ボロミアを(いた)む歌

概要

カテゴリー詩・歌
スペルLament for Boromir

解説

アラゴルン二世レゴラスギムリの三人が戦死したボロミアの遺体を小船に乗せてアンドゥインに流した時、アラゴルンとレゴラスが歌った歌。
一番は西風にボロミアの便りを求める形でアラゴルンが歌い、二番はレゴラスが南風を、三番は再びアラゴルンが北風を歌った。
ギムリは歌わず、東風については歌われなかった。これについてアラゴルンは「ミナス・ティリスでは、みな東風に耐えてはいるが、それに便りを求めはしない。」と述べた。

邦訳

丈高い草の生い茂る沢地を越え野を越え、ローハンを通って、西風は歩み来たり、城壁を経めぐる。
「おお、さまよう風よ、今宵お前は西の地のどんな知らせを持って来てくれたか?
月光でまた星明かりで、背高き人ボロミアを見かけなかったか?」
「わたしの見たかれは、七つの広い灰色の川を馬で渡って行った。
わたしの見たかれは、人気ない土地を辿(たど)り、やがて北の地の闇にかくれて行った。
そして二度とかれを見なかった。
北風がデネソールの息子のならした角笛(つのぶえ)を聞いたかもしれない。」
「おお、ボロミアよ! 高い城壁からわたしは、はるか西の方を望み見た。
けれど、人気ない土地からあなたは帰らなかった。」

海に開く河口から南風が飛んでくる。砂の山を越え、石の山を越えて。
(かもめ)の鳴き声をこめて、風は城門に歎きかける。
「おお、吐息する風よ、今宵お前はどんな知らせを南から持って来てくれたのか?
(うるわ)しの人、ボロミアは、今どこにいるのか? あの人は帰らず、わが心は傷む。」
「わたしに聞くな、どこにかれが住むかと。
嵐狂う空の下の白い浜、暗い岸に、横たわる骨は、あまりに多いから。
アンドゥインを下り過ぎて、流れる潮路に就く者は、あまりに多いから。
北風に聞け、北風がわたしに送って来る者の知らせを!」
「おお、ボロミアよ! 城門のかなたに、海への道は南へ向かう。
けれどあなたは鳴き叫ぶ鷗とともに、灰色の海の口から帰らなかった。」

王たちの門から北風は馬をとばせて、(とどろ)く大滝を過ぎて来る。
塔をめぐってその高らかな角笛は、嚠喨(りゅうりょう)と冷ややかによびかける。
「おお、力ある風よ、今日お前は、北の国からどんな知らせを持って来てくれたか?
剛勇の人ボロミアの便りはどうか? もう久しく帰らないから。」
アモン・ヘン山裾(やますそ)で、わたしはかれの叫びを聞いた。あそこであまたの敵と戦っていた。
かれの割れた盾を、折れた剣を、友らが水辺に運んだ。
かれの誇らかな(こうべ)を、美しい顔を、また四肢を友らは安らかに(いこ)わせた。
それをラウロスが、黄金色のラウロス大滝が懐に抱きしめた。」
「おお、ボロミアよ! 守護の塔はとこしえに北の方を見つめるだろう。
ラウロスを、黄金色のラウロス大滝を、世の果てる日まで。」*1

原文

Through Rohan over fen and field where the long grass grows
The West Wind comes walking, and about the walls it goes.
‘What news from the West, O wandering wind, do you bring to me tonight?
Have you seen Boromir the Tall by moon or by starlight?’
‘I saw him ride over seven streams, over waters wide and grey;
I saw him walk in empty lands, until he passed away
Into the shadows of the North, I saw him then no more.
The North Wind may have heard the horn of the son of Denethor.’
‘O Boromir! From the high walls westward I looked afar,
But you came not from the empty lands where no men are.’

From the mouths of the Sea the South Wind flies, from the sandhills and the stones;
The wailing of the gulls it bears, and at the gate it moans.
‘What news from the South, O sighing wind, do you bring to me at eve?
Where now is Boromir the Fair? He tarries and I grieve.’
‘Ask not of me where he doth dwell – so many bones there lie
On the white shores and the dark shores under the stormy sky;
So many have passed down Anduin to find the flowing Sea.
Ask of the North Wind news of them the North Wind sends to me!’
‘O Boromir! Beyond the gate the seaward road runs south,
But you came not with the wailing gulls from the grey sea's mouth.’

From the Gate of Kings the North Wind rides, and past the roaring falls;
And clear and cold about the tower its loud horn calls.
‘What news from the North, O mighty wind, do you bring to me today?
What news of Boromir the Bold? For he is long away.’
‘Beneath Amon Hen I heard his cry. There many foes he fought.
His cloven shield, his broken sword, they to the water brought.
His head so proud, his face so fair, his limbs they laid to rest;
And Rauros, golden Rauros-falls, bore him upon its breast.’
‘O Boromir! The Tower of Guard shall ever northward gaze
To Rauros, golden Rauros-falls, until the end of days.’

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