#author("2018-10-08T22:27:52+09:00","","")
* フェアノール [#he9a0bfb]

#contents

** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Fëanor|
|~その他の呼び名|クルフィンウェ(Curufinwë)、フェアナーロ(Fëanáro)|
|~種族|[[エルフ]]([[ノルドール]])|
|~性別|男|
|~生没年|[[二つの木の時代]](1169)~†(1497)|
|~親|[[フィンウェ]](父)、[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]](母)|
|~兄弟|[[フィンディス]]、[[フィンゴルフィン]]、[[イーリメ]]、[[フィナルフィン]](異母妹弟)|
|~配偶者|[[ネアダネル]]|
|~子|[[マイズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシア]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]](息子)|

** 解説 [#Explanation]

|>|>|~[[ノルドール]]の[[上級王]]|h
|CENTER:初代&br;[[フィンウェ]]&br;?~1495|CENTER:第2代&br;''フェアノール''&br;[[二つの木の時代]]1495~1497|CENTER:第3代&br;[[フィンゴルフィン]]&br;[[第一紀]]5~456|

本来の名は''クルフィンウェ''だが、母[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]がつけた「火の精(Spirit of Fire)」の意であるフェアナーロの名で呼ばれ、後の伝承の中では''フェアノール''(フェアナーロの[[シンダール語]]形ファイノール(Faenor)との混合形)の名でよく知られている。
[[ノルドール]]の[[上級王]][[フィンウェ]]と[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]の長子で、[[フィンゴルフィン]]と[[フィナルフィン]]の異母兄。妻の[[ネアダネル]]との間に[[マイズロス]]、[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシア]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]]ら[[七人の息子>フェアノールの息子たち]]がある。
フェアノールは、[[ノルドール]]族の史上もっとも技芸に優れた者と言われ、[[フェアノール文字]]を考案し、[[シルマリル]]を制作した。[[パランティーア]]も彼の作と言われる。

>かれは背が高く、見目形麗しく、支配する力を持っていた。目は射るように鋭く輝き、髪は黒々としていた。目的とするものがあれば、何であれ、断固として熱心にこれを追求した。助言によってかれの行動を変え得た者は数えるほどであり、力によって変え得た者は皆無である。かれは当時にあっても、あるいはそれ以後も、全ノルドール族中、最もすぐれた洞察力と、最も熟練した技の持ち主とされた。((『[[シルマリルの物語]]』「[[クウェンタ・シルマリルリオン]]第六章 フェアノールと鎖から解き放たれたメルコールのこと」))

*** 生い立ちからシルマリルの制作まで [#n5870645]

フェアノールが誕生して間もなく、彼を産むことで心身共に消耗した母[[ミーリエル>ミーリエル(フェアノールの母)]]は死去した。妻を失った父[[フィンウェ]]はフェアノールを溺愛したが、フェアノールが青年期にさしかかった頃に旧友[[イングウェ]]の近親者であった[[インディス]]と再婚した。
フェアノールは父の再婚を喜ばなかった。フィンウェとインディスの息子である[[フィンゴルフィン]]、[[フィナルフィン]]にもあまり好意を抱かず、彼らとは離れて暮らした。

フェアノール自身は、青年期のはじめに[[ネアダネル]]と結婚し、彼女の父[[マハタン]]から鍛冶と石工の技を学んだ。
この時期、フェアノールは自らの知識や技術の追求に没頭し、[[フェアノール文字]]や、天然のものよりも強い光を発する人工の宝石、[[マンウェ]]の[[鷲>大鷲]]の目のように[[遠方の物事を見ることができる石>パランティーア]]といった多くの偉大な発明を成した。

心身ともに成熟し、持てる能力を完全に使いこなすようになったフェアノールは、彼の最高傑作である[[シルマリル]]を制作するにいたる。
この三つの宝玉には[[ヴァリノール]]の[[二つの木]]の光が生きたまま込められていた。彼のシルマリル制作には、近づきつつある運命の予感があったのだとも言われている。結局はシルマリルの中にのみ、ヴァリノールの光が不滅のまま保たれることになったからである。
シルマリルを目にした者は誰もが驚嘆と喜びに満たされた。しかしフェアノールの心は自ら作ったこの作品に堅く縛り付けられており、やがてフェアノールは自尊心から、シルマリルの輝きを自分と父、そして自分の息子たち以外の者に見せることを惜しむようになっていった。

*** フィンウェ一家の不和 [#p63445af]

やがてフェアノールと[[フィンゴルフィン]]は、己の自尊心からそれぞれの利益と財産を守るために汲々とするようになる。
すると、[[シルマリル]]の輝きを渇望し、さらに[[ヴァラール]]と[[エルフ]]の仲を離間させたいと考えていた[[メルコール>モルゴス]]は、[[ノルドール]]族の間に未踏の[[中つ国]]への憧憬を植え付け、さらにフェアノールとフィンゴルフィンの対立を煽る風説を流した。
フェアノール自身はメルコールの言葉に直接耳を傾けたことはなかったが、同族間で交わされる流言は彼の心に火を付けた。フェアノールはヴァラールへの叛逆と中つ国への帰還の意志を公然と口にし、そのため[[ティリオン>ティリオン(地名)]]は騒然となる。そしてついに、調停のため[[フィンウェ]]が設けた席上で、フェアノールがフィンゴルフィンに剣を向ける事件が発生する。

そのためフェアノールは[[審判の輪]]に召し出されてヴァラールの前で証言することになったが、この調査によりメルコールの悪意が明らかとなる。だがフェアノールは無罪とはされず、同族に剣を向けて平和を乱した罪により、12年の間ティリオンを離れることを命じられた。フェアノールはティリオンを離れ、息子達と共に[[フォルメノス]]に住んだ。フェアノールを愛するフィンウェも彼と行動を共にした。

やがてフォルメノスで謹慎中のフェアノールのもとに、突然メルコールが姿を現わす。メルコールは自らの“予言”が実現したことを語り、さらなるヴァラールへの反抗を促そうとしたが、フェアノールは友情を装う彼の仮面の裏にシルマリルへの抑えがたい渇望があることを見抜く。恐怖に駆られながらも、フェアノールはメルコールを罵ってその鼻先で扉を閉ざし、彼を追い払った。

*** メルコールによるシルマリル略奪とフィンウェ殺害、フェアノールによるノルドール扇動 [#qf53d874]

[[マンウェ]]は[[タニクウェティル]]で祝宴を開き、[[ノルドール]]の間にある不和を取り除こうとする。フェアノールは渋々ながら出席し、その席上で[[フィンゴルフィン]]が誓った'''兄(フェアノール)を許し、一切の不満を忘れてその後についていく'''という言葉を一応は受け入れ、手を取って和解した。
だがこの時[[二つの木]]が、[[メルコール]]と[[ウンゴリアント]]によって枯死させられ、[[ヴァリノール]]が暗闇に襲われる。[[ヤヴァンナ]]は、[[シルマリル]]に保存された光を取り出せば二つの木を蘇生させることができると訴えたが、フェアノールはシルマリルを引き渡すことを拒否する。さらに[[フォルメノス]]より、[[フィンウェ]]がメルコールに殺され、シルマリルが奪われたという報せがもたらされた。
父フィンウェのことを何よりも愛していたフェアノールは、メルコールを「[[モルゴス]]」と呼んで呪い、暗闇に走り去った。

やがて不意に[[ティリオン>ティリオン(地名)]]に現れたフェアノールは、ノルドール族を前に大演説を行い、モルゴスへの復讐とシルマリルの奪還を訴え、[[ヴァラール]]の束縛から逃れて自由を得るために[[中つ国]]へと帰還するよう扇動した。彼の言葉には非常に強い力がこもっていたが、その多くはモルゴスがかつて語った虚言に発することであった。

*** フェアノールの誓言 (Oath of Fëanor) [#Oath]

この時[[ティリオン>ティリオン(地名)]]において、フェアノールと[[彼の七人の息子たち>フェアノールの息子たち]]は、相手が誰であろうと[[シルマリル]]を持つ者を、復讐と憎悪をもって追跡するという誓言を立てた。

>そこでフェアノールは、聞くだに恐ろしい誓言を立てた。かれの七人の息子たちも直ちにかれの傍らにすっくと立って、共にまったく同じ誓言を立てた。かれらの抜き身の剣は、松明の明かりに血のように赤く照り映えた。たとえ[[イルーヴァタール]]の御名によろうと、何人もこれを破ること、あるいは取り消すことのできぬ誓言を立てた。これを守らぬようなことがあれば常闇に呑まれるべしと言い、[[マンウェ]]の名を呼んで証人になり給えと言い、ついで[[ヴァルダ]]の名を、そして[[タニクウェティル]]の聖なる山を証人に頼み、[[ヴァラ]]であれ、鬼神であれ、[[エルフ]]であれ、まだ生まれておらぬ[[人間]]であれ、あるいは、偉大なると卑小なるとを問わず、善なると悪なるとを問わず、世の終わりの日まで時が世界にもたらすべきいかなる被造物であれ、かれらから[[シルマリル]]の一つを奪う者、手許に置く者、所有する者は誰であれ、この世の果てまで、復讐と憎悪をもって追跡するであろうと誓った。
かくの如く、[[マイズロス]]と[[マグロール]]と[[ケレゴルム]]、[[クルフィン]]と[[カランシア]]、[[アムロド]]と[[アムラス]]の七人の[[ノルドール]]の王子たちは、口に出して誓った。この恐るべき言葉を聞いて怯む者は多かった。なぜなら、かく誓われた以上は、善悪を問わず、いかなる誓言であれ、これを破ることはならず、その誓言は世界の果てまで、誓言を守る者をも破る者をも追いかけていくであろうからだ。((「第九章 ノルドール族の逃亡のこと」))

この誓言はフェアノールの死後もその七人の息子たちを呪縛し続け、ついには彼らの身を滅ぼすことになる。

*** 同族殺害とマンドスの呪い [#s65bc8a8]

こうしてフェアノールは、[[アマン]]の[[ノルドール]]族の九割もの賛同者を得て、[[中つ国]]への進軍を開始した。フェアノールは[[アルクウァロンデ]]に向かい、[[テレリ]]を説得して彼らの船で[[大海]]を渡ろうと考える。だがフェアノールは、テレリやその王である[[オルウェ]]を説得することができなかった。そこでフェアノールは自らの軍勢を集めて力ずくで船を奪い取ろうとし、それを阻止しようとするテレリとの戦闘に発展する。これがエルフによる最初の[[同族殺害]]である。
双方に多数の死者を出した末に、装備に勝るノルドール軍が勝利を収め、テレリの船は強奪された。ノルドールは陸路と海路に分かれ[[アラマン]]に至るが、その地でかれらは同族殺害の咎により[[マンドスの呪い]]を宣告される。
だがフェアノールと息子たちはあくまで進軍を取りやめようとしなかった。[[フィナルフィン]]は進軍をやめて引き返したが、フェアノールへの誓いに縛られていた[[フィンゴルフィン]]と、フィンゴルフィンの息子たちを見捨てられなかったフィナルフィンの子供たちも進軍を続けざるをえなかった。

しかしアラマンから[[ヘルカラクセ]]を横断して一度に[[中つ国]]に向かうには船の数が少なく、かといって船を使わずにヘルカラクセを横断することは無謀にすぎた。さらに時間が経つにつれ、ノルドールの中からフェアノールに対する不満が上がるようになる。
そこでフェアノールは、自らに忠実な者だけを先に船に乗せて船出し、[[フィンゴルフィン]]達をアラマンに置き去りにする。中つ国の[[ランモス]]に上陸したフェアノールは、船をアラマンに返すことをせずに[[ロスガール]]で燃やしてしまった。
このノルドール同士の裏切りが、同族殺害と、ノルドール族に背負わされた運命から生じた最初の果実であった。

*** フェアノールの死 [#s69278e2]

フェアノールの軍勢は[[ヒスルム]]に入り、[[ミスリム]]で野営の準備を始める。一方、[[ロスガール]]で焼かれた船の炎を見た[[モルゴス]]の軍勢は、まだ準備が整っていないフェアノールの軍勢を襲撃した([[ダゴール=ヌイン=ギリアス]])。
フェアノールの軍勢は数において劣り、不意をつかれたにも関わらず速やかに勝利を収めた。だがフェアノール自身は怒りのあまり味方から突出して敵に包囲され、さらに[[バルログ]]達がやってくる。[[ドル・ダイデロス]]の境界で孤立無援となったフェアノールは'''火に包まれ、多くの手疵を負いながらも怯むことなく、長い間踏みこたえていた'''が、とうとうバルログの首領[[ゴスモグ>ゴスモグ(バルログ)]]によって致命傷を負った。
フェアノールは追い付いてきた息子たちによって救出された後、ミスリムに引き揚げる途中の[[エイセル・シリオン]]に近い[[エレド・ウェスリン]]の山腹で、自らの死期を悟って足を止めさせた。[[サンゴロドリム]]の城砦を目にしたフェアノールは、死を前にした予見の力により、[[ノルドール]]族のいかなる力をもってしてもそれを覆すには至らないことを悟ったが、そのことを口に出そうとはせず、モルゴスの名を三度罵り、息子たちに誓言の死守と父の仇を討つことを託して死んだ。彼の魂は火のように燃え、自らの肉体を灰にして飛び去ったという。

>そしてかれは死んだが、埋葬もされず、墓も造られなかった。なぜなら、かれの霊魂は火のように激しく燃えていたので、それが肉体を飛び去る時、肉体は燃えて灰となり、煙のように運び去られたからである。かれと似た者は二度と再び[[アルダ]]には現われず、かれの霊魂も[[マンドスの館]]を離れることはなかった。
[[ノルドール族>ノルドール]]の最強の者は、かくの如くして逝った。かれの所為から、ノルドール族の最も世に知られる功業も、痛恨極まりない悲しみも生じたのである。((「第十三章 ノルドール族の中つ国帰還のこと」 ))

*** フェアノール王家 (House of Fëanor) [#House]

フェアノールと[[その息子たち>フェアノールの息子たち]]の家系はフェアノール王家と呼ばれた。本来は[[ノルドール]]の[[上級王]]位の継承権も[[フィンウェ]]の長子であるフェアノールの家系に属していたが、フェアノールの死後、その長男である[[マイズロス]]が[[フィンゴルフィン]]の長男で従兄弟である[[フィンゴン]]に救出されて[[サンゴロドリム]]から生還した際、[[アラマン]]での裏切りの謝罪として王位継承権を放棄して[[フィンゴルフィンの家系>フィンゴルフィン#House]]へと譲渡した。
これによってフェアノールの家系は[[マンドスの宣告>マンドスの呪い]]に予告された通り「奪われたる者たち(the Dispossessed)」と呼ばれるようになった。これはノルドールの王権と[[シルマリル]]を二つながら喪失したことによるという。

[[フェアノールの息子たち]]はいずれもフェアノールの誓言の呪縛によって、再三の[[同族殺害]]を犯した末に非業の死を遂げた。五男[[クルフィン]]の息子でフェアノールの孫にあたる[[ケレブリンボール]]のみが[[第二紀]]まで生き延びて[[エレギオン]]を築き、父や祖父と同様名工として名を馳せた。
だがケレブリンボールは、アンナタールと名乗って近づいてきた[[サウロン]]に誑かされて[[力の指輪]]を制作し、後にサウロンの正体と思惑に気づくと彼に抵抗したが、捕らえられて拷問にかけられた末に死亡した。これによって[[中つ国]]におけるフェアノールの家系は途絶えた。((『[[The History of Middle-earth]]』によると、フェアノールの次男[[マグロール]]と四男[[カランシア]]は結婚していたとされるため、[[アマン]]においてか、もしくは女系ではフェアノールの血統は残されている可能性もある。))

『[[指輪物語]]』作中で[[指輪の仲間]]が目にした[[モリアの西門>モリアの壁]]には、[[ケレブリンボール]]が描いた[[イシルディン]]の文様の中央に[[フェアノール王家の星]]の紋章があった。

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