#author("2022-10-20T11:57:15+09:00;2018-12-12T20:45:44+09:00","","")
* 裂け谷暦法 [#c74245fa]
#contents
** 概要 [#fde344fb]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー||[[暦]]||
|~カテゴリー|[[暦]]|
|~スペル|Reckoning of Rivendell|
|~異訳||
|~その他の呼び名|イムラドリスの暦(Calendar of Imladris)|

** 解説 [#y55939c8]
** 解説 [#Explanation]

[[裂け谷]]で用いられていた太陽暦で、[[赤表紙本]]が伝えている唯一の[[エルダール]]の暦法。『[[追補編]]』に記述されている。
[[裂け谷]]で用いられていた太陽暦で、[[赤表紙本]]が伝えている唯一の[[エルダール]]の暦法。『[[追補編>指輪物語/追補編]]』に記述されている。

[[エルフ]]はもともと、太陽が一巡するよりもはるかに長い周期で時を数える。しかし[[第一紀]]以降の[[中つ国]]では[[太陽]]の運行が時を支配するため、そこに暮らすエルフは便宜上、太陽年((365.2422日、365日5時間48分46.08秒))でも時を数えることをした。
この''太陽年''を[[クウェンヤ]]で「太陽の一巡」(sun-round)を意味する''コラナール(coranar)''と呼び、一般に(特に[[中つ国]]北西部では)「生長」(growth)を意味する''ロア(loa)''とも呼んだ。このロアを季節や月に分けたのだが、これは名の通り植物の生長に関する季節的変化に重点を置いていたので、分け方は地域ごとに異なっていた。
''裂け谷暦法''は、その名の通り[[裂け谷]]地域で用いられていたものにあたる。
[[中つ国]]に暮らす[[エルダール]]はもともと、太陽が一巡するよりもはるかに長い周期で時を数える。しかし[[第一紀]]以降の[[アルダ]]では[[太陽]]の運行が時を支配するため、彼らは便宜上、[[太陽年]]でも時を数えることをした。
天文学的な見地での''太陽年''(solar year)のことを[[クウェンヤ]]では「太陽の一巡(sun-round)」を意味する''コラナール''(coranar)と呼ぶ。だが一般には(特に中つ国北西部では)「生長(growth)」を意味する''ロア''(loa)と呼ばれた。このロアを季節や月に分けたのだが、これは名の通り植物の生長に関する季節的変化に重点を置いていたので、分け方は地域ごとに異なっていた。裂け谷暦法は、[[裂け谷]]で用いられていたものにあたる。

>エルフにとってもこの世は動いている。その動き方は非常に速やかでもあれば、非常に緩やかでもある。速やかというのは、エルフ自身がほとんど変わらないのに他のものがことごとく飛ぶように去っていくからだ。これはエルフたちにとっていたましいことだ。緩やかというのは、エルフたちは流転する年を数えたてないからだ。ともかく自分たちのためには数えない。移り行く季節も長い長い水の流れに絶えずくり返される小波にすぎない。((『[[指輪物語]] [[旅の仲間]] 下』「九 大河」 [[レゴラス]]のセリフ))
>「エルフにとってもこの世は動いている。その動き方は非常に速やかでもあれば、非常に緩やかでもある。速やかというのは、エルフ自身がほとんど変わらないのに他のものがことごとく飛ぶように去っていくからだ。これはエルフたちにとっていたましいことだ。緩やかというのは、エルフたちは流転する年を数えたてないからだ。ともかく自分たちのためには数えない。移り行く季節も長い長い水の流れに絶えずくり返される小波にすぎない。」((『[[旅の仲間>指輪物語/旅の仲間]]』「大河」 [[レゴラス]]の言葉))

*** エルダールの暦 [#pa2ee2dd]

[[エルフ]]は「不死」であるため、時の数え方も定命の種族と同じではない。
かれらにとって''年''(year)にあたるものを''イエーン(yén)''((複数形イエーニ(yéni)。『[[指輪物語]] [[旅の仲間]]』に登場する[[ガラドリエル]]の歌にイエニ(Yéni)の語があり、「長い年月(long years)」の訳語があてられている))と呼ぶが、これは実際には太陽年の144年に相当する。
日没から次の日没までの間((『[[追補編]]』の邦訳では'''日の出から日没まで'''とされているが原文は'''from sunset to sunset'''である))を''日''(day)として、[[クウェンヤ]]で''レー(ré)''と呼ぶ。
また6日からなる''週''(week)を儀式を行う便宜から使用し、これを''エンクゥイエ(enquië)''((複数形enquier。[[クウェンヤ]]の6の数詞enquëの派生語))と呼ぶ。この週は通しで数える。
1イエーンは8766エンクゥイエであり、52596レー((グレゴリオ暦では100で割り切れる年は平年なので、144年は52595日。ユリウス暦では144年が52596日となる))である。以上のように、[[エルダール]]は暦に6や12の倍数を用いることを好んだ。
[[エルダール]]は「不死」であるため、時の数え方も定命の種族と同じではない。
かれらにとって''年''(year)にあたるものを''イエーン''(yén)((複数形イエーニ(yéni)。『[[旅の仲間>指輪物語/旅の仲間]]』に登場する[[ガラドリエルの哀歌>ナマーリエ]]にイェーニ(Yéni)の語があり、「長の年月(long years)」の訳語があてられている。))と呼ぶが、これは実際には[[太陽年]]の144年に相当する。
日没から次の日没までの間((『[[追補編>指輪物語/追補編]]』の邦訳では「日の出から日没まで」とされているが原文は'from sunset to sunset'である。))を''日''(day)として、[[クウェンヤ]]で''レー''(ré)と呼ぶ。
また6日からなる''週''(week)を儀式を行う便宜から使用し、これを''エンクゥイエ''(enquië)((複数形enquier。[[クウェンヤ]]の6の数詞enquëの派生語。))と呼ぶ。この週は通しで数える。
1イエーンは8766エンクゥイエであり、52596レー((グレゴリオ暦では100で割り切れる年は平年なので、144年は52595日。))である。以上のように、エルダールは暦に6や12の倍数を用いることを好んだ。

エンクゥイエの曜日名は彼らが貴ぶ存在に捧げられた奉献名(the dedicaitons)である。[[ヴァラール]]を冠した6日目が週の主日(the chief day)で、名前も二通りある。
エンクゥイエの曜日名は彼らが貴ぶ存在に捧げられた奉献名(the dedications)である。[[ヴァラール]]を冠した6日目が週の主日(the chief day)で、名前も二通りある。

||~曜日名の意味|~クウェンヤ名|~シンダール語名|
|1|星(Stars)|エレンヤ(Elenya)|オルギリオン(Orgilion)|
|2|[[太陽]](Sun)|アナルヤ(Anarya)|オラノール(Oranor)|
|3|[[月]](Moon)|イシルヤ(Isilya)|オリシル(Orithil)|
|4|[[二つの木]](Two Trees)|アルドゥーヤ(Aldúya)|オルガラザド(Orgaladhad)|
|5|[[天>メネル]](Heavens)|メネルヤ(Menelya)|オルメネル(Ormenel)|
|6|[[ヴァラール]](Valar)|ヴァランヤ(Valanya)&br;ターリオン(Tárion)((直訳はHigh (ones) ))|オルベライン(Orbelain)&br;ロディン(Rodyn)|
||~曜日名の意味|~クウェンヤ名|~シンダリン名|
|~1|星(Stars)|エレンヤ(Elenya)|オルギリオン(Orgilion)|
|~2|[[太陽]](Sun)|アナルヤ(Anarya)|オラノール(Oranor)|
|~3|[[月]](Moon)|イシルヤ(Isilya)|オリシル(Orithil)|
|~4|[[二つの木]](Two Trees)|アルドゥーヤ(Aldúya)|オルガラザド(Orgaladhad)|
|~5|[[天>メネル]](Heavens)|メネルヤ(Menelya)|オルメネル(Ormenel)|
|~6|[[ヴァラール]](Valar)|ヴァランヤ(Valanya)&br;ターリオン(Tárion)((直訳は'High (ones)'))|オルベライン(Orbelain)&br;ロディン(Rodyn)|

*** イムラドリスの暦 [#of84d4db]

裂け谷の暦では1年すなわち''ロア''を六つの季節(''春、夏、秋、褪、冬、萌'')に分ける。無論ここでの「季節」とはあくまでも暦の上での区分である。「褪」の季節には[[クウェンヤ]]でラッセ=ランタ(Lasse-lanta)「落葉」、[[シンダール語]]でナルベレス(Narbeleth)「日の衰え」の別名がある。それぞれの季節は「春」「秋」「褪」「萌」が54日からなり、「夏」と「冬」は72日からなった。
さらに、年の初めと終わりと中間に「季節」に含まれない日々がある。[[クウェンヤ]]で''イェスタレ''「最初の日」、''メッタレ''「終わりの日」、''エンデリ''「中間の日々」と呼ばれ、イェスタレとメッタレは1日、エンデリは平年では3日だった。12年ごとの閏年には、エンデリを倍の6日とした。
裂け谷の暦では[[太陽年]]すなわち''ロア''を六つの季節(''春、夏、秋、褪、冬、萌'')に分ける。無論ここでの「季節(seasons)」とはあくまでも暦の上での区分である。「褪」の季節は[[クウェンヤ]]でラッセ=ランタ、[[シンダリン]]でナルベレスとも呼ばれた。それぞれの季節は「春」「秋」「褪」「萌」が54日、「夏」と「冬」は72日からなった。
さらに、年の初めと終わりと中間に「季節」に含まれない日々がある。[[クウェンヤ]]で''イエスタレ''((「イェスタレ」の訳もあり))「最初の日」、''メッタレ''「終わりの日」、''エンデリ''「中間の日々(middle-days)」と呼ばれ、イエスタレとメッタレは1日、エンデリは平年では3日だった。12年毎の閏年には、エンデリを倍の6日とした。

|~日数|~季節|~クウェンヤ名|~シンダール語名|
|RIGHT:1||>|イェスタレ(Yestarë)|
|RIGHT:54|春(Spring)|トゥイレ(Tuilë)|エスイル(Ethuil)|
|RIGHT:72|夏(Summer)|ライレ(Lairë)|ライア(Laer)|
|RIGHT:54|秋(Autumn)|ヤーヴィエ(Yávië)| イアヴァス(Iavas)|
|RIGHT:3~6 ||>|エンデリ(Enderi)|
|RIGHT:54|褪(Fading)|クウェルレ(Quellë)| フィリス(Firith)|
|RIGHT:72|冬(Winter)|(フ)リーヴェ(Hrívë)((Hは発音しない))|リーウ(Rhîw)((hは発音しない))|
|RIGHT:54|萌(Stirring)|コイレ(Coirë)|エフゥイア(Echuir)|
|RIGHT:1||>|メッタレ(Mettarë)|
|~日数|~季節|~クウェンヤ名|~シンダリン名|
|RIGHT:1||イエスタレ(yestarë)||
|RIGHT:54|春(spring)|トゥイレ(tuilë)|エスイル(ethuil)|
|RIGHT:72|夏(summer)|ライレ(lairë)|ライア(laer)|
|RIGHT:54|秋(autumn)|ヤーヴィエ(yávië)|イアヴァス((より正確に訳せば「ヤヴァス」であろう。))(iavas)|
|RIGHT:3 or 6 ||エンデリ(enderi)||
|RIGHT:54|褪(fading)|クウェルレ((「クゥエルレ」の訳もあり))(quellë)&br;ラッセ=ランタ(lasse-lanta)((「落葉(leaf-fall)」の意味。))|フィリス(firith)&br;ナルベレス(narbeleth)((「日の衰え(sun-waning)」の意味。))|
|RIGHT:72|冬(winter)|(フ)リーヴェ(hrívë)((hrは無声のr))|リーウ(rhîw)((rhは無声のr))|
|RIGHT:54|萌(stirring)|コイレ(coirë)|エフゥイア(echuir)|
|RIGHT:1||メッタレ(mettarë)||

つまり平年は365日で、12年ごとの閏年は368日となる。
しかしそれだと太陽の一巡に対し0.0936日(2時間14分47.04秒)ずつ余分に長くなり、イエーン(144年)では1.1232日(1日と2時間57分24.48秒)もの誤差になる。[[赤表紙本]]によると、3の倍数のイエーンの最後の年、つまり432年ごとにエンデリの倍増を行わないことで調整したという。しかしそれでも0.3696日(8時間52分13.44秒)が余分なズレとして残る。これをどう調整したかは記録が無い。
つまり平年は365日で、12年毎の閏年は368日となる。
[[太陽年]]の長さが現在と変わらないと仮定すると((365日5時間48分46秒))、12年に対し2時間14分48秒ずつ余分に長くなり、イエーン(144年)では1日と2時間57分36秒もの誤差になる。[[赤表紙本]]によると、3の倍数のイエーンの最後の年、つまり432年毎にエンデリの倍増を行わないことで調整したという。しかしそれでも8時間52分48秒が余分なズレとして残る。これをどう調整したかは記録が無い。

[[追補編]]には[[大いなる年3019年>大いなる年]]の[[ホビット庄暦]]4月6日、[[ケレボルン]]と[[スランドゥイル]]が[[闇の森]]で会見を行い、その日は''エルフの新年の当日''だったとある。このエルフの新年の当日というのがイェスタレのことである。([[暦の比較表]])
[[追補編>指輪物語/追補編]]には[[大いなる年3019年>大いなる年]]の[[ホビット庄暦]]4月6日、[[ケレボルン]]と[[スランドゥイル]]が[[闇の森]]で会見を行い、その日は''エルフの新年の当日''(the day of the New Year of the Elves)だったとある。このエルフの新年の当日というのがイエスタレのことである。([[暦の比較表]])

*** 付記 [#nb4a4f36]

また厳密には暦ではないが、[[エルダール]]が普通おおまかに季節や時間帯を指して使った言葉に以下のようなものがある。
また厳密には暦ではないが、季節や時間帯を指して使った言葉に以下のようなものがある。

''四季''の他に、秋の終わりから冬の初めを[[クウェンヤ]]で「褪せる」(fading)を意味する''クウェルレ''、または「落葉」(leaf-fall)を意味する''ラッセランタ''と呼んだ。
通常用いられる季節名は[[クウェンヤ]]での名称だった。また、秋の終わりから冬の初めを''クウェルレ''(quellë)、または''ラッセランタ''(lasselanta)と呼んだ。これらの名称は上記のように裂け谷の暦でも用いられる。

|~季節|~クウェンヤ名|
|春(Spring)|トゥイレ(Tuilë)|
|夏(Summer)|ライレ(Lairë)|
|秋(Autumn)|ヤーヴィエ(Yávië)|
|褪(Fading)|クウェルレ(Quellë)&br;ラッセランタ(Lasselanta)|
|冬(Winter)|(フ)リーヴェ(Hrívë)|
|春(spring)|トゥイレ(tuilë)|
|夏(summer)|ライレ(lairë)|
|秋(autumn) &br; 取り入れ(harvest)|ヤーヴィエ(yávië)|
|冬(winter)|(フ)リーヴェ(hrívë)|

時間帯では特に''薄明''(twilight)に注意を払い、星の光の薄れていく朝方の薄明と、星が次第に現われる夕方の薄明を呼び分けた。[[シンダール語]]では合わせて''ウィアル''と言う。([[イヴンディム]]も参照)
北方の地域の[[エルダール]]は''薄明''(twilight)に注意を払い、星の光が薄れていく朝方の薄明と、星が次第に現われる夕方の薄明を呼び分けた。[[シンダリン]]では合わせて''ウィアル''と言う。([[夕おぼろ]]も参照)

|~時間帯|~クウェンヤ名|>|~シンダール語名|~ホビット庄名|
|~時間帯|~クウェンヤ名|>|~シンダリン名|~ホビット庄名|
|朝方|ティンドーメ(tindómë)|ミヌイアル(minuial)|ウィアル(uial)|朝おぼろ(morrowdim)|
|夕方|ウンドーメ(undómë)|アドゥイアル(aduial)|~|夕おぼろ(evendim)|

** コメント [#d9c6c2cd]
原著初版(1955年)の追補Dにはあったが、邦訳の底本である第二版(1966年)で削除された一文(('The ré contained aurë day(light) and lómë (night); in Sindarin the terms were aur containing calan and fuin.'))には昼と夜の呼称が紹介されている。

#pcomment_nospam(,,noname,,,,reply)
|~時間帯|>|~クウェンヤ名|>|~シンダリン名|
|日中|アウレ(aurë)|レー(ré)|カラン(calan)|アウル(aur)|
|夜間|ローメ(lómë)|~|フイン(fuin)|~|

なお、『[[シルマリルの物語]]』の[[エルフ語]]の解説では以下のように説明されている。
-クウェンヤのアウレ(aurë)は「陽光、昼間(sunlight, day)」の意味。シンダリンでの同根語がアウル(aur)であり、この語はオル(Or-)の形の接頭辞で曜日名に付けられる。
-クウェンヤのローメ(lómë)は「薄暗がり(dusk)」、シンダリンのフイン(fuin)は「薄闇、暗闇(gloom, darkness)」の意味。シンダリンでのローメ(lómë)の同根語はドゥー(dú)であり、「夜、薄闇(night, dimness)」の意味。クウェンヤでのフイン(fuin)の同根語はフイネ(huinë)。

アウレ(aurë)とローメ(lómë)の語は[[ニルナエス・アルノエディアド]]の場面での掛け声に登場する。

>「ウトゥーリエン アウレ! アイヤ [[エルダリエ]] アル [[アタナターリ]]、 ウトゥーリエン アウレ!〈朝が来たぞ! 見よ、[[エルダール]]の民よ、[[人間の父たち>アタナターリ]]よ、朝が来たぞ!〉」
‘Utúlie'n aurë! Aiya Eldalië ar Atanatári, utúlie'n aurë! The day has come! Behold, people of the Eldar and Fathers of Men, the day has come!’
>「アウタ イ ローメ!〈夜は過ぎゆく!〉」
‘Auta i lómë! The night is passing!’
>「アウレ エントゥルヴァ!〈昼再び来たらん!〉」
‘Aurë entuluva! Day shall come again!’

** コメント [#Comment]

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