執政しっせい

概要

カテゴリー役職・組織・団体
スペルSteward
異訳執権
その他の呼び名統治権を持つ執政(Ruling Steward)
フーリン家(House of Húrin)
アランドゥア(Arandur)

解説

ゴンドールの王権の代行者である統治権を持つ執政を指す。
ゴンドールの王統が途絶えると、王の名の下に約1000年間にわたってゴンドールを統治した。かれらは王冠王笏も戴かず、執権を示す白い杖だけを持ち、王旗の代わりに紋章のない白い旗を掲げていた。
とはいえ、たとえ君主の称号は帯びなくとも、その誇りは長い統治の間に王家に劣らぬほど高いものとなっていった。

統治権を持つ最初の執政はマルディルであり、最後の執政はデネソール二世である。

幾段もの階段のついた壇の奥には山高の兜の形をした大理石の天蓋の下に高い玉座が設けられていました。玉座の背後の壁面には花開く一本の木のかたちが刻まれ、宝石がはめこまれていました。しかし玉座に坐る人はいませんでした。壇の下の広くて奥行きのある一番低い踏段に、黒くて飾りのない石の椅子が一脚あって、そこに一人の老人が自分の膝を見つめながら坐っていました。手には金の握りのついた白い杖が握られていました。*1

歴史

『もし王様が帰って来なかったら、執政が王様になるのに何百年あったらいいの?』そうかれはたずねた。『王権のもっと小さなよその国では数年かもしれぬ。』父はそう答えた。『ゴンドールでは一万年でも充分とはいえぬ。』*2

クウェンヤでは「王の僕(king's servant)」の意であるアランドゥアと呼ばれ、元々は智慧深く信頼厚い王の友に与えられる役職だった。アランドゥアは戦争に出ることも国を離れることも禁じられていたため、通常は高齢の者があたった。また王家の者が選ばれることはなかった。この役職を最初に定めたのは第8代目の王ローメンダキル一世であるという。*3

後にゴンドールの実権を手にすることになる執政家の始祖は、第25代ミナルディル王の執政を務めたフーリンである。以後、代々のゴンドールの王はフーリンの子孫から執政を選んだ。そのため執政家はフーリン家とも呼ばれる。
第31代オンドヘル王の執政を務めたペレンドゥルから、執政はその息子または最も近い近親者に伝えられる世襲職となった。

第33代エアルヌル王は2050年にミナス・モルグルへ向かい、行方不明になる。ゴンドールでは有力な王位継承者がいなくなり、誰もがエルダカール戴冠時のような王位を巡る内乱を恐れていた。さらに北方王国は滅亡しその最後の王アルヴェドゥイも死んでいたため、エレンディルの世襲は絶えたかに思われた。
そのため当時の執政マルディル王還りますまで、王の御名において杖を持ちて統治すという宣誓を行い、王の代わりにゴンドールを統治する。以来マルディルの子孫が同じ宣誓を行い、ゴンドールは執政の統治する国となった。
執政は事実上すべての王権を代行し、「王還りますまで」は時代が進むにつれてほとんど儀礼用語に過ぎなくなっていった。しかし、いずれ本当に王が戻ってくると信じている者もおり、北方王国王の世襲が今なお生き残っていると噂する者もいた。そのような話には執政は態度を硬化させたが、とはいえ執政家は玉座にはつかず、執権の白い杖のみを守り続けた。

統治権を持つ12代目の執政キリオンは、王権の代行者として独断でエーオセーオドカレナルゾンを割譲し、エオルエオルの誓いを結んだ。以後、ゴンドールはローハンという強力な同盟者を得て、ロヒルリムによって度々危機を救われることになった。

指輪戦争時の執政デネソール二世は、実質的な統治権を振るった最後の執政である。彼は王の帰還を拒み、執政職の白い杖を折って自害した。
デネソールの息子ファラミルは、エレッサール王が戴冠するまでのわずかな間、最後の執政としての職務を果たした。その最大の仕事が、エレッサール王の戴冠式を執り行い、王の帰還を承認することであった。この時エレッサール王はファラミルとその家系を改めてゴンドールの執政に任じた。

ゴンドール歴代の統治権を持つ執政

執政職は、エミン・アルネンのフーリン以降は、フーリン家の者が代々任じられてきた。最初に統治権を持った執政マルディルの前には、オンドヘル王に仕えたペレンドゥル、その息子ヴォロンディルがいる。
マルディルまでの執政は名にクウェンヤを用いたが、エラダン以降はシンダリンを用いるようになった。

名前在任
初代マルディル・ヴォロンウェ第三紀2050~2080 (30年間)
2代エラダン2080~2116 (36年間)
3代ヘリオン2116~2148 (32年間)
4代ベレゴルン2148~2204 (56年間)
5代フーリン一世2204~2244 (40年間)
6代トゥーリン一世2244~2278 (34年間)
7代ハドル2278~2395 (117年間)
8代バラヒル2395~2412 (17年間)
9代ディオル2412~2435 (23年間)
10代デネソール一世2435~2477 (42年間)
11代ボロミル2477~2489 (12年間)
12代キリオン2489~2567 (78年間)
13代ハッラス2567~2605 (38年間)
14代フーリン二世2605~2628 (23年間)
15代ベレクソール一世2628~2655 (27年間)
16代オロドレス2655~2685 (30年間)
17代エクセリオン一世2685~2698 (13年間)
18代エガルモス2698~2743 (45年間)
19代ベレン2743~2763 (20年間)
20代ベレゴンド2763~2811 (48年間)
21代ベレクソール二世2811~2872 (61年間)
22代ソロンディル2872~2882 (10年間)
23代トゥーリン二世2882~2914 (32年間)
24代トゥルゴン2914~2953 (39年間)
25代エクセリオン二世2953~2984 (31年間)
26代デネソール二世2984~3019 (35年間)
27代ファラミル3019

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • 969年の時を経て王が帰還したのか・・ -- 2015-02-19 (木) 00:24:37
  • 徳川家 -- 2016-05-31 (火) 23:47:37
  • 北条家は王(将軍)還ってこないまま滅んだな… -- 2019-02-09 (土) 08:55:42
    • 鎌倉幕府なら、都からお飾りの将軍を迎えてたよ -- 2019-02-09 (土) 12:13:11
    • 北条家でも執権が幼い時には他の人が補佐したりしてましたよ。 -- 2019-05-11 (土) 23:00:41
  • 王位を主張する事で起きるのが内紛ならまだ良い方で、最悪辺境の諸侯がゴンドールそのものから離反する可能性もあるよね。 -- 2020-03-08 (日) 18:18:11
  • この執政の血統まで絶えてしまったら洒落にならなかったな。まあ最悪、「死せる執政が起き上がり養子を定めた後に没した」とかで済むかもしれないけど。 -- 2020-08-13 (木) 21:57:03
    • 実際、執政エガルモスは先代の叔母の孫という立場から引っ張り出されてますからね。生前にエクセリオン1世が決めていたのか、死後やむなく最直近の血縁者を立てたのかはわかりませんが(HoMEには書いてあるのかな?)。ただ王家の場合も家系が途絶えたというより「王位継承で大内乱の過去+誰もが納得する継承者がいなかった」ためなので、執政家では国内の最血縁の男子程度であれば問題なかった可能性もあります -- 2020-08-13 (木) 23:55:56
  • 玉座に座らない別の家系が定期的に交代しつつ、統治権し続けた体制が日本にあったと知ったら教授はどう思うか。宣教師や商人たちは将軍=君主みたいに思ってたけど。 -- 2023-11-13 (月) 22:28:56
    • 日本はべつに天皇家が不在だったわけではないので、ゴンドールの執政とはぜんぜん違うかと。 -- 2023-11-14 (火) 00:46:07
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