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* 仔犬のローヴァーの冒険 [#fe783f56]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[書籍・資料等]]|
|~スペル|Roverandom|

** 解説 [#Explanation]

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[[ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]が著し、編集はウェイン・ゴードン・ハモンドとクリスティーナ・スカルによる。

1925年の9月の上旬、トールキンは家族と共にフィリーの地にて休暇を取っていた。ある日、当時4歳の[[マイケル・トールキン]]が海岸で犬の玩具をなくしてしまって気を落とした。トールキンが、そんな息子を元気づけるために、なくした玩具と同じ大きさと色の玩具となった仔犬を主人公にした即興の話を語ったのが『仔犬のローヴァーの冒険』の原型である。

この物語は、『[[ホビットの冒険]]』の成功を受けて1937年に発売される予定だったが、実際には1998年の発売となった。だが、この物語がきっかけとなってトールキンは後に『[[ブリスさん]]』等の作品群を執筆した。

後年の作品におけるキャラクターや[[中つ国]]、『[[農夫ジャイルズの冒険]]』に通じる設定が見られる。((ウェイン・ゴードン・ハモンドとクリスティーナ・スカルは、『仔犬のローヴァーの冒険』と『失われし物語』と『シルマリルの物語』の関連性を挙げ、ウインの存在と[[小暗い海]]の地理的描写を、蜘蛛や龍や山々のイラストの類似性と共に収束点の一つとして言及している。))
後年の作品におけるキャラクターや[[中つ国]]、『[[農夫ジャイルズの冒険]]』に通じる設定が見られる((ウェイン・ゴードン・ハモンドとクリスティーナ・スカルは、『仔犬のローヴァーの冒険』と『失われし物語』と『シルマリルの物語』の関連性を挙げ、ウインの存在と[[小暗い海]]の地理的描写を、蜘蛛や龍や山々のイラストの類似性と共に収束点の一つとして言及している。))。
物語自体も、2008年発行版以降の『[[農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集]]』に含まれている。

原題「ロヴァランダム」とは、主人公の仔犬ローヴァーが月の世界と海底の王国にて同名の仔犬達(月の犬と人魚犬)と友達になった事がきっかけで二度改名した名前のことである。

*** ストーリー [#Story]

仔犬のローヴァーは、黒猫のティンカーと共にイギリスに住む老婆に飼われていた。ある日、休暇中の「常駐の海の魔法使い」((「PAM(Pacific Atlantic Magician)」ともされる。この名は、ヘンリー・ジョン・テンプルのニックネームと同じとされている。))であるアルタクセルクセス((イラン出身だとされる。アルタクセルクセスという名前も、アケメネス朝のペルシア王の名前として代々使われた。))といざこざとなる。彼に噛みついたことによって呪いを掛けられ、ローヴァーは生きた鉛の玩具になった。
仔犬のローヴァーは、黒猫のティンカーと共にイギリスに住む老婆に飼われていた。ある日、休暇中の「常駐の海の魔法使い」((「PAM(Pacific Atlantic Magician)」ともされる。この名は、ヘンリー・ジョン・テンプルのニックネームと同じとされている。))であるアルタクセルクセス((イラン出身だとされる。アルタクセルクセスという名前も、アケメネス朝のペルシア王の名前として代々使われた。))といざこざとなる。彼に噛みついたことによって呪いを掛けられ、ローヴァーは生きた鉛の玩具になった。

玩具屋の店先に置かれたローヴァーをとある少年が購入するが、ある日浜辺にて(ローヴァーにとって都合の良いことに)少年がポケットからローヴァーを落とした。元の仔犬になって飼い主達のところに戻るべく、アルタクセルクセスを探す旅を始めた。そしてプサマソス・プサマティデス((最も古い「プサマティスト(砂の魔法使い)」である。))と出会い、アルタクセルクセス自身にしかこの魔法を解けないと知った事から、砂の魔法使いの助力を以て驚くべき冒険を経験する事となる。

まずはカモメのミュウに乗って、最も偉大な魔法使いとされる月の男が住まう[[月]]へ赴いた。月に到着後、アルタクセルクセスはいなかったが、月の男に出会ったり、翼を持つ月の犬のローヴァーと友達になった。月のローヴァーと紛らわしいので、月の男は地上のローヴァーを「ロヴァランダム」と命名する。

ロヴァランダムにも月の男の魔法で翼が生え、二匹は月の探検を楽しむ。月の男の天敵とされる月の[[龍]]たちの頭領の巨大な白い龍((元々はスノードン山に住んでおり、ブリテン諸島を荒らしていた。月食を起こそうとするため、月の男とは敵同士とされる。((龍や大蛇が月食や日食を起こそうとして神々と敵対するという話は世界の神話にも見られ、月食と日食における月の軌道の交差点を「ドラゴンヘッド」と「ドラゴンテイル」と呼ぶ。))))に追いかけられたりもしたが、月の男のロケットで龍の白い体に「ぶち」ができ、大龍は退散する。
ロヴァランダムにも月の男の魔法で翼が生え、二匹は月の探検を楽しむ。月の男の天敵とされる月の[[龍]]たちの頭領の巨大な白い龍((元々はスノードン山に住んでおり、ブリテン諸島を荒らしていた。月食を起こそうとするため、月の男とは敵同士とされる((龍や大蛇が月食や日食を起こそうとして神々と敵対するという話は世界の神話にも見られ、月食と日食における月の軌道の交差点を「ドラゴンヘッド」と「ドラゴンテイル」と呼ぶ。))。))に追いかけられたりもしたが、月の男のロケットで龍の白い体に「ぶち」ができ、大龍は退散する。

その後、一行は月の裏側などに赴く。二匹の蜘蛛に会った後、(どうやってかは不明だが)月の男が地球上で眠っている子供達を招待したパーティーにて、ローヴァーは自分をなくした少年と再会した。事情を説明するが、少年が眠りから覚めたため、再び離れてしまう。そして、少年がロヴァランダムをなくしたことにひどく悲しんでいる姿を見て、ロヴァランダムは(老婆とティンカーのところに戻る他に)少年に会いたいという想いを抱く。月の男は、アルタクセルクセスが人魚の王の娘と結婚したため海の王国に住んでいる可能性を指摘し、ロヴァランダムの行き先を示唆した。

プサマソスのいる入り江に戻ったミュウとローヴァー。プサマソスは試しに呪いの解除に挑んだが成功せず、やはりアルタクセルクセスへの謝罪と説得が必要だという事になった。そこでプサマソスは[[ウイン]]を呼び、 ローヴァーを海の王国((日本やハワイやフィリピンやイースター島等に手紙を届けるのに適している太平洋の温かいどこかとされている。))へ運んでくれるように頼んだ。

海の王国にて、ローヴァーは無事にアルタクセルクセスに再会した。魔法使いに謝罪をして、仔犬には戻れたが、魔法使いが忙しいということもあり、大きさはそのままだった。落ち込むローヴァーだったが、ウインに励まされ、人魚犬のローヴァー((アルタクセルクセス夫人の愛犬。))と友達になり、二度目の「ロヴァランダム」へ改名した。アルタクセルクセスも、ロヴァランダムに水かきを与えてくれた。

マーピープル(人魚)達と共に過ごす間、ウインは二匹のローヴァーを、世界の両端、[[エルダマール]]湾、[[惑わしの島々]]等を経た二度の旅行に連れて行ってくれた。だが、二度目の旅から戻るとアルタクセルクセスは機嫌を悪くしていた。ロヴァランダムが起こしてしまったという、近海を通るだけで嵐を巻き起こす((ウェイン・ゴードン・ハモンドとクリスティーナ・スカルは、この描写をトールキン自身がフィリーの地で体験した嵐と関連づけている。)) とてつもなく巨大で「ヨルムンガルド」を思わせるようなシーサーペント((Romuald I. Lakowski, 『"A Wilderness of Dragons": Tolkien 's Treatment of Dragons in Roverandom and Farmer Giles of Ham』。))に対処しなければならなかったためだ。

二匹は魔法使いに同行したが、任務は失敗し、大海蛇の件で人魚達はアルタクセルクセスの追放を求めた。アルタクセルクセス夫婦も同意し、引退してロヴァランダムと共にウインに連れられてイギリスに行った。アルタクセルクセスはウインに背中を預けながらタバコを吸った後、仔犬を元の姿に戻した((他の大多数と違い、ロヴァランダムが魔法使いに大して礼儀正しかったため。))。プサマソスの浜辺から遠く離れたその地(パーショア)でロヴァランダムは彼らと別れ、仔犬は自力で老婆とティンカーのところに戻った。

そこで何と少年とも再会した。少年は老婆の孫なのだ。その後、ロヴァランダムは少年と住み、プサマソスともずっと良き友であり続けた。ロヴァランダムは、長い時が過ぎた後にパーショアを訪れた。そこでアルタクセルクセス夫婦が「A.PAM」という名前で移住していた事を知って驚いた。アルタクセルクセスはチョコレートと「PAM's Rock」((Rockとは、イギリスの海岸地域で売られる砂糖菓子のこと。))とタバコを売り、夫人は水泳を教えていた。

*** 登場人物 [#Character]

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** 余談 [#c022655c]

最初に物語が執筆されてから70年以上も出版が遅れた理由については、ジョンが[[アレン・アンド・アンウィン]]社に持ち込んだ際に、レイナー・アンウィン自身は原稿を評価したものの、おそらくは『[[指輪物語]]』の出版が控えていた事が関係しているのではないかとされている。

プサマソス・プサマティデスは、イーディス・ネズビット著『砂の妖精』に登場する砂の妖精「サミアド(Psammead)」に関連付けられている。

月には数多くの不思議な生き物達が住んでいる。これらの生き物達は、ルイス・キャロルの作品に登場する生き物達に関連付けられている。また、月に生える木は後の[[マルローン]]を思わせる描写がなされている。

月への道すがら、ミュウとローヴァーは世界の端や「犬の島」((迷子の犬達にとってうってつけの島とされる。好きなだけ騒音を立てられ、「骨のなる木」が数多く生えている。))を眼下にした。この島は、イギリスの「アイル・オブ・ドッグズ」と「ドッガーバンク」に関連付けられている。

トールキンは、1922年にもフィリーの地を訪れていたが、あまり良い感想を持っていなかった。((『[[J.R.R.トールキン 或る伝記]]』。))
トールキンは、1922年にもフィリーの地を訪れていたが、あまり良い感想を持っていなかった((『[[J.R.R.トールキン 或る伝記]]』。))。

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