モルゴス

概要

カテゴリー人名
スペルMorgoth
その他の呼び名メルコール(Melkor)
バウグリア(Bauglir)
冥王、暗黒の王(Dark Lord)
世界の暗黒の敵、この世の黒き敵(Black Foe of the World)
大敵、大いなる敵(the Enemy)
初代の大敵(the First Enemy)
強大な敵、大いなる敵(the Great Enemy)
かの大いなる影(the Great Shadow)
暗黒の王(Lord of the Dark, Dark King)
暗黒の主(Lord of the Darkness)
北方の暗黒の力、北方の冥王(Dark Power of the North)
大いなる闇の御方(Great Dark One)
世界の王(King of the World)
マンドスの囚人(jail-crow of Mandos)
種族アイヌアヴァラール
性別
生没年
兄弟マンウェ(兄弟)

解説

アルダの諸悪の根源。上古冥王
元来この者は、クウェンヤで「力にて立つ者(He who arises in Might)」を意味するメルコールの名*1で呼ばれた最も強大なアイヌアであった。だが彼は創造神イルーヴァタールの主題に反逆し、兄弟たるマンウェ王国(アルダ)を力ずくで我が物にしようとして数限りない損害をアルダに加えた。そのためメルコールの名は剥奪され、もはやヴァラールの一人には数えられない。
フィンウェが殺されてシルマリルが奪い取られたことを知ったフェアノールがこの者をシンダール語で「黒き敵(Black Enemy)」を意味するモルゴスと呼び、以後はその名で知られるようになった。シンダール語で「圧制者(Constrainer)」の意であるバウグリアとも呼ばれた。

アイヌアとしては酷寒と灼熱を生じさせた者だった。しかしモルゴスがアルダに害を加える上で最もよく用いたのが暗闇であり、彼と同一化された暗闇はすべての命ある者にとって甚だしい恐怖の対象となった。このために冥王の名で呼ばれる。

中つ国ではウトゥムノ、およびアングバンドを拠点とし、その下にはマイアールの悪霊(サウロンバルログ等)や被造物の怪物(オークトロル等)、邪悪な人間東夷等)からなるおびただしい数の堕落した召使が集っていた。これらの召使達の中で生き残った者はモルゴス亡き後も中つ国とそこに暮らす自由の民を害し続けたが、モルゴス自身はこういった勢力を構築してアルダを侵食することに力を費やしたため、晩期にはアイヌアとしての能力をほとんど失っていった。

モルゴスは上古の終わりに怒りの戦いによって虚空に放逐され、現存する目に見える姿では二度とアルダに戻ってくることはない。しかし彼の投げかけた暗闇はいまだにアルダを覆っており、その意思と虚言は依然として召使達を支配している。

そこでモルゴスは現れた。地下の玉座からゆっくり登ってきた。その足音は、地の下を揺るがす雷の如く轟いた。
立ち現れたモルゴスは、黒の鎧に身を固め、塔のように王の前に立ちはだかった。頭には鉄の王冠を戴き、紋章のない黒一色の巨大な盾が、嵐を孕む雲のように王の上に影を落とした。 …
モルゴスは、地下世界の鉄槌グロンドを高々と振り上げ、雷光の如く打ち下ろした。*2

「予こそ長上王なり。われはメルコール、全ヴァラールのうち、最初にあって最も力ある存在、世の開闢以前にあって世を創りし者。わがもくろむ影はアルダを覆い、地上に起こるすべてのことはひそやかに、だが着実に、わが意を表してゆくであろう。」*3

最も力ある者

「げにアイヌアは力ある者なり。アイヌアのうちにありて、この上なき力を持つ者はメルコールなり。」*4

イルーヴァタールが最初に創り出した聖霊アイヌアの最強者がメルコールであった。
メルコールには全アイヌアの中で最大の力と知識が与えられており、そればかりでなく他のヴァラールの資質をもいくらかずつ分け与えられていた。

しかし彼はやがて自らの手で創造を成したいと欲すようになり、不滅の炎を求めてただ独り虚空をさ迷うようになる。そのため彼は、他のアイヌアとは異なる独自の考えを抱くようになった。

アイヌアの音楽が奏せられた時、メルコールは自分に与えられた声部(パート)の栄光をさらに大きなものにしたいと思い、歌唱に自らの考えを織り込んで不協和音を生じさせた。メルコールの力はあまりに大きく、他のアイヌアの斉唱は圧せられ、イルーヴァタールの提示した主題が二度もかき消されるほどであった。中には、むしろ彼に同調して共に不協和音を起こす者達すらいた。
しかしイルーヴァタールが三度目に示した主題は力では決してかき消されることのない悲しみと美が基調となっており、メルコールとその同調者達の不協和音すら取り込んで一つの音楽となった。
歌が終わると、イルーヴァタールはメルコールをはじめアイヌアにその身の丈を説いたが、これにメルコールは心中密かに怒りを懐いた。

アイヌアの音楽がアルダの歴史としてかれらの眼前に幻視されると、メルコールはアイヌアの誰よりもその場所に心を奪われ、アルダとそこに暮らすイルーヴァタールの子らエルフ人間)を思うがままに支配したいと望むようになる。
彼は本心を隠し、自らの不協和音から生じた酷寒と灼熱を統御するという口実を自分でも信じ込んで、エアに下向した最初のアイヌアの一人となった。

ヴァラールの反逆者

かれの心中に燃える悪意と鬱屈した気分のため、その形は暗く、恐ろしかった。そしてかれは、ほかのヴァラールの誰よりも強大な力と威厳を見せてアルダに降り立ったが、さながら、頭を雲の上に出し、氷を身にまとい、煙と火を頭上に戴き、海を渡る山のようであった。メルコールの目の光は、熱をもって萎らせ、死の如き冷たさで刺し貫く炎のようであった。*5

エアに下向したヴァラール達は、やがて生まれ来るイルーヴァタールの子らのために世界を築くという大事業に取り掛かる。しかしメルコールは世界は自分のものだと宣言して思いのままにそれを形作ろうとし、兄弟のマンウェを筆頭とした他のヴァラールと争った。やがてヴァラールがアルダの形を造り上げてそれに準じた姿を纏うと、メルコールもそれに応じて強大な姿を纏うようになる。

マンウェは自らの下にアイヌアを招集し、成されることすべてを自分の思う方向にねじ曲げようとするか、あるいは全く損ねてしまおうとするメルコールの妨害に対抗した。メルコールは熱と冷気によってウルモの領域を侵犯しようとするが、ウルモはマンウェと力を合わせてそれを退ける。また、アウレの仕事を妬んだメルコールはこれに絶えず損害を与えようとし、アウレはメルコールが加える傷を修復することに次第に消耗するようになった。

だがトゥルカスの到来によってメルコールはついに打ち負かされ、外なる暗闇に逃亡した。
これによってようやくアルダは形を成したが、メルコールの絶えざる妨害のためにヴァラールの当初の構想が完全に実現されることはなかった。

暗闇の支配者

かれは最初、光を強く欲したが、それを独占できないとなると、火と憤怒に身を焼き、熾烈に燃えさかって大暗黒の中に下っていった。*6

外なる暗闇に逃れたメルコールだが、彼はヴァラールに仕えるマイアールの中に多くの間者を持っていた。そのためメルコールは同胞が成し遂げたことを全て把握し、いよいよ憎悪を強くする。
ヴァラールがアルダを照らす二つの灯火イルルインオルマルを完成させ、アルマレンに宮居を築いてそこに住まうようになると、メルコールは夜の壁を越えてアルダに戻り、北方に鉄山脈の防壁とウトゥムノの地下城砦を築き上げる。(灯火の時代

メルコールはまず北方からアルダを浸食し、ヤヴァンナが目覚めさせた動植物(ケルヴァールオルヴァール)を汚染してアルダの春を台無しにする。そしてヴァラールの機先を制し、二つの灯火を強襲してこれを打ち壊した。灯火が倒壊した衝撃のためにアルダは大損害を被り、その混乱にまぎれてメルコールはマンウェの怒りとトゥルカスの追跡を免れてウトゥムノに逃げ帰る。

ヴァラールはアルダがこれ以上破壊されることを恐れ、大海を隔てた西方のアマンへ撤退。以後中つ国は非常に長い期間、ウトゥムノに君臨するメルコールの支配下に置かれることになった。

ウトゥムノの冥王

暗闇にはメルコールが住まい、さまざまな力と恐怖の形をとり、依然としてほしいままに出歩いていた。かれは、山々の頂から山々の下なる深い溶鉱炉に至るまで、冷気と火を支配した。何であれ、残酷なもの、暴力的なもの、死に至るものは、当時、すべてかれの管理のもとにあったのである。*7

ヴァラールアマンを照らす新たな光として二つの木を生み出したが、中つ国は星々の薄明の下にとどめおかれた。(二つの木の時代(星々の時代)
当時の中つ国北方は、地下にメルコールの火と召使達で満たされたウトゥムノが穿たれていたため、無残に荒れ果てていたといい、その力は絶えず南へと伸長していた。メルコールは周囲にバルログ達を集め、鉄山脈の西の外れにはヴァラールの攻撃に対する備えとしてアングバンドを築いてサウロンをその守りにあたらせる。そして変節させた悪霊や怪物達を放ち、アルダを侵食していった。

ヴァラオロメは、こういったメルコールの怪物を狩り立てる狩人であった。メルコールはしばしば中つ国に馬を進めてくるオロメを恐れ、その進行を妨げるために霧ふり山脈を隆起させた。
他のヴァラールも中つ国のことを見捨てたわけではなく、ヤヴァンナはメルコールの害から生類を守るためにかれらを眠らせ、ヴァルダはメルコールに対する挑戦の印として空にメネルマカールヴァラキアカといった星々を築いた。そしてヴァルダが仕事を終えた時、中つ国東方のクイヴィエーネン湖のほとりにエルフが誕生する。

警戒怠りないメルコールは、目覚めたエルフの存在を真っ先に察知したと言われている。そこでメルコールは暗闇と狩人の姿をした悪霊を送り込んでエルフを狩り立て、かれらの心に影を投じるとともに、オロメを恐れるように仕向けた。遠くまでさまよい出たエルフはしばしば二度と戻ってくることはなく、狩人に捕らわれたのだと信じられた。
後のエルダールの賢者達が推測したところによると、捕らわれたエルフ達はウトゥムノの地下牢に連れて行かれ、そこでメルコールの緩慢かつ残忍な術によって心身共に捻じ曲げられた。かくしておぞましいオーク族が作り出されたのだと考えられている。

オロメがエルフを発見したことにより、この行状はヴァラールの知るところとなり、ヴァラールはエルフを救い出すために力の戦いを起こした。
メルコールは中つ国北西部でヴァラールを迎え撃ったが打ち破られ、アングバンドは陥落、ウトゥムノは長く熾烈な包囲戦の末ついに落城して徹底的に破壊された。その地下抗は残らずむき出しにされ、最深部に逃れたメルコールは再びトゥルカスに打ち負かされると、アウレの鍛えたアンガイノールの鎖で縛られてアマンへと連行された。
敗れたメルコールはこれがエルフのために起こされた戦いであることを決して忘れなかった。

マンドスの囚人

「わたしもまたヴァラではないか。げにわれこそ、ヴァリマールの玉座に得意然と坐するかの者たちに勝る者であり、アルダの民の中で最も技にすぐれ、最も勇敢なるノルドール族の(かわ)らぬ友であるのだぞ」*8

審判の輪に引き出されたメルコールは和睦を乞うたが聞き入れられず、マンドスの砦に三期*9の間投獄された。かくしてアマン中つ国はその間平和な時代を謳歌することができた。
三期の刑期が過ぎた後、再び引き出されたメルコールは許しを請うてアルダの傷を癒すことを誓い、ニエンナの口添えもあって釈放される。マンウェはこれでメルコールの悪は矯正されたと考えたが、彼は内心では妬みと憎しみをますます募らせていた。

メルコールは自身の敗北の原因になったエルフを憎み、アマンに住むエルダールの間に虚言を蒔いてヴァラールから引き離そうと腐心した。中でもノルドールがその標的となった。さらにノルドールの王子フェアノールが作り出したシルマリルをメルコールは激しく渇望するようになる。
不和を煽り立てられたフェアノールとその異母弟フィンゴルフィンは互いにいがみ合い、密かに武器を鍛えて蓄えるようになる。さらにノルドールは「ヴァラールは中つ国人間に与えるつもりで、エルダールをアマンに連れて来て閉じ込めているのだ」と不平を漏らすようになった。
こうしてヴァリノールの至福は汚され、二つの木の光は陰って影が長く伸びるようになる。

フェアノールが公衆の面前でフィンゴルフィンに剣を突きつけるに及んでついにヴァラールは調査に乗り出し、メルコールの悪意が明らかとなる。メルコールはヴァリノールから姿をくらまし、二つの木の光は再び明るく輝いた。しかしアマンの民の心中から不安が去ることはなかった。

光の簒奪者

さて、メルコールは、アヴァサールに来てかの女を探し出すと、かつてかれがウトゥムノの圧制者として見せていた姿を再びとった。丈高く、見るだに恐ろしい暗黒の王の姿である。その後かれは、ずっとこの姿をとったまま変わらなかった。*10

メルコールはアマンから逃走したと見せかけて、その近隣のアヴァサールに潜んでウンゴリアントを呼び出し、「協力するならお前の飢えを癒やすどんなものでも与える」と空約束をして協力を取り付けた。ヴァリノールの祝祭日に舞い戻ったメルコールは、テルペリオンラウレリン二つの木に黒い槍を突き立てて瀕死の傷を負わせ、その傷口からウンゴリアントが樹液をすすり毒を流し込むことで、二つの木を枯死させるに至る。こうしてアマンにはそれまでになかった恐るべき暗闇が招来された。
さらにメルコールとウンゴリアントはフォルメノスを襲撃してフィンウェを殺害、シルマリルを奪い取った。これを知ったフェアノールが彼をモルゴスと呼び、以後はその名で呼ばれるようになる。

モルゴスとウンゴリアントは暗闇に紛れてヴァラールの追跡をかわし、ヘルカラクセを渡って中つ国まで逃亡する。だがそこでウンゴリアントが報酬としてシルマリルを要求すると、シルマリルに魅了されていたモルゴスはこれを拒否、二人は仲違いを起こした。ウンゴリアントは網にかけてモルゴスを殺そうとしたが、モルゴスは恐ろしい叫び声を上げてアングバンドからバルログを呼び出し、ウンゴリアントを追い払った。(このため一帯は「大谺」を意味するランモスと呼ばれるようになる)

モルゴスはアングバンドに戻るとそこを再建・強化してサンゴロドリムの塔を築き上げ、さらに巨大な鉄の冠を鍛えるとそれに奪ったシルマリルをはめ込み、「世界の王」を僭称した。
第一紀宝玉戦争は、シルマリルを戴いてアングバンドに立て篭もるモルゴスに、復讐とシルマリル奪回のため中つ国に帰還してきたノルドール、モルゴスの圧制にあくまで抵抗しようとするシンダール、そしてモルゴスの暗闇を拒んだ人間であるエダイン達が挑んだ望みなき戦いである。

光を恐れる者

というのは、かれの敵意が次第に強まり、自ら考えついた悪を、虚言や邪悪な者たちの形をかりて、かれ自身の中から送り出すにつれて、かれの持てる力はそれらに中に移入され、分散されて、かれ自身は、ますます地面から離れられず、暗い砦の中から出るのを厭うようになった。*11

モルゴスの力は大きく、アングバンドの城砦は難攻不落で、その地下坑からはおびただしい数のオークトロル、恐るべき力を持つバルログ、寒気や火炎流などが繰り返し解き放たれたが、一方でモルゴス自身はそうした勢力を構築することに力を費やしたため、次第にアイヌアとしての力を失っていった。

ヴァラールが空に放った太陽の光は、モルゴスにとっては大きな脅威であった。
モルゴスは一度影の精を差し向けて月を運ぶティリオンを襲撃したことがあったが撃退され、太陽を運ぶアリエンに対してはもはや為す術を知らなかった。そのためモルゴスは暗闇と噴煙で自分の居所と召使達を隠すことを余儀なくされる。オークトロルが太陽の光を忌み、その下で力を失うのはそのためである。

太陽の光と、ベレリアンドに領国を築いたノルドールの武勇のため、モルゴスの伸長は阻まれその力は一時北方に封じ込められたことがあった(アングバンドの包囲)。
だがそれでも、エルダールはアングバンドそのものを攻め落とすことはできないでいた。一方でモルゴスは地の底深くで腹黒い企みを懐き、眠ることなく次なる禍事の準備を続けた。

人間を呪う者

「汝は人間の王に非ず、またそうなること能わず。アルダメネルすべてが、汝の軍門に下ることがあろうともな。あくまでも汝を拒んだ者たちを、世界の圏外にまで追うことかなうまじと。」
「世界の圏外にまで追うことはせぬ。」とモルゴスは言った。「世界の圏外には虚無しかないからだ。だがこの世界にあってはわしから逃れることはかなわぬぞ。」*12

太陽が初めて空に昇った時、中つ国の東方ヒルドーリエン人間が目覚めた。このこともまた、直ちにモルゴスの知るところとなる。これを大事件と思ったモルゴスは、アングバンドの指揮をサウロンにまかせて自ら密かに人間たちの許に赴き、かれらを誘惑したと言われている。
それゆえ、人間族はその歴史のはじめからモルゴスの投じた暗闇と虚言に付きまとわれている。東夷をはじめとした多くの人間がモルゴスとその召使の側に与しがちなのもそのためであった。

モルゴスの暗闇を拒み、そこから逃れようと西方を目指した人間の一派がエダインである。人間の中で、かれらのみが公然とモルゴスを敵として戦うことを選んだが、そのかれらと言えどもモルゴスの暗闇から完全に自由ではなかった。

光を失った者

かの女は、かれの目の前に黒髪のマントを投げかけ、夢を注ぎかけた。かつてかれが独り歩いた外なる空虚のように暗い夢である。突然かれは、丘が山崩れを起こすようにくずおれたかと思うと、雷のように玉座からもんどり落ちて、地獄の床にうつ伏した。鉄の冠が音立てて転げ落ちたあとは、すべてが音もなく静まりかえった。*13

三つのシルマリルは依然としてモルゴスの鉄の王冠に嵌っており、アングバンドは不落であったが、その守りが破られる事態が起こる。

シルマリル奪回の誓いを立てたベレンルーシエンが、幾多の困難を潜り抜けてアングバンドの最奥にあるモルゴスの玉座にまで到達し、ルーシエンが眠りの魔法でモルゴスと下僕達を眠らせている間にベレンが鉄の王冠に嵌ったシルマリルの一つをこじり取ったのであった。このことはレイシアンに歌われている。
目覚めて事態に気づいたモルゴスは激怒し、サンゴロドリムを噴火させたが、ベレンとルーシエンはその魔の手を逃れ、ついにはモルゴスの手の届かないところに去っていった。

かくしてシルマリルの一つが自由の民の手に戻った。
このシルマリルを受け継ぎ、ついにはその輝きを永遠に空に掲げることになったのが、明星として知られるエアレンディルである。

没落

かれの増上慢は今や止まるところを知らず、かれに公然たる戦いを仕掛けてくる者はあるまいと高を括っていたのである。 … 憐れみの心を持たぬ者には、憐れみの行為は常に未知なる、推測不可能なことなのである。*14

モルゴスは堕ちたとはいえヴァラであり、アルダの中にあっては何人も彼を完全に打ち負かすことはできない。
かつてモルゴスに一騎打ちを挑んだフィンゴルフィンは佩剣リンギルで彼に七つの傷を負わせ、その左足に深傷を負わせたものの、ついにモルゴスを倒すことはできず敗死した。
そしてノルドールの武勇もエダインとの同盟も、アングバンドを陥落させるには至らず、ニアナイス・アルノイディアドにおいて東夷ウルファングの一族はエルダールを裏切り、モルゴスに勝利をもたらした。この戦いによってベレリアンドのほぼ全土がモルゴスの手に落ちた。
さらにモルゴスは、その威圧力をもってしても不屈な人間の勇者フーリンを呪い、彼と彼の一族に非業の運命を生ぜせしめた(ナルン・イ・ヒーン・フーリン)。さらにそのことからモルゴスは、ニアナイスの後も存続していたエルダールの隠れ王国ナルゴスロンドドリアスゴンドリン)を滅亡させる禍をも生じさせた。

かくしてベレリアンドの全王国は滅び、エルダールエダインはわずかにシリオンの河口バラール島に持ちこたえるのみとなった。
モルゴスはもはや勝利を疑っていなかったが、そのシリオンの河口より船出したエアレンディルが、ベレンルーシエンに奪い返された一個のシルマリルによってヴァリノール隠しを突破してアマンに到達し、その嘆願を聞き入れたヴァラールによってエオンウェ率いるヴァリノールの軍勢が中つ国へと進軍してきた。
この怒りの戦いにおいて、モルゴスの築き上げた膨大な戦力はまたたく間に滅ぼされ、最後の切り札であるアンカラゴンら翼ある龍たちも、ヴィンギロトに乗ったエアレンディルとソロンドール率いる大鳥たちによって倒され、サンゴロドリムはアンカラゴンの下敷きとなって毀れた。アングバンドは徹底的に破壊され、その奥底に逃れたモルゴスは和睦を求めたが赦されず、再び捕らえられた。

こうしてモルゴスは打ち破られ、その没落がもたらされた。

その後

モルゴスは両足を切断されると再びアンガイノールの鎖で縛り上げられ、鉄の王冠から作られた首輪をはめられた。彼はヴァラールによってこの世の外なる虚空に投げ出されて、現存する目に見える姿では二度と戻ってくることはないという。ヴィンギロトで天空を航行するエアレンディル明星)がその見張りに立った。

だがモルゴスの蒔いた邪悪な種子は中つ国に残り続けていつまでも果実をつけ、彼の意志は依然として召使達を支配している。
バルログオークといった堕落した怪物たちは一部が生き残り、後世に禍根を残した。ヌーメノール人の堕落も、大海を渡ってきたモルゴスの影に端を発すると言われている。最強の召使サウロンはモルゴスの跡を継いで冥王となり、再び中つ国に暗闇を広げた。

「それでも後世に生じるかもしれぬ災いはほかにいくらもあろう。なぜならサウロン自身、一個の召使、あるいは使者にすぎぬからじゃ。」*15

世界の終末における最終戦争ダゴール・ダゴラスにおいてモルゴスはアルダに帰還すると言われている。

画像

ジョン・ハウ作画による二つの木を枯らすモルゴスとウンゴリアント ジョン・ハウ作画によるフィンゴルフィンと戦うモルゴス

コメント

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ちっちゃい=_=とにかくちっちゃい。
    生みだされた怪物たちが可哀想。 -- 2021-04-24 (土) 15:38:29
  • 超越的存在にこんなん言われたら自分だったら絶望とうりこして殺してくださいお願いしますなんだが。小物臭なんてしないしちっちゃくもないと思ったけどなぁ。ヴァラール以外誰も勝てないメルコールが捕らえた人間一人にここまで言うって容赦してない感じがするし。これで小物やちっちゃかったら現実世界の大物さん(日本、北米、南米含む)の演説や講演は何だっていう話しだと思うんだが。メルコールは率直な物言いする分ダイレクトにくるわ。嘘がなくマジでやるものこいつは。 -- 2021-04-25 (日) 21:44:16
    • わかる。そんなに小物臭するかな?フーリンに向けたセリフって。むしろ本来メルコールの身分立場からしてわざわざ部下に任せたりせず、自ら行動してる分ある意味では対等に接してない?フーリンに。 -- 2021-04-25 (日) 22:06:28
      • その対等に接してるというのが、「幼稚園児に対して凄むチンピラ」を100万倍はしょっぱくした心情や対応なのが問題なんでしょうね...。
        例えばガンダルフも自由の民と同じ目線で苦難や思考を分かち合ってますが、モルゴスの場合は自分に逆らった自分より遥かに遥かに格下の存在を苛むため、その一心のみから一対一で接してるだけですし...。 -- 2021-04-25 (日) 22:52:29
      • 対等に接してる上に回りくどい呪いかけてる分怖すぎるのよね。取り繕いがなく能力ある存在がここまで言うしやるってただただ怖いと思った。大仰に嘘でそれっぽく取り繕って嘘八百でカッコイイ受け良さそうな事言う、そしてやらねーってのが小物やちっちゃいイメージだったからメルコールが何故小物やチッチャイのかと疑問かな、最終的にはフーリンの家族ホントに不幸のドン底で終了だしね。メルコールの台詞はガツンと直球で実行力ありって思った。 -- 2021-04-25 (日) 23:01:36
    • この頃のメルコールはヴァラの力を喪失してるからマイアールでも格上のやつ相手だったら危ないよ。フィンゴルフィン相手とは言えエルフ一人相手に苦戦するくらいだし。 -- 2021-04-25 (日) 22:52:51
    • メルコールの純粋さとフーリンの不屈さのぶつかり合いだからな
      どっちも譲らないゆえにいくとこまでいってしまうのがこの二人の特徴 -- 2021-04-26 (月) 22:07:44
      • そこだけ切り取ると悲劇に終わる純愛ものの紹介みたいで草。 -- 2021-04-27 (火) 13:13:47
      • ↑笑うじゃないかwww -- 2021-04-27 (火) 17:25:14
      • スゲー的確に感じたんだけど笑ったわ!「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」がストンと頭に落ちてきたww -- 2021-05-05 (水) 11:02:27
  • 上のモルゴスの発言に対して『小物過ぎw』というのと『恐ろしい…』というのは普通に両立するよね。
    別に大物やスケールがでっかくなきゃ恐ろしくないわけじゃないし。
    むしろ器の小ささや小物さ故の恐ろしさってあると思うしね。なんていうの?和製ホラーの怖さというかさ。理不尽と粘着性を併せ持った怖さみたいな。 -- 2021-04-26 (月) 08:05:47
    • どうなんだろうな人それぞれ違うイメージありそうだね小物感やちっちゃさって
      小物過ぎ、恐ろしい、ってのが両立するのかしないのかはその人の主観にもよるかなって印象だね -- 2021-04-26 (月) 12:43:47
  • 人間的には小物かつ政治的無能な権力者でも、権力闘争にだけはやたら才能あって、敵対した人物や無実の人間にマジで吐きそうになる拷問や粛清を与えたりする恐ろしさ、あるもんなー。
    (呂太后なんかはまさにその典型例)
    そもそも小物ゆえに神的存在のくせに高々人間一人とその家族に偏執的な憎しみ(しかも超絶逆恨み)を抱いて呪いをかけるわけだし。
    「小物だから復讐が生々しくて怖いんだよ」というのはあるかもしれんな。 -- 2021-04-26 (月) 16:19:25
  • 極端な話、他のヴァラールには復讐という概念すら理解できないだろうからね。
    (強いて言えばオロメくらいは「殴られたから倍にして返す」くらいの感覚はありそう)
    そういう意味でもやっぱモルゴスは異端よね。 -- 2021-04-26 (月) 16:21:47
    • 悪を知らぬとされるマンウェはともかく、他のヴァラールは必ずしも理解できないとは限らないですよ。ただ彼らは負の感情に呑まれず、それを行動の動機としないよう自制しているのではないかと。最も直情的・戦闘的であるトゥルカスですら、アマンではメルコールへ敵意を向けながらも試合すら挑みませんでしたし。(それとオロメは倍返しどころかトゥルカスよりも自制的かと) -- 2021-04-26 (月) 18:54:29
      • すみません!分かり辛くて…。
        オロメは明確に中つ国の守護者であるので、なんというか単純な感情的リベンジというよりは倍返し的で敵を抑制する、みたいなイメージで書いたんです。
        自分自身より自分が愛する者たちが傷つけられた時に、彼は恐ろしい怒りを覚えそうでもありますし。(怒ればトゥルカスより恐ろしいとも記載あるので) -- 2021-04-26 (月) 18:59:25
  • 流れぶつ切りすみません!タゴール・ダグラス時にはヴァラール勢もかなり力が落ちてる状態でダゴール・ダグラス後に力を取り戻すって昔読んだ気がするんだけど(記憶があやふやで間違えてる可能性ありです。)何が出典だったか分かる方いますか??洋書だったのはたしかなんだけれども。 -- 2021-04-26 (月) 20:21:10
    • HoMEの4.5巻に記述があったと思います -- 2021-05-02 (日) 22:56:24
      • 感謝いたします!たすかりました! -- 2021-05-03 (月) 13:37:00
      • いえいえ!設定が膨大な数ゆえにこういうことってよくありますよね! -- 2021-05-03 (月) 20:59:57
      • もともと設定が膨大な上に2次創作なども読んでまして、出展がどこだったか混乱してしまいますww -- 2021-05-04 (火) 05:16:51
      • あるあるだねw -- 2021-05-04 (火) 13:59:25
  • モルゴスがいっちゃん幸福だった時っていつなんだろう。シルマリル抱えてアングバンドに帰還できた時かな...。(それでも配下に恥はさらしてるが)
    なんかモルゴスってリアルでもちょくちょくいる、“自ら自分自身を幸せから遠ざけてる”タイプだよなぁ。 -- 2021-05-04 (火) 09:50:29
    • わかる〜!!モルゴスは不器用なんだよないろいろと。すべてが間違った方向に突っ走ってしまうというか。幸せだった時はまだイルーヴァタールのもとにいるときだったんじゃないかなあ。そのころはまだ独自の考えを持っているだけで邪悪ではなかったっぽいし。 -- 2021-05-04 (火) 12:26:25
      • ちょっと待ってくださいよぉ!
        そんなん、自分が実は人生で一番恵まれて幸福な時期にいることを気づけない反抗期の糞ガキ中学生じゃないですかぁ!! -- 2021-05-04 (火) 17:58:49
      • たぶんモルゴスはそれで表せると思う。反抗期なんだよスケール壮大すぎるだけで -- 2021-05-04 (火) 19:17:34
      • 一時的な反抗期なんかじゃなく本質的に、足るを知らぬ性分に創られてしまったのでは。 -- 2021-05-04 (火) 22:43:01
  • 不協和音生じさせた時がメチャクチャのりのりで楽しかっただろなぁってのは思うかなwwそのあと怒られてムキムキしてるし。 -- 2021-05-04 (火) 14:45:16
    • ノリで変えてみたって感じすんだよな、あの場面wwで、イルーヴァタールにキレられて逆ギレしてんの、まじ中高の男子って感じww -- 2021-05-04 (火) 16:29:59
      • 「ちょっとちゃんと歌ってよ男子~!!」
        「チッ!こんなダッセー茶番やってられっかよ!あーマジ洋楽刺さるわ~!!(歌詞の意味はよくわからないし聞き取れてない)」
        要はこれってことだよな。 -- 2021-05-04 (火) 20:38:21
      • 全知全能の創造主を目の当たりにしてそんな軽いノリで反抗したとは思えない。彼もまた非凡ゆえに独自の創造を成したい思いが抑えきれない程に肥大してしまったからだろう。凡なガキが周りの甘い人達にイキるのとは違うんじゃないか。 -- 2021-05-04 (火) 22:30:52
  • あとはアルダに向かってる最中とかこれからの事に胸をはずませてワクワクでしょうがなかったと思うよ! -- 2021-05-04 (火) 18:38:36
    • その部分だけ抜粋するなら純粋でかわいいね(その後がなぁ…) -- 2021-05-04 (火) 19:18:34
  • 動画サイトでシルマリオンから指輪戦争まで色んな地図使って解説してる人いるけど勉強になるね。各勢力の有名どころはもちろん各軍の動きまで解説してくれて助かる。
    アマプラでドラマやるのが関係してるか分からんけど北米とか欧州でトールキンファンの動きが活発化してる気がする。動画にしてもファンサイトにしても勢い増してないか??考察系のサイトも人結構いて質問も多いし新規のファンも増えてるのかも。
    トールキンファンが飢えてきてる時にアマプラのドラマ話しだからブ-ストかかってきたのかなと思った。 -- 2021-05-05 (水) 10:54:20
    • たぶんアマプラのドラマがきっかけだろうね。今まで原作・映画の話はできても、もう何年も前だから新規が入りにくい状況にアマプラのドラマができたことで停滞していた分爆発したんかと。しかもドラマの舞台はサウロンが本格的に活動し始めた時代、もしかしたらヌーメノール滅亡まで描かれるかもしれないんだし活発にならないほうがおかしいよ -- 2021-05-08 (土) 11:44:22
      • 新規さんらしき人にも丁寧に説明する人達多くて
        あっちの皆様方も歳取ったんだろなぁって印象。
        熱気があるけど落ち着いた感じでいいね。 -- 2021-05-08 (土) 19:05:51
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