#author("2019-09-04T05:30:52+09:00","","")
* &ruby(しびと){死人};&ruby(うらな){占};い&ruby(し){師}; [#jcb74216]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Necromancer|
|~異訳|死霊術士、死人遣い、ネクロマンサー、黒魔術師|
|~その他の呼び名|妖術師(Sorcerer)、きたない魔法使い(black sorcerer)|

** 解説 [#Explanation]

[[闇の森]]の南部にある[[ドル・グルドゥア]]を居城とした妖術師。復活した[[サウロン]]が正体を隠していた時の呼び名。

[[第三紀]]1100年頃より現れ、彼の存在によって影の落ちた[[緑森大森林>闇の森]]は次第に怪物や危険に満ちた地へと変わっていき、闇の森と呼ばれるようになった。
死人占い師は闇の勢力を集め、妖術を執り行って広く恐れられた。彼が投げかける恐怖の影は[[ホビット]]族の[[エリアドール]]移住や[[エオセオド]]の北方移住などに影響を及ぼしている。

賢者達は当初、死人占い師を[[ナズグール]]の一人だと考えていた。
だが[[ガンダルフ]]はその正体がサウロンではないかと早くから警戒し、2063年には最初のドル・グルドゥア潜入を行った。まだ完全に力の回復していなかった死人占い師は正体の露呈を恐れて逃亡し、それからしばらく[[警戒的平和]]がもたらされた。
しかし死人占い師は2460年には力を増してドル・グルドゥアに帰還し、警戒的平和が終わる。ガンダルフは2850年に再びドル・グルドゥア潜入を決行し、死人占い師の正体が間違いなくサウロンであることを突き止めた。

サウロンはドル・グルドゥアを拠点にして[[力の指輪]]の収集や[[一つの指輪]]の捜索を行い、また密かにナズグールをはじめとした闇の勢力や様々な手段を使って[[自由の民]]への攻撃や工作を行っていた。
2841年には、[[はなれ山>エレボール]]を目指し旅に出た[[スライン二世]]を妨害し、ドル・グルドゥアにおびき寄せて幽閉、[[七つの指輪]]の最後の一つを奪うなどしている。またガンダルフは彼がここから[[ロスローリエン]]と[[裂け谷]]への攻撃を計画し、それに[[スマウグ]]を利用するつもりなのではないかと危惧していた。

2941年([[五軍の合戦]]があった年)、ガンダルフの説得に応じた[[白の会議]]はドル・グルドゥアを攻撃し、死人占い師は要塞を放棄して逃亡した(『[[ホビットの冒険]]』)。
これによって北方を狙ったサウロンの当初の計画は実現しなかったが、すでにサウロンはナズグールを通じて[[モルドール]]への帰還の準備を進めており、逃亡は見せかけのものだった。彼はそのままモルドールに入ると、2951年にサウロンとして公然と名乗りを上げる。同年、彼は三人のナズグールを派遣してドル・グルドゥアを再占拠させた(『[[指輪物語]]』)。

** 名前について [#f1b15264]

英語の''necromancer''とはnecro-「死者」+-mancy「予言、占い」からなる言葉で、一般的に死者の霊を呼び出して未来等を占う呪術者(交霊術師)を指し、転じて魔法使いや黒魔術師全般を指しても使われた語である。訳名の''死人占い師''([[ホビットの冒険]]では''死人のたましいをよびおこす占い師''とも訳されている)はその語義を参照して選択された語と思われる。

[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]がどのような内容を念頭においてこの語を用いたのか本編の記述からは明確ではないが、『[[指輪物語]]』で[[サウロン]]は[[幽鬼>ナズグール]]や[[物言わぬ番人]]をはじめ霊的存在を配下に従えていることが言及されており、『[[シルマリルの物語]]』では[[第一紀]]のサウロンは'''亡霊と妖怪の支配者(master of shadows and of phantoms)'''((『[[シルマリルの物語]]』「[[クウェンタ・シルマリルリオン]] 第十八章 ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと」))と述べられ、[[巨狼]]や[[吸血蝙蝠]]のような悪霊の宿った怪物を従えていたことや、[[ゴルリム]]を謀る時に死んだ[[エイリネル]]の姿を幻影(phantom)として見せたことなどが言及されている。
さらに『[[Morgoth's Ring>The History of Middle-earth/Morgoth's Ring]]』では明確に、サウロンは[[マンドス]]の召喚を拒んだ[[エルフ]]の悪霊を配下にして他者の肉体を奪う技などを仕込んでいたとされている。
[[ナズグール]]の首領であり妖術師である[[魔王]]もまた、[[塚人]]をはじめとした悪霊を呼び起こすことができた。

こうした点から、トールキンの用法におけるnecromancerには霊魂を使役する者との意味が含まれていることは確かなようである。

** 備考 [#note]

[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]が『[[ホビットの冒険]]』を書いた当初、死人占い師の正体は明確に決めていなかった。やがてその続編を執筆中、[[姿の見えなくなる指輪>一つの指輪]]と[[死人占い師>サウロン]]との結びつきを思いつき、『[[指輪物語]]』として書き進められた結果、現在のような設定が作られた。

>「指輪。もともとどこから来たのか? 死人占い師か? よき目的に使われればそれほど危険ではない。しかし罰が必要だ。持主は指輪をなくすか、&ruby(・・・){自分を};失うか」((『[[J.R.R.トールキン 或る伝記]]』より、ホビットの続編執筆初期のトールキンの覚え書き))

** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

|~俳優|[[ベネディクト・カンバーバッチ]]|
|~日本語吹き替え|吹き替えなし|

翻訳ではネクロマンサー、死人使いなどとされている。
[[トーリンの一行>トーリンとその仲間]]が[[エレボール]]へ旅をしていた頃、[[ラダガスト]]によって存在が知られる。
ラダガストが[[ドル・グルドゥア]]の廃墟で[[モルグルの刃]]を発見したことから、[[白の会議]]は[[アングマールの魔王>魔王]]ではないかと疑うが、特に[[サルマン]]はその存在そのものに懐疑的だった。

『竜に奪われた王国』にて、[[ガラドリエル]]の警告を聞いた[[ガンダルフ]]は(([[エクステンデッド・エディション]]では、[[ビヨルン]]からも警告を聞いている))、[[ルダウア]]にある魔王の塚が空になっているのを確認した後、直接死人占い師の正体を確かめるためドル・グルドゥアに向かう。その結果、正体が[[サウロン]]であることを知る。
『決戦のゆくえ』で、[[ガラドリエル]]によってドル・グルドゥアから撃退され、東へ去った。

** コメント [#Comment]

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