* アイヌリンダレ [#j0543b56]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[詩・歌]]|
|~スペル|Ainulindalë|
|~その他の呼び名|大いなる音楽(The (Great) Music)、大いなる歌(The (Great) Song)|

** 解説 [#Explanation]

[[クウェンヤ]]で「[[アイヌア]]の音楽」の意。
世界を創造した[[アイヌア]]の音楽のことで、[[ルーミル>ルーミル(ティリオン)]]によって作られた創世記の題名でもある。

*** 三つの主題と不協和音 [#aededddb]

>…… かくて、アイヌアの歌声は、ハープの如く、リュートの如く、管の如く、トランペットの如く、ヴィオルの如く、オルガンの如く、無数のクワイアの歌うが如く、こもごも起こって、イルーヴァタールの主題を大いなる音楽に作りなし始めた。そして、無限に取り交わされるあまたの旋律は、妙なる諧調に織りなされ、一つの楽の音となって響きわたり、もはや耳にも達せぬ深きところ高きところにまで届き、イルーヴァタールの宮居も溢れるほどにその響きに満たされ、溢れ出た楽の音の音と谺は外に流れて虚空に入り、虚空はもはや虚空ではなくなった。((『[[シルマリルの物語]]』「アイヌリンダレ」))

[[エル・イルーヴァタール>イルーヴァタール]]は自らの心より生み出した[[アイヌア]]に[[不滅の炎]]を点じ、かれらに力ある主題を明かしてそれを各々が思いと工夫を凝らして奏することを望んだ。そこで全てのアイヌアはそれぞれの&ruby(パート){声部};に分かれて斉唱する。
しかしアイヌアの内で最も大きな力と資質を与えられていた[[メルコール]]は、虚空に不滅の炎を求めて独りさまよったために彼自身の考えを抱くようになっていた。自らの声部をさらに大ならしめたいと欲したメルコールは歌に自らの思いを織り込み、調和を乱す。彼から生じた不協和音は他のアイヌアの歌声を圧し、中にはメルコールに同調する者まで現れた。

イルーヴァタールははじめ黙したまま耳を傾けていたが、やがて微笑して立ちあがり、左手から新たなる第二の主題をアイヌアに示す。これは第一に主題に似ていたが、次第に力強さを増し新たなる美を獲得するものだった。
第二の主題の主たる奏者はメルコールの兄弟である[[マンウェ]]であった。しかし再びメルコールと彼が率いる者達による不協和音が巻き起こり、激しい戦いの末にやはりメルコールが勝利を収めた。

そこでイルーヴァタールは厳しい顔をして再び立ちあがり、右手から第三の主題を示す。これは前の二つの主題とは似ておらず、はじめは静かだが決してかき消されることがなく、次第に力と深さを増していくものだった。そしてこの主題には測り難い悲しみが基調となり、そこから美が生じていた。この時アイヌア達は気付かなかったのだが、この第三の主題には[[エルフ]]と[[人間]]の存在が織り込まれていた。
メルコールの不協和音はかつてない激しさでこれと争ったが、主題をかき消すことはできず、それどころか主題は不協和音をその中に取り込んで一つの音楽となった。

三たび立ちあがったイルーヴァタールの顔は仰ぐだに恐ろしく、その両手より発せられた一つの和音によって、アイヌアの音楽は終わった。

>「げにアイヌアは力ある者なり。 …… されど、メルコールは知るべし。すべてのアイヌアは知るべし。われはイルーヴァタールなり。 …… 汝メルコールよ、いかなる主題であれ、淵源はことごとくわがうちにあり。何人もイルーヴァタールに挑戦して、その音楽を変え得ざることを知るべし。かかる試みをなす者は、かれ自身想像だに及ばぬ、さらに驚嘆すべきことを作り出すわが道具に過ぎざるべし。」((同上))

*** [[アルダ]]の幻視と[[エア]]の創造 [#fdad31f9]

>アイヌア一同が感嘆して見守るうちに、この世界はそれ自身の歴史を繰り広げ始めた。それは生きて、育ってゆくように思われた。 …… &br;「汝らの音楽を見よ! これは汝らの歌いし歌なり。 …… 」((同上))

[[イルーヴァタール]]は虚空に[[アイヌア]]を導き、その音楽によって織りなされた[[アルダ]]の姿と歴史を視覚としてアイヌアに示す。
アイヌアはかれら自身の考えから生じたことどもと、イルーヴァタール自身から生じた存在である[[エルフ]]と[[人間]]を目にして驚嘆し、それに魅せられた。同時に、アイヌアの歌がそれと知らず[[イルーヴァタールの子ら]]のための世界を準備するものであったことに気づく。
しかしイルーヴァタールが歌と世界についての知識をアイヌアに与えている最中、アルダの幻視はかれらの眼前から取り去られる。(アイヌアに視覚として示された歴史は、エルフが去り、人間の時代が到来するまでのものであったと言う)
しかしイルーヴァタールが歌と世界についての知識をアイヌアに与えている最中、アルダの幻視はかれらの眼前から取り去られる(アイヌアに視覚として示された歴史は、エルフが去り、人間の時代が到来するまでのものであったという)。

そこでイルーヴァタールは虚空に[[不滅の炎]]を送り出し、音楽に『[[エア]]』(存在)を与え、アイヌアの中で望むものはエアに下って幻視されたアルダの姿と歴史を実現することを許した。
アイヌアの内でもっとも偉大なる者達が、自らの歌から生じたことと、自らと全く異なるイルーヴァタールの子らへの愛に惹かれ、エアに下ることを選んだ。かれらは[[ヴァラール]]と呼ばれるようになり、ヴァラールの許に集いアルダ生成のために働くアイヌアが[[マイアール]]となった。[[メルコール]]もまた、自らの支配欲の充足をエアの内に求めてそこへ下ることを選んだ。

アイヌアの音楽は、(人間を除く)アルダに生きる全ての者にとって宿命に等しいものであり、[[ヴァラール]]と[[マイアール]]が持つ智慧は、それを歌い目にしたことに多くを拠っていた。だが、個々のアイヌアの叡智には限界があり、歌われたことや目にしたことの全てを常に意識にとどめ、理解しているわけではなかった。そのためアイヌアにとってもアルダの歴史はしばしば驚くべきものであり、イルーヴァタールの意図はアイヌアからも隠されていた。

*** 水の音に伝えられる音楽の谺 [#i3f51158]

アイヌアの音楽の谺は、[[アルダ]]においては水の音にいまなお生きていると言われている。そのため[[イルーヴァタールの子ら]]は海鳴りや川のせせらぎに心を奪われ、ふと耳を傾けるが、それが何故なのかは知らないのである。
アイヌアの内にあって最も音楽に秀でた[[ウルモ]]はそれゆえ水を愛し、その中に住んで絶えず音楽の谺に耳を傾けているのだと言う。そして彼の吹き鳴らす[[ウルムーリ]]の角笛の音を聞いた者は、海への憧れを留めることができなくなる。

** 第二の音楽 [#e5d7a882]

[[アルダの歴史が終わった>ダゴール・ダゴラス]]後には、[[イルーヴァタール]]の許で全ての[[アイヌア]]と[[子ら>イルーヴァタールの子ら]]([[エルフ]]と[[人間]])のクワイアによって新たな音楽が奏せられるという。((エルフがどうなるのかについては不明とされている箇所もある。また、[[ドワーフ]]がどうなるのかについても不明である))
その時、全ての者は自らに割り当てられた&ruby(パート){声部};の意味するところを完全に理解し、イルーヴァタールの主題は正しく奏せられ、イルーヴァタールはかれらの思いに[[不滅の炎]]を与えるだろうと言われている。

** コメント [#Comment]

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