* トム・ボンバディル [#he5b8996]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Tom Bombadil|
|~その他の呼び名|ヤールワイン・ベン=アダール(Iarwain Ben-adar)、フォルン(Forn)、オラルド(Orald)|
|~種族|不明|
|~性別|男|
|~生没年|不明|
|~親|不明|
|~兄弟|不明|
|~配偶者|[[ゴールドベリ]](妻?)|
|~子|不明|

** 解説 [#Explanation]

[[古森]]に住む、不思議な力を秘めた人物。力のある歌を歌い、[[柳じじい]]や[[塚人]]を退けている。[[一つの指輪]]さえも、ボンバディルを支配する力を持たず、一つの指輪の影響を受けない。
身長は[[ホビット]]よりは高いが、普通の[[人間]]よりは低い。山高の帽子のバンドに青い長い羽根をつけており、青い上衣を来ていた。茶色の長い顎鬚を生やしており、目は生き生きとして青く、顔は熟したリンゴのように赤く、笑うと無数の小じわが刻まれたという。
フロドたち一行が出会った時は川の娘[[ゴールドベリ]]と暮らしていた。
また[[バーリマン・バタバー]]や[[マゴット]]などの近隣の[[人間]]や[[ホビット]]、[[ギルドール>ギルドール(フィンロド王家)]]などの[[エルフ]]、[[ガンダルフ]]と交友があったようである。

ボンバディルは、古森で[[柳じじい]]に襲われた[[フロド・バギンズ]]たちを救出し、[[枝垂川]]の滝の辺の自分の家に2日の間滞在させたが、フロドたちはこの間にボンバディルから[[古森]]や[[アルノール]]についての様々な物語を聞いた。
その翌日ボンバディルは危険な目にあった場合は自分に呼びかけるように言うとフロドたちを送り出したが、フロドたちが[[塚山丘陵]]で[[塚人]]に捕らえられると、フロドの呼びかけに応えて再び現われフロドたちを救出した。この時、フロドたちに[[塚山出土の剣]]を見繕って渡している。[[ゴールドベリ]]には同じく出土したブローチ((『[[旅の仲間]]』[[塚山>塚山丘陵]]から出土されたブローチを見たときのボンバディルの言葉'''ずっと昔、これを肩にとめていたあのひとは美しかった。今度はゴールドベリにこれをつけさせよう。わたしたちはあのひとのことを忘れやしないぞ!'''))をお土産にしたらしい。
その後は[[東街道]]に出るまでフロドたちと行を共にし、別れ際には[[ブリー村]]に行ったら[[躍る小馬亭]]に泊まるように勧めた。

また[[指輪戦争]]が終結した後、[[ガンダルフ]]は帰りの旅の途中[[ブリー村]]を過ぎたところでフロドたち一行と別れて、ボンバディルに会いに行ったようである。

*** 名前について [#qac63620]

トム・ボンバディルは、[[エルフ]]からはヤールワイン・ベン=アダール([[シンダール語]]で「最古にして父なきもの」の意)、[[ドワーフ]]にはフォルン、[[北方の人間>北方の自由の民]]にはオラルド([[古英語]]で「非常に古い」の意)と呼ばれた。
『[[トム・ボンバディルの冒険]]』の「まえがき」によれば、ボンバディルという名は、[[バックの里>バック郷]]の住人が名付けたものであるらしい(この名はバックの里に通有な綴りであるという)。以前からボンバディルの存在は、バックの里の[[ホビット]]に知られていた。

*** 短編集におけるボンバディル [#b7d2f2b5]

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ボンバディルは、『[[指輪物語]]』以外の短編作品の主人公として登場する。『[[トム・ボンバディルの冒険]]』の詩は、古い話をホビットが記録しておいたものとされる。『トム・ボンバディル 小舟に乗る』は、フロド達が彼の元を訪れた後に作られたものとされている。
[[ゴールドベリ]]は前者の話にも登場し、ボンバディルは[[柳じじい]]や[[塚人]]と出会っている。後者の話ではボンバディルが[[枝垂川]]を船で下り、途中で出会った[[マゴット]]と共に、[[藺草村]]の旅籠に行っている。
これらの話では、日本語では『[[農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集]]』に収録されているものを読むことができる。


*** トールキン家の人形がモデル [#zdfaa7ae]

元々は、トールキン家の次男マイケルのオランダ人形がこのキャラクターのモデルであり、トールキンが息子達のためにボンバディルを主人公にして作った話が、1934年のオックスフォード・マガジンに掲載された。またトールキンの叔母の要請によって書かれ、編集された短編が『[[トム・ボンバディルの冒険]]』として、1962年に刊行されている。詳細は『[[J.R.R.トールキン 或る伝記]]』に掲載。

** トム・ボンバディルの正体について [#bebc4d48]

ボンバディルは[[第一紀]]の、[[月>月(天文)]]と[[太陽]]が天空に昇る前から[[中つ国]]にいたようである。

>トムは川や木よりも先にここにいた。トムは最初に降った雨の粒、最初に実ったどんぐりの実を覚えている。かれは[[大きい人>人間]]たちより以前に道を作り、[[小さい人たち>ホビット]]がやってくるのを見た。かれは王たちや墓穴や[[塚人]]たちより先にここにいた。[[エルフ]]たちが[[西方>アマン]]へ渡り始めた時、トムはすでにここにいた。[[海>大海]]が湾曲する前のことだ。かれは[[星々の下の暗闇が恐れを知らなかった頃>二本の木の時代]]のことを知っている――外の世界から[[冥王>モルゴス]]が来る以前のことだ。((『[[旅の仲間]]』トム・ボンバディルの家で[[フロド]]たちに古の物語を聞かせた後))

ボンバディルが何者かについては[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]もあまり資料を残しておらず、その正体について明言を避けている。そのためボンバディルの正体については、ファンや研究家の間で、様々な説が語られている。

:[[イルーヴァタール]]説|'''最初に降った雨の粒、最初に実ったどんぐりの実を覚えている'''というトムの発言、また「最古にして父なきもの」と呼ばれていることから、彼が万物の父であり、最初に世界にいた者=唯一神イルーヴァタールであると考える説。
だが、トールキンはイルーヴァタールをキリスト教の神と同一視していた。その神がひょっこりと[[中つ国]]にいるのは不自然である(『[[シルマリルの物語]]』の[[アイヌリンダレ]]にも、イルーヴァタールが[[アルダ]]に直接降り立ったという記述はない)。それに「最古にして父なきもの」というのはあくまでエルフにそう呼ばれていたということであって、「父なる神」と解釈すべきかはまた別である。
また絶対神イルーヴァタールであるとするならば、[[サウロンの指輪>一つの指輪]]を含めすべてのものを支配できると考えるのが自然だが、それについてガンダルフは作中で'''(ボンバディルが指輪を支配する力を持っているのではなく)むしろ、指輪がかれを支配する力を持たぬというべきじゃろう。'''((『[[旅の仲間]]』エルロンドの会議にて))と、ボンバディルにそこまでの力はないということを語っている。
:[[マイア]]説|イルーヴァタールよりも下位の存在の、マイアであるという説。
ボンバディルのもつ能力から考えると、これがもっとも自然で世界観に馴染む説だと考えられる。またガンダルフのセリフ'''ボンバディルとゆっくりしゃべろうと思っとるのじゃ。わしが今までの一生にしゃべらなかったくらいしゃべるのじゃ。かれは苔むすほどの不動石じゃが、わしは転がるべく運命づけられた石じゃった'''((『[[王の帰還]]』[[ブリー村]]の近くでの[[フロド]]たち一行との別れ際))からすると、ボンバディルはガンダルフと同位の者=マイアであると想像できる(ただしボンバディルは[[イスタリ]]よりも古くより中つ国にいたはずのため、ボンバディルがイスタリである可能性はない)。
だがボンバディルがどうして中つ国にやってきたのか、どうして中つ国を離れないのか、どうして[[ヴァラール]]に仕えていない(ように見える)のかといった点については、想像の域を出ない。
:[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]説|ボンバディルは、作者であるトールキン、もしくは(読者としての)トールキン家の人間の誰かの投影であるという説。前述のように、ボンバディルのモデルはトールキン家にあった人形であるため、中つ国におけるボンバディルもトールキン家とゆかりの存在と考えることもできる。
また、ボンバディルは強力な力を持ちながらも積極的に物語に関わろうとしないということは、物語の作者=絶対的傍観者ととらえることもできる。そしてトールキンは、中つ国を「準創造」した、つまり偉大なる神の模倣をして小さな世界を作ったと考えていた。ゆえに、(トールキン自身が作った世界の中では)神に準じる力を持ちながらも、神ではない存在=作者の投影である、と想像できる。
ただし、作者の投影がなぜ古森という限られた場所にいて、そこに閉じこもっているのかはよくわからない。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

物語の短縮のため、全く登場しない。ただし[[The Lord of the Rings Trading Card Game]]用に、[[Weta]]監修のもとボンバディルのデザインが作られている。
&ref(Bombadil.jpg,,25%,Wetaデザインによるトム・ボンバディル);

** コメント [#Comment]

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