#author("2016-06-06T23:20:52+09:00","","")
* &ruby(とうい){東夷}; [#b265dc56]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[種族]]|
|~スペル|Easterling|
|~その他の呼び名|&ruby(かっしょくびと){褐色人};(Swarthy Men)(([[第三紀]]の[[褐色人の国]]にいた[[褐色人]](Dunlending)とは無関係))|

** 解説 [#Explanation]

[[中つ国]]の[[東方>リューン]]からやってきた、浅黒い肌をしている[[人間]]の氏族の総称。
[[モルゴス]]や[[サウロン]]の影響を受けて邪悪に染まり、[[自由の民]]に敵対した者達を指して主に使われる。

*** [[第一紀]]の東夷 [#q4ba32ff]

褐色や土気色の肌を持つ、''褐色人''と呼ばれる[[人間]]たちを指す。彼らは[[ダゴール・ブラゴルラハ]]の後に東方から[[ベレリアンド]]にやってきた。

>褐色人たちが初めてベレリアンドに現われたのは、この頃であると言われている。かれらの中には、もうすでに密かに[[モルゴス]]の傘下に入っていて、かれの召し出しに応じて来る者もいたが、全部がそうではなかった。というのも、ベレリアンドの噂、その土地と河川の、その戦乱と富の噂は今では東方にもあまねく広がっていたからである。そして、放浪を好む人間の足は、当時、常に西へ向かっていたのである。この人間たちは背が低く、身幅があり、力のある長い腕を持っていた。肌の色は日に焼けた褐色で、髪の色は目と同じように黒っぽかった。部族の数は多く、その中には、[[エルフ]]よりも山の[[ドワーフ]]の方にずっと親近感を持つ者もいた。((『[[シルマリルの物語]]』「[[クウェンタ・シルマリルリオン]]第一八章 ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと」。「肌の色は日に焼けた褐色で」と訳されている箇所の原文は'''their skins were swart or sallow,'''))

彼らは[[東ベレリアンド]]に定住した為、[[エダイン]]とは交流を持たず、お互いに親近感もなかった。
[[マイズロス]]は彼らと同盟を結び、その中でも特に力のあった族長である[[ウルファング]]と[[ボール]]に好意を示した。彼らは後に東方からさらに一族を呼び寄せて[[マイズロスの連合]]に加わった。だが[[ウルファング]]の一族はすでに[[モルゴス]]の誘惑を受けており、彼の息子たちは[[ニアナイス・アルノイディアド]]で主君である[[カランシア]]を裏切った。しかし[[ボール]]の息子たちは最後まで[[マイズロス]]と[[マグロール]]に仕えてウルファングの息子たちと戦い、全員が討ち死にした。他の多くの東夷は背信行為に耐えられず戦場から逃亡した。
とはいえウルファングの息子たちの裏切りと、それが掻き立てた恐れと憎しみのために[[エルフ]]と[[エダイン]]は大敗を喫し、[[ベレリアンド]]はモルゴスの手に落ちた。これ以後、[[エルフ]]の心は[[エダイン]]以外の[[人間]]から遠ざかった。

[[モルゴス]]の側に寝返った東夷は望んでいた肥沃な地を得ることができず、モルゴスによって[[ヒスルム]]に押し込められた。そこでかれらは[[ハドル家]]の生き残りを迫害し、その子供たちを奴隷とした。[[ロルガン]]はそうした東夷の族長の一人であった。

[[怒りの戦い]]では他のほとんどの[[人間]]と同様に[[モルゴス]]の側に立って戦い、敗北した。

*** [[第二紀]]の東夷 [#ea91277d]

東方には[[ヴァラール]]と[[モルゴス]]いずれの召し出しにも応じなかった東夷の同族が住んでいた。[[怒りの戦い]]を生き残った邪悪な東夷の中には、東へ逃げ戻り、モルゴスの虚言を用いてかれらの王となる者達もいた。
やがて[[サウロン]]が活動を再開すると、東夷はその影響下に入り、[[モルドール]]の属国となった。『[[終わらざりし物語]]』によると[[ナズグール]]の第二位[[ハムール]]は東夷の出身であったという。

>そして、中つ国南部と、僻遠の東の地では人間がその数を増していたが、かれらの大部分は悪に向かっていた、なぜなら、サウロンが活動していたからである。 … &br; 東と南では、ほとんどすべての人間がかれの支配下にあったが、当時かれらは次第に力を得て、多くの町や石の城壁を築いた。この人間たちの数は非常に多く、戦場では凶暴をもって鳴らし、鉄で身を鎧っていた。かれらにとってサウロンは王であり神であり、かれらはサウロンを甚だしく恐れた。なぜなら、かれはその居処に火をめぐらしていたからである。((同上「力の指輪と第三紀のこと」。[[第二紀]]の初期、および[[遁走の時代]]の[[中つ国]]の[[人間]]について))

*** [[第三紀]]の東夷 [#k7923f10]

[[リューン]]以東に住み、[[ゴンドール]]に侵入してきた人間の総称としてこの言葉が使われた。
[[最後の同盟]]に敗れた[[サウロン]]の霊は東方の荒野に逃れて力を回復し、東夷はいち早くその影響下に立ち戻った。''[[馬車族]]''、''[[バルホス族]]''なども東夷の一派であり、かれらはサウロンの意志に動かされてたびたび[[ロヴァニオン]]へ侵攻し、ゴンドールと衝突した。
[[モルドール]]に帰還したサウロンが復活を宣言すると、東夷はその召し出しに応え、[[ハラドリム]]と並ぶ人間の軍勢として再びモルドールの属国となった。

-[[第三紀]]の東夷に関する年表
|~年|~事象|h
|RIGHT:490|東夷が初めて[[ゴンドール]]へ侵入する。|
|RIGHT:500|第8代[[ゴンドール]]王[[タロスタール>ローメンダキル一世]]が東夷を撃退し、ローメンダキル(東の勝者)の名を得る。|
|RIGHT:541|新たな東夷によって[[ローメンダキル一世]]が討ち取られる。|
||第9代[[ゴンドール]]王[[トゥランバール]]が父の仇を討ち、東方に多くの領土を獲得する。|
|RIGHT:1015-|第15代[[ゴンドール]]王[[ヒャルメンダキル一世]]の時代に[[ゴンドール]]の国威は絶頂に達し、東は[[リューンの湖]]までを支配。|
||第17代[[ゴンドール]]王[[ナルマキル一世]]の時代に東夷が再び[[ゴンドール]]を攻撃するようになり、ゴンドールと同盟を結んでいた[[北国人]]の中には東夷と組む者が現れる。|
|RIGHT:1248|[[ゴンドール]]の摂政[[ミナルカール>ローメンダキル二世]]が[[ロヴァニオン]]と[[リューンの湖]]の間で東夷の大軍勢を破り、湖の東にある東夷の野営地と居住地を破壊する。この時かれはローメンダキルの名を襲う。|
|RIGHT:1304|[[ミナルカール>ローメンダキル二世]]が[[ローメンダキル二世]]として第19代[[ゴンドール]]王に即位。|
|RIGHT:1636|東方から[[悪疫]]が広がる。[[ゴンドール]]をはじめ西方諸国は甚大な被害を受けたが、東夷が受けた被害もそれに劣らず、西方への侵入が一時途絶える。|
|RIGHT:1851|[[サウロン]]の密使に焚きつけられた[[馬車族]]が[[ゴンドール]]への襲撃を開始する。|
|RIGHT:1856|第29代[[ゴンドール]]王[[ナルマキル二世]]が[[アンドゥイン]]の先で[[馬車族]]と戦い討ち死にする。&br;国境が[[アンドゥイン]]と[[エミン・ムイル]]まで後退し、馬車族は[[ロヴァニオン]]東南部の国民を奴隷にする。|
|RIGHT:1899|第30代[[ゴンドール]]王[[カリメフタール]]が[[ダゴルラド]]で[[馬車族]]を破る。|
||[[馬車族]]は東方で勢力を伸長させ、南方の[[ハンド]]人・[[近ハラド]]人と衝突する。やがて両者は講和を結び、協働して[[ゴンドール]]攻撃を計画する。|
|RIGHT:1944|[[ゴンドール]]南北から攻撃される。 &br; 第31代[[ゴンドール]]王[[オンドヘア]]は北軍を指揮して[[馬車族]]と[[モランノン>黒門]]の北で戦い、二人の息子[[アルタミア]]と[[ファラミア>ファラミア(オンドヘアの息子)]]らと共に討ち死にする。&br;南軍の指揮官[[エアルニル>エアルニル二世]]は侵攻してきた[[ハラド]]軍を南[[イシリアン]]で破る。更に退却する北軍を取り込んで[[馬車族]]の本営を襲撃し、多くの[[馬車族]]が[[死者の沼地]]へ追い込まれて敗北する。|
|RIGHT:2510|かねてより[[ドル・グルドゥア]]の影の下にあって[[ロヴァニオン]]に進出していた[[バルホス族]]が[[茶色の国]]から[[アンドゥイン]]を筏で渡河。これに[[霧ふり山脈]]の[[オーク]]が加わり両者は[[カレナルゾン]]を席捲する。&br;[[ゴンドール]]の北軍は[[アンドゥイン]]へと追い詰められるが、[[エオル>エオル(レオドの息子)]]率いる援軍によって敵は一掃される。([[ケレブラントの野の戦い]])|
|RIGHT:2545|初代[[ローハン]]王[[エオル>エオル(レオドの息子)]]が[[高地]]で東夷と戦い討ち死にする。|
|RIGHT:2758|東夷が[[カレナルゾン]]へ侵攻。これに[[褐色人]]や同時期に[[レフヌイ]]川と[[アイゼン]]川の河口に上陸した[[ハラド]]と[[ウンバール]]の[[海賊]]も加わり、[[ローハン]]は東西から挟み撃ちになる。([[大侵略]])|
|RIGHT:2759|[[長い冬]]の後、雪解けにより[[エント川]]で大洪水が発生し、東夷は死ぬか撤退する。[[ゴンドール]]からの援軍もあり、[[ローハン]]の敵は撃退される。|
|RIGHT:2951|[[サウロン]]、[[モルドール]]で公然と名乗りをあげ、兵力を召集する。|
|RIGHT:3007-|再興された[[谷間の国]]の[[ブランド]]王、国力を伸ばす。東境で東夷と小競り合いが起きる。|

***[[指輪戦争]]での東夷 [#a6130295]

[[指輪戦争]]においては[[モルドール]]の同盟軍として参戦し、[[ゴンドール]]や[[はなれ山]]、[[谷間の国]]などを攻撃した。

>そして東からは人間たちがひきもきらず動いてきました。剣を帯びる者あり、槍を持つ者あり、馬上の射手あり、首領を乗せた戦車に、輜重を満載した車がありました。[[冥王]]の軍勢はいまや悉く動き出していました。((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]] 下』「十  一行の離散」 [[フロド・バギンズ]]が[[アモン・ヘン]]の[[視る椅子]]から見た光景の一つ))

>「&ruby(あまた){多勢};の王たちが[[モルドール]]に仕えるべく東から馳せ参じて来たと伝えられております。北から[[ダゴルラド]]の野にかけて小ぜり合いがあり、戦争の噂があります。」((『指輪物語 [[王の帰還]] 上』「三 ローハンの召集」 [[ヒアゴン]]が[[セオデン]]に[[ゴンドール]]への援軍を求めた際の言葉。また彼は[[モルドール]]軍のことを「[[オーク]]どもや褐色人ども(the Orcs and Swarthy Men)」と形容しているが、この褐色人は[[ハラドリム]]のことを指す。))

>「かれらは強大です。[[かの目>サウロン]]に直属する[[オーク]]どもの大部隊に、われらが未だ出会ったことのない新手の人間たちの無数の集団です。この人間たちは背は高くはありませぬが、体はがっちりとしていて、猛々しく、[[ドワーフ]]のように顎鬚があり、大まさかりを使いこなします。広大な東にあるどこかの野蛮国からやって来たものと考えられます。」((『指輪物語 [[王の帰還]] 上』「四 ゴンドールの包囲」 [[カイア・アンドロス]]を奪った軍勢についての[[インゴルド]]の報告。))

|~年|~月|~日|~事象|
|RIGHT:[[3018>大いなる年#yera3018]]|RIGHT:6|RIGHT:20|東夷と[[ハラドリム]]を含む[[モルドール]]軍が[[オスギリアス]]を攻撃。[[ゴンドール]]軍の駐屯部隊が全滅する。|
|RIGHT:[[3019>大いなる年#yera3019]]|RIGHT:3|RIGHT:5|[[フロド]]が[[黒門]]の前で広大な東の国(the wide Eastlands)から[[サウロン]]の召集に応えてやってきた人間の軍勢を目撃する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:10|[[黒門]]から出撃した[[オーク]]と東夷の軍勢が[[カイア・アンドロス]]を奪い、[[アノリアン]]へ侵入する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:15|[[ペレンノール野の合戦]]。[[ゴスモグ>ゴスモグ(ミナス・モルグル)]]によって「まさかりを持つ東夷たち」が戦場に投入される。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:16/17|[[アノリアン]]から[[オーク]]と東夷の大軍が引き返してくるが、[[ロヒアリム]]に迎撃され[[カイア・アンドロス]]へ逃走する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:17|[[カルネン]]川を渡り侵攻してきた[[モルドール]]の同盟軍の東夷に対し、[[谷間の国]]と[[山の下の王国>エレボール]]が[[はなれ山]]山麓で三昼夜にわたり戦う。(谷間の国の合戦)&br;[[ブランド]]王と[[ダイン>ダイン二世]]王は戦死し東夷が勝利するが、[[谷間の国]]の人間と[[ドワーフ]]は[[山の下の王国>エレボール]]に立て籠もり抵抗を続ける。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:21|[[イシリアン]]で[[オーク]]と東夷の強力な一部隊が西軍の先頭部隊を伏撃するも、事前の偵察により撃退に成功する。((この場所は[[ファラミア]]が[[ハラドリム]]の部隊を迎撃したところでもある。))|
|~|RIGHT:3|RIGHT:25|[[黒門の戦い]]。[[エレド・リスイ]]の山かげで待機していた東夷の一軍が黒門から進軍する。&br;[[サウロン]]の消滅により[[モルドール]]軍が崩壊すると、東夷と[[ハラドリム]]の一部は最後の抵抗を示すが大部分の者は東へ逃げるか投降する。|
|~|RIGHT:3|RIGHT:27|西軍勝利の知らせが[[はなれ山]]にも届く。[[バルド二世]]と[[トーリン三世]]が反撃に出て東夷を撃退する。|
|~|RIGHT:4|>|東夷と[[ハラドリム]]の残党による西方諸国への抵抗が続く。|
|~|RIGHT:5|RIGHT:1|[[エレスサール]]王が即位。その後王は降服してきた東夷たちを許し、彼らを自由にする。|

** [[Iron Crown Enterprises]]による設定 [#ICE]

[[ロガシグ語]]という言語の方言を使用する。
東夷の中で、最も秀でた種族に[[ウォマウ]]という氏族が登場する。彼らの一部は[[アヴァリ]]の血を引き、東方の[[ドゥーネダイン]]とも呼ぶべき存在で、[[エルフ]]から智恵と数々の神秘を学んでいる。[[ナズグール]]のひとりである[[ハムール]]もウォマウ出身で、本名はコムール一世という設定になっている。その他にも異なる文化、国を持つ多数の氏族が登場し、中には独自に闇の勢力と戦う国々も多く存在するなど、必ずしも邪悪な種族であるとは限らない。しかし、ゲームの舞台となる[[第三紀]]末には、その殆どが[[サウロン]]によって堕落させられたか、力ずくで滅ぼされてしまったとなっている。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

戟と盾で武装し、赤い衣と金色の鎧を帯びた重装歩兵として登場。原作に基づき[[フロド]]が黒門を突破しようとする場面に登場する。また[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の攻城戦で大門が[[グロンド]]によって破られた際、[[オーク]]と共に城内へなだれ込んでいる。

エクステンデット・エディションや関連書籍では、東夷の外見はペルシアやモンゴル,トルコなど、主に中近東の文化を参考にしている他、兜とそこに彫られた放射状の文様はそれぞれ日本の武士の兜と旭日旗のモチーフにしていることが言及されている。

*** 画像 [#f90e94a7]

&ref(Easterling.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』における東夷);

*** グッズ [#g05a64ee]

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** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

[[湖の町>エスガロス]]の住人の中に、東夷出身と思われる浅黒い肌の人物が数人混ざっているのが見られる。

[[ドル・グルドゥア]]で[[白の会議]]のメンバーと戦った[[ナズグール]]の中に、東夷だった[[ハムール]]がいるという設定であり、『ロード・オブ・ザ・リング』での東夷兵と似た鎧を纏っている。

**『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#Lotro]

多数の氏族が登場する。[[茶色の国]]に住むフンドラール(Khundolar)は[[バルホス族]]の子孫で、[[青の魔法使い]]によって作られたと思われる青いローブを纏った妖術師の組織の支援を受けている。同じバルホス族の子孫であるジャンゴヴァール(Jangovar)は[[闇の森]]の東側から[[リューンの湖]]の湖畔にかけて部族連合を形成しており、[[ドル・グルドゥア]]やより強力な東方の国ロスタマッシュ(Rostamash)と同盟を結んでいる。原作で[[カイア・アンドロス]]を攻撃した、ドワーフに似た東夷はスーハラール(Sûhalar)という氏族とされている。

** コメント [#Comment]

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