五軍 の合戦 †
概要†
カテゴリー | 歴史・事件 |
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スペル | Battle of Five Armies |
異訳 | 五軍の |
その他の呼び名 | 最初の谷間の合戦(first Battle of Dale) |
解説†
第三紀2941年にエレボール(はなれ山)で行われた、『ホビットの冒険』作中で語られている戦い。
スマウグの財宝を奪回したソーリン二世ら13人のドワーフ及びくろがね連山のドワーフと、財宝の分け前を要求する湖の町の人間及び闇の森の森エルフが睨み合いになっている最中、スマウグが死んでドワーフがはなれ山に戻ってきたことを聞きつけたオーク(ゴブリン)とワーグ(アクマイヌ)の連合軍が襲来。そのためドワーフ・エルフ・人間は休戦、同盟してオーク・ワーグの軍と戦った。
闘いはドワーフ・エルフ・人間の勝利となり、その後はなれ山にドワーフの山の下の王国と人間の谷間の国が再建された。
だがこの戦いによって、ビルボと共に旅立った13人のドワーフのうち、ソーリン二世、フィーリ、キーリが討ち死にした。
参戦国、勢力†
戦況†
開戦にいたるまで†
スマウグにエスガロス(湖の町)を破壊されたエスガロスの人間は、町の復興の資金とすべく、スマウグが死んで手つかずになっているはずのはなれ山の財宝を求め、スマウグを討ったバルドを統率者にはなれ山へ進軍した(彼らはソーリン達もスマウグに殺されたと思っていた)。スランドゥイル(エルフ王)もまたスマウグ死亡の噂を聞きつけて財宝を求め、森のエルフの軍勢を率いて進軍してきたが、湖の町の窮状を知ると彼らに同情し、行動を共にする。
一方、はなれ山のソーリン二世ら13人のドワーフとビルボ・バギンズは、大ガラスの諜報によりスマウグ死亡の噂がすでに方々に広がり、人間やエルフがその財宝を求めて動き出していることを知ると、財宝を守るために山の表門に障壁を築くとともに、大ガラスを使ってくろがね連山のダーインに援軍の要請を出し、籠城の準備を始める。
両陣営は、はなれ山の門前でにらみ合う形となる。スマウグを討ち取ったことの報酬と、ドワーフが目覚めさせたスマウグがエスガロスを攻撃したことの賠償を受け取る権利を主張するバルドだが、ソーリンは拒否。ビルボを通じてアーケン石が人間・エルフ陣営の手に渡ったことからソーリンはさらに態度を硬化させ、表面上は賠償に応じる構えを見せる一方で時間を稼ぎ、ダーインの援軍が到着するのを待って、バルド達と戦ってでも、より多くの財宝を自分達のものにしようとしていた。
一方、食料などの備蓄がなくなればソーリン達は譲歩してくると考え、門前に陣取っていたバルドとスランドゥイルだが、そこにダーインの率いる五百名以上のドワーフの援軍が到着する。
くろがね連山のドワーフ軍はドワーフとオークの戦争の従軍経験者であり、士気が高く、多くの備蓄を携え、さらに山の防備や入口を新設する技術力を持っていた。人間・エルフ陣営は山を包囲するには数が少なく、もしダーインがソーリンと合流して賠償を翻せば圧倒的に不利になると悟ったバルドは、ダーイン勢の進行を阻む。
かくして一触即発の事態となった。
この一方で、大ゴブリンを殺害された霧ふり山脈のオーク(ゴブリン)はボルグを大将に立て、ワーグ(アクマイヌ)と連合して復讐を果たすべくグンダバド山に軍を集結させていた。かれらはスマウグ死亡の報を知ると、すみやかに闇の森と灰色山脈の間を抜けてはなれ山に接近、北側から両陣営を強襲しようと目論んだ。
これを察知していたガンダルフの説得によって、バルド、スランドゥイル、ダーインは直ちに休戦・合議して共同戦線を張り、オークとワーグの連合軍を迎え撃つ作戦を立てる。かくして五軍の合戦となった。
合戦†
三軍は、森のエルフ軍が南の尾根(からすが丘)に、湖の人間とくろがね連山のドワーフ軍が東の尾根にそれぞれ陣取り、オーク・ワーグの二軍を谷あいに誘い込んで挟み撃ちにする作戦をとった。
作戦にはまって谷あいに誘い込まれた二軍は、そこでエルフ軍・人間軍・ドワーフ軍の挟み撃ちにあい、大混乱に陥る。このまま三軍の勝利かと思われたが、二軍の別動隊が北から山の斜面をよじ登って南へ駆け下ってきたことで、三軍は逆に挟み撃ちにされる形となり、形勢が逆転。
三軍はやっと敵の第一波を退けたものの、数で優る二軍の本隊は谷あいで体勢を立て直すと三軍を圧倒。バルドは東の尾根に押し返され、スランドゥイルは南のからすが丘に追い詰められる。
だがここで籠城し沈黙を守っていたソーリン率いる13人のドワーフが、表門の障壁を破って撃って出る。
彼らの出撃は寡勢であったが各陣営の士気に大きく影響し、三軍はいきり立って二軍を押し返すと、ソーリンはそのままボルグの用心棒の隊列に切り込んだ。しかし用心棒の守りを突破することはできず、逆に敵に囲まれて孤立したソーリンは致命傷を負い、彼を守ろうとしてフィーリとキーリも討ち死にする。三軍は依然として数の上で不利だった。
この窮状に、ずっと二軍の動静を監視していたワシの王率いる大鷲達が三軍を援助すべく参戦。上空からオークとワーグを追い立て、分断されていた三軍が集結する余裕を与える。
だが戦況を決定的に覆したのはビヨルンの参戦であった。どこからともなく現れたビヨルンは怒りにふくれあがった大熊の姿で暴れ回り、瀕死のソーリンを運び出すと、ボルグの用心棒を蹴散らして、オーク軍の大将ボルグを踏み潰す。
これで勝敗が決し、総崩れとなった二軍は三軍の追撃を受け、早瀬川やたての湖(沼地)に追い込まれて討ち果たされた。一部は闇の森に逃げ込み、森の王国で討たれるか、森の中で消息を絶った。
戦後†
この戦いの勝利によって山の下の王国は再建されたものの、ソーリン二世は討ち死し、王位はダーインが受け継いだ。
バルドはビルボの取り分であったエレボールの財宝の14分の1を受け取り、後の第三紀2944年に谷間の国を再建して同国の王となった。さらにバルドは財宝の一部を使って、エスガロスの再建を援助した。また、ダーインから返還されたギリオンのエメラルドをスランドゥイルに贈った。
財宝が引き起こした諍いに嫌気が差していたビルボは、最初は財宝を受け取ることを固辞したが断り切れず、小馬で運べる程度(金が入った小箱と銀が入った小箱を一箱ずつ)を、謝礼としてバルドから受け取った。またダーインから贈られた真珠と銀の首飾りを、エルフ王の岩屋で盗み食いして食を繋いでいたことへの謝罪としてスランドゥイルに贈り、彼からエルフの友と称された。
この戦いによって北方のオーク軍の四分の三が殲滅されたといわれ、ワーグもしばらく姿を消したことによりリョヴァニオンの治安は大いに改善された。
同時期に白の会議によって、ドル・グルドゥルから死人占い師が追い払われた。
とはいえ、後の指輪戦争の時代になるとドル・グルドゥルは敵に奪い返され、オークも北方で再び数を増やして、かの地の危険は再度増大する。
だがこの戦いによって、一度北方のオークが一掃され、スマウグが滅び、エレボールの山の下の王国と谷間の国が再建され、人間・エルフ・ドワーフ・熊人の結束が強まり、北方の交通の安全が保障されたことで、指輪戦争で北方に加えられた攻撃による損失が大幅に軽減されたのだと考えられている(指輪戦争では、東夷による東方からの攻撃を、谷間の国の人間とエレボールのドワーフが食い止めた形となった)。
「ひょっとしたらあり得た事態を考えてもみるがいい。エリアドールを竜の火と野蛮な剣が荒れ狂い、裂け谷には夜が訪れる。ゴンドールに妃はおわさぬことになったかもしれぬ。わしらにしてもこの地における勝利からただ廃墟と灰の中に戻ることを望むしかなかったかもしれぬ。じゃが、これはさけられた――それももとはといえば、ある春の始めの夕べ、ブリー村でわしがソーリン・オーケンシールドに出会ったからじゃ。中つ国でいうめぐり会いというやつじゃのう。*1
画像†
映画『ホビット』における設定†
サブタイトルの原題などに“五軍の合戦(Battle of Five Armies)”という言葉がそのまま使われているものの、映画の設定では、ワーグは単純にオークの馬がわりの動物のように描かれているため、「五軍」とは「人間/エルフ/ドワーフ/オーク/ワーグ」ではなく、「人間/エルフ/ドワーフ/ドル・グルドゥルの軍勢/グンダバドの軍勢」を指すことにされた。ドル・グルドゥルの軍勢の中にはトロルやオーガ(人くい鬼)、グンダバドの軍勢の中にはゴブリン町出身と思われるゴブリンや、蝙蝠*2も含まれている。
演出のため、戦闘の流れは大幅に変更されている。
- ドル・グルドゥルの死人占い師は、エレボールの地理的価値に目を付けて、軍勢を派遣する。
- ドル・グルドゥルの軍勢は、化けミミズを使って密かにエレボールに接近する。
- アゾグは背後を襲うためにデイル(谷間の国)にも軍勢を送り込んで、デイルの廃墟も戦場となり、エスガロスから避難していた湖の人間も戦闘に巻き込まれる。
- 不利な戦況を打開すべく、からすが丘に陣取った敵大将アゾグを直接討ち取るために、ソーリン、フィーリ、キーリ、ドワリンが向かうが、敵の罠にかけられる。
- ビルボが、敵の増援がグンダバドから向かっていることを知らせるためソーリンの元に向かう。
- 自軍の損害の大きさにショックを受けたスランドゥイルが撤退を考える。
- ボルグとキーリ、タウリエル、レゴラスが戦う。
- ソーリンとアゾグの一騎打ちが行われる。
- 大鷲はラダガストに呼ばれて彼とビヨルンを戦場に運び、グンダバドからやって来た新手のオークを壊滅させている。
また、戦後処理の財宝分配などはほぼ完全にカットされている。
エクステンデッド・エディションでは、主に以下のシーンが追加されている。
- オークが現れる前、エルフの軍勢とドワーフの軍勢が実際に衝突する。
- 山羊を使った、ドワーフの騎兵や戦車の登場。
- ソーリンたち13人のドワーフの、戦闘シーンの追加。
- からすが丘へ向かうソーリンを追い、フィーリ、キーリ、ドワリンと、さらにバリンが、最初戦車に乗っている。
- アルフリドの追加シーン。
- ソーリン、フィーリ、キーリの葬儀と、ダーインの戴冠(この時ソーリンの遺体に、アーケン石が返却されている)。
コメント†
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