#author("2022-08-28T15:15:24+09:00;2022-01-08T18:40:10+09:00","","")
* イルーヴァタール [#xfa64e37]
** 概要 [#g7d80ef7]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|人名|
|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Ilúvatar|
|~その他の呼び名|エル(Eru)|
|~その他の呼び名|エル (Eru) &br; 唯一なる神、至上神 (the One)|
|~種族|唯一神|
|~性別|不明|
|~生没年|不明~|
|~親|不明|
|~性別|男|
|~生没年|不明|
|~親|なし|
|~兄弟|なし|
|~配偶者|なし|
|~子|[[アイヌア]]、[[エルフ]]、[[人間]]|
|~子|[[エルフ]]、[[人間]]|

** 解説 [#aae6dda1]
** 解説 [#Explanation]

全能神。世界の創造主。「万能の父」の意。唯一なる神エルの[[エルフ語]]名。
[[アルダ]](地球)が創造されるとその管理は[[ヴァラール]]に任せ、世界にはほとんど介入していない([[ヌーメノール]]の破壊を除く)。そのため(ヴァラールに教えを受けなかった)[[中つ国]]の住人にはイルーヴァタールの意味はあまり、あるいはほとんど理解されていない。中つ国の民には、かつて中つ国に来たことがあるヴァラールのほうが、イルーヴァタールよりも崇拝されている。
[[クウェンヤ]]で「万物の父(Father of All)」の意。唯一神''エル''(([[クウェンヤ]]で「唯一なる御方(He that is Alone)」、「唯一なる神(the One)」の意。))のこと。繋げて''エル・イルーヴァタール''とも呼ばれる。全能神であり、万物の創造主。
[[アイヌル]]は彼の思考から生まれた者達で、また[[エルフ]]と[[人間]]は[[彼の子ら>イルーヴァタールの子ら]]にあたる。[[アルダ(地球)>アルダ]]は彼が示した主題にアイヌルと子らが参画することによって創造され、紡がれているものである。

一方、堕落前の[[ヌーメノール]]では、[[メネルタルマ]]にてイルーヴァタールを崇める祭りなどが行われていた。
>「すでに汝らに明かせし主題により、われは汝らが調べを合わせ、大いなる音楽を作らんことを望む。われは汝らに不滅の炎を点じたり。故に、汝らそれぞれに、思いを尽くし、工夫を尽くし、持てる力を尽くしてこの主題を飾るべし。われはここに坐して聞き、汝らの力により、大いなる美が目覚めて歌となるを喜ばん」((『[[シルマリルの物語]]』「[[アイヌリンダレ]]」))

** コメント [#f3f0d71d]
*** 万物の父 [#b75c7985]

- ボンバディルの正体がこの御方だったら、凄く笑えると同時に好きになれるんだけどな。どうやらそうでは無いらしいのが、残念。 -- PINPIN
- トールキン=エル -- やっこ
- エルとヴァラールの関係は一神教と多神教を足して2で割ったようなものかもしれない。 -- エグゼクター
- エルが唯一神の一神教じゃない?アイヌアは精霊で。キリスト教のような感じ。上の本文にも“唯一なる神“ってあるし --  &new{2007-06-05 (火) 15:30:22};
- ↑しかしアイヌアも「諸神」って言われてる。 -- 3sd21dgf &new{2007-09-17 (月) 21:33:06};
- 『シルマリル物語』で「アイヌリンダレ」を最初読んだときにぶっとびました。旧約聖書の書き方まんまなんですよ(笑)、機会があったら旧約聖書の文語版をのぞいてみてください。田中明子さんもやるなあ(笑)>翻訳 -- クリスチャンな指輪信徒 &new{2007-12-17 (月) 16:37:47};
- ↑ 知りませんでした。やはりトールキンがイギリスでは数少ないカトリック教徒であることが影響しているのでしょうか。興味深い話です。 -- 転蓬の風来人 &new{2008-11-02 (日) 14:09:06};
- ↑×3 それはイルヴァタールのことを知らない人間の言葉ではなかったでしょうか。 -- ホビット &new{2008-11-24 (月) 14:11:39};
- 「エル」とはアイヌア語名かな? -- ホビット &new{2008-12-30 (火) 12:42:33};
- 自分は、人格をもった一人の神というよりは、アルダ・外の虚空もなにもかも全てを包んでる器のようなイメージ。個の精神で存在してるんじゃなく、この世界丸ごと全てが彼の肉体であり精神であると思う。宇宙そのものがエル。アイヌア達はエルの臓器、エルフや人間は細胞やミトコンドリアみたいな感じ。 --  &new{2009-01-01 (木) 19:29:03};
- ↑大日如来ですかね。…となると、メルコールもサウロンもエルの一部。 --  &new{2009-01-01 (木) 20:04:09};
- 日本という土地柄、「自然への畏怖→自然の諸力への崇敬→神祇への祭祀の発生→多神教(諸神)→二元論的の形成→一神教」というのがみなさんの神話形成に関する考え方(観念)ではないでしょうか。 トールキンにおいては、「唯一神→使者たちの創造→天地創造→地上の諸力の創造→人間誕生→反逆・失寵・人知の及ばないものの神格化(自然崇拝へ)→神の使者たちへの崇敬(諸神のヒエラルキー)→習合・分化・多神教」であるように思われます。 諸神(あるいは反逆者)への崇敬が、大元の創造者への崇拝より目立つ・とってかわる構図です。ヌメノールの祭祀の変遷にはこの考えが強く反映されている。これは指輪物語の世界観全体にかかわりますね。 また、第三期末までは聡明な長命種が数多く残っています。彼らは世界の変遷をほぼ正確に見知っているわけです。ですので現代世界のようには自然崇拝や多神教が入り組んだ状況になっていない。 漢字の草創期(初期の卜辞)における「帝」、これは唯一神を指しますが、同時に「上下帝」ともいって上帝の下僕らがしばしば(下)帝として祀られています。 神意の代理執行者(下僕)を「帝」祭祀の体系のなかに含めていたわけです。あくまで「唯一神を崇拝する一環として」そのヒエラルキーに従う諸力を崇敬していたものと考えられます。ヴァラたちへのエルダールの尊崇は、これに似ているのかもしれません。 -- なんとか亭 &new{2009-04-13 (月) 12:33:42};
- なお、唯一神「帝」の代理として殷商では四方の方神が祀られたそうです。方神の力は「風」によって伝達されます。四方の「風」も祭祀の対象でした。また卜辞では「風」は「鳳」のように鳥形の字で表現し、鳳(大鳥)はすなわち神意の伝達者でした。神意の伝達者として風を、また大鳥ソロンドールの一族をつかさどるのが「風を吹かす者」(スーリモ)と呼ばれるマンウェですね。このあたりの神話的符合も興味深い。 -- なんとか亭 &new{2009-04-13 (月) 13:42:04};
世界が始まる前、イルーヴァタールは[[時なき館]]において[[アイヌル]]を生み出して[[不滅の炎]]を与えると、かれらに「主題」を示して[[創世の音楽(アイヌリンダレ)>アイヌリンダレ]]を奏でさせた。[[メルコール>モルゴス]]が起こした不協和音のために音楽は三度の変更を余儀なくされたが、その度ごとにイルーヴァタールは新たな主題を示し、三つ目の主題は不協和音をも取り込んで一つの音楽となって終わった。

#pcomment(,6,,,,,reply)
するとイルーヴァタールは、音楽が実は[[アルダ(地球)>アルダ]]の姿とその歴史を形作るものであったことを明かし、[[虚空]]に[[不滅の炎]]を送り出して[[エア(世界)>エア]]を創造する。そしてアイヌルの中で望む者はエアに入って実際にアルダを創造することを命じた。([[ヴァラール]]と[[マイアール]])

さらにアルダの住人として[[イルーヴァタールの子ら]]を生み出し、[[エルフ]]には世界の圏内で最高の美を案出する能力(「不死性」)を、[[人間]]には世界の運命に束縛されない自由(「[[死すべき運命]]」)を、それぞれ''贈り物''として与えた。これにより、アルダの創造は細部に至るまで完遂されるのだと言われている。

[[世界が終わり>ダゴール・ダゴラス]]、アイヌルと子らによって[[第二の音楽>アイヌリンダレ#Second]]が奏せられた暁には、全ての者達の思いに対して[[不滅の炎]]が与えられるという。

*** アルダへの介入 [#m97a5a1e]

[[エア]]の創造以後、[[アルダ]]の管理と発展は[[ヴァラール]]の采配と[[子ら>イルーヴァタールの子ら]]の働きに委ねており、アルダの内側にいる者達からはイルーヴァタールの意図は隠されている。だがヴァラールの内で[[マンウェ]]のみは、自らの心の奥深くに呼びかけることでイルーヴァタールの声を聞くことができた。

:【[[ドワーフ]]の誕生】|[[子ら>イルーヴァタールの子ら]]の目覚めを待ちきれない[[アウレ]]が独断でドワーフを作り出した時、イルーヴァタールは自らアウレに語りかけてその真意を問い質した。アウレが恭順を示してドワーフの父祖たちを打ち壊そうとし、それに父祖たちが怯える様子を見せると、イルーヴァタールは憐れを催してアウレを赦し、ドワーフをアルダの住人として嘉納した。そのためドワーフは「イルーヴァタールの養い子」とも呼ばれる。しかし「最初に生まれた者たち」である[[エルフ]]より先にアルダで生を受けることは許さず、しかるべき時が来るまでドワーフたちは眠りに就かされた。
'''「天地創造の時、アイヌルの考えにわれが存在を与えし如く、われは汝の願望を取り上げ、世界の中に場所を与えたり。されど、汝の製作物にわが手を加うることはせず」'''((『[[シルマリルの物語]]』「アウレとヤヴァンナのこと」))
:【[[エント]]と[[大鷲]]の到来】|ドワーフの一件を知った[[ヤヴァンナ]]は、彼女の愛する[[オルヴァール(植物)>オルヴァール]]と[[ケルヴァール(動物)>ケルヴァール]]が[[子ら>イルーヴァタールの子ら]]にほしいままに虐げられるのではないかと危惧し、[[マンウェ]]に相談した。マンウェが黙想していると、イルーヴァタールはマンウェの心の内に語りかけ、再び[[アイヌルの歌>アイヌリンダレ]]の光景を幻視させると、子らが目覚める時には[[エント]]と[[大鷲]]もまた[[アルダ]]で生を受けることになっていると告げた。
'''「汝ら、ヴァラたちよ、汝らの中には、かの歌声のすべてを、いと小さき声に至るまで、われが聞かざりしと思う者ありや」'''((『[[シルマリルの物語]]』「アウレとヤヴァンナのこと」))
:【[[エルフ]]の救出】|[[中つ国]]で[[エルフ]]族が目覚めると、[[メルコール>モルゴス]]はかれらを[[ウトゥムノ]]に連れ去ったり、影の精を送り込むなどして害をなした。このことを[[オロメ]]の報告で知った[[ヴァラール]]は[[審判の輪]]に集い、いかに対処すべきか合議した。最後にマンウェが心の内に問いかけると、イルーヴァタールは以下のように答えた。これにより[[力の戦い]]が起こった。
'''「われらは、たとえいかなる犠牲を払おうと、もう一度アルダの支配権を手に入れ、クウェンディをメルコールの影より救い出すべきである」'''((『[[シルマリルの物語]]』「エルフたちの到来と虜囚となったメルコールのこと」 イルーヴァタールの助言を伝える[[マンウェ]]の言葉))
:【[[ベレン>ベレン(バラヒルの息子)]]と[[ルーシエン]]の復活】|[[ベレン>ベレン(バラヒルの息子)]]が死んだ時、[[ルーシエン]]は彼の後を追って[[マンドスの館]]に至り、[[子ら>イルーヴァタールの子ら]]の受難を哀歌にして歌って[[マンドス]]の心を動かした。マンドスは[[マンウェ]]に相談し、マンウェは心の内にイルーヴァタールの啓示を求めた。結果、ルーシエンには[[エルフ]]と[[人間]]いずれの運命に殉じるか選択が与えられることになり、ルーシエンはベレンと共に人間として生きて死ぬことを選び、共に[[中つ国]]へ戻って暮らした。この二人の結びつきから[[半エルフ]]の血脈が生じた。

*** ヌーメノールにおける崇拝と没落 [#r74c6a9f]

[[ヴァラール]]から直接教えを受けた[[上のエルフ]]を除けば、イルーヴァタールの存在とその意味を正しく理解している者はほとんどいない。[[中つ国]]の民にとってはヴァラールの方がより身近かつ崇拝すべき対象であり、しばしばヴァラールは「神々」と誤って呼ばれる。
一方、[[ヌーメノール人]]はヴァラールが遣わした[[マイアール]]と[[上のエルフ]]から教えを受けたため、[[ヌーメノール]]ではイルーヴァタールが唯一神として崇拝されていた。[[メネルタルマ]]の頂上はイルーヴァタールに捧げられた聖所とされ、そこでは年に三回、国民が集まって礼拝が行われた([[エルキエアメ]]、[[エルライタレ]]、[[エルハンタレ]])。

だがヌーメノールが堕落するにつれて祭祀はなおざりにされた。やがて島にやってきた[[サウロン]]はイルーヴァタールの実在を否定し、メネルタルマへの参上を禁ずる。とはいえサウロンといえどもイルーヴァタールの聖所をあえて穢すことはできなかったという。

[[第二紀]]末、堕落の極みに達したヌーメノール人は[[人間]]には与えられていない「不死」を奪い取るために[[アマン]]へ侵攻する。この事態に[[ヴァラール]]は[[アルダ]]の統治権を返上し、それを受けてイルーヴァタールはアルダの構造を根本から作り変えた。平面であった地表は球形となり、ヌーメノールの島は覆されて[[大海]]に没し、アマンは地上から取り除かれて[[世界の圏外>世界の圏]]に移された([[世界の変わる日]])。

*** 『[[指輪物語]]』において [#d8c70352]

>「その背後には、指輪の造り主の意図をも越えた、何か別のものが働いていたじゃろう。こういえば一番はっきりするだろうか。ビルボはその指輪を見つけるように&ruby(・・・・・・・){定められていた};、ただし、その造り主によってではないと。そうだとすれば、あんたもまたそれを所有するように&ruby(・・・・・・・){定められている};ことになる。ことによるとそう考える方が元気づけられるかもしれない。」
「そんなことないです。」と、フロドはいいました。「もっともわたしには、あなたのおっしゃることがよくわかってないのかもしれませんが。」((『[[指輪物語]] [[旅の仲間>指輪物語/旅の仲間]]』「過去の影」 [[ガンダルフ]]と[[フロド>フロド・バギンズ]]の会話。))

『[[終わらざりし物語]]』によると、[[第三紀]]に[[ヴァラール]]が[[イスタリ]]を[[中つ国]]に派遣する際にも、[[マンウェ]]はイルーヴァタールの言葉を仰いだのだと言う。

また、本文で明確にされているわけではないが、[[山頂の闘い]]で力尽きた[[ガンダルフ]]を「白のガンダルフ」として蘇生して送り返したのはイルーヴァタール自身であったという。

*** 備考 [#kf2a1099]

[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]は敬虔なカトリックであり、イルーヴァタールはキリスト教の神と同一の存在だとしている。

** コメント [#Comment]

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