ベレン

概要

カテゴリー人名
スペルBeren
その他の呼び名片手のベレン、隻手のベレン(Beren One-hand)
ベレン・エアハミオン(Beren Erchamion)
ベレン・カムロスト(Beren Camlost)*1
種族人間エダイン
性別
生没年(1)第一紀(432)~†(466)(享年34)
生没年(2)第一紀(469)~(503)(享年34)
バラヒア(父)、エメルディア(母)
兄弟なし
配偶者ルーシエン
ディオル(息子)

解説

シンダール語で「隻手(せきしゅ)(One-handed)」の意であるエアハミオンと呼ばれる。
第一紀における人間エダイン)の英雄で、エルフの乙女ルーシエンと結ばれ、彼女とともにモルゴス鉄の王冠からシルマリルの一つを取り戻した。その功業と運命はレイシアンという歌に歌われている。

エルロンドの母方の曽祖父であり、アラゴルンの遠い祖先にもあたる。

ドルソニオンのベレン

ベオル家バラヒアエメルディアの息子としてドルソニオンに生まれる。
ダゴール・ブラゴルラハ以降、ドルソニオンはモルゴスの軍によって攻撃され、包囲されていた。だがベレンはその地を脱出せず、父のバラヒアの許に留まり、バラヒア率いるドルソニオンの無宿者たちの一人として戦い続けた。
タルン・アイルインにあった彼らの隠れ家がサウロンの策略によってオークの奇襲を受けた時、バラヒア達は全員殺されたが、ちょうどその時ベレンは一人偵察に出ていたため難を逃れた。ベレンは夢の中でサウロンに殺されたゴルリムの亡霊から危機を知らされ、急いで隠れ家に戻り、父バラヒアを埋葬した。その後、オークたちの後を単身で追い、リヴィルの泉でオークの隊長からバラヒアの指輪を奪回した。

以後、ベレンは四年の間ただ一人ドルソニオンで戦い続け、その勲はベレリアンド中に広まった。モルゴスは彼に多大な賞金を賭けたが、オークはベレンが近くにいるという噂だけで逃げ出した。この放浪時にベレンは鳥獣を友とし彼等に助けられたため、以後肉食をせず、モルゴスに仕えるものを除いていかなる殺生もしなかったという。

ドルソニオンからの脱出とルーシエンとの出会い

やがて、サウロンが指揮する軍を差し向けられたベレンはドルソニオンを脱出した。彼はエレド・ゴルゴロスの高みからドリアスを望見し、そこに行ってみることを思い立つ。彼は恐怖の地ナン・ドゥンゴルセブを縦断し、メリアンが防備のために作った魔法帯を、彼女が予言した如く運命に導かれて潜り抜けた。こうしてベレンは灰色エルフの王シンゴルの国であるドリアスに迷い込み、ネルドレスの森でシンゴルとメリアンの娘、ルーシエンに出会った。ベレンは彼女にティヌーヴィエルの名を与え、以後二人は愛し合うようになる。

シルマリルの探索

人間を卑下していたシンゴルは、ダイロンからベレンとルーシエンの関係を知らされると激怒する。ベレンとの愛を貫こうという頑ななルーシエンに対しシンゴルは折れ、ベレンを殺すことも投獄することもしないと誓言する。だが代わりにシンゴルはベレンに対し、ルーシエンを妻とするためにはシルマリルの一つをモルゴスから奪ってくることを要求した。

ベレンは、シルマリルを手にして戻ることを誓ってドリアスから一人旅立ち、フィンロドの助力を得るためナルゴスロンドへと向かった。フィンロドは、ダゴール・ブラゴルラハで自らが立てたバラヒアの一族を援助するという誓いを守るためベレンと共にシルマリルの探索に旅立とうとするが、ナルゴスロンドのエルフたちはフェアノールの息子たちであるケレゴルムクルフィンを恐れたため、フィンロドに同行した者はエドラヒルを含め僅か十人に過ぎなかった。

彼らはオークの装備を奪い、フィンロドの術によってオークそっくりに変身してシリオンの山道に差し掛かったが、その正体をサウロンに気取られてトル=イン=ガウアホスの土牢に投獄された。サウロンは彼らの名前と目的を知るため、彼らを脅迫して一人一人巨狼に食らわせていったが、彼らは自分たちの秘密を守り抜いた。
やがてベレンが巨狼に食われる順番が来たが、その時フィンロドは己が戒めを弾き飛ばして巨狼と取っ組み合う。こうしてフィンロドはベレンの身代わりに、巨狼と相打ちになって死んだ。その後ベレンは、彼を助けるためにドリアスを抜け出してきたルーシエンと、ナルゴスロンドでルーシエンをケレゴルムとクルフィンから助けて彼女に付き従っていた猟犬のフアンによって救出された。

彼らは再会を喜び合って休息の一時を過ごしたが、ブレシルの森でナルゴスロンドを追われてきたケレゴルムクルフィンに遭遇する。彼らに襲われて争ったベレンは、ついにケレゴルムを見限ったフアンの助けによって勝利し、クルフィンから短剣アングリストを奪った。しかしクルフィンが逃げ去りながら放った矢からルーシエンを庇って傷を負う。フアンの取ってきた薬草でルーシエンに手当てを受けて回復した後、ベレンは再び自らの探索を追求する道を選び、一人で旅に出る。だがまたもルーシエンが、フアンと共に追ってきてベレンと合流した。

彼らはフアンの取ってきた巨狼ドラウグルイン吸血蝙蝠スリングウェシルの皮を被って変装し、アングバンドへと忍び込む。そこでルーシエンが歌によってモルゴスらを眠らせ、その間にベレンが、モルゴスの鉄の冠からシルマリルの一つを、アングリストを使って取り外し、奪った。ベレンは残りの二つのシルマリルをも持ち出そうとしたが、これはシルマリルの運命ではなく、アングリストの刃は折れた。
二人は逃亡したが、眠りから目覚めた巨狼カルハロスが城門の前で待ち構えており、カルハロスはベレンの右手をシルマリルごと食いちぎった。カルハロスはシルマリルによって体を焼かれ、発狂し走り去ったが、ベレンはカルハロスの毒によって倒れた。その時ソロンドールが二羽の大鷲と共に現れ、ベレンとルーシエンを救出した。

ルーシエンとの婚約とカルハロス狩りにおけるベレンの死

やがてベレンはルーシエンとフアンの治療によって回復し、彼らはメネグロスシンゴルの玉座の前に現れた。シンゴルは二人の旅の話を聴いて驚嘆し、頑なな態度を捨てる。こうしてベレンとルーシエンは、シンゴルの前で婚約を果たした。
しかし狂気に陥ったカルハロスがメネグロスに接近していることを知ると、ベレンはシンゴルが指揮する狼狩りの一行に加わって出陣する。そのときベレンは、カルハロスに襲われたシンゴルを庇って重傷を負った。フアンと相打ちになって死んだカルハロスの腹からシルマリルが取り出されると、ベレンはそれを受け取ってシンゴルに捧げ、息絶えた。

ベレンの復活と中つ国への帰還

ルーシエンは瀕死のベレンに対し、西海の彼方の岸辺で待っていてくれるように言い、ベレンが死ぬとルーシエンの魂もまた西海の彼方マンドスの館へと向かった。ここで彼女の嘆願したことはヴァラールに受け入れられ、ベレンは死すべき人間の中でただ一人だけ蘇ることを許されるが、その代わりルーシエンも彼と同じく定命の存在となった。彼らは中つ国に舞い戻り、束の間の時を夫婦としてトル・ガレンで過ごした。

後にノグロドドワーフシンゴルを殺し、ドリアスを攻撃してメネグロスを略奪したことを知ると、ベレンは緑のエルフを率いてサルン・アスラドでドワーフを待ち伏せて、彼らを討ち果たした(サルン・アスラドの合戦?。これがベレンの最後の戦いとなった)。ベレンはシルマリルのはめ込まれたナウグラミーアをノグロドの王から奪還し、ルーシエンの許に持ち帰った。ベレンとルーシエンの息子として生まれたディオルは、メネグロスへ移住し、シンゴルの世継となった。
ベレンとルーシエンの死を見届けたものも、彼らの亡骸の場所に墓標を建てた者もいなかったという。だがルーシエンが身に着けていたナウグラミーアは、彼らの死後にディオルの許に届けられた。

トールキン夫妻の墓碑銘

ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンは、自分と妻エディスをベレンとルーシエンに見立てている点があった。トールキンはエディスが死ぬと、その墓にルーシエンの名を刻ませた。その後、彼自身が死去して葬られたとき、トールキンの墓にはベレンの名が刻まれた。

コメント

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 原作「旅の仲間」で、アラゴルンがベレンとルシアンの物語を静かに語るシーンがあります。地味ですが印象深いです。 -- 2008-01-16 (水) 23:21:24
    • 映画では物語の一部を話しただけ。 フロド「その人はどうしたの?」 アラゴルン「死んだ」 -- 2010-12-04 (土) 17:44:43
  • ベレンが一度死んだ後、また戻ってくるまでの間にトゥーリンの物語が起っているのですね。 -- 2010-12-04 (土) 17:46:58
    • シルマリル奪取→涙尽きせぬ合戦→トゥーリンの成長→グラウルング殺し→トゥーリンの死→ナウグラミア入手→シンゴル死去→ベレンの復讐戦 -- 2010-12-04 (土) 17:51:58
  • しかしながら、本編を改めて読み返してみると、ベレンってほんと付きまくっていますよね。サウロンのとっ捕まっても生き残るし、何度も死にかけても、その都度ルーシエンに助けられ、最終的に死んでも、ヴァラールの恩寵で生き返るし、この幸運の少しでもトゥーリンに別けてあげたいです。 -- 2011-12-29 (木) 21:50:38
    • 分かります。なぜかボクはトゥーリンが好きなのですが、運が悪すぎる。かわいそうです。 -- 2012-08-16 (木) 09:00:08
      • べレンとトゥオルは生き返ったりエルフになったり、正統派ファンタジーですが、トゥーリンは現実味があるというか、死ぬもんは死ぬし滅ぶもんは滅ぶみたいなシビアさがありますね。人間とエルフマイアハーフが結婚する世界観なら兄と妹が結婚するぐらい良いじゃないかと思うんですが -- 2013-02-20 (水) 23:47:50
    • でも苦労に苦労を重ねてる分、幸運というより悪運強いにも程がある気が・・・あとルーシエンへの愛で心身共に超タフネスになってもはや中つ国のフェニックス一輝(笑) -- 2013-02-20 (水) 23:34:44
  • 教授と妻エディスの墓碑銘に「ベレン」「ルシアン」とまで刻ませてるのは、正直どうかと思わないでもない。究極の自己投影ですな…。 -- 2015-01-10 (土) 14:09:22
    • そりゃサウロンはもちろん、モルゴスにさえも一杯食わせるよねえ。 -- 2015-03-01 (日) 10:46:06
    • こんなに山あり谷ありのカップルに自己投影するとは。4人の子を成しても恋人同士だったんでしょうかネ -- 2015-06-08 (月) 16:45:13
      • 根っから、純粋でロマンチストだったのではないかと。。 自分が描いた」小説の世界が大好きだった とも思います。 -- 2015-06-08 (月) 19:23:17
      • トールキンは実際結婚に苦労したんですよ。養父からはトールキンが若すぎると交際を禁じられ、年を取ってから結婚を申し込んだら相手はすでに婚約していた。でもその婚約破棄してトールキンと結婚してくれた、とか -- 2015-06-08 (月) 20:46:36
      • 教授は生前クリストファ氏に、墓銘の理由を「誰か私に近い心根の持ち主に、記録には留まらない事をある程度分かっておいてほしいと思うからだ。私と、母さんが、子供時代に経験したあの恐ろしい苦しみ(私達はそこからお互いを救出し合ったものの、傷を完全には癒すことができず、後年しばしば私達を打ちのめしたあの苦しみ)のこと、そして、私達の愛が始まった後に、私達が耐え忍んだ苦悩のことを。そうしたこと全てを知れば、時折私達の生活をぶちこわした退行や暗闇も、許しがたく理解しがたいものではなくなるかもしれないし、また、どうしてこうした事が私達の心の奥底までは届かず、私達の若き日の愛の思い出を曇らせることがなかったかを、了解する助けにもなるかもしれない。」と説明しています。 -- 2015-06-08 (月) 20:57:52
      • 教授とエディスが大恋愛の末に結婚したというのは有名な話ですが、実は夫婦仲に少なからぬ不和があった事は、それほど知られていません。刺々しく激しい口論が頻繁にあり、家庭内別居に近いものもあったようです。どうも教授にとってベレンとルシアンの物語は、ロマンチックな自己投影等の生易しいものではなく、夫婦仲の深刻な不和を乗り越えて(もしくは、そこから現実逃避して)「愛」を信じて夫婦生活を続けていくための命綱に近いような、深刻な何かであった気配があります。 -- 2015-06-08 (月) 21:07:46
      • 家庭内別居というのは、夫婦の寝室が別だったという話でしょうか。それは教授が夜更かしするためと言われていますね。確執に関しては、プロテスタントからカトリックへの改宗問題とか実際色々ありましたが、ともかくそのあたりはJ.R.R.トールキン 或る伝記を読めば少なくとも一部は理解できると思います -- 2015-06-08 (月) 22:43:47
      • なるほど。ありがとうございます。この墓碑銘の話が少し唐突な感じがしていたのがそれでわかりました…! -- 2015-06-08 (月) 22:47:22
      • 今時のなろう小説みたいな現実逃避的な自己投影と比べればずっと前向きではあるよね -- 2018-09-24 (月) 14:31:27
  • モルゴスと配下がルシエンの歌で寝た時、モルゴスを討ち取ることはできなかったのでしょうか。シルマリルを取り戻した後も彼らは寝ていたのですし。 -- 2015-03-01 (日) 10:26:10
    • その場に不安がいるか、もしくは強力な武器でも持ってれば出来たでしょうけど……アングリストは名剣ですけど短剣ですしね。ガタイのでかいモルゴスを殺しきるのは難しそうです。 -- 2015-03-01 (日) 10:42:02
  • 物語の中では「ベレンとルーシエンの死を見届けたものも、彼らの亡骸の場所に墓標を建てた者もいなかった」とありますが、現実世界で教授と奥さんの墓に名が刻まれたことで、ようやく彼ら二人の墓標が出来たということなんでしょうかね -- 2015-03-26 (木) 18:06:37
    • 演出としてはとても切ないですが、教授夫妻も物語のひとつになっていくのを感じます。 -- 2016-02-20 (土) 01:44:43
  • 今度出される新作だと初期構想ではベレンもエルフだったみたいですねー。彼が古代エルフの力持ってたら強すぎるような気が…。 -- 2016-10-22 (土) 17:42:56
    • 人間のベレンも十分強いよ。クルフィンやケレゴルム相手に大立ち回り演じてるんだから。あの兄弟悪辣だけど間違いなく上のエルフだよ? -- 2017-04-13 (木) 20:30:24
  • ドルソニオン時代はともかく、その後のベレンはルーシアン、フアン、フィンロドなどに助けられすぎ。シルマリル奪還は90%くらいルーシアンのお陰だし。 -- 2019-10-15 (火) 20:03:46
    • そんなこと言ったら、「フロドは結局は自分の意思では指輪を捨てれなかった雑魚」みたいな話になるやんけ。指輪物語を通して語られるのは「1人が持つ圧倒的な力」より「周りへの慈しみや素朴な逞しさを持つ一途な願い」の方が結局は強く、勝利するというものじゃないか。ベレンが例えその身に100倍の強さを与えられようと、ベレンが持つルシアンや生あるもの達への愛情が薄れ、傲慢な誇りが取って代わったのなら、アングバンドにたどり着くことすらできなかったのでは。 -- 2019-10-15 (火) 20:47:23
  • なろうじゃん とか言われそう -- 2019-10-15 (火) 23:58:55
    • 放浪時代が過酷だったからまぁ...後半からの優遇されっぷりは中つ国史上でもまず無いレベルだけど。少しはトゥーリンに分けてはやれんかったんかと -- 2020-01-10 (金) 12:54:38
      • でも片手普通に食われるしな。友となった動物の感謝のために肉も絶つし。父も息子も非業の死を遂げるし。トータルで見たらいくら優遇されてもそんな「幸運」と感じないんだよな、ベレンは。ましてや「なろう」ではなぁ...。 -- 2020-01-10 (金) 19:02:51
      • ベレンは主人公補正のかかり方が半端ないが、アレくらいでないとモルゴスに一泡吹かせるのは無理だろう。苦労人でもあるし許容できると思う。トゥーリンに関しては・・グアサングとの相思相愛を全うして欲しいとしか言えない・ -- undefined 2020-01-11 (土) 20:28:18
      • →相思相愛を全うして欲しい   なお、冷たい声の模様。「然り、喜んで汝の血を呑もうぞ。わが主人ベレグの血と、不当に弑せられたブランディアの血を忘れるためだ。いかにも汝の命を速やかに奪ってやろう」 -- 2020-01-11 (土) 20:40:56
      • そういう理屈抜きに某ちゃんねるでは少しでもかすってたら「なろうじゃん」と言われる -- undefined 2020-01-12 (日) 12:23:46
  • そのあたりはまあ、天下のグアサング様ですから。トゥーリンの死と同時にばらばらにへし折れ、ダゴールダゴラスでトゥーリンと一緒に復活して戦うそうですから、ルーシエンと比較するにそん色ないのではないかと。 -- undefined 2020-01-11 (土) 20:53:31
    • →ダゴールダゴラスで共に戦う  なお、心を許したとは言ってない。彼(グアサング)にとって、トゥーリンは自らを振るうに足る、またとなき世界で唯一無二の比類なき振るい手ではあったのでしょう。ただ、彼の「主」ではなかったのだと俺は感じてます。 -- 2020-01-11 (土) 23:04:54
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