寒き霧まく山なみをこえ

概要

カテゴリー詩・歌
スペルFar over the misty mountains cold

解説

袋小路屋敷に集まった13人のドワーフが歌ったもの。
彼らは宵闇が部屋に忍び込む中で音楽を演奏し*1、やがて完全に暗くなった頃に伴奏に合わせて歌を歌い出した。この歌にはドワーフの美しい細工物に対する激しい愛着が込められており、歌を耳にしたビルボ・バギンズは我知らず冒険心を目覚めさせられた。
本に書かれているのはそのほんのおもかげをつたえたものにすぎませんという。

邦訳

寒き霧まく山なみをこえ、
古き洞穴の地の底をめざして、
われらは夜明け前に旅立たねばならぬ、
青く光る魔の黄金(こがね)をさがし求めて。

そのかみドワーフたちは強き呪文を唱え、
その槌音(つちおと)は鐘のようになりわたった、
万物ねむる地の底深く、
山々の下に口をあけた大広間で。

いにしえの王やエルフの殿のために、
ドワーフたちが作り仕上げた、
きらめく黄金の宝ものや、
剣のつかにちりばめた宝石はおびただしかった。

ドワーフたちは銀の首飾りに
星の花々をつづり、
冠の上にの火をかかげ、
かがる鉄線には光と光をまぶした。

寒き霧まく山なみをこえ、
古き洞穴の地の底をめざして、
われらは夜明け前に旅立たねばならぬ、
忘れられたわれらの黄金を手にいれるため。

われを忘れて刻みあげた大さかずきや、
黄金のハープが、まだ人間に掘られずに、
長の年月、うずもれてきた。
人にもエルフにもきかれぬ歌がうたわれてきた。

あの日、松林は山の背にうめき、
風は夜のやみになげいていた。
火は赤々と、炎をあげてもえ広がり、
木々がたいまつのようにかがやいた。

鐘は谷間に鳴りわたり、
人々は顔青ざめて空を見あげた。
竜の怒りはすさまじく、
その火が、塔も家もやきほろぼした。

山は月あかりにかすんでいた。
ドワーフたちは、ほろびの音をきいた。
そして住居の穴からにげるうちに、
月光の下、竜の足にかかって死んだ。

お暗き霧まく山なみをこえ、
古き洞穴の地の底をめざして、
われらは夜明け前に旅立たねばならぬ、
竜からハープと黄金をとりもどすため。*2

原文

Far over the misty mountains cold
To dungeons deep and caverns old
We must away ere break of day
To seek the pale enchanted gold.

The dwarves of yore made mighty spells,
While hammers fell like ringing bells
In places deep, where dark things sleep,
In hollow halls beneath the fells.

For ancient king and elvish lord
There many a gloaming golden hoard
They shaped and wrought, and light they caught
To hide in gems on hilt of sword.

On silver necklaces they strung
The flowering stars, on crowns they hung
The dragon-fire, in twisted wire
They meshed the light of moon and sun.

Far over the misty mountains cold
To dungeons deep and caverns old
We must away, ere break of day,
To claim our long-forgotten gold.

Goblets they carved there for themselves
And harps of gold; where no man delves
There lay they long, and many a song
Was sung unheard by men or elves.

The pines were roaring on the height,
The winds were moaning in the night.
The fire was red, it flaming spread;
The trees like torches biased with light.

The bells were ringing in the dale
And men looked up with faces pale;
The dragon's ire more fierce than fire
Laid low their towers and houses frail.

The mountain smoked beneath the moon;
The dwarves, they heard the tramp of doom.
They fled their hall to dying fall
Beneath his feet, beneath the moon.

Far over the misty mountains grim
To dungeons deep and caverns dim
We must away, ere break of day,
To win our harps and gold from him!

動画

1977年アニメ版(0:50秒以降)

1979年ラジオドラマ版

2012年実写映画版

コメント

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  • 可愛らしい妖精物語のような話の流れの中で、突然壮大で神秘的な世界が垣間見えるシーン。冒頭からトールキンの創造に対するスタンスが感じられて素敵 -- 2020-02-26 (水) 12:43:35
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