ローハン語

概要

カテゴリー言語
スペルlanguage of Rohan, speech of Rohan

解説

ローハンの民であるロヒルリムの言葉。北方の人間たちの言葉の一派で、アンドゥインの谷間の上流域や谷間の国でも似た言葉が使われていた。

「それはロヒルリムの言葉でしょう?」と、レゴラスがいいました。「何故って、この土地自身に似ていますからね。豊かで起伏があるかと思えば、ここの山脈のように厳しくいかめしい。」*1

作中、この言葉はトールキンによって全て古英語に「翻訳」されている(後述)。

ホビットの言葉との関連

第三紀中葉、ロヒルリムの祖であるエーオセーオドアンドゥインの谷間の上流域に定住しており、同時期近隣にはホビットの祖先が暮らしていた。当時のホビットは近隣の人間の言葉を習い覚えて使用していたらしく、彼らがエリアドールに移住してアルノール西方語を母語とした後も、kast, trânといった古いローハン語と共通する要素が見られる単語がホビット特有の地方語として残っていた。こういった語については、メリアドク・ブランディバックの論文『ホビット庄の古語および古名』で考察されているという。

このためホビットは西境の赤表紙本を編纂する際、ローハン語の中で理解できる語彙の一部を自分たちの言葉に翻訳して表記することを試みた(これは下記の固有名詞の一覧にあるように、一部を現代英語化することで不完全ながら「再現」されている)。

ローハン語の原語

追補編』や『終わらざりし物語』には、古英語に「翻訳」される前のローハン語の原語がいくつか記載されている。

kastu
ホビットの言葉ではkastであり、その訳語がマゾム(Mathom)。
trahan
ホビットの言葉ではtrânであり、その訳語がスマイアル(Smial)。
kûd-dûkan
ホルビュトラ(holbytla)の原語で、穴に住む者(hole-dweller)の意味。ホビットの言葉ではクドゥク(kuduk)であり、その訳語がホビット(hobbit)。
ローグ(róg)
ウォーゼ(Wose)の原語。単数形であり、複数形はローギン(rógin)。

以下は『The Peoples of Middle-earth』に記載されている語。

lohō-, lō-
(horse)の意味。古英語で馬の意味のeoh, éo-に訳される。
Lohtūr
エーオセーオド(Éothéod)の原語。
Lōgrad
古英語に訳せばÉo-marc、現代英語ではHorse-markとなる。ゴンドールシンダリンに訳した語がローハン(Rohan)である。
tūrac-
セーオデン(Théoden)の原語。王(king)の意味。

古英語こえいご(Old English)

アングロサクソン語(Anglo-Saxon)とも呼ばれる。西ゲルマン語の一派で、現在の南デンマークと北ドイツにあたる地域に住んでいたアングル人、サクソン人、ジュート人といったゲルマン人たちによってもたらされ、イングランド地域で5世紀から11世紀頃に話されていた言語で、現代英語の基礎となっている(Wikipedia:古英語)。

トールキンはこの言語の研究に秀でており、作中ではこの言葉をローハン語としてほぼそのまま使用している。

ホビットのことばや名前を現代風にし、耳に親しみやすいものにしようと、上述のような試みをしているうちに、わたしはいっそう深みにはまりこむことになった。西方語に関連のある人間の諸言語も、やはり英語に関連のある形に変えるべきであると思われてきたのである。そこでローハン語は古英語に似せるようにした。なぜならローハン語は(遠くは)共通語に、(近くは)北方のホビット族が昔使っていたことばに関連があり、共通語の中の古語に擬せられるからである。*2

学者としてのトールキンは、古英語最古と言われる英雄叙事詩『ベーオウルフ(Wikipedia:ベーオウルフ)』の研究で有名であり、彼以後の『ベーオウルフ』研究にも影響を与えている*3。また『ベーオウルフ』がトールキンの作品に与えた影響も指摘されている。

固有名詞の一覧

ローハンの人名についてはロヒルリムを参照。

地名
スペル邦訳の書籍での表記備考
Aldburgアルドブルグ
Dunharrowやしろ岡現代英語に直した名
Dimholtディムホルト
Dunland褐色国ダンランド
Dwimorbergドウィモルベルグ精霊山のこと
Dwimordeneドウィモルデネ「幻の谷」の意味。ロスローリエンのこと。
Eastemnetイーストエムネト
Eastfoldイーストフォルド
Edorasエドラス「宮廷」の意味とされる。
Entwadeエント浅瀬wadeは現代英語に直した部分
Entwashエント川washは現代英語に直した部分
Entwoodエント森woodは現代英語に直した部分
Fenmarchフェンマルクfenは沼沢地、marchは境の土地の意味
Firien Wood
Firienholt
フィリエン森
フィリエンホルト
フィリエンは「山」、ホルトは「森」の意味。
ここのフィリエンはハリフィリエンの略。
Firienfeldフィリエンフェルドfeldはfieldの意味。
Foldeフォルデ
Glǣmscrafuグレームシュラフ「輝きの洞窟」の意味。燦光洞のこと
Greylinグレイリン直訳は「やかましい奴」
エーオセーオドの民が付けた名
Grimsladeグリムスラーデグリム(Grim)という名の人物に関連がある地名
Halifirienハリフィリエン「聖なる山」の意味。
Hornburg角笛城
Harrowdaleやしろ谷現代英語に直した名
Írensagaイーレンサガ
Isenアイゼン「鉄」の意味。
Isengardアイゼンガルド
Langflood長き川エーオセーオドの民が付けた名
Langwell長き源エーオセーオドの民が付けた名
Meduseldメドゥセルド
Meringメリング「境」の意味。
Mundburgムンドブルグミナス・ティリスのこと
Orthancオルサンクシンダリンだが、ローハンの古語では偶然「狡猾な心」を意味する
Riddermark
Mark
騎士国リダーマーク
マーク
Snowbourn雪白川現代英語に直した名
Starkhornスタルクホルン
Stoninglandストニングランドゴンドールのこと
Sunlendingスンレンディングアノーリエンのこと
Súthburgスースブルグ角笛城の以前の名
Thirihyrneスリヒュルネ
Underharrowやしろ下現代英語に直した名
Upbourn川上現代英語に直した名
Westemnetウェストエムネト
Westfoldウェストフォルド
Wold高地ウォルド
種族名
Eorlingasエオルの家の子ロヒルリムの自称
Éothéodエーオセーオド「馬の民」の意味。
Dunlendings褐色国人ダンレンデイング
Entエント「巨人」の意味
Helmingasヘルムの家の子ギャムリング角笛城の兵を呼んだ名
holbytla, holbytlanホルビュトラ、ホルビュトランホビットのこと
mearasメアラス
orcオーク
Woseウォーゼドルーエダインのこと
の名
Arodアロド
Felarófフェラローフ
Firefoot火の足現代英語の名
Hasufelハスフェル
Shadowfax飛蔭現代英語に直した名
Snowmane雪の鬣現代英語に直した名
Stybbaステュッバ
Windfola風の子ウインドフォラwindは「風」、folaは「子馬」の意味。
その他
Bémaベーマヴァラのオロメのこと
dwimmerlaik化けものドウイマーレイクエーオウィン魔王を呼んだ名
éoherëエーオヘレ全軍召集された騎兵隊のこと
éored軍団エーオレド騎兵隊のこと
Greyhame灰色衣ガンダルフの別名
Gúthwinëグースヴィネエーオメルの剣
Herugrimヘルグリムセーオデンの剣
Holdwineホルドウィネエーオメルがメリーに与えた名
Láthspellラーススペル「凶報」の意
Púkel-menプーケル人ゴブリン、悪霊」の意
Scathaスカザの名
simbelmynëスィンベルミュネ忘れじ草のこと
Wormtangue蛇の舌グリーマの別名。現代英語に直した名

他、セーオデンを称えた以下の言葉がある。

フェルス セーオデン ハル

Westu Théoden Hál

Iron Crown Enterprisesによる設定

「ロヒリク、ロヒアリク(Rohirric)」と呼ばれる。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • で、それを知らなかった某訳者がwoldを高地にしたりといったあほな間違いを…… -- 2008-10-25 (土) 20:13:39
    • 古英語を使用したのは「普通の言葉(英語)のなかに残っている古い言葉(古英語)」という雰囲気を出したかったからであり、これを日本語でどう扱うべきかは、新版の後書きで田中明子氏が触れていた通り難しいです。日本語に訳して発音通りのルビを振るというのも一つの手段でしょう -- 2008-10-27 (月) 08:45:40
    • ローハン語にそのまま当てはめているのですから、雰囲気を出すためというよりも別の言語である、として扱われていたのではないでしょうか -- 2008-10-27 (月) 14:43:20
      • 教授がローハン語の「翻訳」に古英語を当てはめたのは、ホビットの話す西方語にローハン語の影響があるからで、それを英語と古英語の関係になぞらえて表現しようとしたためであると追捕編で語っています。ですから「まったく別の言語」というわけではなく、この関係を日本語でどう表現すればよいかは実際難しい問題でしょう。 -- 2009-10-15 (木) 21:03:56
  • うーん、地名だけじゃないし、シンダールと西方語もごちゃまぜだし、西方語=ゴンドールの言葉でもないし...もう少し整理した方が良いのでは? -- 2011-05-11 (水) 10:49:32
    • そう思われたのならぜひご自身で修正してみましょう、そのためのwikiです -- 2011-05-11 (水) 19:13:59
      • そうも思ったのですが、表を追加した方を尊重して、とりあえず意見表明までにしてみました。反応なければ自分で修正するつもりでしたよ。 -- 2011-05-12 (木) 00:53:40
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