単語及び固有名詞の発音と邦訳

概要

カテゴリー言語

本ページでは『追補編』の追補Eの内容と『シルマリルの物語』での発音の説明を基に、他の書籍・文献での補足的な説明を加えて、ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンの作品中に登場する架空言語の単語・固有名詞の読みについて説明する。
説明の対象となる語はJ.R.R.トールキン及びクリストファー・トールキンにより執筆・編集された『ホビットの冒険』『指輪物語』『シルマリルの物語』『終わらざりし物語』等の作品の中で、公式な邦訳が存在する作品に登場するものに限定する。『The History of Middle-earth』のような公式の邦訳がない作品に登場する語、『指輪物語ロールプレイング』や『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』等の派生作品にのみ登場する語は対象外である。
架空言語の音の説明に国際音声記号(IPA)(Wikipedia:国際音声記号)を便宜上用いているが、これは説明から予想されるおおまかな音を表しているに過ぎない。

また作中の固有名詞の邦訳についても併記する。ここでの邦訳とは本サイトの方針に従い、『新版 シルマリルの物語』で訳者の田中明子氏が用いたカタカナ表記のことである。同書ではカタカナ表記の法則が説明されており、本ページでもその法則を邦訳の基本とし、補足及び法則から外れた例外的な訳についても述べる。
このカタカナ表記は、『新版 指輪物語』、『新版 シルマリルの物語』、『終わらざりし物語』で用いられているが、一部の固有名詞は『新版 指輪物語』から変更されており、その場合は変更前と後の訳を両方記す。*1

『新版 指輪物語』→『新版 シルマリルの物語』
ロスロリアン→ロスローリエン(Lothlórien)
『新版 指輪物語』→『終わらざりし物語』
エレスサール→エレッサール(Elessar)

また『新版 指輪物語』の『追補編』は1992年に出版された愛蔵版と、2003年に出版された文庫版では、一部の固有名詞の訳が変更されており、『追補編』にのみ登場する語は同様に変更前と後の訳を両方記す。

『新版 追補編』愛蔵版→文庫版
メトタレ→メッタレ(Mettarë)

いずれの場合も、矢印の右側が『新版 シルマリルの物語』での翻訳の法則に基づいた訳名である。

子音

B /b/
邦訳:バ(ba)、ビ(bi)、ブ(bu)、ベ(be)、ボ(bo)、ブ(b)
バナキル(banakil)、サルン・ゲビア(Sarn Gebir)、ブンドゥシャスゥル(Bundushathûr)、ベルザガール(Belzagar)、ボルグ(Bolg)、ブレシル(Brethil)
C /k/
クウェンヤシンダール語の単語で、ラテン語(Wikipedia:ラテン語)と同様にkの音を表すのに用いられる。eとiの前でもsの音を表すことはない。よってCelebornはKelebornであって、Selebornではない。(Kの項も参照)
補足:エルフ語でありながらk表記の例もある。Melkor, Tulkas, Kementári, Ekkaia, Valaraukar, Urulóki
邦訳:カ(ca)、キ(ci)、ク(cu)、ケ(ce)、コ(co)、ク(c)
カスタミア(Castamir)、キリス・ウンゴル(Cirith Ungol)、クルフィン(Curufin)、ケレボルン(Celeborn)、コイレ(Coirë)、オルサンク(Orthanc)
CH /x/
ウェールズ語(Wikipedia:ウェールズ語)のbach/bax/、ドイツ語(Wikipedia:ドイツ語)のbach/bax/やbuch/buːx/、スコットランド語(Wikipedia:スコットランド語)のloch/lɒx/における、chの音を表す。(HT・KH・HYの項も参照)
ゴンドールでは語末とtの前を除けばhの音に弱まった。*2
終わらざりし物語』ではウェールズ語の後舌の摩擦音(a back spirant as ch in Welsh)と説明されている。西方語にこの音がなかったので、ゴンドール人は(シンダール語に習熟していない限り)この音を語中ではhに、語末ではkの音に置き換えた(正しいシンダール語ではしっかりとchで発音する)。一方、ロヒアリムローハン語にはこの音があったので、彼らは簡単に発音することができた。*3
補足1:作中では基本的にシンダール語に現れる表記だが、エダインの人名や先ヌーメノール語の地名にもある。
補足2:この音はχとも表記される。
邦訳:ハ(cha)、ヒ(chi)、フゥイ(chui)、ヘ(che)、ホ(cho)
カルハロス(Carcharoth)、エルヒール(Eluchíl)、エフゥイア(Echuir)、フォロヘル(Forochel)、エホリアス(Echoriath)
語末にある場合の邦訳
かつての促音の表記を廃する。ブラゴルラッハ→ブラゴルラハ(Bragollach)、ロスサールナッハ→ロッサルナハ(Lossarnach)、アイレナッハ→エイレナハ(Eilenach)
訳に関しては直前の音によって、ある程度の規則性がある。
ach
カラヒ・アングレン(Carach Angren)、アナハ(Anach)、キリス・ニンニアハ(Cirith Ninniach)、ブリシアハ(Brithiach)、アロッシアハ(Arossiach)、マラハ(Marach)、アムラハ(Amlach)、バラハ(Barach)、ラルナハ(Larnach)、ボルラハ(Borlach)
ech
エレヒ(Erech)、セレヒ(Serech)、トレヒ・ウンゴル(Torech Ungol)
och
アルロホ(Arroch)
aich
イムラス・ゴンドライヒ(Imrath Gondraich)
lch
オルファルヒ・エホール(Orfalch Echor)
rch
オルフ/イルフ(orch, yrch)、サルハ・ニア・ヒーン・フーリン(Sarch nia Hîn Húrin)、ヘンデアハ(Henderch)
CH /t͡ʃ/
西方語に頻出する子音で、英語のchurch/t͡ʃɜːt͡ʃ/のchの音。(TYの項も参照)
補足:作中にこの音を含む西方語の単語は登場しない。
補足2:この音はtšとも表記される。
邦訳
訳例無し。
D /d/
邦訳:ダ(da)、ディ(di)、ドゥ(du)、デ(de)、ド(do)、ド(d)
ダゴール・ダゴラス(Dagor Dagorath)、ディオル(Dior)、ルグドゥシュ(Lugdush)、アナドゥーネー(Anadûnê)、デネソール(Denethor)、ドリアス(Doriath)、ドルー(Drû)
DH /ð/
シンダール語の子音で、英語のthese clothes/ðiːz kləʊðz/での有声(軟音)のthの音を表す。dの音と関連する*4が、n+rからくる場合*5もある。
補足1:ヴァラール語にも存在する子音。
補足2:この音はðとも表記される。
邦訳:ザ(dha)、ジ(dhi)、ゼ(dhe)、ゾ(dho)、ズ(dh)
オルガラザド(Orgaladhad)、ペレジル(Peredhil)、エゼルロンド(Edhellond)、カレナルゾン(Calenardhon)、ガラズリム(Galadhrim)、リスガルズ(Lisgardh)
F /f/
fの音を表す。(PHの項も参照)
邦訳:ファ(fa)、フィ(fi)、フイ(fui)、フェ(fe)、フォ(fo)
ファラミア(Faramir)、フィナルフィン(Finarfin)、タウア=ヌ=フイン(Taur-nu-Fuin)、フイヌア(Fuinur)、フェアノール(Fëanor)、フォロスタール(Forostar)
-F /v/
語末にある場合、英語のof/ɒv/のようにvの音を表す。
補足:『The Rivers and Beacons-hills of Gondor』によれば、シンダール語の語中にあって子音の前にあるfは、無声のfではなく有声のvの音である。そのためLefnuiがLevnuiと綴られている。*6
邦訳:ヴ(-f)
ニンダルヴ(Nindalf)、フラドリヴ(Fladrif)
補足:オークラグドゥフ(Lagduf)やウフサク(Ufthak)のfがvの音かは不明。
G /ɡ/
英語のgive/ɡɪv/, get/ɡet/のgの音を表す。よってGildor, Gilraen, Osgilathに含まれるgilは英語のgild/ɡɪld/のgilのように発音する。RegionEregionを英語のregion/ɹiːd͡ʒən/のように発音してはならない。またGinglithの第一音節は英語のbegin/bɪɡɪn/の第二音節のように発音し、英語のgin/d͡ʒɪn/のように発音してはならない。
邦訳:ガ(ga)、ギ(gi)、グ(gu)、ゲ(ge)、ゴ(go)、グ(g)
ガビルガソル(Gabilgathol)、ギミルザガール(Gimilzagar)、グルドゥア(Guldur)、ゲリオン(Gelion)、ゴルバグ(Gorbag)
例外:ムズガッシュ(Muzgash)
GH /ɣ/
オーク語暗黒語に現れる後舌の摩擦音(a back spirant)。Dに対するDHのように、Gに対するGHと説明されている。
補足1:終わらざりし物語』によれば、ドルーエダインの言葉にも存在する子音*7。またクズドゥルAzaghâlにもそれらしき表記がある。
補足2:ヴァラール語にも存在し、エルフ語ではかつて存在したが消えた子音である。そのためAnghabarのghはこの音ではない(別個の子音gとh)。
補足3:この音はʒとも表記される。
邦訳:ガ(gha)、グ・フ(ghu)、ゴ (gho)、グ(gh)
ガーシュ(ghâsh)、アザガール(Azaghâl)、ガン=ブリ=ガン→ガーン=ブリ=ガーン(Ghân-buri-Ghân)、ドルグ/ドルフ(Drughu)、オゴル=ハイ(Oghor-hai)、アグ(agh)
補足:アグハン(Aghan)のghもこの音の可能性がある。
H /h/
他の子音を伴わず単独で用いられれば、英語のhouse/haʊs/やbehold/bɪhəʊld/でのhの音を表す。
補足:いわゆる声門摩擦音のこと。
邦訳:ハ(ha)、ヒ(hi)、フ(hu)、ヘ(he)、ホ(ho)
ハレス(Haleth)、マハル(Mahal)、ヒスルム(Hithlum)、フーリン(Húrin)、ヘルカール(Helcar)、グラムホス(Glamhoth)、
HT /xt/及び/çt/
クウェンヤにおいて、子音/x/と/t/の組み合わせ(combination)を表す。ドイツ語のachtやechtのような音。(HYの項も参照)
補足:ドイツ語のacht, echtとはach-lautとich-lautのこと。すなわちaht, oht, uhtの場合は/xt/に、eht, ihtの場合は/çt/に近い音。
邦訳
直前の母音によって、ある程度の規則性がある。
aht
マハタン(Mahtan)
eht
テフタ(tehta)、カリメフタール(Calimehtar)、テルメフタール(Telumehtar)、ネアネヘタ(Nernehta)
oht
オフタール→オホタール(Ohtar)、ミノホタール(Minohtar)
I- /j/
シンダール語のみ、語頭にきて母音が後に続く場合は、英語のyou/juː/やyore/jɔː/のyと同じ子音音を表す。(子音Yの項も参照)
邦訳:ヤ(Ia)、ヤウ(Iau)、ヨ(Io)
ヤント・ヤウア(Iant Iaur)、ヤールワイン(Iarwain)、ヨーレス(Ioreth)
J /d͡ʒ/
英語のjの音。西方語などに現れる音。
補足:この音はdžとも表記される。
K /k/
エルフ語以外の言語で、kの音を表す。
補足:西方語の表記でもクウェンヤTarcilに対するtarkilのようにkが用いられるようだが、Kalimacbalcのようにcが使われている場合もある。使い分けにどういった意味があるかは不明。
邦訳:カ(ka)、キ(ki)、ク(ku)、ケ(ke)、ク(k)
カルニングル(Karningul)、サカルソール(Sakalthôr)、キビル=ナーラ(Kibil-nâla)、サルクーン(Tharkûn)、エケト(eket)、ウルク(Uruk)
KH /x/
アドゥーナイクオーク語で、CHと同じ音を表す。
補足:クズドゥル以外の非エルフ語での表記。KhamûlKhandのkhもこの音と思われる。
邦訳:ハ(kha)、ホ(kho)
ギミルハード(Gimilkhâd)、アル=アドゥーナホール(Ar-Adûnakhôr)
語末にある場合の邦訳
指輪物語』に登場するグリシュナッハ(Grishnákh)の例がある。ただし上記のCHの訳し方に従えば、促音の表記は廃されると思われる。
KH /kʰ/
クズドゥルのみ、英語のbackhand/bækhænd/のようなhを伴った有気音(aspirate)のkを表す。(THの項も参照)
邦訳:カ(kha)、キ(khi)、ク(khu)、ケ(khe)
カザド→カザード(Khazâd)、キーム(Khîm)、クズドゥル(Khuzdul)、ケレド=ザラム(Kheled-zâram)
L /l/
英語のlet/let/のlのような、語頭のlと大体同じ音。ただしeまたはiと子音の間にある場合と、eまたはiの後にあって語末にある場合は、ある程度「硬口蓋化」(palatalized)された。そのため英語のbell/bɛl/とfill/fɪl/をエルダールはbeol, fiolと表記すると思われる。
補足:語頭のlとは、いわゆる「明るいL」のことで、bellとfillのlは軟口蓋化(velarized)した「暗いL」のこと。英国人が「暗いL」で発音するLを、エルダールはやや硬口蓋化した「明るいL」で発音するということ。
邦訳:ラ(la)、リ(li)、ル(lu)、レ(le)、ロ(lo)、ル(l)
キビル=ナーラ(Kibil-nâla)、リンダール(Lindar)、ルグブルズ(Lugbúrz)、エレンディル(Elendil)、ロンド・ダイア(Lond Daer)、エルロンド(Elrond)
LH- /l̥/
シンダール語で無声のlの音を表す。普通は語頭のsl-から派生した音のため、語頭にある。
邦訳:ラ(Lha)、ル(Lhu)
アモン・ラウ(Amon Lhaw)、リューン→ルーン(Lhûn)
HL- /l̥/又は/l/
クウェンヤの語頭で、無声のlの音を表す。ただし無声のlの発音は古典的であり、第三紀には通常のlで発音された。
邦訳
訳例無し
M /m/
邦訳:マ(ma)、ミ(mi)、ム(mu)、メ(me)、モ(mo)、ム(m)
マウフル(Mauhúr)、ミスリル(Mithril)、ムーマク(mûmak)、メネル(Menel)、モリア(Moria)、ジムラソーン (Zimrathôn)
唇音の閉鎖音であるbの前のmは「」と表記する(MMの項も参照)。レンバス(lembas)、ウンバール(Umbar)、エアンバール(Eämbar)、ケレブリムボール→ケレブリンボール(Celebrimbor)、トゥランバール(Turambar)
補足:フェアノール文字14番ampaも「アンパ」と訳されると思われる。
P /p/
邦訳:パ(pa)、ピ(pi)、ペ(pe)、ポ(po)
パランティーア(Palantír)、ピンナス・ゲリン(Pinnath Gelin)、ペレンノール(Pelennor)、ポロス(Poros)
PH /f/
Fと同じ音を表す。以下の場合に用いる。
一、語末にfの音がくる場合
二、pの音と関連がある、またはpから来るfの音を表す場合
三、アドゥーナイク西方語のfの音を表す場合
四、長子音の項を参照
補足:Turuphantoにもphが含まれるが、この語の正確な言語は不明。
邦訳:Fと同じ
一、ニーン=イン=エイルフ(Nîn-in-Eilph)
二、エアニル イ フェリアンナス(Ernil i Pheriannath)*8
三、アル=ファラゾーン(Ar-Pharazôn)、フルナルギアン(Phurunargian)
QU /kw/
クウェンヤに頻出するcwの組み合わせ(a combination)を表す。同じエルフ語でもシンダール語にはない。
邦訳:クウァ(qua)、クゥイ(qui)、クウェ(que)
queの訳は「クゥエ」から「クウェ」に改められた*9。quaは/kwa/だが、クワではなくクウァと訳される。
アルクウァロンデ(Alqualondë)、エンクゥイエ(enquië)、クゥエンヤ→クウェンヤ(Quenya)
R /r/
どの場所でも顫動音のr(a trilled r)を表す。英語のpart/pɑːt/のように音が失われるということはない。
オークと一部のドワーフは後舌や口蓋垂のr(a back or uvular r)を用いたといわれる*10。これはエルダールの耳には甚だ不快な音だった。
邦訳:ラ(ra)、リ(ri)、ル(ru)、レ(re)、ロ(ro)、ル(r)
ラドブグ(Radbug)、リングロ→リングロー(Ringló)、エル(Eru)、レギオン(Region)、オロメ(Oromë)、ドル=クーアルソル(Dor-Cúarthol)
母音のER, IR, URの項も参照。
RH- /r̥/
シンダール語で無声のrを表す。普通は語頭のsr-から派生した音のため、語頭にある。
邦訳:リ(Rhi)、ル(Rhu)、ロ(Rho)
リウ→リーウ(Rhîw)、ルダウア(Rhudaur)、タラス・ルーネン(Talath Rhúnen)、ロヴァニオン(Rhovanion)、ロスゴベル(Rhosgobel)
補足:語頭にある子音なので、ディーアハイル(Dírhael)、ディーアハヴェル(Dírhavel)、グリアフイン(Glirhuin)、ガウアホス(gaurhoth)のrhはこれには当たらない(別個の子音rとh)。
例外:Rhûnはルーン(Lhûn)とは異なり、「リューン」の訳のまま。ただし上記のようにルーネン(Rhúnen)の訳もある。
HR- /r̥/
クウェンヤの語頭にある無声のrを表す。
邦訳
(フ)リヴェ→(フ)リーヴェ(Hrívë)
S /s/
英語のso/səʊ/やgeese/ɡiːs/のような無声音。当時のクウェンヤシンダール語に有声のz音はない。
補足:クウェンヤの場合、th/θ/から音が変化したsも表す。(THの項を参照)
邦訳:サ(sa)、シ(si)、ス(su)、セ(se)、ソ(so)、ス(s)
サカルソール(Sakalthôr)、シルマリル(Silmaril)、アモン・スール(Amon Sûl)、セルニ→セアニ(Serni)、ソロンティル(Sorontil)、スナガ(Snaga)、フォルメノス(Formenos)
SH /ʃ/
西方語クズドゥルオーク語で用いられる、英語のshに似た音。(TYの項も参照)
補足1:暗黒語にもみられる。アドゥーナイクAgathurushにもそれらしき表記がある。
補足2:この音はšとも表記される。
邦訳:シャ(sha)、シ(shi)、シュ(sh)
シャルブフンド(Sharbhund)、シャグラト(Shagrat)、ブルズム=イシ(burzm-ishi)、アシュ(ash)、アガスルシュ(Agathurush)
T /t/
邦訳:タ(ta)、ティ(ti)、トゥ(tu)、テ(te)、ト(to)、ト(t)
タロスタール(Tarostar)、ティリオン(Tilion, Tirion)、トゥムンザハール(Tumunzahar)、トゥーリン(Túrin)、テレリ(Teleri)、エストラド(Estolad)、オルクリスト(Orcrist)
TH /θ/
クズドゥル以外の言語において、英語のthin cloth/θɪn klɒθ/における無声のthの音を表す。
クウェンヤの発音ではsの音になり、作中でもそれに合わせてsで表記される。*11
補足1:Avatharのthはこの音であり、この語はthの音が残る古いクウェンヤか、ヴァラール語であるという。
補足2:この音はþとも表記される。
邦訳:サ(tha)、シ(thi)、ス(thu)、セ(the)、ソ(tho)、ス(th)
サルバド(Tharbad)、ロシンジル(Rothinzil)、スリン(Thurin)、アセラス(athelas)、 ソロンドール(Thorondor)、インジルベース(Inzilbêth)、スランドゥイル(Thranduil)、スラカトゥルーク(thrakatulûk)
TH /tʰ/
クズドゥルのみ、英語のouthouse/aʊthaʊs/のようなhを伴った有気音(aspirate)のtを表す。(KHの項も参照)
邦訳:サ(tha)、ス(thu)、ソ(tho)
サルクーン(Tharkûn)、ブンドゥシャスゥル(Bundushathûr)、ガビルガソル(Gabilgathol)
TY
クウェンヤの子音で、英語のtune/tjuːn/のtに似た音(a sound)。主にc(k)の音、またはt+yから来る音。西方語には英語のchの音/t͡ʃ/が多用されたため、西方語話者はTYの発音をこの音で代用した。
邦訳:ティエ(tye)
ティエルペリオン(Tyelperion)、ティエルペテーマ(tyelpetéma)、ティエルレア(tyeller)
V /v/
英語のvの音。語末にvの音がある時は、fで表記する。(-Fの項目を参照)
邦訳:ヴァ(va)、ヴィ(vi)、ヴェ(ve)、ヴォ(vo)、ヴ(v)
ヴァラール(Valar)、ヴァリアグ(Variag)、ナルヴィ(Narvi)、アルヴェドゥイ(Arvedui)、ヴォロンウェ(Voronwë)、ネヴラスト(Nevrast)
W /w/
英語のwの音。作中ではラテン語に似せた綴りが用いられているが、エルフ語でvとwは別の音なので、Wも用いられる。*12
また語末のauがawと表記される場合がある。(二重母音AUの項を参照)
邦訳:ワ(wa)、ウィ(wi)、ウェ(we)、ウ(w)
ウィルワリン(Wilwarin)、アルウェン(Arwen)、リウ→リーウ(Rhîw)、ティーウ(Tîw)
例外:ドルイニオン(Dorwinion)、ハウズ・イン・グワァヌア(Haudh in Gwanûr)、グヮイロン(Gwaeron)
HW /ʍ/
英国北部の方言のwhiteにあるような、無声のwの音。
補足1:Eledhwenはeledh+gwennであり、語中のhwはこの音ではない(別個の子音dhとw)。
補足2:この音はƕとも表記される。
邦訳
訳例なし。『追補編』でもフェアノール文字12番hwestaと34番hwesta sindarinwaの名は音写されていない。
X /ks/
クウェンヤにみられる子音の組み合わせks(エルフ語の表記ならcs)を表す。
邦訳:クサ(xa)、クセ(xe)
マーハナクサール(Máhanaxar)、アクサントゥア(Axantur)、ヘルカラクセ(Helcaraxë)
Y /j/
英語のyou/juː/における子音yの音を表す。(子音Iの項も参照)
補足:シンダール語でYは母音/y/を表す。
邦訳:ヤ(ya)、イエ・イェ(ye)、ヨ(yo)
ヤヴァンナ(Yavanna)、イエスタレ/イェスタレ(yestarë)、イエン→イエーン(yén)、ナルヴィンイエ(Narvinyë)、ヨーザーヤン(Yôzâyan)
HY- /j̊/≒/ç/
クウェンヤにおいて、英語のhew/hjuː/やhuge/hjuːd͡ʒ/で聞かれる音に似た音(a sound)を表す。クウェンヤでのeht, ihtのhと同じ音。(HTの項を参照)
HYとYの関係はHWとWの関係と同じと説明されているので、HYは無声のYともいえる。
語頭のsy-及びkhy-からきており、どちらもシンダール語ではhとなる。*13
西方語には英語のshの音/ʃ/が多用されたため、西方語話者はHYの発音をこの音で代用した。
補足1:無声硬口蓋接近音/j̊/と無声硬口蓋摩擦音/ç/は近い音。
補足2:この音はꜧとも表記される。
邦訳:ヒャ(hya)
ヒャルメンダキル(Hyarmendacil)、サンガヒャンド(Sangahyando)
Z /z/
英語のzの音。第三紀クウェンヤシンダール語にzの音はない(古くは存在した)。
邦訳:ザ(za)、ジ(zi)、ズ(zu)、ゼ(ze)、ゾ(zo)、ズ(z)
スーザ(Sûza)、ジラク=ジギル(Zirak-zigil)、アル=ジムラソーン(Ar-Zimrathôn)、ブルズム=イシ(burzum-ishi)、エゼルロハール(Ezellohar)、アゾグ(Azog)、ナズグル→ナズグール(Nazgûl)
ZH /ʒ/
英語のazure/aʒə/やoccasion/əkeɪʒən/で聞かれる音。西方語などに現れる音。
補足:この音はžとも表記される。

長子音

tt, ll, ss, nnのように同じ子音が二つに並んでいる場合は、「長い、二重の子音」(long, ‘double’ consonants)を表す。よってYavannaは英語のunnamed/ʌnneɪmd/やpenknife/pennaɪf/のように長く発音し、unaimed/ʌneɪmd/やpenny/pɛni/のように短く発音しない。
補足:『The Rivers and Beacon-hills of Gondor』では、『指輪物語』に登場するシンダール語の語中のllはウェールズ語と同じく無声のlを表すとされている。*14これは『追補編』での説明と相反する。

邦訳での表記は以下の通り。

DD /dd/
促音。ブロッダ(Brodda)
KK(CC) /kk/
促音。エッカイア(Ekkaia)
LL /ll/
流音なので、ル+ラ行。アカルラベース(Akallabêth)、コルマルレン(Cormallen)、シルマリルリオン(Silmarillion)、ヘルルイン(Helluin)、メルロン(mellon)
MM /mm/
ン+マ行。エレンマキル(Elemmakil)、タル=テレムマイテ→タル=テレンマイテ(Tar-Telemmaitë)、ランマス・エホール(Rammas Echor)、サンマス・ナウア(Sammath Naur)、エレンミーレ(Elemmírë)、ランモス(Lammoth)、ミン=リンモン(Min-Rimmon)
例外:レムミラス(Remmirath)、 カリムマキル(Calimmacil)
NN /nn/
ン+ナ行。ヤヴァンナ(Yavanna)、ヘンネス・アンヌーン(Henneth Annûn)、レベンニン(Lebennin)、モランノン(Morannon)
後ろに母音を伴わない場合はンと表記。ゴンヒアリム(Gonnhirrim)、ロスラン(Lothlann)、アン=センナス(ann-thennath)
RR /rr/
流音なので、ル+ラ行。パラルラン(Palarran)、アナルリーマ(Anarríma)、オルロスタール(Orrostar)
ただし、前に母音E, I, Uがある場合はア+ラ行で表記(母音のER, IR, URの項を参照)。エレアリーナ(Elerrína)、ヌーメアラーマール(Númerrámar)、ロヒアリム(Rohirrim)、ゴンヒアリム(Gonnhirrim)
SS /ss/
促音。ネッサ(Nessa)、オッセ(Ossë)、エレスセア→エレッセア(Eressëa)、ロスサールナッハ→ロッサルナハ(Lossarnach)、エレスサール→エレッサール(Elessar)、クゥエスセテーマ→クウェッセテーマ(quessetéma)
指輪物語』のみに登場する語の一部にはス+サ行の表記が残る。ロスソス(Lossoth)、ラスセミスタ(Lassemista)、アラススイル(Arassuil)
後ろに母音を伴わない場合はスと表記。タラス=ネス(Taras-ness)
TT /tt/
促音。ミッタルマール(Mittalmar)、メトタレ→メッタレ(Mettarë)、アル=アバッターリク(Ar-Abattârik)
PH /ff/
シンダール語の語中にあるphは、稀にppから派生した長いffを表している場合がある。追補Eで明言されている例はephelのみ。エフェル・ドゥーアス(Ephel Dúath)、エフェル・ブランディア(Ephel Brandir)

母音

追補Eによると母音は標準的(of normal kind)な母音とされ、英語の以下の語で表される音に長さに関係なく(irrespective of quantity)近似しているとされる。

A/ɑ/ Á/ɑː/
father/fɑːðə/のaに近い音。
邦訳:ア、アー
E/ɛ/ É/ɛː/
were/wɛː/のeに近い音。
邦訳:エ、エー
例外:クリバイン(Crebain)
I/i/ Í/iː/
machine/məʃiːn/のiに近い音。
邦訳:イ、イー
O/ɔ/ Ó/ɔː/
for/fɔː/のoに近い音。
邦訳:オ、オー
U/u/ Ú/uː/
brute/bɹuːt/のuに近い音。
長母音Úに関しては、例えばTúrinはToorinと発音する。Tyoorinと発音してはならない。*15
邦訳:ウ、ウー

クウェンヤの長母音ÉとÓに関しては、エルダールによる正しい発音は短母音より緊張母音で狭母音(tenser and ‘closer’)だった(/eː/と/oː/に近い音か)。*16
シンダール語の長母音É, Á, Óは、元々は短母音E, A, Oとは異なる母音だったが、変化して短母音と同質になった。

以下はシンダール語に現れる母音である。

Y/y/ Ý/yː/
母音変異*17により前舌化したu (‘modified’ or fronted u)を表す。フランス語(Wikipedia:フランス語)のlune/lyn/のuと大体同じ音。主にoとuの母音変異や、古い二重母音のeuとiuからきた音*18として現れる。アンゲアサスでは45番(ウムラウトのü)がこの母音を示す。
西方語には無い母音のため、ゴンドールでは大抵iのように発音された。
邦訳:イ
イルフ(yrch)、エミン・アルネン(Emyn Arnen)、ティルン・ゴルサド(Tyrn Gorthad)、ロヘリン(Roheryn)
Ýの邦訳例はない。

また追補Eのキアスの項によると、クズドゥル西方語には英語のbutter/bʌtə/で聞かれる母音が頻出し、アンゲアサスの55・56番がこれらの母音を表した。これらの母音が作中に登場するクズドゥル・西方語の単語に含まれているのか、あるとすればラテン文字表記はどうなっているのかは不明。

長母音の表記

上記のように長母音は基本的に鋭アクセント記号(acute accent)[´]で示される*19が、曲アクセント記号(circumflex)[ˆ]が用いられる場合もある。これに関しては以下の通り。

クウェンヤ
鋭アクセント記号。
邦訳
長音で表記。
シンダール語
鋭アクセント記号。ただし強勢が置かれる単音節の長母音は特に長く発音される傾向があるため、この場合は曲アクセント記号が用いられる。
単音節の語ではないが曲アクセント記号が用いられている語もある。Henneth Annûn, Amrûn, Udûn, Belegûr, Caragdûr, Haudh in Gwanûr*20
追補Eによるとannûn(日没)とamrûn(日の出)は、関連するdûn(西)とrhûn(東)の語の影響を受ける形で、綴り通り長めに発音されるという。
邦訳
どちらも長音で表記される。そのため、クルニーア・ラーン(Curunír 'Lân)のように長さの違いは判別できない。
例外:ウドゥン(Udûn)
クズドゥルアドゥーナイク西方語ドルーエダインの言葉及び他の人間の言葉
曲アクセント記号。これにシンダール語のような意味はなく、単に異邦の言語(非エルフ語)であることを示している(子音k, khの表記と同様)。
邦訳
長音で表記。
カザド→カザード(Khazâd)、ヨーザーヤン(Yôzâyan)、スーザ(Sûza)、ガン=ブリ=ガン→ガーン=ブリ=ガーン(Ghân-buri-Ghân)、ハムール(Khamûl)
補足:指輪物語』にのみ登場する語には、長音表記に改められていないままの場合もある。ケレド=ザラム(Kheled-zâram)、ムマキル(mûmakil)、ゴルグン(gorgûn)。また例外としてブンドゥシャスゥル(Bundushathûr)の訳もある。
オーク語暗黒語
両方のアクセント記号が使われている。使い分けの意味は不明。
邦訳
曲アクセント記号の母音のみ長音で表記。
ルグブルズ(Lugbúrz)、ナズグル→ナズグール(Nazgûl)、ウグルク(Uglúk)、ガーシュ(ghâsh)。
例外:シャーク(Sharkû)
エント語
鋭アクセント記号。
邦訳
指輪物語』の邦訳ではブラルム(burárum)は伸ばされていないが、その変形であるラールム(rárum)は伸ばされている。

二重母音

クウェンヤシンダール語には以下の二重母音が存在し、これらは基本的に最初の要素に強勢を置く下降二重母音である。これ以外の二つの母音の組み合わせ(combinations)は二音節(dissyllabic)である。

AI
クウェンヤ・シンダール語の二重母音。英語のrye/ɹaɪ/やeye/aɪ/のように発音する。
邦訳:アイ
アイヌア(Ainur)、エダイン(Edain)、カイア・アンドロス(Cair Andros)
AU(AW)
クウェンヤ・シンダール語の二重母音。英語のloud/laʊd/, how/haʊ/, town/taʊn/のように発音する。よってAulëの第一音節はowl/aʊl/のように発音し、Sauronの第一音節はsour/saʊə/のように発音する。
シンダール語の語末にある場合、作中のラテン文字の綴りでは英語に倣ってawと表記される。だがこの表し方はフェアノール文字の綴りでも珍しくない。
邦訳:アウ
アウレ(Aulë)、サウロン(Sauron)、アラウ(Araw)、ガウアワイス(gaurwaith)
EI
シンダール語の二重母音。英語のgrey/ɡɹeɪ/のように発音する。
邦訳:エイ
曖昧母音のように発音される場合も含めて、eのカナ表記は「エ」とする。
エイセル・シリオン(Eithel Sirion)、エレイニオン(Ereinion)
補足:アイレナッハ(Eilenach)はエルフ語ではなく先ヌーメノール語だが、訳は『終わらざりし物語』で「エイレナハ」に改められた。
IU
クウェンヤの二重母音。本来は下降二重母音だが、第三紀のクウェンヤでは上昇二重母音として発音された。すなわち英語のyule/juːl/のyuのように発音する。
邦訳
訳例なし
OI
クウェンヤの二重母音。英語のboy/bɔɪ/やtoy/tɔɪ/のように発音する。
邦訳:オイ
ノイリナン(Noirinan)、オイオライレ(oiolairë)、コイマス(coimas)
UI
クウェンヤ・シンダール語の二重母音。英語のruin/ɹuːɪn/のuiのように発音する(ただし英語のruinに二重母音はない)。
補足:enquiëのquiはこの二重母音ではない(子音QU+母音I)。
邦訳:ウイ
ウイネン(Uinen)、トゥイレ(Tuilë)、アンドゥイン(Anduin)、エミン・ドゥイア(Emyn Duir)
補足:uialの訳に関しては、ウィアル(uial)とウイアル(uial)の二つの訳がある。
AE, OE
共にシンダール語の二重母音。母音のaとe、およびoとeの組み合わせ。英語にはaeとoeに相当する二重母音はない。だがaeはaiのように、oeはoiのように発音してもよい。
補足:シルマリルの物語』のクリストファー・トールキンの解説にある通り、これらの二重母音はa-e, o-eの組み合わせであり、本来そのように発音する。『The Rivers and Beacons-hills of Gondor』においてもトールキンはaeをaiで表記するのは、厳密には正しくないと述べている。*21
邦訳:アイ、オイ
二重母音ae, oeのeは日本語の「イ」に近い音とみなす。マイズロス(Maedhros)、ベレガイア(Belegaer)、ネン・ヒソイル(Nen Hithoel)
補足1:ギルライン(Gilraen)とギルライン(Gilrain)のように邦訳の表記では区別できなくなる場合がある。
補足2:エイレナイア(Eilenaer)は先ヌーメノール語であり、語中のaeがシンダール語と同じく二重母音かどうかは不明。
EU
クウェンヤの二重母音。英語にはこれに相当する二重母音はない。
邦訳
訳例なし。追補Eでは蛇(snake)の意味のleucaの語が挙げられているが、音訳はされていない。

その他母音について

IE
iとeをそれぞれ発音し、続けて読む。英語のpiece/piːs/のieのように発音してはならない。NiennaはNi-ennaが正しく、Neenaではない。
邦訳:イエ
曖昧母音のように発音される場合も含め、eのカナ表記は「エ」とする。
ルシアン→ルーシエン(Lúthien)、ロスロリアン→ロスローリエン(Lothlórien)、アノリアン→アノーリエン(Anórien)、イシリアン→イシリエン(Ithilien)
EA, EO
続けて発音せず、二音節で発音する。
邦訳:エア、エオ
エアレンディル(Eärendil)、エオンウェ(Eönwë)
ER, IR, UR
語末または子音の前にある場合、英語のfern/fɜːn/, fir/fɜː/, fur/fɜː/のように発音はされず、air/eə/, eer/ɪə/, oor/ʊə/のように発音される。
補足:ここで問題にされているのはrの前の母音の発音である。rの発音については子音の項目を参照。
邦訳:エア、イア、ウア
rは基本的に巻き舌の音だが、語末または子音の前にある場合は従来通りrを半母音のように表記する。ただしカラキルヤ(Calacirya)のみ、資料に基づいてrをルと表記する。
エアハミオン(Erchamion)、セルニ→セアニ(Serni)、ニアナイス(Nirnaeth)、ボロミア(Boromir)、イシルドゥア(Isildur)、ヌアネン→ヌーアネン(Núrnen)
補足:非エルフ語(クズドゥル暗黒語オーク語)ではrは「ル」と訳されている。
ブンドゥシャスゥル(Bundushathûr)、ドゥルバトゥルーク(durbatulûk)、ブルズム=イシ(burzum-ishi)、ルグブルズ(Lugbúrz)、マウフル(Mauhúr)。
ただし、先ヌーメノール語エイレナイア(Eilenaer)の訳もある。

分音記号

主にクウェンヤやそれに由来する単語に見られる。あくまで英語話者の誤読を防ぐためのものであり、ウムラウトの母音を示してはいない。またその表記も一貫してはおらず、省かれている場合もある。

その他邦訳について

AR, ORの訳
arとorが語末にある場合、rの前の母音を長音で表記する。
エルダール(Eldar)、アル=ベルザガール(Ar-Belzagar)、ウンバール(Umbar)、アザヌルビザール(Azanulbizar)、ヌーメノール(Númenor)、マグロール(Maglor)、ゴンドール(Gondor)
この法則は語頭・語中では適用されない。アルダ(Arda)、オルサンク(Orthanc)、モルドール(Mordor)、アラゴルン(Aragorn)
また二音節の人名における第二音節のorと、複合語を作る語の語末のarも、強勢が無いことを示すために適用されない。ベオル(Bëor)、ディオル(Dior)、トゥオル(Tuor)、ハドール→ハドル(Hador)、マゴル(Magor)、サドル(Sador)、タル=(Tar-)、ドル=(Dor-)
補足:ボール(Bór)とエレボール(Erebor)、ラール(lár)とヴァラール(Valar)のように、原語の母音の長短が判別できない場合がある。
例外1:バラジンバル(Barazinbar)、アモン・アンワル(Amon Anwar)、タワル=イン=ドルーエダイン(Tawar-in-Drúedain)、ウルバル(Ulbar)、ランガル(rangar)、オゴル=ハイ(Oghor-hai)
例外2:語中にあるarとorがアーオーと訳されている語もある。カーク(Carc)、シャーク(sharkû)、マルローン(mallorn)、アドーン(Adorn)
一部の単語の訳
一部の単語は複合語の要素となった場合、語頭にある母音とその前にある子音を分けて訳している場合がある。
エイセル(eithel)
シンダール語で泉(well)の意味の語。Mitheithelは、ミセイセルではなくミスエイセルと訳される。
オスト(ost)
シンダール語で砦(fortress)を意味する語。
フォルノスト→フォルンオスト(Fornost)、ベレゴスト→ベレグオスト(Belegost)、アングレンオスト(Angrenost)
ただしナルホスト(Narchost)、カルホスト(Carchost)のように『指輪物語』での訳が残っているものもある。
エゼル(edhel)
シンダール語でエルフを意味する語。
ペレジル(Peredhil)、アレゼル(Aredhel)、グローレゼル(Glóredhel)のように訳されるが、アダンエゼル(Adanedhel)の例がある。

ドワーフの名前

追補E及びFによると、作中に登場するドワーフの「外向き」の名前には北方の人間の言葉に属する谷間の国の言葉が使われており、トールキン西境の赤表紙本を「翻訳」する際に北欧風の名前に訳したが、その「翻訳名」の読み方は上記の(架空言語の)読み方と同じであると説明されている。
実際には多くが古ノルド語(Wikipedia:古ノルド語)で書かれた『古エッダ』の「巫女の予言」(Wikipedia:巫女の予言)に登場するドワーフの名前の一覧から取られており、『終わらざりし物語』によるとガンダルフの名も同様である。またフォルン(Forn)も古ノルド語である。
以下は邦訳に関して注意すべき点。

F
上記の発音規則に従えば(そして古ノルド語の読みに従えば)、語末のfは/v/の音だが、Gandalfはガンダルフと訳される。
TH /θ/
『新版 ホビット ゆきてかえりし物語』のようにthが有気音のt/tʰ/と解釈される場合があるが、正しくは/θ/の音である。thが有気音を示しているのはクズドゥルの場合であり、古ノルド語のドワーフの名前ではない。
ドゥリンの一族の王のうち、Thrór, Thráin II, Thorin IIの三世代は語頭がこの音で揃えられている*22。『ホビットの冒険』では当初トロール(Thror)、トレイン(Thrain)、トーリン(Thorin)とタ行の訳で揃えられていたが、後にトロールとトレインはスロールとスラインに改訂された。トーリンはそのまま残され、これらの訳が同名のドワーフにも適用されている。
R /r/
非エルフ語であるためか、語末にあるurを「ウア」とは訳さない。
ビフール(Bifur)、ボフール(Bofur)、ボンブール(Bombur)

長母音は架空言語と同じく鋭アクセント記号で表記されている。だが邦訳の長音の表記は一定していない。

長母音を長音で表記
ダイン二世→ダーイン二世(Dáin II)、ディース(Dís)、フィーリ(Fíli)、フラール(Frár)、フロール(Frór)、グローイン(Glóin, Gróin)、グロール(Grór)、キーリ(Kíli)、ローニ(Lóni)、ナーリ(Náli)、スロール(Thrór)
長母音だが長音表記でない
フロイ(Flói)、ナイン(Náin)、ナル(Nár)、オイン(Óin)、スライン二世(Thráin II)
短母音だが長音で表記
バーリン(Balin)、ビフール(Bifur)、ボフール(Bofur)、ボンブール(Bombur)、ボーリン(Borin)、ドーリ(Dori)、ドワーリン(Dwalin)、ノーリ(Nori)、オーリ(Ori)、トーリン二世(Thorin II)

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  • 色々と「抜け」が多い未完成だけど、とりあえず手始めに書き込みました。 -- 2016-12-11 (日) 03:05:32
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