。山頂の闘いで、とうとう彼はバルログを山腹に投げ落として滅ぼしたが、彼自身も傷つき斃れた。
しかしガンダルフは使命を成し遂げるまでの間、あらためて中つ国に送り返される。ふたたびグワイヒアに見いだされてロスローリエンに運ばれた彼は治療を受け、灰色のマントで隠された白装束を身にまとい、とねりこの杖を携えた白のガンダルフとして蘇生した。そして、身内に隠された焔と、遠方を見通す視力を与えられていた。

ロリアンを出発したガンダルフはグワイヒアと連携を取りつつ指輪の仲間の後を追い、アモン・ヘンでフロドに迫ったサウロンの目を逸らし、その後オークに拉致されたメリーピピンを捜していたアラゴルンレゴラスギムリファンゴルンの森で合流した。
情勢を見通したガンダルフは、メリーとピピンのことは木の鬚に委ね、アラゴルン達を戦乱の迫るローハンの王宮エドラスに導く。そこでサルマンの術に蝕まれていたセオデンを癒やし、その謝礼としてセオデンから飛蔭を正式に譲り受け、以来愛馬とする。このため白の乗手と呼ばれるようになる。

アイゼンガルドローハンとの戦いでは、ヘルム峡谷に籠城するようセオデンを説得、さらに飛蔭の俊足を活かして木の鬚フオルンの援軍を派遣するよう要請するとともに、追い散らされていたエルケンブランドら西谷の軍勢を呼び集めるなど、角笛城の合戦を勝利に導くのに貢献した。
合戦後はセオデンやアラゴルンらを連れて、エントによって陥落したアイゼンガルドに向かい、サルマンと最後の談判を行う。ガンダルフは投降して協力するよう説得を試みるが、サルマンは拒否し、そのためガンダルフは白の賢者としてサルマンの杖を折って力を奪い、彼をイスタリ白の会議の両方から追放した。
さらにこの時塔から投げ落とされた黒い球をピピンが覗いてしまったことで、これがパランティーアであることに気づくと、パランティーアの危険性とゴンドールへ迫るサウロンの攻撃を察知、球をアラゴルンに預けると、ピピンを連れて急遽ミナス・ティリスへ向かった。

ガンダルフは、デネソール二世もまたサルマンのようにパランティーアを通じてサウロンに与しているのではないかと疑念を抱いたが、デネソールはそんな彼の疑念を暗に一蹴する。しかし後に明らかになったように、ガンダルフの恐れは半分は的中していた。
ゴンドールを援助するためそのままミナス・ティリスに留まったガンダルフは、しばしば灰色の衣を脱いでその身に宿る白い焰を顕わにし、ナズグールが投げかける恐怖の影から人々を救い出した。ペレンノール野の合戦では、彼は前線に立ってゴンドールの兵士を鼓舞し、魔王と対峙する。しかし負傷したファラミアに絶望したデネソールは狂気に陥り、彼とともに焼身を図ったため、ガンダルフはピピンとベレゴンドと共にファラミアを救出すべく城中に留まる。この時、白の塔のパランティーアの秘密が明らかとなった。

合戦後の最終戦略会議では西軍の大将たちを前に、望みは指輪所持者の任務達成にしかないと語り、その任務を助けてサウロンの目をそこから逸らすため、ゴンドールローハンの軍勢を囮にした黒門への陽動攻撃を仕掛けることを提案。自らもその軍勢の中に身を置き、門前ではサウロンの口の虚勢を見抜いてフロドの装身具を奪い返した。
黒門の戦いのさなか、指輪所持者は任務を達成、一つの指輪が破壊されてサウロンは滅び、サウロンの王国も瓦解した。ガンダルフは援軍としてやってきたグワイヒアと彼の一族の大鷲に、滅びの山にいるフロドたちの救出を頼む。かくしてフロドとサムは滅びの山の崩壊から救われた。

コルマルレンの野において生き残った指輪の仲間は再会。
ミナス・ティリスの門前で行われた戴冠式において、エレスサール王はガンダルフの手によって戴冠を果たした。その後エレスサール王の結婚式の直前、彼をミンドルルイン白の木の苗木がある場所まで導き、後の世の中つ国を担っていくのは人間達であることを告げる。
ガンダルフは、フロドたちがミナス・ティリスを出発するまで一緒に留まり、フロドたちと共に裂け谷、そしてブリー村躍る小馬亭まで旅をする。それからガンダルフは、ホビット庄へと帰るフロドたちと別れ、トム・ボンバディルに会いに行ったようである。

第三紀3021年(第三紀最後の年)9月29日、灰色港においてガンダルフフロドたちホビットと再会した。この時、もはやガンダルフは灰色の外衣ではなく、青と銀のマントを身に帯び、その指には赤の指輪ナルヤが公然とはめられていた。
指輪所持者であるフロドビルボ、そして他の指輪の守護者であるエルロンドガラドリエルと共に、中つ国における最愛の友飛蔭を連れて、ガンダルフもまた船に乗って西方へと去って行った。

マイアとしてのオローリン

マイアールの中で最も賢明なのはオローリンであった。かれもまたローリエンに住まっていた。しかしかれはしばしばニエンナの許を訪れ、かの女から憐れみと忍耐を学んだ。*9

ヴァリノールにおいてオローリンはもっぱら目に見える姿をとらずにエルフの間を歩き回り、その心に美しい心象を注入するマイアだった。

終わらざりし物語』にはより詳細な記述がある。オローリンはマンウェヴァルダに所属するマイアであり、アマンにおいても彼は旅にあり、纏う衣も灰色であった。彼はサウロンを恐れ、イスタリの任務に当たるには力劣ると自認していたが、それゆえに一層マンウェとヴァルダにイスタリとして推挙されたという。
彼の名を構成する語幹「オロル(olor)」あるいは「オロス(olos)」とは、クウェンヤおよびシンダール語において「夢、心象、ファンタジー」を意味し、未だアルダに先在していないがもし実現されれば世界を豊かにするであろう美しいヴィジョンを指す概念であると説明されている。

多数の名の意味

『わしの名はさまざまな国でさまざまに呼ばれる。』と、かれはいった。『エルフの間ではミスランディア、ドワーフにはサルクン、今は忘れられた西方での青年時代にはわしはオロリンだった。南の国ではインカヌス、北の国ではガンダルフ、東の国には行かぬ。』とな。*10

ガンダルフ (Gandalf)
北方の人間の言葉で「杖持つエルフ(Elf of the Wand)」の意。彼をエルフだと勘違いした人間たちが付けた名。(トールキンはこの名を『古エッダ』「巫女の予言」に登場するドワーフの名前から取り、その理由を「(魔法の)杖を持つエルフ的人物」の意味と考えられなくもないから、としている)
ミスランディア (Mithrandir)
シンダール語で「灰色の放浪者(Grey Pilgrim)」の意。エルフが付けた名。ゴンドールの高貴な身分の人間もこの名で呼んだ。
サルクーン (Tharkûn)
クズドゥルで「杖持つ人、杖の人(Staff-man)」の意。ドワーフからの呼び名。
インカーヌス (Incánus)
未詳。ハラドリムの言葉で「北方の間者(North-spy)」を意味するインカー+ヌーシュ(Inkā + nūš)がクウェンヤに取り入れられた名という説*11と、全盛期のゴンドールで付けられた「心の支配者」という意味のクウェンヤ名であるという説がある*12。(なおトールキンはこの名を「灰色髪(grey-haired)」を意味するラテン語のインカーヌス(incánus)から考案したようである)
オローリン (Olórin)
ヴァリノールにおけるクウェンヤでの名。彼は美しい啓示を与えるマイアであった。
灰色衣 (Greyhame)
ローハンでの呼び名。greycoat(灰色の外套)を意味する古英語grēg-hamaを現代英語化したもの*13
疫病神 (Stormcrow)
セオデン蛇の舌が禍の先触れとして呼んだ名。後にガンダルフ自身もインゴルドとの会話で名乗っている。
ラススペル (Láthspell)
古英語で「凶報(Ill-news)」の意。蛇の舌が侮蔑して呼んだ名。

画像

アラン・リー作画によるフロドとガンダルフ ジョン・ハウ作画によるガンダルフ 寺島龍一作画によるガンダルフ(ホビットの冒険) 寺島龍一作画によるガンダルフ(指輪物語) ガンダルフの印であるルーン文字のG

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

俳優イアン・マッケラン
日本語吹き替え有川博

原作の記述をおおむね踏襲しているが、原作で見せた叡智の働きや、高貴な力などは、物語の単純化のためか大幅に割愛されている。

『旅の仲間』では、オルサンクで変節したサルマンと対峙した際、互いに魔法の念動力で闘うという独自の描写がなされた。またモリア西門を開く合言葉がわからず、フロドが代わりに言い当てる形となっている。
『二つの塔』では、白のガンダルフとしてサルマンと似た髪型となって再登場。原作では普段は白衣を灰色の外套で隠しているが、映画ではほとんど常に白一色の姿となっている。セオデングリマを切り捨てようとした際に傍観するという原作と大きく異なった描写がなされており、代わりにアラゴルンがセオデンを止める形となっている。
『王の帰還』では、ローハンに救援を求めようとしないデネソールにしびれを切らし、ピピンを使って独断で烽火を上げさせる形となっており、加えてデネソールの今際には狂乱した彼を飛蔭の前蹴りで炎の中に突き飛ばす挙に及んでいる。また、原作では力がほぼ拮抗しているように描かれていた魔王に対し、一方的に打ち負ける描写もなされた。

グッズ

映画『ホビット』における設定

俳優イアン・マッケラン
日本語吹き替え羽佐間道夫

原作では最初から、エレボールの旅の最後はビルボ・バギンズトーリンの一行に任せるつもりだったことになっているが、映画ではガンダルフはエレボールまで皆と同行するつもりでいた。だがガラドリエルの警告を受けて急遽ラダガストとともにルダウアにあるナズグールの塚の確認に向かった。そこが空になっているのを知った後、単身でドル・グルドゥアへ向かった形となっている(ガンダルフは、一行がエレボールに入る前に再び合流するつもりだったが、ドル・グルドゥアで時間を取られたため間に合わなかった)。
ガンダルフは、死人占い師こと正体を現したサウロンの力に圧倒され、囚われの身となる。そこにガラドリエルエルロンドサルマンラダガストが救援に現れ、ガンダルフはガラドリエルによって蘇生させられたあと、ラダガストによってドル・グルドゥアから脱出させられる。その後、ガンダルフはラダガストからを借りると、エレボールを攻撃しようとしているドル・グルドゥアの軍勢のことを警告するため、自らもエレボールへ急行した。
ビルボは(原作とは異なり)指輪のことを終始秘密にしていたが、ガンダルフはゴブリンの洞窟で魔法の指輪をビルボが拾ったことに気づいていた(ただしそれが一つの指輪だとまでわかったわけではない)。そして帰郷時の別れ際「魔法の指輪は軽々しく使うものではないぞ」と忠告している(この時ビルボは指輪を落としたと噓をついている)。そしてビルボと別れたあと、意味深な表情を浮かべ去っていった。

ゴブリンの群れを光と衝撃波で吹き飛ばす、同じ系統の魔法で砦内の敵を探知したり、バリアーを張ってサウロンに取り込まれるのを防ぐ、脱走を防ぐ幻術を破る、杖で大岩を砕くなど、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作よりも魔法を使用する場面が多い。エクステンデッド・エディションではドル・グルドゥアから救出されたあと、ラダガストより杖を借りるシーンが明示されているが、その杖がうまく扱えず、五軍の合戦ではトロルに呪文を唱えるものの不発に終わっている。

日本語吹き替え版では、『ロード・オブ・ザ・リング』でガンダルフを担当した有川博が2011年10月に死去したため、『ホビット』では羽佐間道夫が吹き替えを勤めている。

グッズ

ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定

サルマンのもとから脱出し、ブリー村に到着した直後のガンダルフと冒険者が遭遇、東街道の偵察や、ラダガストの援助を冒険者に依頼してくる。
その後、指輪の仲間として出立するガンダルフを見送った後、ガラドリエルの依頼により、モリアのいやはての土の土台と無限階段でガンダルフの痕跡を発見。このことをガラドリエルに報告する。
その後、白のガンダルフと再会することになる。

『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における灰色のガンダルフ 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるガンダルフ(五軍の合戦前) 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるミスランディア(白のガンダルフ) 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるミスランディアと飛蔭 e412f49e453dc5bd844b5ec1f0388df9.jpg

コメント

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  • 剣と杖の二刀流ってかっこいいよね。 -- 2016-06-10 (金) 02:41:58
    • ゲーム汚染されていたころは「そうだ、魔法騎士じゃなくても魔法使いが剣を使って何が悪い」と目から鱗でした -- 2016-10-20 (木) 11:32:11
  • この人喫煙者だけど西方にはパイプ草はあるんだろうか? -- 2016-10-06 (木) 18:03:13
    • アマンで喫煙したら、ヤヴァンナにどつかれそうな。 -- 2016-10-20 (木) 10:06:33
  • ガンダルフはなぜゴクリを逃すという大失態を犯したのだろうか。指輪物語一巻第二章によると彼は指輪の旅の前にゴクリに二回会っている。一回目闇の森で会った時に彼はゴクリから指輪の経緯を聞き出した。そしてイシルドゥアがあやめ野で没したことは賢人会議で話題になるぐらい周知の事実である。この時点で彼は指輪の正体を90パーセント確信できるのだからビルボの百十一歳事件が発生するまで「ほっておいた」のは不用心すぎるのではなかろうか。 -- 2017-02-06 (月) 12:50:49
    • 追記、wikiではアラゴルンの助けを借りてゴクリを捕獲し指輪の経緯を聞き出したとありますが、アラゴルンの助けを借りたのは二回目の遭遇時であり、指輪の経緯を聞き出した一回目の遭遇はビルボの百十一歳事件の前ではないでしょうか。小説に「ビルボがここを出立してから、わしはふたたびゴクリの足跡を求めようとした」とあるからです。 -- 2017-02-06 (月) 13:37:48
      • 追追記 ガンダルフはアラゴルンの助けを借りて3017年前後に初めてゴクリに会ったようです。つまり2951年前後にゴクリを逃したのはガンダルフでは無く森のエルフ達であってビルボが百十一歳になる前に彼がゴクリと対峙した訳では無いってことなんですね。コメ汚し失礼しました>< -- 2017-02-06 (月) 16:08:26
    • ガンダルフのゴクリ捜索については本文の叙述が必ずしも順序通りになっていない上に記述が「過去の影」「エルロンドの会議」「追補編」等に分散していてわかりにくいですが、纏めると下のような感じですね。
      2942~2944年:ガンダルフは指輪の出処に疑念を抱き、ゴクリに会うために彼の棲家の近辺に見張りをつける。
      2944~2951年:ゴクリは指輪を取り戻すために棲家から出てくるが、闇の森→谷間の国→闇の森と戻ってきたところでモルドールに引き寄せられて南へ向かう。ガンダルフの要請を受けた森エルフはゴクリを追跡するが、ゴクリが南へ去ったため追跡を断念する。
      3001年:ビルボの別れの宴。ガンダルフは指輪に恐怖を抱き、アラゴルンに相談してゴクリを再び捜索することを勧められる。しかし既に痕跡がかすかになっていて上手くいかない。
      3009年~3017年:ガンダルフとアラゴルンはロヴァニオンからモルドールの境界にかけて徹底的にゴクリを捜索、モルドール近辺に痕跡を見つける。
      3017年:ガンダルフは発想を転じて、ミナス・ティリスでイシルドゥアの巻物を探す。アラゴルンは死者の沼地でゴクリを捕獲、闇の森まで連行する。合流したガンダルフはゴクリと初対面、尋問。 -- 2017-02-06 (月) 18:17:58
      • 上記の纏めが「過去の影」を読書するのにとても役立ちました。祝着至極なことですな!感謝! -- 2017-02-07 (火) 00:46:50
    • おまけにビルボが魔法の指輪を手に入れたことも知っていながら放置していたのも変だなと思う。サウロンに関することは一番の使命じゃないですか。魔法の指輪はたくさんあるといっても「指輪」という形態をとることはわかっているのだから、少なくても身近にあるものは調べないと・・・ -- 2018-03-08 (木) 23:30:29
  • 映画の『二つの塔』での稲妻を剣に降らせてバルログに突き刺して倒したシーン、今見るとヨシヒコのシーズン3のOPを連想しちゃうなあ。稲妻が邪を祓う最高の術っていうのはちょっとドラクエっぽくもあるかな。 -- 2017-06-18 (日) 14:00:03
  • ガンダルフと麻雀したい -- 2017-08-27 (日) 22:52:57
    • 思うように勝てなくてキレて台ひっくり返しそう -- 2017-12-28 (木) 14:05:14
      • すぐれた賢者ですら、末の末までは見通せぬものじゃからなあ。 (流局) -- 2017-12-29 (金) 23:50:08
      • 指輪所持者同士だと思考が筒抜けでゲームにならない -- 2017-12-30 (土) 02:10:17
      • うまい -- 2018-05-04 (金) 09:17:36
    • 豪運のホビット族が無双する展開 -- 2017-12-30 (土) 00:41:35
  • ピクシヴの説明に「ガンダルフがビルボを忍びの者として参加させた理由の一つに別の人材が見つからなかったから」という記述があるのですが本当なのでしょうか?何年も前に読んだときにはそのような記述はなかったように思ったのですが -- 2018-01-23 (火) 23:46:41
    • 原典で書かれてないだけで、他に適任者を探そうと試みたとも考えられる。原典にない事を書くのもアレだけどまだ大きく逸脱はしてないと思う。 -- 2018-01-24 (水) 00:36:12
    • 明らかに誤りです。ガンダルフは当初からビルボを適任として指定しており、他の人物を考慮したふしはありません。 -- 2018-01-24 (水) 01:06:55
      • 件の文は別に「ガンダルフが他の人物を探した」とは明言してないし、ビルボ以外に思い当たる適任者がいなかった事も事実でしょう。旅に参加させた理由にはならないでしょうが、その時に用意されていた状況の説明としては紛らわしいだけであながち間違いじゃないかと -- 2018-01-24 (水) 04:38:14
      • ↑ガンダルフは自分からホビット(ビルボ)の参加をトーリンに要求したのですから「別の人材が見つからなかった」というのは状況の説明としても誤りです。 -- 2018-01-24 (水) 22:10:48
    • ガンダルフがビルボを選んだ理由は、たしか終わらざりしに明確に書いてありますし、そこには血筋や性格(というか活きの良さ)まで含めた積極的な理由でビルボを選んだとあるので、他に適任者がいないからなどという消極的な理由はないでしょうね。そりゃ、積極的な理由を裏返せば、ホビット以外ダメ、バギンズ家以外ダメ、ビルボ以外ダメと、他に適任者がいないなあになるかも知れませんが、それは理由とは言わないでしょう。 -- 2018-01-25 (木) 12:06:00
    • スマウグはホビットの匂いを嗅いだことがないから選んだという理由があるはずです。ピクシブ百科事典のトールキン関連の記事の大部分を書いた人は、おそらくwikipediaでbanされた編集者と同一人物です。理由を説明すると長くなるので割愛しますが、ほぼ間違いありません。なので読むに値しないものだと思ったほうが良いでしょう。 -- 2018-01-25 (木) 17:15:07
      • うーんだれでも修正できるからこそwikiを信用していたのですが誰でも書き込めるという事をもっと考えるべきでした。自分の目で直接本を確認するのが大切ですね。自分も本物以外から仕入れた情報を安易に流さないよう気をつけます。ありがとうございました。 -- 2018-01-25 (木) 18:20:58
      • ちなみに今のwikiはかなりトールキンに詳しい人(HoMeまで読んでる)が2人くらいいて、問題のある記事を修正して回っているので昔より遥かに信頼性が高くなっています。 -- 2018-01-25 (木) 20:18:02
      • むしろ中つ国wikiにない情報が書いてあったりして意外と穴場だよウィキペディアの今のトールキン関連記事は。 -- 2018-01-26 (金) 22:29:23
      • 好きなものをとことん追い求める人ってなんか好感もてる -- 2018-04-30 (月) 22:57:13
  • シヴの百科事典とアニオタwikiのトールキン関連はダメダメだけどね -- 2018-01-26 (金) 22:30:59
    • 正確じゃない情報があっても、いちいち指摘してファン全体が煙たがられるよりはそれを放っておく方がマシ。 -- 2018-02-15 (木) 03:17:51
      • 化けミミズの過去のコメ欄で討議された内容見たほうがいいんじゃない? -- 2018-05-01 (火) 00:01:38
      • ↑×2そんな不出来な記事なら最初っからない方がマシ。 -- 2018-05-01 (火) 17:54:46
      • 書いた奴に言えば? -- 2018-05-01 (火) 20:26:04
  • https://news.walkerplus.com/article/137274/ガンダルフさん何してるんですか? -- 2018-02-14 (水) 23:28:49
  • 2000年近く放浪してて人間に「弟子にして下さい!(土下座)」とか言われたこと無かったんだろうか。 -- 2018-03-29 (木) 00:08:02
    • 白の会議で会いましょうってか? -- 2018-05-02 (水) 01:25:21
  • Stormcrowがまた消されている -- 2018-05-01 (火) 23:49:13
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*1 指輪物語 旅の仲間』「待ちに待った誕生祝い」
*2 指輪物語 旅の仲間』「ガラドリエルの鏡」 モリアに消えたガンダルフを悼んだフロドの詩より。
*3 終わらざりし物語』「イスタリ」
*4 指輪物語 王の帰還』「執政と王」 ガンダルフの言葉。
*5 ホビットの冒険』「思いがけないお客たち」 ビルボの言葉。
*6 『指輪物語 追補編』「ドゥリンの一族」 指輪戦争後、当時のことを振り返ったガンダルフの言葉。
*7 『指輪物語 旅の仲間』「エルロンドの会議」 エルロンドの言葉。
*8 『終わらざりし物語』「イスタリ」
*9 シルマリルの物語』「ヴァラクウェンタ
*10 二つの塔』「西に開く窓」 ファラミアによるガンダルフの言動の回想。
*11 セイン本の註釈にそう記されているという。
*12 終わらざりし物語』「イスタリ」
*13 Guide to the Names in The Lord of the Rings

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Last-modified: 2018-05-04 (金) 09:17:39 (229d)