岩屋の巨人

概要

カテゴリー詩・歌
スペルThe Stone Troll
その他の呼び名トロルの小歌(The Rhyme of the Troll)*1

解説

裂け谷へ向かう四人の旅人たちアラゴルン二世トロルの森で石となった三匹のトロルバートトムウイリアム)を見つけ、その下で昼食をとった後にサムワイズ・ギャムジーが披露した即興の歌。

この歌は『トム・ボンバディルの冒険』にも収録されており、題名はそこで付けられたもの。

邦訳

トロルがひとり、石の座にすわって、
古い骨くず、むしゃむしゃ、もぐもぐかじってた。
いつもいつも、かじるのはこの骨ばかり、
 肉はなかなか手に入らんと、ばい。
  だめだとばい! しゃくだとばい!
山の洞穴に、トロルがひとり住んでいた。
 肉はなかなか手に入らんと、ばい。

そこへ来かかったトムは、大きな長靴をはいて、
トロルにいった。「そいつは、何だい?
どうやら見たとこ、おらのおじきのチムのすねっ(こつ)じゃ。
墓におさまっとると思ってたと、ばい。
何としたばい! かんとしたばい!
おじきのおさらばしたは、だいぶ前、
 墓におさまっとると思ってた、」と、ばい。

トロルはいった、「お若いの、これは盗んできた骨よ。
墓の骨なんぞ、なんになるぞい?
お前のおじきは、とうに鉛の(かたま)りよ、
 おれがすねっ(こつ)、見つける前に。
  すねっ骨、ばい! 鉛ぞ、ばい!
かわいそなトロルじいに、わけてもよかろ。
 おじきにすねっ骨、必要なかろ」と、ばい。

そこでトムがいった、「おらにゃわからねえが、
お前のような衆が、なんでかってに持ち出しただよ、
おらのおやじの兄弟の、足っ(こつ)だか、すねっ骨だか。
 さあ、その古い骨、こっちに渡せ!
  どろぼう、とばい! トロルやろとばい!
いくら死んだとて、おじきのものよ、
 さあ、その古い骨、こっちに渡せ!」と、ばい。

「めっそも、こそも」とトロルはにやり、
「いっそお前も喰ってやろ。お前のすねもしゃぶってやろ。
いきのいい肉は、うまいこったろ!
 さあためしにこの歯をお前に立てよう、
  ためしに、ばい! がぶりとばい!
古い骨皮、しゃぶるのはあきあきだ。
 お前で食事がしてみたい」と、ばい。

けど、よい肉つかまえたと思ったはつかのま、
摑んだ両手に何もなかった。
気がつく前に、トムがするりと逃げて、
こらしめに長靴で一発みまった。
  こらしめ、とばい! くそくらえとばい!
長靴で一発けつをけりゃ、
よいこらしめよ、とトムは考えた、ばい。

ところが、石より固いトロルの骨と皮、
いつもひとりで山にすわってるから、
山の岩根けっとばしたも同じことよ、
 トロルのけつは、とんと感じない。
  どんけつとばい! とんまとばい!
トムがうなるの聞いて、トロルは大笑い、
 トムの足こそ、したたか感じた、とばい。

脚をひきずり、ひきずり、トムは家に帰った。
長靴なくした片足は、一生なおらなかった。
けれどトロルは平気の平左で、今もそこに座って、
 盗んだ骨をたべてる、今もたべてる。
  平気で、とばい! 盗んで、とばい!
トロルの石の座は、まだ変わらない、
 盗んだ骨をたべてる、とばい。*2

原文

Troll sat alone on his seat of stone,
And munched and mumbled a bare old bone;
 For many a year he had gnawed it near,
  For meat was hard to come by.
   Done by! Gum by!
 In a cave in the hills he dwelt alone,
  And meat was hard to come by.

Up came Tom with his big boots on.
Said he to Troll: ‘Pray, what is yon?
 For it looks like the shin o' my nuncle Tim,
  As should be a-lyin' in the graveyard.
   Caveyard! Paveyard!
 This many a year has Tim been gone,
  And I thought he were lyin' in the graveyard.’

‘My lad,’ said Troll, ‘this bone I stole.
But what be bones that lie in a hole?
 Thy nuncle was dead as a lump o' lead,
  Afore I found his shinbone.
   Tinbone! Thinbone!
 He can spare a share for a poor old troll,
  For he don't need his shinbone.’

Said Tom: ‘I don't see why the likes o' thee
Without axin' leave should go makin' free
 With the shank or the shin o' my father's kin;
  So hand the old bone over!
   Rover! Trover!
 Though dead he be, it belongs to he;
  So hand the old bone over!’

‘For a couple o' pins,’ says Troll, and grins,
‘I'll eat thee too, and gnaw thy shins.
 A bit o' fresh meat will go down sweet!
  I'll try my teeth on thee now.
   Hee now! See now!
 I'm tired o' gnawing old bones and skins;
  I've a mind to dine on thee now.’

But just as he thought his dinner was caught,
He found his hands had hold of naught.
 Before he could mind, Tom slipped behind
  And gave him the boot to larn him.
   Warn him! Darn him!
 A bump o' the boot on the seat, Tom thought,
  Would be the way to larn him.

But harder than stone is the flesh and bone
Of a troll that sits in the hills alone.
 As well set your boot to the mountain's root,
  For the seat of a troll don't feel it.
   Peel it! Heal it!
 Old Troll laughed, when he heard Tom groan,
  And he knew his toes could feel it.

Tom's leg is game, since home he came,
And his bootless foot is lasting lame;
 But Troll don't care, and he's still there
  With the bone he boned from its owner.
   Doner! Boner!
 Troll's old seat is still the same,
  And the bone he boned from its owner!

コメント

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 「ばい」で「by」を再現した、見事な瀬田節。瀬田訳はほんとに楽しい。 -- 2019-08-10 (土) 15:45:42
お名前:

人種差別をあおるもの、公序良俗に反するもの、項目とは関係ないコメント、他コメント者への個人攻撃及び価値観の押しつけや、相手を言い負かすことが目的の非建設的な議論、現実世界の政治および近代・現代史、特定国家、団体、民族などに結びつけ批判、揶揄するようなコメントなどは削除の対象となります。その他コメントについて。
Last-modified: