アマン

概要

カテゴリー地名
スペルAman
その他の呼び名至福の国、浄福の国(Blessed Realm)
不死の国、不死の地(Undying Lands)
不死の国(Deathless Land(s))
西方、西方王土(the West)
極西の地、さいはての西方世界、最果ての西の地、最果ての西方王土(Uttermost West)
さい果ての西の地(Far West)
古の西方王土(Ancient West)

解説

クウェンヤで「至福の、悪のない(Blessed, free from evil)」の意であり、中つ国を蝕むの影響から聖められた至福の国のこと。大海を超えた彼方、古のアルダの極西にあたることから、単に西方とも呼ばれる。
ヴァラールとその民のマイアール、およびエルフが住んでいることから不死の国とも呼ばれ、そのうちヴァラールの国はヴァリノール、エルフの住む地域はエルダマールと呼ばれる。

アマンは中つ国のエルフにとっても精神的な故国であり、いつの日か中つ国を去ってエルフが行くべき場所とされている。そのため中つ国における主方位は、現在のような「北」ではなく「西」とされている。

そして遂にある雨の夜、フロドは大気にみなぎるかんばしい香りをかぎ、水を渡ってくる歌声を聞きました。するとその時、ボンバディルの家で見た夢の中でのように、灰色の雨の帳がすっかり銀色のガラスに変わり、またそれも巻き上がって、かれは白い岸辺と、その先にはるかに続く緑の地を、たちまち昇る朝日の下に見たのでした。*1

地理

アマンの東岸に沿ってペローリの山脈があり、山脈の内側がヴァリノール、外側のカラキルヤ周辺とトル・エレッセアの島がエルダマールとなっている。アマンの西の果ては外なる海に接し、その岸辺近くに死者の霊魂が集められるマンドスの館がある。

歴史

この要衝の地に、ヴァラールはたくさんの光と、破滅から救われた最も美しいものをすべて集め、さらに美しい種々の品を新たにこしらえた。かくてヴァリノールは、アルダの春に際会した中つ国よりさらに美しくなった。これは、祝福された地であった。ここに住まうのは不死の者たちだからである。この地では、色褪せるものも萎れるものもなく、花にも葉にも一点の傷もなかった。また、生ある者が病むことも、堕落することもなかった。なぜなら、石や水に至るまで聖められていたからである。*2

ヴァラールは、灯火の時代の終わりにアルマレンの宮居が破壊された後、これ以上の破滅がアルダに加えられることを恐れて中つ国から撤退し、大海を渡った先にあるアマンに住まうようになる。その時ヴァラールは、メルコール(後のモルゴス)の攻撃に対する防壁としてペローリの山々を築き、その内側にメルコールによる破壊や堕落を免れたすべての善きものを避難させた。

そして新たに楽園を照らす光として二つの木を生み出す。こうして二つの木の時代が始まった。
一方、見捨てられた中つ国においては星々の時代であり、クイヴィエーネンエルフが誕生すると、ヴァラールは中つ国に存在する危険や堕落からかれらを守るため、エルフをアマンに移住させようとした。必ずしも全てのエルフがこの勧告に応じたわけではなく、また応じたエルフの全員がアマンに辿り着いたわけでもなかったが、このためにアマンは中つ国に残ったエルフにとっても精神的な故国となった。(詳細は「エルフ」の氏族および大いなる旅を参照)

しかしこの時、ヴァラールはエルフを救い出すため、かれらに暗闇を投じていたメルコールを力の戦いで打ち破り、虜囚としてアマンに連行してくる。刑期を終えてマンドスの砦から釈放されたメルコールは、改悛したと見せかけて内側からこの楽園を損ねようと目論んだ。
メルコールはアマンに移住した上のエルフの間に虚言を蒔いてノルドールの離反を招き、さらに大蜘蛛ウンゴリアントと結託して二つの木を汚染して枯死させ、アマンに暗闇を招来する。こうして二つの木の時代は終わり、悪に汚染されたことのない光はただシルマリルの中にのみ保存されることとなった。

太陽の第一紀、ヴァラールはさらなるモルゴスの攻撃を恐れて、ペローリの山並みを強化するとともに小暗い海惑わしの島々を設置。このヴァリノール隠しによって、アマンは中つ国のエルフと人間には到達できない場所となった(これを突破したのはエアレンディルである)。

怒りの戦いでモルゴスが敗北して第二紀になると、エルフにはアマンへの帰還が許されるとともに、大海に新たに築かれたヌーメノール人間との間で交流が行われるようになる。ただし人間がアマンに直接航海することは禁じられていた(ヴァラールの禁)。
ヌーメノール人は、中つ国から大海を渡ってきた暗闇に再びとらわれて死を恐れるようになり、アマンの民の不死性を羨むようになる。「アカルラベース」に語られている通り、やがてサウロンの甘言にたぶらかされた王アル=ファラゾーンは神々から不死を奪取することが可能だと信じ込んでヴァラールの禁を破り、堕落したヌーメノール人の大軍を率いてアマンに攻め入った。
その時世界はイルーヴァタールの手によって作り替えられ、平面であったアルダは湾曲して球形になり、アマンは世界の圏外に移された(世界の変わる日)。

このため、第三紀以後のアマンはもはや中つ国と同じ地平には存在していない。
しかしエルフにだけは、中つ国から大海へ船出してまっすぐの道を通り、アマンに渡ることができる恩寵が残された。中つ国に倦み疲れたエルフはこの恩寵によってアマンへ立ち去っていったため、中つ国のエルフは次第に姿を消し、中つ国は人間の世界となっていった。

「不死の国」

「たとえ、あなた方がすべての惑わしと罠を逃れて航海し、至福の国たるアマンに到り着いたとしても、あなた方にはほとんど益はないであろう。なぜなら、その地の住民を不死なるものにしているのはマンウェの土地ではなく、そこに住む不死なる者たちがその土地を聖めているからである。あなた方は、そこでは、あまりにも強く、揺らぐことなき光の中の蛾のように、一層早く衰え、倦み疲れるに過ぎないだろう」*3

アマンは不死の国とも呼ばれるが、それはその土地自体に不死性があるわけではなく、その土地の住人が不死の者(アイヌアエルフ)であることによる。
したがって、人間がアマンへ渡ったとしても不死を得ることはできない。死すべき運命イルーヴァタールから人間に与えられた賜物であり、ヴァラールにはその賜物を取り上げる権限はないからである。

アマンへと去った人物

シルマリルの物語』では、トゥオルイドリルはアマンへ向かって船出し、後世では人間であるトゥオルはノルドールに加えられたとされた。また二人の息子である半エルフエアレンディルとその妻エルウィングもアマンへ渡り、エアレンディルは明星となった。

指輪物語』作中および『追補編』の年表の記述によれば、エルロンドガラドリエルギルドールレゴラスといったエルフと、イスタリとしての使命を達成したガンダルフがアマンへ去った。
またエルフやイスタリではないが、ビルボ・バギンズフロド・バギンズサムワイズ・ギャムジーの三人も指輪所持者としてアマンへと去った。さらにギムリも(恐らくガラドリエルの力添えによって)アマンへ去ったのではないかと言われる。

コメント

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ガラスの破片のバリアで守られている(うそ -- 2016-07-09 (土) 14:08:57
  • ここって二つの木に照らされていたときは時の流れによる衰えはなかったけど、一応ここもアルダ内だから二つの木が枯れた後は月と太陽に照らされているんだよね?だとしたら今現在結構さびれてそうだなぁ。街を歩くエルフもまばらでほとんどマンドスの館に去っちゃって、手入れされていない庭とかも目立っちゃってて、かつての賑わいの痕跡を感じ取れるのは祝祭の日くらいみたいな -- 2017-01-14 (土) 10:38:06
    • おっしゃる通り、太陽と月が上ってからはアマンも(中つ国より遥かに緩やかであるとはいえ)時による変化を免れないと書かれていますね。 -- 2017-01-14 (土) 21:57:28
    • さびれているとはいえ、超技術と至福の地、中つ国よりは栄えている可能性はあると思います。で、アマンでは交通機関はどうなってるのでしょうね。「次は『ティリオン』、『ティリオン』。『ティリオン市』、『本ティリオン』と『ティリオン中央』、マンドス線の『西ティリオン』、『東マンドス』方面へは、お乗り換えです。『ティリオン』の次は終着の『新ティリオン』までとまりませんのでご注意下さい。」 -- 2017-07-15 (土) 21:40:44
  • ↑は「全滅」説を唱える人へ -- 2017-04-22 (土) 19:30:24
  • 超高級ホテルで有名なアマンリゾートはこれから来ているんだよね -- 2018-03-26 (月) 16:38:00
    • なるほど -- 2018-05-04 (金) 09:43:11
    • そうだったのか。感心した。 -- 2019-04-03 (水) 10:58:38
  • 荻窪には「ヴァリノール」というレストランがあり、ビルの名前は「アマン」と念がいっている。値段はカジュアルでリーズナブル。
  • アマンに着いたフロド達もそこで不老不死になるわけではなく、むしろ早く死ぬっぽいんだけど、その地で死ぬために渡航したのだろうか? ビルボ、サム、ギムリなんかは種族として老齢になってからだし。 -- 2019-09-07 (土) 07:58:28
    • もう中つ国で癒やしは得られないから(特にフロド)、最後の癒やしを得るために渡ったと解釈しています -- 2019-09-07 (土) 13:46:39
    • 渡った時に人間から不死の種族に変わった者もいるみたいだから、渡航を許可されたフロド達にもなんらか変化があった可能性あるんでは -- 2019-09-16 (月) 08:44:43
  • エルフの住む地はエルダマールでも、アマンの中は自由にうろうろ出来るんでしょうか?自分でアマンに来たエルフがマンドスの館にいるエルフに会いに行けるとか… -- 2019-11-23 (土) 17:55:17
    • 生き身の者がマンドスの館に入った例は皆無なため、同じアマンにあるといってもマンドスに限っては魂でしかたどり着けないのだと思われます。それ以外の場所は基本的に往来自由かと。 -- 2019-11-23 (土) 18:01:44
      • では、アマンに行ったエルフが魂になった知人に会おうと思ったら、向こうが復活してくれるのを待つしかないんですね。 -- 2019-11-23 (土) 18:08:11
  • アマンに去った人間はアマンで死んだんだよね? -- 2019-11-26 (火) 02:35:49
  • もう誰か言ってそうだけど アヴァロンが元ネタかな? -- 2019-11-26 (火) 02:39:45
    • 1度アマンへと去ると中つ国には帰れないけど天国ともまた違う感じかね モデルはアーサー王伝説のアヴァロンだろうけど -- 2019-12-02 (月) 21:25:29
    • アヴァロンが元ネタではなく、アヴァロンのさらに元になったケルト神話の妖精神の国がモデル。 -- 2019-12-02 (月) 21:52:23
      • はぇ〜勉強になるね -- 2019-12-02 (月) 22:02:50
      • ティル・ナ・ノーグか -- 2019-12-02 (月) 22:35:37
      • ティル・ナ・ノーグは日本で人口に膾炙しているそうした妖精郷の名前の一つに過ぎない。神話中では他の名だったりそもそも名前がなかったりする。むしろケルト地域にそうした共通のイメージがあると言ったほうが正確であり、トールキンの発想もそうした共通イメージが元。 -- 2019-12-02 (月) 23:15:49
  • ある意味アマンへの旅立ちは終末医療や緩和ケアなんだよね。アルウェンもそうだけど死についてとても丁寧に考えられた物語だよなあ。不死の概念がある世界観だからこそ映える -- 2019-12-10 (火) 02:08:45
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