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* &ruby(ひと){一};つの&ruby(ゆびわ){指輪}; [#d34d9ced]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[物・品の名前]]|
|~スペル|the One Ring|
|~その他の呼び名|イシルドゥアの禍(Isildur's Bane)、大いなる指輪(Great Ring)、[[いとしいしと]]|

『[[ホビットの冒険]]』劇中において登場した「身につけると体が透明になる」魔法の指輪。同作中ではこの指輪は物語の一つの要素でしかなかったが、続編である『[[指輪物語]]』では、この「一つの指輪」が物語全体の焦点となる。

>三つの指輪は、空の下なる[[エルフ]]の王に、&br; 七つの指輪は、岩の&ruby(やかた){館};の[[ドワーフ]]の君に、&br;九つは、死すべき&ruby(さだめ){運命};の[[人の子>人間]]に、&br; 一つは、暗き&ruby(みくら){御座};の[[冥王]]のため、&br;影横たわる[[モルドール]]の国に。&br; 一つの指輪は、すべてを統べ、&br; 一つの指輪は、すべてを見つけ、&br; 一つの指輪は、すべてを捕らえて、&br;  くらやみのなかにつなぎとめる。&br;影横たわるモルドールの国に。((力の指輪についての伝承の歌で、サウロンが一つの指輪を鍛え上げた時に口にしたもの。))

** 解説 [#Explanation]

冥王[[サウロン]]が、他の[[力の指輪]]およびその所有者を支配するために作った指輪。
その目的を達成するため、サウロンは一つの指輪に自分自身の強大な力を移し込まなければならなかった。そのため、一つの指輪が存在している限りサウロンは何度倒されても復活することができたのと同時に、一つの指輪が破壊されればサウロンも滅びることとなった。
そして一つの指輪を破壊する唯一の方法は、この指輪が作られた[[オロドルイン]]の[[サンマス・ナウア]]にある、[[滅びの罅裂]]に投げ込むことのみである。

サウロンが[[最後の同盟]]に敗れた時に彼の手から奪われ、その後行方不明となっていた。
一つの指輪にはサウロンの邪悪な力が込められているために、これを用いる者は堕落させられる。もしサウロンの手に指輪が戻れば、サウロンの力は完全なものとなり、[[中つ国]]は彼の支配下となってしまうだろう。また指輪そのものが見えざる意志を持ち、復活したサウロンの元へ戻ろうとしている。

行方不明となっていたこの一つの指輪が再び見出されたことから『[[指輪物語]]』は始まる。

*** 外見、性質 [#z9f2116f]

一見すると黄金色に輝く、何の飾りもないつまらない指輪である。その表面は全く滑らかで傷一つなく、じっと見つめる者はその形の美しさに驚嘆するようになる。
しかし実際にはその縁に沿って火の線のような筆致で
>アッシュ・ナズグ・ドゥルバトゥルーク、アッシュ・ナズグ・ギムバトゥル、アッシュ・ナズグ・スラカトゥルーク、アグ・ブルズム=イシ・クリムパトゥル&br;(Ash nazg durbatulûk, ash nazg gimbatul, ash nazg thrakatulûk, agh burzum-ishi krimpatul)

すなわち
>一つの指輪はすべてを統べ、一つの指輪はすべてを見つけ、一つの指輪はすべてを捕らえて、くらやみのなかにつなぎとめる&br;(One Ring to rule them all, One Ring to find them, One Ring to bring them all, and in the darkness bind them)

という力の指輪についての詩の一節が銘文として、[[フェアノール文字]]を使って[[暗黒語]]で刻まれている(フェアノール文字が使われたのは、暗黒語の文字が細工に向かないためと想像される)。

サウロンが一つの指輪を手にしていた時はこの銘文は常にはっきりと表れていたが、[[イシルドゥア]]がサウロンの手から指輪を奪うと、指輪が冷えるにつれて次第に文字も薄くなり消えてしまった。だが'''サウロンの手の黒くして火のごとく燃えいたる熱気を恋うる'''((イシルドゥアが一つの指輪について書き残した文献中の表現。))ためか、指輪を火中に投じて熱すれば、再びその文字を浮かび上がらせることができる。

一つの指輪は、その重さも大きさも一定ではないと感じられることがままあった。実際に指輪はその意志によって、持ち主の指からするりと抜け落ちることがよくあった(そのため[[ビルボ・バギンズ]]およびその甥の[[フロド>フロド・バギンズ]]は紛失しないよう、指輪に細い鎖を通して首にかけるなどして持ち歩いていた)。
この指輪を傷つけたり破壊する方法は、[[滅びの罅裂]]に投げ込む以外には知られていない。

*** 効果 [#h0ed8354]

普通の者がこの指輪を指に嵌めると体が透明になり、視力が弱くなって聴力が鋭くなるといった効果を得られる。これは実は[[幽鬼>指輪の幽鬼]]の棲む幽界に移転させられるためである。繰り返しあるいは長期間指輪を嵌めていると、次第に体が薄れていき、ついには完全に見えなくなって幽鬼と化してしまう(([[ゴクリ]]は指輪の使用が頻繁でなかったためか、[[ホビット]]としての頑強さのためか、細りはしたが薄れるまでには至らなかった。))。

そして持っているだけで老いることがなくなり、不自然な長寿を付与される。しかしそれによって意欲が増進することはなく、ビルボ・バギンズはその感覚を'''引っ張って引き伸ばされた''' '''少ないバターを大きすぎるパンの上になすりつけたような'''と表現している。

指輪を持つ者はこれに魅せられて心を奪われてしまう。そればかりか、たとえ所有者でなくとも、指輪を欲しいと思っただけで心は堕落させられる。堕落の進行はその者の生来の資質に応じて様々であるが、何人もこれを免れえない。
また、指輪はその生来の資質に応じた力しか与えない。偉大な力ある者であれば、指輪に込められた強大な魔力を引き出し、サウロンを打ち倒すことすらできるようになる。だがその末路は幽鬼よりさらに恐ろしく、その者が次なる[[冥王]]として君臨することになる。

一つの指輪は元々、力の指輪とその所有者の意志を支配するためのものであった。一つの指輪を完全に使いこなすことができる者は、全ての指輪の作用を見てとり、その所有者の精神を読み取り、その両方を望むがままに捻じ曲げていくことができる。同様に、サウロンが指輪の力を使って築き上げてきた一切のものを習い覚え、我が物とすることができる。

*** イシルドゥアの禍 [#me3db159]

一つの指輪は、[[イシルドゥア]]が身を滅ぼすことになった事から、イシルドゥアの禍とも呼ばれていた。これは北方([[アルノール]])での伝承で使われていた言葉で、南方([[ゴンドール]])では一つの指輪が最後どうなったかは忘れ去られていた。そのため、[[ファラミア>ファラミア二世]]と[[ボロミア>ボロミア二世]]が見た夢歌に「イシルドゥアの禍」という言葉が出てきても、ファラミアたちにはこの言葉の意味するものが理解できなかった。

** 一つの指輪の歴史 [#acde0537]

*** 力の指輪が作られる [#o520eb00]

[[サウロン]]は[[第二紀]]の中頃、アンナタールという偽名を使って正体を隠しつつ、[[ケレブリンボール]]を領主とする[[エレギオン]]の[[グワイス=イ=ミーアダイン]]の[[エルフ]]に接近し、彼らに[[力の指輪]]を作る技術を教えた。その結果彼らは第二紀1500年代に、[[三つの指輪]]、[[七つの指輪]]、[[九つの指輪]]という[[力の指輪]]を作る。
するとサウロンは1600年頃、それらの指輪の力全てを支配できる、一つの指輪を[[オロドルイン]]で作り上げる。'''一つの指輪は全てを統べ、一つの指輪は全てを見つけ、一つの指輪は全てを捕らえて、くらやみのなかにつなぎとめる'''とは、指輪を完成させた時にサウロンが口にした言葉でもある。

*** 指輪を巡っての最初の戦い [#pa7bfe82]

その時ケレブリンボールはサウロンの目論見に気が付き、[[三つの指輪]]を隠した。1963年には、サウロンとエルフの戦いが始まる。サウロンは1695年より[[エレギオン]]に攻め込んで荒廃させ、[[九つの指輪]]を奪って1697年にはケレブリンボールを殺す(この時[[エルロンド]]は、エレギオンの残党を率いて[[裂け谷]]を作った)。サウロンの勢力は[[エリアドール]]を席巻するが、[[ギル=ガラド]]が1700年に[[ヌーメノール]]の援助を得たことにより、1701年にはサウロンはエリアドールより駆逐される。[[モルドール]]に撤退したサウロンは[[九つの指輪]]を[[人間]]に与えて[[指輪の幽鬼>ナズグール]]とし、東方へと勢力を伸ばした。
3261年に[[ヌーメノール]]軍が[[ウンバール]]に上陸するとサウロンは降伏する。3262年にサウロンはヌーメノールへと連行されるが、一つの指輪は[[バラド=ドゥーア]]に隠しておいた。3262年から3310年にかけて、サウロンはヌーメノールの地で[[アル=ファラゾーン]]を籠絡し、ファラゾーンに[[ヴァリノール]]を攻撃させる。その結果、[[イルーヴァタール]]の手によって3319年にヌーメノールは滅ぼされたが、サウロン自身もその没落に巻き込まれて肉体を失った。サウロンの魂は3320年には[[バラド=ドゥーア]]に戻り、一つの指輪を手にして再び形を取った。

*** サウロン、一つの指輪を失い、イシルドゥアの禍となる [#hee7348e]

[[最後の同盟]]の戦いで、サウロンは[[エレンディル]]と[[ギル=ガラド]]によって倒された。この時[[イシルドゥア]]が、折れた[[ナルシル]]の柄本でサウロンの指を、一つの指輪ごと切り取る。イシルドゥアは[[エルロンド]]の忠告を無視して、一つの指輪を自分のものとする。こうして3441年にて[[第二紀]]は終わった。
[[第三紀]]2年、[[イシルドゥア]]は[[ゴンドール]]の統治を甥の[[メネルディル]]に委ねると、自分は[[アルノール]]を統治するため北方へと旅立った。その途中[[あやめ野]]で[[オーク]]に襲撃される。[[イシルドゥア]]は一つの指輪を持って脱出しようと、これを指にはめて姿を消した。だがあやめ野の近くの[[アンドゥイン]]を泳いで渡ろうとしているときに、一つの指輪は指から抜け落ちる。その結果彼は[[オーク]]に見つかり、射殺された。

*** 指輪の再発見 [#u0c4d2a2]

一つの指輪は長らくあやめ野の川底に眠り続けていたが、第三紀2463年、[[デアゴル]]が偶然この指輪を発見する。[[スメアゴル>ゴクリ]]は彼を殺して指輪を奪った。その後スメアゴル(やがてゴクリと呼ばれるようになる)は一族の嫌われ者として追放され、指輪を持って[[霧ふり山脈]]の深い洞窟の中に潜んだ。ゴクリは指輪を[[いとしいしと]]と呼び、ほとんど常に持ち歩いていた。
第三紀2941年、[[はなれ山]]への旅に向かう途中の[[ビルボ・バギンズ]]が、霧ふり山脈山中の洞窟の中でゴクリが落とした一つの指輪を拾い上げる。その時は、この指輪が「一つの指輪」とは気づかれず、単純に魔法の指輪とだけ思われた。ビルボは、指輪の透明になる力で[[ゴクリ]]や[[オーク]]から逃げ出し、翌2942年に[[ホビット庄]]に持ち帰った(『[[ホビットの冒険]]』)。ビルボはこの指輪を、自分の書いた本の中などで、ゴクリからの「なぞなぞ遊びに勝ったことによってもらった贈り物」と称していた。
3001年、この指輪の存在がしだいに自分の中で大きくなっていき、異変を感じるようになったビルボは、一つの指輪を手放すことにする。彼は指輪を、自分の後継者の[[フロド・バギンズ]]に委ねた。

*** 指輪の正体の判明 [#za6cd597]

[[ガンダルフ]]は、ビルボの指輪の正体が何なのか、彼が指輪を手に入れたときからずっと気にかけていた。やがてガンダルフは、3001年にビルボが一瞬垣間見せたこの指輪への狂気にも似た執着などから、この指輪が長年失われたままであった「一つの指輪」なのではないかと疑うようになる。そのためガンダルフは、ビルボから指輪を譲り受けたフロドのことを度々訪問し、彼の様子を観察していた。
一方でガンダルフは、この謎を[[アラゴルン二世]]に相談する。すると2人はアラゴルンの薦めにより、長年この指輪を所持していた[[ゴクリ]]を見つけて情報を得ようと、3009年より度々ゴクリを捜索する。
3017年、ガンダルフはゴクリの捜索を諦め、[[イシルドゥア]]が一つの指輪についての記録を残しているのではないかと期待し、[[デネソール二世]]の許しを得て、[[ゴンドール]]に残されていた記録を捜索。その結果、イシルドゥアが残していた記録を発見し、一つの指輪の判別方法、すなわち「火にあぶると、フェアノール文字が表れる」という情報を得た。
一方で、アラゴルンがゴクリを発見して[[闇の森]]に連行したという知らせを受けたガンダルフは、闇の森へ向かう。ガンダルフはアラゴルンと共にゴクリを尋問し、イシルドゥアが死んだ[[あやめ野]]より指輪が発見されたこと、指輪をなくした後[[霧ふり山脈]]から出たゴクリが、[[モルドール]]で尋問されていたことを知った。
3018年4月12日、フロドの元を訪れたガンダルフは、フロドの指輪を暖炉の火の中に投げ込む。すると指輪には、イシルドゥアが残した記録と同じ文字が表れた。こうしてフロドの指輪が「一つの指輪」であることが確認された。

*** 指輪の逃走 [#pbe2e37b]

[[サウロン]]が一つの指輪を捜していることを知っていたガンダルフは、フロドにこのことを警告。フロドは[[ホビット庄]]を離れ、指輪を持って[[裂け谷]]へと避難することにする。フロドは、自分がホビット庄を離れることを知られないようにするため、[[堀窪]]に引っ越したように見せ掛けてから旅立つことを決める。フロドは[[袋小路屋敷]]を引き払う準備を始め、ビルボの誕生日があり、ビルボが[[はなれ山]]への旅に出発した9月に、自分も出発することにした。ガンダルフは、ホビット庄を[[野伏]]が守っており、まだホビット庄にサウロンの手先が現れていないことを知っていたため、このフロドの計画を認める。
だが、情報収集に出たガンダルフは6月末、ナズグールが[[大河>アンドゥイン]]を渡ってホビット庄へと向かっていることを、[[サルマン]]に遣わされた[[ラダガスト]]より知らされた。そこでガンダルフは、直ちに出発するようフロドに書いた手紙を[[バーリマン・バタバー]]に預け、自分は[[サルマン]]に会うため[[オルサンク]]へと向かった。ところがバタバーは手紙をホビット庄に送ることをすっかり忘れてしまい、さらにガンダルフはサルマンに監禁されたため、フロドに警告は届かなかった。

結果としてフロドは、当初の予定通り9月の23日に出発する。その時にはナズグールは[[グリマ]]から得た情報によってホビット庄を発見、到着しており、フロドも危うくナズグールに発見されるところであった。その後もフロド達は[[裂け谷]]へ向かう間ナズグールに追跡されたが、どうにか10月20日に裂け谷へと逃れることができた。

*** 一つの指輪の破壊 [#t2878f4a]

裂け谷では、10月25日に[[エルロンドの会議]]が開かれ、一つの指輪をどう処理するかが話し合われる。その結果、[[モルドール]]の[[滅びの山]]まで指輪を持っていって、[[サンマス・ナウア]]の[[滅びの罅裂]]に投げ込み、一つの指輪を破壊することが決定された。その間フロドが指輪を所持し、[[指輪の仲間]]とともに旅をすることになった。
3018年12月25日、指輪の仲間は裂け谷を出発。3019年2月26日、指輪の仲間は[[パルス・ガレン]]で離散してしまう。だがフロドと、彼に付き従う[[サムワイズ・ギャムジー]]はモルドールへの旅を続ける。3月13日、サムは[[キリス・ウンゴル]]にて、フロドが[[シェロブ]]の毒によって死んだと思い込み、自分が旅を引き継ぐことにして、フロドの体から一つの指輪を取る(こうしてサムは、僅かの間だが[[指輪所持者]]となった)。
だがフロドが生きていることを知り、3月14日に[[キリス・ウンゴルの塔]]でフロドの救出に成功したサムは、指輪をフロドに返す。それからフロドとサムは、滅びの山への旅を再開した。
3月25日、フロドとサムは[[サンマス・ナウア]]に到着。だがこの時、とうとう一つの指輪の魔力に屈してしまったフロドは、指輪を自分のものであると宣言する。ところがこの時、フロドに襲いかかったゴクリが一つの指輪を奪い、その後[[滅びの罅裂]]に指輪もろとも落下してしまう。その結果一つの指輪は破壊され、[[サウロン]]の力は永遠に消滅した。

** 指輪の設定について [#h9d7f562]

[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]が最初『[[ホビットの冒険]]』で「魔法の指輪」としてこの指輪を登場させたとき、指輪についての深い設定は考えていなかった。だが『ホビットの冒険』の続編を考えることになったトールキンは、この「魔法の指輪」の意味に再注目、そこから上記の設定が作られることになる。

*** 寓意について [#l1c95d5a]

『[[指輪物語]]』が発表された当時、「一つの指輪は原子爆弾を意味している」という批評家からの意見が上がった。だが[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]は、同作においていかなる寓意も存在しないとし、一つの指輪を原子爆弾として書いたという意見を否定した。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

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|~俳優|アラン・ハワード(Alan Howard)(声)|
|~日本語吹き替え|不明|

一つの指輪が登場人物にささやきかける誘惑が、声として表現されている。

** コメント [#Comment]

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