裂け谷暦法†
概要†
カテゴリー | 暦 |
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スペル | Reckoning of Rivendell |
その他の呼び名 | イムラドリスの暦(Calendar of Imladris) |
解説†
裂け谷で用いられていた太陽暦で、赤表紙本が伝えている唯一のエルダールの暦法。『追補編』に記述されている。
中つ国に暮らすエルダールはもともと、太陽が一巡するよりもはるかに長い周期で時を数える。しかし第一紀以降のアルダでは太陽の運行が時を支配するため、彼らは便宜上、太陽年でも時を数えることをした。
天文学的な見地での太陽年(solar year)のことをクウェンヤでは「太陽の一巡(sun-round)」を意味するコラナール(coranar)と呼ぶ。だが一般には(特に中つ国北西部では)「生長(growth)」を意味するロア(loa)と呼ばれた。このロアを季節や月に分けたのだが、これは名の通り植物の生長に関する季節的変化に重点を置いていたので、分け方は地域ごとに異なっていた。裂け谷暦法は、裂け谷で用いられていたものにあたる。
「エルフにとってもこの世は動いている。その動き方は非常に速やかでもあれば、非常に緩やかでもある。速やかというのは、エルフ自身がほとんど変わらないのに他のものがことごとく飛ぶように去っていくからだ。これはエルフたちにとっていたましいことだ。緩やかというのは、エルフたちは流転する年を数えたてないからだ。ともかく自分たちのためには数えない。移り行く季節も長い長い水の流れに絶えずくり返される小波にすぎない。」*1
エルダールの暦†
エルダールは「不死」であるため、時の数え方も定命の種族と同じではない。
かれらにとって年(year)にあたるものをイエーン(yén)*2と呼ぶが、これは実際には太陽年の144年に相当する。
日没から次の日没までの間*3を日(day)として、クウェンヤでレー(ré)と呼ぶ。
また6日からなる週(week)を儀式を行う便宜から使用し、これをエンクゥイエ(enquië)*4と呼ぶ。この週は通しで数える。
1イエーンは8766エンクゥイエであり、52596レー*5である。以上のように、エルダールは暦に6や12の倍数を用いることを好んだ。
エンクゥイエの曜日名は彼らが貴ぶ存在に捧げられた奉献名(the dedications)である。ヴァラールを冠した6日目が週の主日(the chief day)で、名前も二通りある。
曜日名の意味 | クウェンヤ名 | シンダリン名 | |
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1 | 星(Stars) | エレンヤ(Elenya) | オルギリオン(Orgilion) |
2 | 太陽(Sun) | アナルヤ(Anarya) | オラノール(Oranor) |
3 | 月(Moon) | イシルヤ(Isilya) | オリシル(Orithil) |
4 | 二つの木(Two Trees) | アルドゥーヤ(Aldúya) | オルガラザド(Orgaladhad) |
5 | 天(Heavens) | メネルヤ(Menelya) | オルメネル(Ormenel) |
6 | ヴァラール(Valar) | ヴァランヤ(Valanya) ターリオン(Tárion)*6 | オルベライン(Orbelain) ロディン(Rodyn) |
イムラドリスの暦†
裂け谷の暦では太陽年すなわちロアを六つの季節(春、夏、秋、褪、冬、萌)に分ける。無論ここでの「季節(seasons)」とはあくまでも暦の上での区分である。「褪」の季節はクウェンヤでラッセ=ランタ、シンダリンでナルベレスとも呼ばれた。それぞれの季節は「春」「秋」「褪」「萌」が54日、「夏」と「冬」は72日からなった。
さらに、年の初めと終わりと中間に「季節」に含まれない日々がある。クウェンヤでイエスタレ*7「最初の日」、メッタレ「終わりの日」、エンデリ「中間の日々(middle-days)」と呼ばれ、イエスタレとメッタレは1日、エンデリは平年では3日だった。12年毎の閏年には、エンデリを倍の6日とした。
日数 | 季節 | クウェンヤ名 | シンダリン名 |
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1 | イエスタレ(yestarë) | ||
54 | 春(spring) | トゥイレ(tuilë) | エスイル(ethuil) |
72 | 夏(summer) | ライレ(lairë) | ライア(laer) |
54 | 秋(autumn) | ヤーヴィエ(yávië) | イアヴァス*8(iavas) |
3 or 6 | エンデリ(enderi) | ||
54 | 褪(fading) | クウェルレ*9(quellë) ラッセ=ランタ(lasse-lanta)*10 | フィリス(firith) ナルベレス(narbeleth)*11 |
72 | 冬(winter) | (フ)リーヴェ(hrívë)*12 | リーウ(rhîw)*13 |
54 | 萌(stirring) | コイレ(coirë) | エフゥイア(echuir) |
1 | メッタレ(mettarë) |
つまり平年は365日で、12年毎の閏年は368日となる。
太陽年の長さが現在と変わらないと仮定すると*14、12年に対し2時間14分48秒ずつ余分に長くなり、イエーン(144年)では1日と2時間57分36秒もの誤差になる。赤表紙本によると、3の倍数のイエーンの最後の年、つまり432年毎にエンデリの倍増を行わないことで調整したという。しかしそれでも8時間52分48秒が余分なズレとして残る。これをどう調整したかは記録が無い。
追補編には大いなる年3019年のホビット庄暦4月6日、ケレボルンとスランドゥイルが闇の森で会見を行い、その日はエルフの新年の当日(the day of the New Year of the Elves)だったとある。このエルフの新年の当日というのがイエスタレのことである。(暦の比較表)
付記†
また厳密には暦ではないが、季節や時間帯を指して使った言葉に以下のようなものがある。
通常用いられる季節名はクウェンヤでの名称だった。また、秋の終わりから冬の初めをクウェルレ(quellë)、またはラッセランタ(lasselanta)と呼んだ。これらの名称は上記のように裂け谷の暦でも用いられる。
季節 | クウェンヤ名 |
---|---|
春(spring) | トゥイレ(tuilë) |
夏(summer) | ライレ(lairë) |
秋(autumn) 取り入れ(harvest) | ヤーヴィエ(yávië) |
冬(winter) | (フ)リーヴェ(hrívë) |
北方の地域のエルダールは薄明(twilight)に注意を払い、星の光が薄れていく朝方の薄明と、星が次第に現われる夕方の薄明を呼び分けた。シンダリンでは合わせてウィアルと言う。(夕おぼろも参照)
時間帯 | クウェンヤ名 | シンダリン名 | ホビット庄名 | |
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朝方 | ティンドーメ(tindómë) | ミヌイアル(minuial) | ウィアル(uial) | 朝おぼろ(morrowdim) |
夕方 | ウンドーメ(undómë) | アドゥイアル(aduial) | 夕おぼろ(evendim) |
原著初版(1955年)の追補Dにはあったが、邦訳の底本である第二版(1966年)で削除された一文*15には昼と夜の呼称が紹介されている。
時間帯 | クウェンヤ名 | シンダリン名 | ||
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日中 | アウレ(aurë) | レー(ré) | カラン(calan) | アウル(aur) |
夜間 | ローメ(lómë) | フイン(fuin) |
なお、『シルマリルの物語』のエルフ語の解説では以下のように説明されている。
- クウェンヤのアウレ(aurë)は「陽光、昼間(sunlight, day)」の意味。シンダリンでの同根語がアウル(aur)であり、この語はオル(Or-)の形の接頭辞で曜日名に付けられる。
- クウェンヤのローメ(lómë)は「薄暗がり(dusk)」、シンダリンのフイン(fuin)は「薄闇、暗闇(gloom, darkness)」の意味。シンダリンでのローメ(lómë)の同根語はドゥー(dú)であり、「夜、薄闇(night, dimness)」の意味。クウェンヤでのフイン(fuin)の同根語はフイネ(huinë)。
アウレ(aurë)とローメ(lómë)の語はニルナエス・アルノエディアドの場面での掛け声に登場する。
「ウトゥーリエン アウレ! アイヤ エルダリエ アル アタナターリ、 ウトゥーリエン アウレ!〈朝が来たぞ! 見よ、エルダールの民よ、人間の父たちよ、朝が来たぞ!〉」
‘Utúlie'n aurë! Aiya Eldalië ar Atanatári, utúlie'n aurë! The day has come! Behold, people of the Eldar and Fathers of Men, the day has come!’「アウタ イ ローメ!〈夜は過ぎゆく!〉」
‘Auta i lómë! The night is passing!’「アウレ エントゥルヴァ!〈昼再び来たらん!〉」
‘Aurë entuluva! Day shall come again!’
コメント†
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