#author("2023-08-06T15:53:25+09:00;2022-10-08T14:10:49+09:00","","")
* ヌーメノール [#sbc2909c]
** 概要 [#pad386e0]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|地名|
|~カテゴリー|[[地名]]|
|~スペル|Númenor|
|~その他の呼び名|星の国、[[西方国]]、ヨーザーヤン(Yôzâyan)|
|~異訳|ヌメノール|
|~その他の呼び名|[[西方国]](Westernesse) &br; 星の国(Land of the Star) &br; ヌーメノーレ(Númenórë) &br; アンドール(Andor) &br; エレンナ(Elenna) &br; ヨーザーヤン(Yôzâyan) &br; アナドゥーネー(Anadûnê) &br; [[アカッラベース]](Akallabêth) &br; アタランテ(Atalantë) &br; マル=ヌ=ファルマール(Mar-nu-Falmar)|

** 解説 [#k0e6dbf0]
** 解説 [#Explanation]

[[シンダール語]]で「いやはての[[西方国]]」の意。[[アドゥーナイク]]ではヨーザーヤン(贈り物の地の意)と言われる。
「''[[西方国]]''」の意。[[第二紀]]に[[大海]]の只中にあった島国。
[[宝玉戦争]]で[[冥王]][[モルゴス]]と戦った唯一の[[人間]]である[[エダイン]]三家のために、[[ヴァラール]]が報償として与えた地。この地に住む人間はヌメノール人もしくは「西方の人」の意である[[ドゥーネダイン]]と呼ばれた。
初代の王は[[エルロンド]]の兄弟である[[エルロス・タル=ミンヤトゥル>エルロス]]。

[[第一紀]]、[[中つ国]]で[[モルゴス]]と戦った[[人間]]([[エダイン]])のために[[ヴァラール]]から褒美として与えられた、[[大海]]に浮かぶ島国。五つの岬がある星形の形状をしていたため、星の国とも言われた。初代の国王は[[エルロンド]]の弟、[[エルロス・タル=ミンヤトゥア>エルロス]]であった。
[[ヴァラール]]の恩寵と[[アマン]]からやってくる[[エルフ]]との交友によって非常に繁栄し、[[中つ国]]の並の[[人間]]を遥かに凌駕する文明を誇った。だがやがてヌーメノール人は、[[人間]]には得られない「不死」を羨むあまり堕落し、最後の王[[アル=ファラゾーン]]は冥王[[サウロン]]に唆されて[[アマン]]へ侵攻した。その結果、ヌーメノールは[[大海に沈められて滅亡>世界の変わる日]]した。このことは滅亡物語[[アカッラベース]]に語られている。

ヌーメノールは[[第二紀]]には非常に繁栄する。[[至福の国]]の[[エルフ]]と交易を行って彼らから様々な教えを受け、中つ国に残った人間達の技術力を大きく引き離した。彼らは、中つ国の人々や、[[サウロン]]と戦う[[ギル=ガラド]]を援助した。
しかし、やがてヌーメノールの人々は、人間には禁じられた「不老不死」を崇めるようになる。そのためエルフを妬んで次第に彼らと疎遠になっていった。さらに中つ国の植民地支配を行なうようになる。
[[アル=ファラゾーン]]の時代になると、彼らは中つ国の覇権を巡って[[サウロン]]に挑戦。ヌーメノール軍は[[ウンバール]]に上陸してサウロンを降伏せしめた。サウロンは捕虜としてヌーメノールに連れ帰られたのだが、ヌーメノール人はサウロンの口車に乗せられ、ついには[[至福の国>アマン]]へと「不老不死」を勝ち取るために攻め入った。その結果、全能の神[[イルーヴァタール]]によって[[ヌーメノール]]は滅ぼされ、海中に沈められた。
ヌーメノール人のうち、最後まで[[エルフの友]]であり続けた[[節士派>節士]]はヌーメノールの没落を逃れて生き残り、[[中つ国]]に漂着して[[亡国の民の王国]]である[[アルノール]]と[[ゴンドール]]を築いた。

[[エレンディル]]とその息子の[[イシルドゥア]]、[[アナーリオン]]をはじめとする、最後までエルフに友好的だった[[忠実なる者]]たちはこの破局を逃れ、中つ国に漂着する。
彼らは人数も多くなく亡国の身ではあったが、それでも中つ国の人間よりははるかに優れていた。そのため彼らは中つ国西方の人間達の指導者となり、[[アルノール]]と[[ゴンドール]]の国を築いた。
*** 多数の名前の意味 [#bfd1f843]

*** トールキンの悪夢 [#ca983025]
:ヌーメノール (Númenor)|「[[西方国]](Westernesse)」「西方の地(Westland)」の意。下記のヌーメノーレの短縮形。
:ヌーメノーレ (Númenórë)|ヌーメノールの、[[クウェンヤ]]での完全な形((元来、「西方の国土(land of the West)」を意味するクウェンヤはNúmendorであり、Númenórëは「西方の民(people of the West)」の意味である。海に対する陸地(land)を意味するクウェンヤはndorだったが、人々(people)を意味するnórëと混同され、nórëが陸地の意味で使われるようになった。))。
:アンドール (Andor)|[[クウェンヤ]]で「贈り物の地(Land of Gift)」の意。[[ヴァラール]]の呼び名。
:エレンナ (Elenna)|クウェンヤで「星に向かう国(Starwards)」の意。[[エダイン]]が[[エアレンディルの星]]に導かれて航海しこの地を見出したため。より完全な形はエレンナノーレ(Elenna-nórë)であり、「星に向かう土地と名付けられた国(The land named Starwards)」を意味する。ここから「星の国(Land of the Star)」とも呼ばれる。
:ヨーザーヤン (Yôzâyan)|[[アドゥーナイク]]で「贈り物の地(Land of Gift)」の意で、アンドールと同義。
:アナドゥーネー (Anadûnê)|アドゥーナイクで「西方国(Westernesse)」の意。
:[[アカッラベース(Akallabêth)>アカッラベース]]|滅亡後の呼び名。アドゥーナイクで「滅亡せる国(The Downfallen)」の意。
:アタランテ (Atalantë)|滅亡後の呼び名。クウェンヤで「滅亡せる国(The Downfallen)」の意で、アカッラベースと同義。
:マル=ヌ=ファルマール (Mar-nu-Falmar)|滅亡後の呼び名。クウェンヤで「波間に没したる国(The Land under the Waves)」の意。

アトランティス伝説の[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]的解釈。トールキンが水没する都市の悪夢を何度も見たことが、彼の神話にアトランティス伝説が組み込まれるきっかけとなった。この話を作ってから、トールキンはその悪夢を見なくなったという。
*** 言語 [#zb306826]

** コメント [#c9aef6b4]
ヌーメノールの公用語は[[アドゥーナイク]]であったが、多くのヌーメノール人は[[エルフ語]]である[[シンダリン]]を学び、さらに賢者は[[クウェンヤ]]まで習得した。有名な場所、尊崇の対象である場所、王族や令名が高い者にはクウェンヤの名が付けられ、ヌーメノールの王は[[エルダール]]から心が離れるまで、クウェンヤの名で王位に就いていた。[[アル=アドゥーナホール]]の時代になるとエルフ語を使用することは禁じられ、[[節士]]の間でのみエルフ語が使われていた。

- ひょっとしたら、プラトンも同じような夢を見てクリティアス(アトランティスのネタ本)を書いたのかもしれない、と思った。 -- カイト
*** ヌーメノール人 [#ma67db26]

#comment
詳細は[[ドゥーネダイン]]も参照。
一般のヌーメノール人は、[[ベレリアンド]]の[[エダイン]]三家の子孫。王家のみは、初代王[[エルロス]]から[[半エルフ]]の血を受け継いでいた。

『[[終わらざりし物語]]』によると、[[ドルーエダイン]]も共に暮らしていたという(だがかれらは没落を感じ取ったのか、やがて島を去った)。

** 地理 [#tc72b0fd]

*** 地形 [#o3b2e8f2]

ヌーメノールは星形をした島であり、その中央には[[イルーヴァタール]]を祀る聖なる山[[メネルタルマ]]が聳えていた。メネルタルマの尾根[[タルマスンダール]]は五つの半島に向かって伸びていた。
中央部[[ミッタルマール]]には、王の直轄地[[アランドール]]や牧草地[[エメリエ]]があった。北の半島[[フォロスタール]]は冷たく荒涼としており、北端には険しく切り立った高台[[ソロンティル]]があった。西の半島[[アンドゥスタール]]の北部も荒涼としていたが、南部は緑豊かな地だった。南西の半島[[ヒャルヌスタール]]と南東の半島[[ヒャルロスタール]]も緑豊かで温暖であった。東の半島[[オルロスタール]]は冷涼な地だった。
島は全体として南へ向かって(東に向かっても若干)傾斜しており、南側を除けばほとんどの海岸は切りたった崖になっていた。

[[アマン]]に面する西側にはいくつもの湾と港があった。最も北にあるのが[[アンドゥーニエ]]であり、またアンドゥスタールとヒャルヌスタールの間には大湾[[エルダンナ]]があった。
ヌーメノールには主たる川は二つしかなく、第一の川[[シリル]]はメネルタルマの谷[[ノイリナン]]を発してミッタルマールの南で海に注いでいた。もう一つの川[[ヌンドゥイネ]]はエルダンナ湾に注いでおり、その流域には[[ニーシネン]]という小さな湖があった。

海沿いには数限りない海鳥が、内陸にもおびただしい数の鳥類が生息し、人々から愛されていた。木々も豊富で南部には大きな森があり、[[大海]]を越えて[[エルフ]]から贈られた苗によってその品種はますます豊かになっていた。
しかし金属の類はほとんど、貴金属にいたっては全く産出されず、それが後に[[中つ国]]に対する圧制の因の一つとなった。

*** 登場する地名および都市 [#mccf9552]

-[[ミッタルマール]](内陸地)
--聖山[[メネルタルマ]]
---[[タルマスンダール]]
--[[アランドール]](王の土地)
---王都[[アルメネロス]]
---[[ノイリナン]]
---[[ローメンナ]]
--[[エメリエ]]
--[[ヒャラストルニ]]

-[[フォロスタール]](北地方)
--[[ソロンティル]]
--[[オンドスト]]

-[[アンドゥスタール]](西地方)
--[[アンドゥーニエ]]
---[[オロメト]]
---[[アルマイダ]]

-[[エルダンナ]]湾
--[[エルダロンデ]]
---[[ニーシマルダール]]
--[[ヌンドゥイネ]]川
---[[ニーシネン]]

-[[ヒャルヌスタール]](南西地方)

-[[シリル]]川
--[[ニンダモス]]

-[[ヒャルロスタール]](南東地方)

-[[ローメンナ]]湾
--[[トル・ウイネン]]
---[[カルミンドン]]

-[[オルロスタール]](東地方)

** 歴史 [#w5f483cf]

*** ヌーメノールの歴代の王 [#mcf6aed1]

この一覧の在位年は『[[終わらざりし物語]]』収録の「エルロスの家系」に基づく。このため、13代目[[タル=アタナミル]]の即位年及び没年と24代目[[タル=パランティル]]の即位年は『[[追補編>指輪物語/追補編]]』収録の「[[代々の物語>西国年代記]]」の[[第二紀の年表>第二紀]]と異なる。

||名前|在位|h
|初代|[[エルロス・タル=ミンヤトゥル>エルロス]]|[[第二紀]]32~442 (410年間)|
|2代|[[ヴァルダミル]]|442 (1年間)((記録上では在位1年とされているが、王位は息子の[[タル=アマンディル]]に譲り、実際に統治は行っていない。))|
|3代|[[タル=アマンディル]]|442~590 (148年間)|
|4代|[[タル=エレンディル]]|590~740 (150年間)|
|5代|[[タル=メネルドゥル]]|740~883 (143年間)|
|6代|[[タル=アルダリオン]]|883~1075 (192年間)|
|7代|[[タル=アンカリメ]]|1075~1280 (205年間)|
|8代|[[タル=アナーリオン]]|1280~1394 (114年間)|
|9代|[[タル=スーリオン]]|1394~1556 (162年間)|
|10代|[[タル=テルペリエン]]|1556~1731 (175年間)|
|11代|[[タル=ミナスティル]]|1731~1869 (138年間)|
|12代|[[タル=キルヤタン]]|1869~2029 (160年間)|
|13代|[[タル=アタナミル大王>タル=アタナミル]]|2029~2221 (192年間)|
|14代|[[タル=アンカリモン]]|2221~2386 (165年間)|
|15代|[[タル=テレムマイテ]]|2386~2526 (140年間)|
|16代|[[タル=ヴァニメルデ]]|2526~2637 (111年間)|
|17代|[[タル=アルカリン]]|2657~2737 (80年間)((ヴァニデルメの死後、ヴァニデルメの夫[[ヘルカルモ]]がタル=アンドゥカルとして王位につき、2657年に死ぬまでヌーメノールを統治していたため、タル=アルカリンの即位は2657年となっている。))|
|18代|[[タル=カルマキル(アル=ベルザガール)>タル=カルマキル]]|2737~2825 (88年間)|
|19代|[[タル=アルダミン(アル=アバッターリク)>タル=アルダミン]]|2825~2899 (74年間)|
|20代|[[アル=アドゥーナホール(タル=ヘルヌーメン)>アル=アドゥーナホール]]|2899~2962 (63年間)|
|21代|[[アル=ズィムラソーン(タル=ホスタミア)>アル=ズィムラソーン]]|2962~3033 (71年間)|
|22代|[[アル=サカルソール(タル=ファラッシオン)>アル=サカルソール]]|3033~3102 (69年間)|
|23代|[[アル=ギミルゾール(タル=テレムナール)>アル=ギミルゾール]]|3102~3177 (75年間)|
|24代|[[タル=パランティル(アル=インズィラドゥーン)>タル=パランティル]]|3177~3255 (78年間)|
|25代|[[黄金王アル=ファラゾーン(タル=カリオン)>アル=ファラゾーン]]|3255~3319 (64年間)|

*** ヌーメノールの王位継承 [#p137206d]

ヌーメノールでは権威の象徴は笏杖であり、ヌーメノールの王位を示す[[ヌーメノールの王笏]]を受け継いだ王の世継が統治者たる王(または女王)になった。王はその在位中に正統な王位継承権を持つ者を世継に指名し、それを国内で宣言した。以降、王の世継は[[王の会議]]の一員となって国政を学んだ。統治せずに譲位した二代目の王[[ヴァルダミル]]以降、ヌーメノール王は年老いると世継に王笏を譲るのが習わしであり、その後は耄碌する前に自分の意志で世を去るのが常だった。
またヌーメノール王は王笏以外にも王家重代の宝器として、[[アランルース]]、[[バラヒルの指輪]]、[[ドランボルレグ]]、[[ブレゴルの弓]]の四つを受け継いだ。このうち[[バラヒルの指輪]]は4代目の王[[タル=エレンディル]]が長女の[[シルマリエン]]に与えたので、[[アンドゥーニエ]]の領主家の宝となった。

だが13代目の王である[[タル=アタナミル]]は耄碌してでも生に執着し、最期まで王笏を譲ろうとはしなかった。そして15代目の[[タル=テレムマイテ]]以降、王位は王の死によって世継に受け継がれるようになった。

ヌーメノール最後の王[[アル=ファラゾーン]]は正統な世継であった従姉妹の[[ミーリエル(タル=パランティルの娘)]]と無理やり結婚して、彼女から王位を簒奪した挙句、大艦隊を率いて[[アマン]]へ侵攻し、[[ヌーメノールの没落>世界の変わる日]]を招いた。この時[[ヌーメノールの王笏]]はアル=ファラゾーンと共に失われた。王家の宝器のうち、[[アランルース]]、[[ドランボルレグ]]、[[ブレゴルの弓]]もヌーメノールの没落によって失われ、[[アンドゥーニエ]]の領主家に受け継がれていた[[バラヒルの指輪]]だけが没落から救われた。

*** 王位の継承法 [#de49ecd2]

6代目の王[[タル=アルダリオン]]は、一人娘の[[アンカリメ>タル=アンカリメ]]に王位を継がせる為に、王位の継承に関する法を改定した。だがその内容は『[[追補編>指輪物語/追補編]]』と『[[終わらざりし物語]]』の「アルダリオンとエレンディス」で述べられているものとでは異なっている。

『追補編』ではまず以下の記述がある。
>第六代の王は一子を残した。それは娘であり、かの女が最初の女王[統治権ある女王]となった。その当時、男女を問わず王の第一子(the eldest child)が王位を継承するという王家の法(law)が制定されたからである。((ただしこれは『[[終わらざりし物語]]』の「アルダリオンとエレンディス」で引用されたものの訳文である。『[[追補編>指輪物語/追補編]]』の訳文は誤訳があるので参照しない。))
<また[[アルセダイン]]の[[アルヴェドゥイ]]が[[ゴンドール]]の王位を要求した箇所では以下の記述がある。
>『なおまた、昔ヌメノールにおいては、王位は男女を問わず王の長子(the eldest child)に伝えられた。この慣習(law)が戦乱絶え間ないこの亡命の地で守られていないことは事実である。しかし[[オンドヘル]]王の子息たちが子なくして世を去った今、われらが参考とすべきわれら民族の慣習はかかるものであった。』&br;(原註)この慣習(law)は(王からわれらがお聞きしたところでは)ヌメノール第六代の王[[タル=アルダリオン]]がひとりっ子の娘を残して死んだ時、ヌメノールで作られたものである。かの女は最初の統治する女王、[[タル=アンカリメ]]となった。しかし、かの女以前にこの慣習は行われていなかった。
<つまり統治者(統治権を持つ王・女王)の最年長の子が、男女を問わず王位を継承する。ただし統治者に子が無かった場合については触れられていない。
一方、『[[終わらざりし物語]]』の「アルダリオンとエレンディス」では以下のように述べられている。

後の時代に、[[タル=アルダリオン]]が変更した相続法は「新法(new law)」、それまでのものは「旧法(old law)」と呼ばれた。だが「旧法」は本来は法律(law)ではなく、誰も疑問に思わない古くからの慣習(custom)であったという。
「旧法」の慣習では、統治者の最年長の息子が世継となり、統治者に息子がいない場合は、[[エルロス]]の家系の男系の子孫のうち最も統治者に近い男性の親族が世継になるとされていた(この場合、統治者とは男の王に限定される)。
一方「新法」では、統治者に息子がいない場合は、最年長の娘が世継になるとされた(この場合、統治者とは男の王ないし女王)。ただし[[王の会議]]の提案により、女性の世継には王位の継承を拒否する自由が与えられた。彼女が拒否した場合は、男系女系に関わらず、統治者に最も近い男性の親族が世継となる。また彼女が王位を継承しても、子供が無いまま崩御ないし退位した場合も同様である。
また会議の要望によって、女性の世継は定められた期間内に結婚しなければ退位するものとされた。[[タル=アルダリオン]]はこの条項に、王の世継はエルロスの家系の者としか結婚できず、これに背けば王の世継の資格を失う、と付け加えた。彼は妻[[エレンディス]]とのいさかいの原因を、彼女がエルロスの家系ではなかった(エルロスの家系の者より寿命が短かった)ことに求めたからである。後にアルダリオンは女性の世継・女王の結婚を義務付けたこの条項を廃止した(娘[[アンカリメ>タル=アンカリメ]]がこれを嫌ったためと思われる)。だが結婚相手をエルロスの家系の者に限定することはその後も慣習(custom)として残った((註によると、別の文章では「王家の結婚」に関するこの決まりは法律(law)ではなく、王家の尊厳を守るために慣習(custom)となったものと述べられているという。))。
なお、旧来通りの統治者の最年長の息子の世継は、女性の世継のように王位を拒否はできない。ただし統治者は王位をいつでも世継に譲ることができたので、即位してすぐに譲位することもできた。この場合は少なくとも一年は王位にあったとみなされた。その唯一の例が[[ヴァルダミル]]である。

これは『[[追補編>指輪物語/追補編]]』の方式とは異なる。統治者の最年長の子が娘でも、息子が生まれればその息子(最年長の息子)が世継となり、王位を継承することになる。
『[[終わらざりし物語]]』の「アルダリオンとエレンディス」と「エルロスの家系」ではこの二つの異なる法に基づくと思われる王位の継承例がそれぞれ示されている。

:アンカリメへの継承とソロントの企て|「アルダリオンとエレンディス」によると、[[タル=アルダリオン]]の「新法」により、一人娘の[[アンカリメ>タル=アンカリメ]]が王の世継に指名された(([[第二紀]]892年に、[[アンカリメ>タル=アンカリメ]]は19歳で王の世継として宣言された。これは父[[タル=アルダリオン]]が800年に100歳で王の世継に宣言されたことを考えると非常に早い。))ことで彼女の許には多くの求婚者が現れた。彼女は彼らを拒絶していたが、結局は[[エルロス]]の家系の出身で求婚者の一人だった[[ハッラカール]]と結婚した。彼女が結婚した理由については、[[王の会議]]の勧告とも、アルダリオンの妹[[アイリネル]]の息子[[ソロント]](アンカリメの従兄)が王位を狙っていたからともいわれる。 女系男子であるソロントは、旧法では王にはなれない身分だったが、新法ではアンカリメが結婚しなければ王の世継になれる可能性が浮上した(これは新法における、女性の世継に結婚を義務付けた条項がまだ存在していることを前提としている)。そこで彼は、なかなか結婚しなかったアンカリメに対し、王の世継の地位を放棄するように迫った。アンカリメはこのソロントの意図を挫くために結婚したという。
また別の話では、アンカリメが結婚したのはアルダリオンが結婚の義務の条項を廃止した後のことだという。この場合、彼女が女王になっても子を産まずに死ねば、ソロントにはまだ王位を継げる可能性があった。そこで彼女は子供を産んでソロントの野心を完全に潰すために結婚したのだという。
一方「エルロスの家系」では、タル=アルダリオンにより、王に息子がなかった場合は最年長の娘が王位を継ぐように相続の法(law)が改められたことで、本来は王位を継げるはずだったソロント((ただし彼は女系男子なので、それまで男系男子のみが王位を継いできたのであれば、そもそも王位継承権はないはずである。))が長い間結婚していなかったアンカリメに対し世継の地位を放棄するよう迫り、アンカリメは結婚したことになっている。

:スーリオンへの継承とアンカリメの圧力|「アルダリオンとエレンディス」によると、[[タル=アンカリメ]]の息子[[アナーリオン>タル=アナーリオン]]には初め二人の娘がいたが、この二人は王の世継になることを拒否した。それは祖母である女王アンカリメを恐れ嫌っていたからであるとされる(([[クリストファ・トールキン]]はその註で、[[タル=アンカリメ]]が女王だった時代は息子の[[アナーリオン>タル=アナーリオン]]が王の世継だったはずなので、これは不可解としている。))。女王はこの二人に結婚を許さず、彼女らは独身だったという。アナーリオンには最後に息子の[[スーリオン>タル=スーリオン]]が生まれ、彼が王位を継いだ。
「エルロスの家系」では、スーリオンの項に「タル=アナーリオンの三番目の子である。姉たちは王笏を拒んだ。」とのみある。

:テルペリエンとミナスティルへの継承|「エルロスの家系」によると、[[スーリオン>タル=スーリオン]]の次代は女王の[[テルペリエン>タル=テルペリエン]]だが、彼女は[[イシルモ]]という弟がいながら王位を継いでいる。「アルダリオンとエレンディス」での方式ならイシルモが王位を継ぐはずであり、彼女への継承は『[[追補編>指輪物語/追補編]]』での方式に基づいていると思われる。そのテルペリエンは結婚せず子が無かったため、イシルモの息子[[ミナスティル>タル=ミナスティル]]がテルペリエンから王位を継いだ((恐らく[[イシルモ]]は姉より先に死んだと思われる。現に「エルロスの家系」では、[[タル=テルペリエン]]は長生き(享年411)だったとされている。))。だが『追補編』の方式は、統治者に子が無かった場合については何も触れていない。

なお、『[[終わらざりし物語]]』の「アルダリオンとエレンディス」では、[[タル=アルダリオン]]の「新法」の影響により、王の世継はエルロスの家系の者としか結婚できない慣習(custom)が生まれたとされている。一方、『[[シルマリルの物語]]』の「[[アカッラベース]]」では、[[アル=ファラゾーン]]が従姉妹の[[ミーリエル>ミーリエル(タル=パランティルの娘)]]に自分との結婚を強制させたことは「たとえ王家の中であろうと、再従兄妹以上に近い血縁同士の結婚を認めないヌーメノールの法(laws)に照らしても悪しき行為であった。」と述べられている。「エルロスの家系」でも「この結婚はヌーメノールの法(law)にも反していた。かの女はかれの父親の兄弟の子だったからである。」と述べられている。

*** 画像 [#jc6827a9]

&ref(Drowning-of-Numenor-port.jpg,,20%,ジョン・ハウ作画によるヌーメノールの水没);

** 本設定創作の経緯 [#ca983025]

これはアトランティス伝説([[Wikipedia:アトランティス]])の[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]的解釈である。トールキンが水没する都市の悪夢を何度も見たことが、彼の神話にアトランティス伝説が組み込まれるきっかけとなった。この話を作ってから、トールキンはその悪夢を見なくなったという((『[[J.R.R.トールキン 或る伝記]]』の記述より))。

** ドラマシリーズ『[[ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪]]』における設定 [#RoP]

中つ国の人間の国よりも高度に栄えているヌーメノールが映像化されているが、中つ国でサウロンの台頭が始まる以前にヌーメノール人とエルフが疎遠になっているなど、時系列が大きく短縮されている。

** コメント [#Comment]

#pcomment(,,,,,,reply)