(ひと)つの指輪(ゆびわ)

概要

カテゴリー物・品の名前
スペルthe One Ring
その他の呼び名一つ(the One)
イシルドゥアの(わざわい)(Isildur's Bane)
主なる指輪(Master-ring)
支配する指輪、支配の指輪、すべてを統べる指輪、すべてを支配する指輪(Ruling Ring)
大いなる指輪(Great Ring)
大いなる力の指輪(Great Ring of Power)
滅びの指輪(Ring of Doom)
いとしいしと(my precious)

ホビットの冒険』劇中において、ビルボ・バギンズが「偶然」手に入れるという形で登場した「身につけると体が透明になる」魔法の指輪。
『ホビットの冒険』では物語の一つの要素でしかなかったが、続編である『指輪物語』では、この一つの指輪が物語全体の焦点となる。

三つの指輪は、空の下なるエルフの王に、
 七つの指輪は、岩の(やかた)ドワーフの君に、
九つは、死すべき運命(さだめ)人の子に、
 一つは、暗き御座(みくら)冥王のため、
影横たわるモルドールの国に。
 一つの指輪は、すべてを統べ、
 一つの指輪は、すべてを見つけ、
 一つの指輪は、すべてを捕らえて、
  くらやみのなかにつなぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。*1

解説

冥王サウロンが、他の力の指輪およびその所持者を支配するために作った指輪。

その目的を達成するため、サウロンは一つの指輪に自らの魔力の根幹を移し込まなければならなかった。そのため、一つの指輪が存在している限りサウロンは何度倒されても復活することができたが、もし万がいち一つの指輪が無に帰すればサウロンも滅びることになった。
この指輪の力によって第二紀のサウロンは中つ国の大部分を支配下に置いて暗黒時代をもたらしたが、サウロンが最後の同盟に敗れた時に彼の手から奪われ、第三紀のほとんどを通じて行方不明になっていた。もし復活したサウロンの手に一つの指輪が戻れば、サウロンの力は完全なものとなり、中つ国は再び暗闇に覆われてしまうだろう。

一つの指輪にはサウロンの邪悪な力が込められているため、これを用いる者は必ず堕落させられる。また、指輪そのものが見えざる意志を持ち、復活したサウロンの許へ戻ろうとしている。
この指輪を破壊するには、これが鍛造された場所である滅びの山サンマス・ナウアにある滅びの罅裂に投げ込むしかない。

行方不明になっていたこの一つの指輪が再び「発見」されたことから『指輪物語』は始まる。

外見、性質

一見すると無垢な黄金でできた、何の飾りもない指輪である。表面は滑らかで傷一つなく、じっと見つめる者は、その形の単純にして完璧な美しさに驚嘆するようになる。
しかし実際にはその表裏に火の線のような筆致で

一つの指輪の銘

アッシュ ナズグ ドゥルバトゥルーク、 アッシュ ナズグ ギムバトゥル、 アッシュ ナズグ スラカトゥルーク、 アグ ブルズム=イシ クリムパトゥル
(Ash nazg durbatulûk, ash nazg gimbatul, ash nazg thrakatulûk agh burzum-ishi krimpatul)

すなわち

一つの指輪は、すべてを統べ、一つの指輪は、すべてを見つけ、一つの指輪は、すべてを捕えて、くらやみのなかにつなぎとめる。
(One Ring to rule them all, One Ring to find them, One Ring to bring them all and in the darkness bind them)

という力の指輪の詩の一節が、フェアノール文字を使って暗黒語で刻まれている(フェアノール文字が使われたのは、暗黒語の文字が細工に向かないためと想像される)。

サウロンが一つの指輪を手にしていた時はこの銘文は常にはっきりと表れていたが、イシルドゥアがサウロンの手から指輪を奪うと、指輪が冷えるにつれて次第に文字も薄くなり消えてしまった。だがサウロンの手の黒くして火のごとく燃えいたる熱気を恋うる*2ためか、指輪を火中に投じて熱すれば、再びその文字を浮かび上がらせることができる。

一つの指輪は、その重さも大きさも一定ではないと感じられることがままあった。実際に指輪はその意志によって、持ち主の指からするりと抜け落ちることがあった(そのためビルボ・バギンズおよびフロド・バギンズは、紛失しないよう指輪に細い鎖を通して首にかけるなどして持ち歩いていた)。その造られた場所である滅びの山火の室に近づくにつれて指輪は耐え難いほど重く、また燃えるように熱く感じられるようになっていった。

この指輪を傷つけたり破壊する方法は、滅びの罅裂へ投げ込む以外には知られていない。

効果

体が透明になる
普通の者がこの指輪を嵌めると体が不可視になり、視力が弱くなって聴力が鋭くなるといった効果が得られる。ただし太陽の光を受けると地面に影が落ちる。
これは実は幽鬼の棲む幽界に移転させられるためであり、この状態ではナズグールの不可視の実体を見ることができるが、ナズグールの方からも指輪を嵌めた者の姿がはっきり見えるようになる。この他にも、死すべき運命の者には本来知覚できない領域の事柄を視たり聴いたりできるようになる。
繰り返しあるいは長期間指輪を使用し続けていると、指輪を外している時でも次第に体が薄れていき、ついには完全に見えなくなって幽鬼と化してしまうという*3
不老長寿をもたらす
持ち主は、ただ持っているだけでも外見が老化することがなくなり、本来の寿命を越えても生き続けるようになる。
しかしそれによって力が増したり意欲が増進することはなく、ビルボ・バギンズはその感覚を引っ張って引き伸ばされた少ないバターを大きすぎるパンの上になすりつけたようなと表現しており、やがては耐えがたい苦痛につながるとされる*4。そして上述の通り、心身が摩耗することで次第に幽鬼に近づいていく。
この効果はその者が指輪の影響下にある限り持続するようで、ゴクリもビルボも指輪が手元から離れた後もほとんど老けることなくそのまま生き続けた*5。だが一つの指輪が消滅すると、ビルボは一気に老けこんでしまった。
能力を増幅する
指輪の本質的な力の一つで、その者に本来備わっている能力を増大させると共に、その者が抱いている願望をも増大させる。そのため所持者は力への致命的な誘惑に晒されることになる。
ガラドリエルはもし自分が指輪を取れば美しく戦慄すべき女王になるだろうと予見し、ボロミアは指輪さえあれば自らの旗の下に諸国を糾合してみせると豪語し、指輪を手にしたサムワイズは諸国から召集した軍勢でサウロンを打倒してモルドールを緑地に作り変えることを夢想した。また、強固な意志で生者死者も統率するアラゴルンを見たレゴラスは、もし彼が指輪を取れば恐るべき君主となったであろうと述べている。
ただし、指輪はその者の生来の資質に応じた力しか与えない。そのため、指輪の力を充分に引き出そうとすれば、それに見合うだけの強い意志と願望が備わるよう自らを鍛錬しなければならない。
力の指輪の支配
一つの指輪は元々、力の指輪とその所有者の意志を支配するためのものであった。一つの指輪を完全に使いこなすことができる者は、全ての力の指輪の作用を見て取り、その所持者の精神を読み取り、その両方を望むがままに捻じ曲げていくことができる。
長期間一つの指輪を所持していたフロドは隠されているはずのネンヤを視認し、その所持者であるガラドリエルの願望を誰よりも明敏に読み取ることができた。
サウロンの権力の奪取
一つの指輪の力を完全に使いこなした者は、サウロンが指輪を使って築き上げてきた一切のものを習い覚え、我が物とすることができるだろうと言われている。
サムワイズ指輪所持者であったのはごく短期間のことだったが、指輪が滅びの山に近づき力を増していたために、彼はその力の一部を無意識に行使することができた。指輪を嵌めたサムはオーク言葉を理解することができ、指輪を嵌めていない状態であってもそれは彼に威圧的な外見を与え、オークを恐怖で敗走させることができた。また、指輪の隷属下にあるゴクリはもしフロドから指輪を通じて命じられれば、それがたとえ断崖から跳び降りることであろうと、火中に身を投ずることであろうと*6服従せざるをえなかった(これは滅びの山の山腹でゴクリがフロドを襲ったことによって現実のものとなり、ゴクリは滅びの罅裂でその通りの最期を遂げることになる)。
堕落
指輪を持つ者はこれに魅せられて心を奪われ、堕落していく。そればかりか、たとえ所持者ではなく、一度も指輪を見たり触れたりしていない者でさえも、指輪を欲しいと思っただけで心が堕落させられてしまう。堕落の進行はその者の生来の資質・動機の善悪に応じて早い遅いの違いはあるが、結局は何人もこれを免れることはできず、最後には全員が悪に落ちる。
力と意志の弱い者は、指輪の力に隷属する幽鬼と化する。
偉大な力ある者であれば、指輪に込められた強大な魔力を引き出し、おそらくサウロンを打ち倒すことすら可能となる。だがその場合、堕落したその者自身が次なる冥王として君臨することになる。
見えざる意志を持つ
指輪にはサウロンの邪悪な力が込められているため、復活した主人の許へ戻ろうとして所持者の裏をかいたり危険を呼び寄せたりする。
イシルドゥアあやめ野オークの伏兵部隊に襲撃され、さらに大河で指輪が指から抜け落ちてオークに射殺された。ゴクリは指輪に魅了されて意欲を失くし、そのためオークの洞窟で指輪に見捨てられた。フロドナズグールが接近する度に指輪を嵌めたいという衝動に駆られ、また指輪はボロミアに働きかけるとともにパルス・ガレン指輪の仲間の離散を招いた。後にガンダルフは、もし指輪が彼らの手許にあればそれを使用せざるを得ない事態が起こったであろうとして、仲間の離散でそれが遠くに運び去られたのは僥倖だったかもしれないと述べている。
このため、指輪をただ持ち続けることはおろか、それをどこかに隠して放置したり、捨てたりすることにも非常な危険が伴う。

イシルドゥアの禍

一つの指輪は、イシルドゥアが身を滅ぼす因になった事から、イシルドゥアの(わざわい)とも呼ばれていた。これは北方(アルノール)の伝承で使われていた言葉で、南方(ゴンドール)では一つの指輪の存在はほとんど忘れ去られ、これが最後にどうなったかも覚えられていなかった(ボロミアなどは、最後の同盟の戦いでサウロンが敗れた後、一つの指輪は破壊されたと思っていたと考えており、サウロンもゴクリから情報を得るまで、そう考えていたようである)。そのため、ファラミアボロミアが夢で見たお告げに「イシルドゥアの禍」という言葉が出てきても、ファラミアたちにはこの言葉の意味するものが理解できなかった。

一つの指輪の歴史

それは、数々の偉大ないさおしと身の毛のよだつ悪業に満ちた長い長い物語です。*7

力の指輪が作られる

第二紀のはじめ、サウロンは正体を隠してエレギオンノルドール・エルフに接近して様々な知識を授ける一方、彼らの作業を監督してその秘法の一切を把握した。
第二紀1500年頃、ケレブリンボールを筆頭とするグワイス=イ=ミーアダイン(エルフの細工師たち)は、九つの指輪七つの指輪三つの指輪からなる力の指輪を完成させる。

そこでサウロンは1600年頃、モルドールの火の山オロドルインにおいて、全ての力の指輪を支配することができる一つの指輪を鍛造した。指輪の銘でもある一つの指輪は、すべてを統べ、一つの指輪は、すべてを見つけ、一つの指輪は、すべてを捕えて、くらやみのなかにつなぎとめる。の言葉は、サウロンが初めて一つの指輪をはめたときに口にした言葉である(力の指輪の詩)。

指輪を巡る最初の戦い

サウロンが一つの指輪を指にはめると、エルフはすぐに彼の正体と目論見に気づき、力の指輪を使用せずに隠した。

このためサウロンの目論見は失敗し、1963年から力の指輪を巡るサウロンとエルフの戦いが始まる。1695年、サウロンはエレギオンを攻め滅ぼして九つの指輪七つの指輪を奪い、ケレブリンボールを殺す(この時エルロンドはエレギオンの残党を率いて裂け谷を作った)。
三つの指輪の在り処を求めたサウロンはリンドンをも攻め滅ぼそうとするが、1700年にギル=ガラドヌーメノールの援助を得て反撃し、1701年にサウロンはエリアドールより駆逐された。

モルドールに撤退したサウロンは九つの指輪人間に与えて指輪の幽鬼とし、東方へと勢力を伸ばした。
だが3261年にヌーメノール軍がウンバールに上陸するとサウロンは降伏し、3262年にサウロンはヌーメノールへと連行された。3262年から3310年にかけて、サウロンはヌーメノールの地でアル=ファラゾーンを籠絡し、ファラゾーンにヴァリノールを攻撃させる。その結果、イルーヴァタールの手によって3319年にヌーメノールは滅ぼされたが、サウロン自身もその没落に巻き込まれて肉体を失った。サウロンの魂は3320年にはバラド=ドゥーアに戻り、一つの指輪をはめて再び形を取った。

サウロン一つの指輪を失い、イシルドゥアの禍となる

ヌーメノール忠実なる者達が破滅を逃れ、中つ国亡国の民の王国アルノールゴンドール)を築いていることを知ったサウロンは、憎しみに駆られて3429年にゴンドールを急襲した。だが、サウロンの力がまだ完全には回復していない一方で、彼が不在の間にギル=ガラドの力が伸長していた。
最後の同盟の戦いで、サウロンはエレンディルギル=ガラドによって倒された。この時イシルドゥアが、折れたナルシルの柄本でサウロンの指ごと一つの指輪を切り取る。イシルドゥアはエルロンドキーアダンの忠告を無視し、購いの品として一つの指輪を自分のものとする。こうして3441年に第二紀は終わった。
第三紀2年、イシルドゥアゴンドールの統治を甥のメネルディルに委ねると、自分はアルノールを統治するため北方へと旅立った。その途中あやめ野オークに襲撃される。イシルドゥアは一つの指輪を持って脱出しようと、これを指にはめて姿を消した。だがあやめ野の近くのアンドゥインを泳いで渡ろうとしているときに、一つの指輪は指から抜け落ちる。その結果彼はオークに見つかって射殺され、指輪は行方不明になった。

指輪の再発見

一つの指輪は長らくあやめ野のアンドゥイン川底に眠り続けていたが、第三紀2463年、釣りを行っていたデアゴルが偶然この指輪を発見する。すると彼と共にいたスメアゴルは、デアゴルを殺して指輪を奪った。その後スメアゴル(やがてゴクリと呼ばれるようになる)は、一族の秘密を探り出すのに指輪を使っていたが、やがて嫌われ者として集落を追放され、指輪を持って霧ふり山脈ゴブリン町よりも深いそこにある、深い洞窟の中に潜んだ。
ゴクリは指輪をいとしいしとと呼び、ほとんど常に持ち歩いて手放そうとしなかったが、暗い洞窟の底ではほとんど指輪を使う必要がなかった。指輪はゴクリの精神をほとんど食い尽くした結果、ゴクリは洞窟の外へ出ていくような意欲もなくしていった。

第三紀2941年、指輪はゴクリを見捨て、オークの洞窟通路内で彼の手から抜け落ちた。だがそれを、偶然にもはなれ山への旅に向かう途中、ゴブリン町で仲間とはぐれて、ゴクリの洞窟に迷い込んだビルボ・バギンズが、暗闇の中を手探りしていたところ発見して手に入れる。当初はこの指輪が「一つの指輪」とは気づかれず、単純に「体が透明になる(だけの)魔法の指輪」とだけ思われた。ビルボは、指輪の透明になる力でゴクリ霧ふり山脈ゴブリンから逃げ出す。その後もビルボは、たびたび透明になる指輪の力を使ってトーリンとその仲間を助け、エレボールへの遠征という冒険を成功させる。そして翌2942年にホビット庄へ、旅で手に入れたその他の宝と共に、指輪も持ち帰った(『ホビットの冒険』)。ビルボはこの指輪の存在をできるだけ秘密にしたがり、自分の回顧録の中などでも、「ゴクリとのなぞなぞ遊びに勝ったことによってもらった贈り物」と称した。

ビルボは、この指輪の存在がしだいに自分の中で大きくなっていき、異変を感じるようになったため、指輪を手放すことを計画する。3001年、彼はガンダルフの助けを借りて、指輪を自分の後継者のフロド・バギンズに譲り渡した。

指輪の正体の判明

ビルボが手に入れた指輪の正体についてずっと疑念を抱いていたガンダルフは、ホビットの中でもビルボの老いが非常に緩やかなこと、そして3001年にビルボが一瞬垣間見せたこの指輪への狂気にも似た執着などから、この指輪が長年失われたままであった「一つの指輪」なのではないかと恐れるようになる。
そのためガンダルフは、指輪を譲り受けたフロドを度々訪問し、彼の様子を観察した。フロドもまた、ビルボと同様に長寿の兆候を見せていたが、まだ指輪による不健全な影響とは断定できなかった。

一方でガンダルフはこの謎をアラゴルン二世に相談し、3009年からは彼と共にゴクリの捜索を断続的に行い、指輪の出自を確認しようと務めた。だがゴクリは「盗っ人」バギンズを追って既に洞窟を後にしており、二人はゴクリを発見できなかった。
3017年、ガンダルフはゴクリの捜索を諦め、イシルドゥアが一つの指輪についての記録を残しているのではないかと期待してゴンドールに赴き、デネソール二世の許しを得てミナス・ティリスの書庫で資料の捜索を行った。その結果、イシルドゥアが残していた記録を発見し、一つの指輪の判別方法、すなわち「火にあぶると、表面にエルフ文字が現れる」という情報を得た。
その直後、アラゴルンがゴクリを発見して闇の森の王国に連行したという知らせを受けたガンダルフは、闇の森へ向かう。ガンダルフはゴクリを尋問し、指輪がスメアゴルに及ぼした異常な長寿などの影響、イシルドゥアが死んだあやめ野で指輪が発見されたこと、指輪をなくした後霧ふり山脈から出たゴクリは、モルドールに囚われて尋問を受けていたこと等を知った。
同時に、サウロンもゴクリを拷問して、これらの情報を得た可能性が高いこと、そして(ビルボがゴクリに会ったとき、自分で名乗ってしまったとき)「バギンズ」が指輪を持っているという情報を掴んだであろう事もわかった。

3018年4月12日、フロドの許を訪れたガンダルフは、フロドの指輪を暖炉の火の中に投げ込む。すると指輪には、イシルドゥアが残した記録と同じ文字が表れた。こうしてフロドの持つ指輪が「一つの指輪」であることが確認された。

指輪の逃走

予想されるサウロンの魔の手から逃れるため、フロドはガンダルフの忠告に従い、指輪を持って密かに裂け谷へと避難することに決める。フロドは、なるべく騒ぎにならないようホビット庄から姿を消す準備をする時間を得るため、ビルボの誕生日があり、ビルボがはなれ山への旅に出発した9月に、自分も出発することにした。ゴクリはホビット庄の場所を知らなかったため、サウロンもまだその正確な場所を掴んでいないことを、野伏などの情報により知っていたガンダルフは、フロドのこの計画を認めた。そこでフロドは、袋小路屋敷を引き払う手筈などを整える。

ホビット庄を野伏が守るよう手はずを整えていたガンダルフは、そのまま袋小路屋敷に滞在しつつ情報を集めていた。だが6月末に不穏な予感と情報(6月20日に起こったモルドールオスギリアス攻撃)を受け取ったガンダルフは危機感を募らせ、さらなる情報収集にブリー村近辺まで赴いたところ、サルマンに遣わされたラダガストに出会う。ガンダルフはラダガストより、ナズグールアンドゥインを渡ってホビット庄へと向かっていることを知らされる。
そこでガンダルフは、予定を早めて直ちに出発するようフロドに警告する手紙を書いてバーリマン・バタバーに預け、自分はサルマンの助力を得るためオルサンクへと向かった。ところがバタバーは手紙をホビット庄に送ることをすっかり忘れてしまい、さらにガンダルフは裏切ったサルマンに監禁されたため、フロドに警告は届かなかった。

結果としてフロドは、当初の予定通り9月の23日に出発する。
その時にはナズグールはサルマンの手の者から得た情報によって*8ホビット庄に到達しており、野伏らの守りを突破して庄内に侵入していた。
フロドは何度も危うくナズグールに捕えられるところだったが、アラゴルンらの助力で辛くも切り抜け、10月20日に裂け谷へと逃れることができた。

一つの指輪の破壊

10月25日、裂け谷においてエルロンドの会議が開かれ、一つの指輪の処遇が話し合われる。会議の結果、一つの指輪をモルドール滅びの山にある、サンマス・ナウア滅びの罅裂に投げ込み、破壊することでサウロンの脅威を永久に排除するのが採りうる唯一の方法であることが決定された。その間フロドが指輪所持者となり、指輪の仲間とともに旅をすることになった。

3018年12月25日、指輪の仲間は裂け谷を出発。3019年2月26日、指輪の仲間はパルス・ガレンで離散してしまう。だがフロドと、彼に付き従うサムワイズ・ギャムジーはモルドールへの旅を続ける。3月13日、サムはキリス・ウンゴルにて、フロドがシェロブの毒によって死んだと思い込み、自分が旅を引き継ぐことにして、フロドの体から一つの指輪を取る(こうしてサムは、僅かの間だが指輪所持者となった)。
だがフロドが生きていることを知り、3月14日にキリス・ウンゴルの塔でフロドの救出に成功したサムは、指輪をフロドに返す。それからフロドとサムは、滅びの山への旅を再開した。
3月25日、フロドとサムはサンマス・ナウアに到着。だがこの時、とうとう一つの指輪の魔力に屈してしまったフロドは、指輪を自分のものであると宣言する。その直後、フロドに襲いかかったゴクリが一つの指輪を奪い、その後滅びの罅裂に指輪もろとも落下してしまう。その結果一つの指輪は破壊され、サウロンの力は永遠に消滅した。

指輪の設定について

トールキンが最初『ホビットの冒険』で「魔法の指輪」としてこの指輪を登場させたとき、指輪についての深い設定は考えていなかった。だが『ホビットの冒険』の続編を考えることになったトールキンは、この「魔法の指輪」の意味に再注目、死人占い師との関連を思いつき、そこから一連の構想が立てられていった。

物語が育つにつれて、それは(過去に)根をおろし、予期しなかった枝をあちこちにさし出すことになったのだが、その主要な主題(テーマ)となるものは、この物語と『ホビット』をつなぐものとして必然的に指輪を選んだことによって、最初から決まっていたのである。きわめて重要な章である「過去の影」はこの物語の一番古い部分の一つである。*9

寓意について

指輪物語』が発表された当時、「一つの指輪は原子爆弾を意味している」という批評家からの意見が上がった。だがトールキンは、同作において隠された意味やメッセージを意図してはおらず、寓意よりも「適応性」(applicability)を重視していることを述べた。

わたしは、事実であれ、作為であれ、読者の考えや経験に応じてさまざまな適応性を持つ歴史のほうがずっと好きである。わたしには、「適応性」と「寓意」とを混合しているむきが多いように思われるのだが、一方は読者の自由な読み方に任され、他方は著者の意図的な支配に委ねられるものである。*10

画像

円環の指輪の銘 指輪の銘の草案

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

俳優アラン・ハワード(Alan Howard)(声)
日本語吹き替え不明

一つの指輪が登場人物にささやきかける誘惑が、声として表現されている。
サウロンからイシルドゥアが指輪を取り上げた直後、大きさが人間(イシルドゥア)のサイズにまで小さくなっているのがはっきり示されている。

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映画『ホビット』における設定

前述のように、原作が書かれたときはこの指輪の設定は深く考えられていなかったが、映画では『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』の設定に合わせ、演出が掘り下げられた。そのため『ロード・オブ・ザ・リング』と同様に、指輪がささやきかける場面が描かれている。指輪の力を感じ取ったらしいスマウグが「precious」と言い、指輪が反応する場面もある。
また原作よりも強くビルボが指輪に執着する。特に闇の森で指輪を落とし、蜘蛛のような生き物が指輪に触れたために激怒して殺害、その直後に我に返って指輪の魔力に気がついたビルボが描かれた。
ビルボは指輪のことを終始秘密にしていたが、ガンダルフ霧ふり山脈魔法の指輪をビルボが拾ったことに気づいており、帰郷時の別れ際「魔法の指輪は軽々しく使うものではない」と忠告している。この時ビルボは、指輪は落としたと噓をついている。

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コメント

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • もう大学かどこかに場所を変えたら・・・・・ -- 2017-04-30 (日) 01:02:39
  • なるほど フロドがナズグルが来る度に指輪を嵌めようとしたのは指輪の意思だったのか -- 2017-05-21 (日) 11:59:31
  • bring them allって、"すべてを捕え"と訳されてますが、全ての指輪をサウロンにもたらすってイメージなんですかね。 -- 2017-05-22 (月) 22:44:00
    • 捕らえたものを、暗闇につなぎとめるということですね。 -- 2017-12-08 (金) 10:50:07
    • より精神的な方面から、誘き寄せ、引き込み、心を囚える、といったイメージかもですね。 -- 2017-12-09 (土) 02:52:35
  • 松岡修造がはめたら溶けるかな? -- 2018-04-18 (水) 19:19:27
  • 魂を物に封じて死を防ぐというのは分霊箱と少し似ている。元ネタなんだろうか。 -- 2018-06-07 (木) 03:03:05
    • 直接の元ネタとは考えにくいけど、ローリング女史が似てるのに気づいてなかったと言うのも考え難いな -- 2018-06-07 (木) 12:06:25
    • 魂を機械の体に移すのと似ているね、どっちかというとSF的なのかもしれない。 -- 2018-08-21 (火) 23:47:53
    • 魂を物に閉じ込めているため不死というのは民話・妖精物語で頻出する由緒あるモチーフです。トールキンもそれを念頭に置いてます。 -- 2018-08-22 (水) 18:12:11
      • ロシアの方の民話か神話に出てくるコシチェイがそうだったね -- 2018-12-26 (水) 19:18:38
      • そういや浦島太郎の玉手箱もそうだね -- 2020-01-14 (火) 22:11:29
  • 昨今のなろう小説で乱発されてる俺TUEEE主人公に指輪を葬るべきだって説明しても理解できるのかね? -- 2019-01-02 (水) 02:48:52
    • 多分、映画のボロミアみたいに自分が指輪を使って冥王を倒すって堂々と公言するんじゃないかな。但し、ボロミアのような愛国心じゃなくて身勝手な正義感と功名心を理由に。そして簡単に堕ちる -- 2019-01-02 (水) 02:56:14
      • むしろ第3第4の冥王になろうとして最後はサウロンの下僕になると思います。 -- 2019-06-29 (土) 14:47:29
    • 力の指輪渡したらどハマりしてナズグルにすぐなるだろうね -- 2019-09-13 (金) 22:17:21
      • ①内面は幼稚なまま、強大な力をろくな苦労もせず得た②すぐ低俗なハーレムを作りたがるなど己の欲望に弱い③力に反してあらゆる人生経験が不足しているため物事を多面的に見れない④元の世界でパッとしなかった反動から単純な自己愛や英雄願望や承認欲求の塊。こんなんサウロンからしたら赤子の手をひねるようなものだろうな。アル=ファラゾーンの500億倍くらい楽勝。 -- 2019-09-14 (土) 10:55:34
    • 理解してもまず冥王倒した後にぶっ壊すと言いそうですね。仮に打倒がなされても既に手放せないものになってるでしょうし、それで初めはうまくいっても死ぬことすらなく何百年もたつ頃にはサウロンに取り込まれるか自分が冥王になってそうです。一つの指輪はどんな意思であろうとそこにある「サウロンの」力を使おうと思った時点で罠にはまる代物で、ホビットたちは知らなかったか自分には過分な力という意識があったからあそこまでもったとも言えるわけで -- 2019-09-15 (日) 13:50:11
  • 一つの指輪を手にして(堕落云々は別にして)、サウロンを打倒できるのは誰までだろう。やはり一つの指輪だけじゃなく、力の指輪を使いこなせる(持ってる)ガラ様、エルロンド、ガン爺くらいじゃなきゃ無理なのかな。サルマンも理屈では可能なのかもしれんが、あまりサルマンがサウロンを打倒できるイメージがわかない。アラゴルンは...無理だろうな。 -- 2019-01-02 (水) 10:40:49
    • 教授の書簡からするとガンダルフまでですね。サルマンもおそらく可能かと。 -- 2019-01-02 (水) 12:19:45
      • 映画準拠だとラダガストはガチでビビって近づきすらしなさそう -- 2019-01-02 (水) 15:01:44
      • レゴラスの見立てでは、アラゴルンでも可能みたいなこと言ってなかったっけ? -- 2019-01-02 (水) 23:38:47
      • 彼が指輪を取れば恐るべき君主となったであろうと言っただけで、冥王に成り代われるかどうかまでは明言してない -- 2019-01-03 (木) 00:05:41
      • 読み返してみました。確かに、アラゴルンへのレゴラスの言及は「恐るべき君主となる」に留まるものでした。良くてヌメノールの大暴君の再来くらいが関の山でしょうね。アル=ファラゾーンのように、サウロンを一時的に屈服させることはできても、打倒までは出来なさそう。 -- 2019-01-03 (木) 10:59:30
      • 英雄であっても人とマイアとでは根本的に違うって事でしょうかね。 -- 2019-06-30 (日) 19:13:42
      • イシルドゥアの二の舞でしょ しかし何故ゴンドールでは存在が半ば忘れられてたのか  -- 2020-04-02 (木) 01:26:08
      • ゴンドールにとって、イシルドゥアはアルノールの王であるという感があってアルノールに関する資料はあまり顧みられなかったのでしょう -- 2020-04-02 (木) 23:16:42
      • なるへそ アルノール人扱いなのか ゴンドールの実質的な初代王って感覚が強いんだけど -- 2020-04-03 (金) 09:37:34
    • ガン爺やガラ様、エルロンド卿が万が一にでも一つの指輪を填めたのなら、彼らは自らの手でサウロンを打倒できますからね。一方、人間の君主にはそれができない。サウロンが黒門の罠にはまったように、軍を率いてモルドールに押し寄せることでサウロンを倒そうとするでしょうが、それこそサウロンの思うつぼでしょうね。全盛期ヌメノールの最強君主すら手玉に取ったサウロンなら、指輪使用者を懐柔どころか暗殺するのもお手の物だろうし。(指輪もそれに手を貸すだろう)ましてや衰えたゴンドールが西方の総力を結集し、指輪がそれを後押ししても勝てるのか微妙だしなあ。(指輪使用者であろうが、強い力を持たなければナズグルを従えることもできないのはフロドが証明してる) -- 2020-01-24 (金) 09:45:32
      • その3人で指輪をはめてサウロンを打倒して新たな冥王になれる可能性があるのはガンダルフくらみたいですよ。ウィキペディアにそう書かれていました -- 2020-01-24 (金) 17:43:59
      • 読みました。なるほどなぁ。しかしそこでも触れられていないサルマンの哀れさが光りますね。 -- 2020-01-24 (金) 17:48:01
      • サルマンの目指す理想は、「魔力と知識の高い者による貴族主義」ということでよろしいでしょうかね。エルフとマイアを代表するガラドリエルとガンダルフに嫌われているのが痛いですが。 -- 2020-01-25 (土) 13:31:25
  • ~中つ国で指輪拾ったら最強存在に転生してしまった件~ 第3話『愚民会議』 「ヴァラールも指輪を受け取ってはくださるまい。これは中つ国に生きる我らの役目だ」「し、しかし指輪を葬れるのは魔国モルドールの滅びの亀裂のみ!」「そんなとこまで誰が!?」「我々ゴンドールの総力でも無理だ!」「ああっ、どうすればいいんじゃ!」 ナロド「いや、俺がこの指輪はめてサウロンぶっ殺せばよくね?」 「た、確かに...!」「ほ、本当だ!」「全く思い付かなかった...!」「まさにそなたこそまことの英雄」「誕生じゃ!『指輪の勇者』の誕生じゃ!」 エルフ姫「ナロド様...」ジュワァ こうかな? -- 2019-09-14 (土) 11:06:03
    • 悍ましいものを読んだ気分です・・・ -- 2019-12-03 (火) 16:17:40
    • フロドも原作では指輪のお陰で見た目が若々しいだけの中身おっさんなんだよね ここら辺は転生主人公っぽい 見た目ガキで振る舞いもガキな中身おっさん フロドは歳そうおうの振る舞いするけど -- 2019-12-03 (火) 18:09:35
    • 実際サムとかも指輪の誘惑に耐えて自らの本分と使命、自分自身を失いはしなかったからね。なろう作品幾つかパラ見したんだがさ、彼らに欠けてるのはそこだよね。 -- 2020-01-24 (金) 09:33:34
  • 「the Master 主キリスト」と英和辞典にあります(キリッ→ソースがweblio -- 2019-12-07 (土) 20:18:19
    • 見てみたら、weblioの掲載している「新英和中辞典」にあるっぽいですね -- 2020-03-27 (金) 08:24:47
    • ジーニアスやリーダーズでも載っている語義であり、ことにweblio(の掲載する書籍)をソースにする必要性は薄いと思います。 -- 2020-04-02 (木) 22:47:46
  • 重さが定まらない指輪を細い鎖で首にかけるって首筋が痒くなる話ですね -- 2020-04-01 (水) 13:54:26
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