#author("2017-07-23T17:59:13+09:00","","")
#author("2017-07-23T23:04:37+09:00","","")
* レンバス [#j6b6a255]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[物・品の名前]]|
|~スペル|lembas|
|~異訳|レムバス|
|~その他の呼び名|エルフの行糧(waybread of the Elves) &br; レンバスの薄焼き菓子(wafer of lembas) &br; エルフの薄焼き菓子(elven-cake) &br; コイマス(coimas)|

** 解説 [#Explanation]

原形は[[シンダール語]]のレン=ムバス(lenn-mbass)で「旅行用食糧」(journey-bread)の意。[[クウェンヤ]]では「命の糧」(life-bread)の意の''コイマス''と呼ばれる。単に''行糧''(waybread)や''薄焼き菓子''(wafer)とも呼ばれる。
[[エルフ]]の携行保存食。粗碾きの粉を焼いて作った非常に薄い焼き菓子。一枚食べるだけで一日たっぷり歩けるほど活力が付き、走りながら食べることもできるほど扱いやすく、非常に美味。軽く持ち運びに適し、また葉に包まれたままで割れなければ何日でも効能が落ちない。

>食べものの大部分が非常に薄い焼き菓子の形をしていて、それは外側がうすいとび色に焼け、中がクリーム色をしており、あら碾きの粉でできていました。((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]] 下』 「八 さらば、ロリアン」で描写されたレンバスの外見))

大変貴重なものであり、[[エルダール]]の習慣によると、レンバスを貯蔵することも与えることも、王妃のみに属する権限であるという。
レンバスは、[[第三紀]]の[[ロスローリエン]]で[[ガラドリエル]]が[[指輪の仲間]]に与えたほか、[[第一紀]]に[[メリアン]]が[[ベレグ>ベレグ(ドリアス)]]に与えたという記録がある。エルフ以外の種族の者にこれが与えられるのは極めて稀なことであった。

『[[指輪物語]]』ではロスローリエンにおいて、最初レンバスを見た[[ギムリ]]は[[クラム]]だと勘違いして(恐らくクラムが不味いためだろう)顔をしかめたが、試しに少し口にするとすぐに態度を変え、ひとつ平らげてしまった。
[[フロド・バギンズ]]と[[サムワイズ・ギャムジー]]は[[滅びの山]]へ向かう旅において、レンバスからもたらされる活力に心身ともに大いに助けられた。また[[アラゴルン二世]]、[[レゴラス]]、[[ギムリ]]も、[[ウルク=ハイ]]に捕らえられた[[ペレグリン・トゥック]]と[[メリアドク・ブランディバック]]を追跡中、走りながらでも食べることができるレンバスに助けられている。
一方、フロドからレンバスをわけてもらった[[ゴクリ]]は吐き出して咳こみ、埃と灰(Dust and ashes)と形容した。またフロドが[[キリス・ウンゴルの塔]]に囚われた際、[[オーク]]たちは彼の持っていたレンバスに嫌悪を感じたらしく、レンバスは床にぶちまけられていた。
一方、フロドからレンバスをわけてもらった[[ゴクリ]]は吐き出して咳こみ、埃と灰と形容した。またフロドが[[キリス・ウンゴルの塔]]に囚われた際、[[オーク]]たちは彼の持っていたレンバスに嫌悪を感じたらしく、レンバスは床にぶちまけられていた。

『[[終わらざりし物語]]』によると、[[最後の同盟]]当時の[[ドゥーネダイン]]も、エルフのレンバスに準ずる効能を持つ「行糧の薄焼きパン」(wafers of a waybread)を持っていたという。

なお英語のウェハー(wafer)とはイーストを用いない薄焼きのパンのことで、いわゆるウェハース(薄焼き菓子)を意味する他、キリスト教の聖体受領式に使われる&ruby(せいへい){聖餅};を指す語でもある。

*** 『The Peoples of Middle-earth』での情報 [#o6747644]

『[[The Peoples of Middle-earth]]』にはレンバスについて書かれた原稿'''Of Lembas'''が収録されており、以下はその内容を纏めたものである。

[[エルダール]]によると、レンバスの歴史は[[大いなる旅]]の初期に遡る。長い旅路の助けとして、[[ヤヴァンナ]]は[[アマン]]で育てた穀物の一種からレンバスを作り、[[オロメ]]の手を介してエルダールに与えた。これがエルダールにとっての最初のレンバスだった。

レンバスの材料となる穀物は降り注ぐあらゆる光を栄養とするので、僅かな[[太陽]]の光のみで実を結ぶ。また寒気の時期を除けばどの季節に蒔いてもすぐに芽吹いて素早く成長した。ただし[[中つ国]]の植物の影の下では育たず、[[モルゴス]]のいた時代では彼が住む北方から吹いてきた風に対しての耐性がなかった。そのためエルダールはこの穀物を守られた土地や、日の光が当たる空き地で育てた。穀物には[[アマン]]の強い生命力が含まれ、レンバスを食す者にその力を与えた。
収穫ではその大きな金色の穂が一つずつ手で集められた(金属の刃は用いなかった)。白い茎も同様にして地面から引き抜かれ、穀粒を保管するための籠に編まれた。その輝く藁に触れる虫や害獣はおらず、腐敗やカビ等の中つ国の害悪とも無縁だった。
穀物の穂から完成品に至るまでのレンバス作りに携わるのは、[[ヤヴァンナ]]の乙女(the maidens of Yavanna)(([[クウェンヤ]]で'''Yavannildi'''(ヤヴァンニルディ)、[[シンダール語]]では'''Ivonwin'''(イヴォンウィン)と呼ばれる。))である[[エルフ]]の女性たちのみであった。[[ヴァラール]]から教わったその技は彼女たちの秘密であり、それ以外の者の関与は禁じられていた。
穀物の穂から完成品に至るまでのレンバス作りに携わるのは[[ヤヴァンナ]]の乙女(the maidens of Yavanna)(([[クウェンヤ]]で'''Yavannildi'''(ヤヴァンニルディ)、[[シンダール語]]では'''Ivonwin'''(イヴォンウィン)と呼ばれる。))である[[エルフ]]の女性たちのみで、他者の関与は禁じられていた。[[ヴァラール]]から教わったその技は彼女たちの秘密であった。

[[ヤヴァンナ]]に起源を持つものなので、レンバスの保管と贈与は[[エルダール]]のどの民(大小を問わず)であっても、王妃のような最も高位の女性が司った。そのような女性は[[クウェンヤ]]で'''massánie'''(マッサーニエ)、[[シンダール語]]で'''besain'''(ベサイン)((どちらもbreadgiver(パンを与えるもの)の意味でLadyと訳される。[[クリストファー・トールキン]]は[[古英語]]でbread-kneader(パンを練るもの)の意味であるhlǣf-dīġeが現代英語のladyの語源であることを指摘し、父[[トールキン]]が参考にしたことは間違いないとしている。なお、'''besain'''は'''besoneth'''(ベソネス)に訂正されたようである。))と呼ばれた。
レンバスはエルダールの中で困難な長旅を行く者や、怪我・苦痛で命が危険な者に与えられ、そのような者たちにしか利用が許されなかったので、[[人間]]には与えられなかった((ただし[[エルフ]]の愛する[[人間]]に対し、必要に迫られた場合に与えられた例外も僅かにあった。))。これは[[中つ国]]においてレンバスの備蓄は豊富だったためしがなかったという事情もあるが、エルダールの吝嗇や警戒心に基づく方針ではなく、彼らはレンバスを手許に留め、有限の命の者たちの間に広めないように命じられていたことによる。有限の命の者がレンバスを頻繁に食べるとその命に倦み疲れてエルフたちの間に留まりたくなり、禁じられた[[アマン]]へ行くことを望むようになると言われていた。
レンバスはエルダールの中で困難な長旅を行く者や、怪我・苦痛で命が危険な者に与えられ、そのような者たちにしか利用が許されなかったので、[[人間]]には与えられなかった((ただし[[エルフ]]の愛する[[人間]]に対し、必要に迫られた場合に与えられた例外も僅かにあった。))。これは[[中つ国]]においてレンバスの備蓄は豊富だったためしがなかったという事情もあるが、エルダールの吝嗇や警戒心に基づく方針ではなく、彼らはレンバスを手許に留め、有限の命の者たちの間に広めないよう命じられていたことによる。有限の命の者がレンバスを頻繁に食べるとその命に倦み疲れてエルフたちの間に留まりたくなり、禁じられた[[アマン]]へ行くことを望むようになると言われていた。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

劇場公開版ではカットされたが、『[[ロード・オブ・ザ・リング>ロード・オブ・ザ・リング#FellowshipOfTheRing]]』の[[エクステンデッド・エディション]]で、[[指輪の仲間]]がレンバスを与えられる場面が直接描かれている。この場面では原作と異なり、レンバスを口にするのは[[ギムリ]]ではなく、[[ピピン]]と[[メリー]]になっている。
『[[二つの塔>二つの塔#TheTwoTowers]]』および『[[王の帰還>王の帰還#ReturnOfTheKing]]』では劇場公開版でも、[[フロド]]と[[サム]]がレンバスを食べている様子が描かれた。『王の帰還』では、[[ゴラム(ゴクリ)>ゴクリ]]がサムとフロドの間を裂こうとした目論見にレンバスの欠片が使われた。

なお、『旅の仲間 エクステンデッド・エディション』に登場したものと、『二つの塔』『王の帰還』に登場したものとでは厚みが大幅に異なり、後者では大きな乾パンのようになっている。

** 外部リンク [#Links]

- [[木のひげ:http://www.din.or.jp/~kinohige/]](「エルフの焼き菓子」というパンを売っているパン屋)

** コメント [#Comment]

#pcomment(,,noname,,,,reply)