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パランティール

概要

カテゴリー物・品の名前
スペルPalantír*1
異訳パランティア、パランティーア
その他の呼び名見る石(Seeing Stones)、七つの石(Seven Stones)

解説

クウェンヤで「遠くから見張るもの」(Those that watch from afar)の意。
覗き込むと遠方を見ることができる暗い水晶球。互いに通信する機能を持ち、石を使う者同士は意思の疎通を図ることもできる。だが、石の使用者が自分の望むものを見るためには、強い意志の力が必要であった。

もともとはフェアノールの手による作品と言われ、第二紀末にトル・エレッセアエルフからヌーメノール節士派へ贈られた。
ヌーメノールが没落してエレンディルイシルドゥルアナーリオンの父子が中つ国に漂着した時、かれらは七つのパランティールも携えていた。パランティールは北方王国アルノールエミュン・ベライドアモン・スゥルアンヌーミナス)と南方王国ゴンドールミナス・イシルミナス・アノールオスギリアスオルサンク)に分散して配置されて、亡国の民の王国の連絡と警戒のために使われた*2

だが、第三紀にイシルの石がサウロンに奪われた後は、他のパランティールを覗くとサウロンの石に繫がってしまい、心を蝕まれてしまう危険性があった。そのためパランティールの存在を知る者であっても、あえてそれを覗こうとする者は長らく現れなかった。
さらに戦乱で多くの石が失われた結果、賢者達ですらパランティールの伝承を重視しなくなり、一部の者を除いて次第にその存在は忘れ去られていった。

だが指輪戦争において、機能する石が3つ現存していたことが明らかとなり、非常に重要な戦略的役割を果たした(オルサンクの石アノールの石イシルの石)。

性質

終わらざりし物語』にはパランティールの性質や機能についての詳しい記述がある。

パランティールは、外見はなめらかな漆黒の水晶玉のようで、中心には赤々と燃える火があった。これは非常に堅固であり、人の手により破壊する方法は知られていない。大きさは石ごとに違いがあり、小さいものは直径1フィート(約30cm)ほどだが、大きいものは数人がかりでないと運べないほどだったという(後述する親石ほど大きい傾向があったらしい)。

その主要な機能は、石同士の通信である。石は互いに呼応する性質があり、相手の石の周囲の景色を映し出すことができた。石はいかなる場合でも音声を伝えることはできなかったが、石を用いた者は互いが望めばその思考を言葉や映像のような形で伝達することができた*3。石同士の通信は一対一でのみ可能であり、他の石がその通信に割り込んだり傍受したりすることは不可能だった。親石(Master Stone)としての機能を持つ石のみが、他の石同士の通信を傍受する機能を持っていた。
また石は、空間的にも時間的にも遠方の事柄を映し出すこともできた。とはいえそれが何を意味するものかはしばしば不明瞭だった。強い意志で働きかければ、ある程度望むものを映し出したり、映像を選択したり、拡大や集中といった操作が可能だったが、それは精神を疲労させ、後世の人間にはますます難しくなっていった*4

また石には、一度映し出した映像を記憶する機能もあったようで、ただ眺めているとそのような記憶映像をランダムに映し出すことがあったという。石は物理的な障壁(石の壁など)を透過して映像を映し出すことができるが、暗闇を照らして映し出すことはできなかった。従って、石の映像は暗闇や「覆い」によって遮蔽することができ、無用に映像を送ったり記憶したりすることがないよう、普段は覆いをかけて保管されていたという。
さらに一説によれば、特定の場所や物に覆いをかけてパランティールから見えないようにする方法もあったらしいが、後世には失われた奥義となった。

石は制作者によって、正当な持ち主、つまりエレンディルに連なるドゥーネダインの王統のものか、彼らから正当に許可を得た者にもっとも良く従うように調整されていた*5。王国の全盛期には、石には選任の管理者が置かれ、それが一定時間ごとにあるいは必要に応じて石を見分して、得られた情報を王に報告するようになっていた。

また一説によれば、石には決まった上下の「極」があり、それが正確に垂直になるよう設置しなければ機能しないようになっていたという。さらに多くの石には極に加え、東西南北の「方向」もあり、これも正確にそちらを向いていなければ機能しなかった。このため映像を見るときは石そのものを動かしてはならず、見る者の側が石の周囲を巡るようにして観察しなければならなかったという。
たとえば西方の事柄を映し出したければ、観察者は石の東側に立って石を眺めた。視線を巡らしたければ、観察者は石を挟んで見たい方位とは反対の方角へ移動すればよい。さらに石を上方から覗き込むようにして見れば、より遠くのものを見ることができた(ただしそうすると像は不鮮明になった)。

さらに一説によれば、それぞれの石には有効な通信範囲があったとも言われている。一般に、巨大な上位の石ほどより遠方を見ることができた。それ以外の下位の石は、おおよそオルサンクからミナス・ティリスまでの距離ほどが有効で、それを越えると通信も映像も不安定になると考えられる(イシルの石の有効範囲はさらに狭かったという記述もあるが未詳)。

七つの見る石

オスギリアスの石 (Stone of Osgiliath)

七つの石の中心となる親石であり、これのみが傍受機能を持っていた。そのためゴンドールの首都オスギリアス星辰殿に配置されたが、第三紀1437年に同族の争いでオスギリアスが戦場となったとき、大河アンドゥインに没して失われた。

イシルの石 (Ithil-stone)

ミナス・イシルに置かれていたが、第三紀2002年にミナス・イシルがナズグールに占領されてミナス・モルグルと化した時に敵に奪われる。やがてサウロンが使用するようになり、その戦略の一端としてオルサンクの石およびアノールの石を捕捉するために主に用いられた。
これを使ってサウロンはサルマンを堕落させてアイゼンガルドの戦力を動かし、またデネソール二世の精神を蝕んでペレンノール野の合戦で同士討ちを生ぜせしめた。最終的に大いなる年バラド=ドゥールの崩壊によって失われたと思われる。

アノールの石 (Anor-stone)

ミナス・アノール(後のミナス・ティリス)白の塔に置かれていた。
戦乱の中でも無事だったが、この石と結び付きの強いイシルの石がサウロンに奪われると、使われることはなくなり、やがてその存在は執政にのみ代々伝えられる秘密となった。だがデネソール二世は密かにこれを使って、サウロンの意志に抵抗しながら国の内外について多くの知識を得ると同時に、消耗して次第に精神を蝕まれていった。
オルサンクの石の存在が明らかになった時ガンダルフは、喪失したという記録のないアノールの石もまた現存しているに違いないと思い至り、デネソールとモルドールの繫がりを危惧して急ぎミナス・ティリスへ向かうことを決めた。
最後には、石を通してミナス・ティリスに迫るモルドールの軍勢を見たデネソールは絶望して狂気に陥り、執政家の廟所で石を持ったまま焼身自殺した。以後は強力な意志の持ち主以外は、この石を覗いても火の中でしなびゆく老人の二本の手しか見ることができなくなったという。

オルサンクの石 (Stone of Orthanc)

アイゼンガルドオルサンクの塔に置かれていた。
ゴンドールがオルサンクを放棄して以後忘れ去られたが、サルマンはゴンドールで伝承を調査する内にこの石の存在と使い方を知ったらしく、彼がオルサンクの管理権を得たときに実際に発見された。長い間、サルマンはあえてそれを使用しようとはしなかったようだが、第三紀3000年頃にとうとう使用し、イシルの石を持つサウロンに捕捉されて毒されることになった。サルマンは定期的に石を通じた報告を行うことを強いられたが、表向きは恭順したふりをしつつ、内心ではサウロンを出し抜こうと目論んでいた。

指輪戦争においてアイゼンガルドモルドールは石を通じて連絡し、パルス・ガレンにおいて共同で指輪の仲間を襲撃するなど連携した行動を取った。だがアイゼンガルドの敗北後、グリーマはガンダルフとサルマンのいずれかに向かってこの石を投げ落とすが逸れて地面に落ち、ペレグリン・トゥックが石を拾い上げた。このときにはこの石がパランティールだとは気づかれなかった。
その後ペレグリンは衝動に駆られ、ドル・バランでこの石を覗き込み、サウロンに自分の姿をさらしてしまう。サウロンは長時間ペレグリンを尋問しなかったため、フロド一つの指輪についての情報が漏れることはなかったが、この事件がきっかけで、石がパランティールであることが判明し、アイゼンガルドとモルドールの連携の理由も明らかとなる。するとガンダルフは、(エレンディルの正統な王位継承者としてパランティールの正当な所持者である)アラゴルン二世にこの石を渡す。
後にアラゴルンは、角笛城を出発する前にこの石を使い、サウロンに自分の姿とアンドゥーリルを見せつけて挑戦。そうすることによって、サウロンの目をモルドール国内(つまり指輪所持者であるフロド・バギンズ)から逸らさせようとした。またその時同時にアラゴルンは石の力で、ミナス・ティリスに対し海賊による南方からの攻撃が迫っていることを知った。これが、アラゴルンが死者の道を通り、死者の軍勢を招集することを決意するきっかけのひとつとなる。またこの一連の経緯は、アラゴルンが一つの指輪を手に入れたのではないかという印象をサウロンに与えることになった。

指輪戦争の終結後は、この石が西方に残された唯一の機能する石となった。再統一された王国の王となったアラゴルンは、この石を国内の観察に用いるものとした。

アモン・スゥルの石 (Stone of Amon Sûl)

風見が丘のアモン・スゥルの塔に置かれていた。この石はオスギリアスの石と並んで最も力が強く、ゴンドールとの連絡には主にこの石が使われた為、北方のパランティールの要と見なされた。
そのためアルノールアルセダインカルドランリュダウルの三国に分裂すると、この石の帰属をめぐって三国間で争いが起こった。第三紀1409年にアングマールの攻撃によってアモン・スゥルの塔は破壊されたが、パランティールは戦火を逃れてアルセダインの首都フォルンオストに避難させられた。
だが1975年、北方王国最後の王アルヴェドゥイの乗った船がフォロヒェル湾で難破したとき、アンヌーミナスの石と共に海中に没した。

アンヌーミナスの石 (Stone of Annúminas)

アルノールの首都アンヌーミナスに置かれ、アルノール王によって用いられた。第三紀1409年にアングマールがアルノールを席巻した際に、アモン・スゥルの石と同じくフォルンオストへ避難させられた。
上記のように、アモン・スゥルの石と共にフォロヒェル湾に没して失われた。

エレンディルの石 (Elendil Stone)

エミュン・ベライド(塔山丘陵)エロスティリオンの塔に置かれていた。この石は他の石とは違い、西方の海の彼方だけを見ることができたという。
エレンディルはこの石を使って失われたヌーメノールを偲び、またトル・エレッセアアヴァッローネの塔を見ることさえあったという(そこには全てのパランティールの親石が置かれていると言われていた)。
塔とこの石はキールダンリンドンエルフによって管理されており、中つ国に残っていた上のエルフも、時折この石を使ってアマンを見たという。
第三紀3021年、三つの指輪の守護者指輪所持者たちがアマンへ去る時、キールダンは彼らの乗る船にこの石も乗せた。

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

ミナス・ティリスの石は登場しない。
『ロード・オブ・ザ・リング(旅の仲間)』において、サルマンは自分が持っているオルサンクの石を直接ガンダルフに見せ、ガンダルフを引き込もうとしている。
『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 エクステンデッド・エディション』に於いてアラゴルンは、オルサンクの石ミナス・ティリスで使用し、サウロンに自分の姿を見せる。
サウロンがパランティールのうちのひとつを手に入れている経緯は描かれていない。

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『ロード・オブ・ザ・リング』におけるパランティール 『ロード・オブ・ザ・リング』におけるアンドゥーリルとパランティール 『ロード・オブ・ザ・リング』におけるパランティール

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ドラマシリーズ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』における設定

パランティールのうちひとつがヌーメノールに保管されているが、他の6つは失われたとミーリエルが語っている(原作設定では、7つのパランティールは皆節士派が保持し、中つ国にもたらされた)。
ヌーメノールが滅亡する光景を映し出している。

ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定

オスギリアスの石は敵の手に奪われており、アングマールモルディリスによって使用されている。
冒険者が、デネソールの使っていた石で何を見たのかを体験する場面がある。
冒険者のクラスによっては冒険者がサルマンに囚われたとき、パランティールを使った尋問を受ける場面がある。

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『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるサルマンと、オルサンクのパランティール 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるデネソールとパランティール

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • ハァ...。残念だ...。どうして潰れたのかな...。(パランティーア無線部...) -- 2019-07-21 (日) 21:35:48
  • トールキン氏がパランティアを発想するに至った経緯が気になるのは私だけ…?あの時代に思いつく時点でやっぱ凄いよなぁと感じる。 -- 2020-09-08 (火) 23:11:57
    • デネソールやサルマンやサウロンは、パランティアの提供する一面的な情報に踊らされて失敗した。こんなあたり現代と同じような弱点まで設定されているように思われる。類似品はキング氏の暗黒の塔に出てくる魔導士の水晶球でこれは完璧にネットモチーフと思われる。 -- 2020-09-09 (水) 06:07:31
      • へぇ知らなかった調べてみよう -- 2020-09-10 (木) 11:51:36
      • リーアという魔女は、作中で遠視の機能を持つ水晶球の濫用により廃人になっており、水晶球を没収されて悪人としてだが更生してたりする。このあたりが時代背景からしてどうしてもネットを連想させてしまうのだ。 -- 2020-09-10 (木) 18:46:54
    • トールキンは情報士官だったらしいから -- 2020-09-11 (金) 00:00:30
      • いや通信士官だった、間違えた -- 2020-09-11 (金) 00:01:48
      • ネットの起源は軍事開発からというけど、トールキン氏は何かしらの技術を当時見聞きしてた可能性もあるのか。 -- 2020-09-11 (金) 08:18:04
      • というか、文献には残らずとも『空を飛べたらなあ』という発想は人類が長年抱いてきたように『何かで遠くの顔も知らない人と繋がれたらなあ』『遠くを見聞き出来たらなあ』くらいの考えはみんな持っていても不思議ではない。
        特に知的階級ならなおさら。
        発明者が偉大なのはそうした夢を抱いた事ではなく、そこまでの道のりを築いた点ですからね。 -- 2021-03-23 (火) 07:58:38
  • まさに19世紀の人が考えた未来の通信方法テレビ電話 -- 2021-06-27 (日) 21:33:30
    • その当時の未来予想って半分くらいは当たってるよね -- 2021-06-27 (日) 21:48:16
  • アフリカ奥地の狩猟民もスマホ持ってたり、アジア奥地の遊牧民もパソコンを使う現代はドルーエダインやロヒアリムがパランティアを自在に操ってるようなもんだな -- 2022-09-23 (金) 14:06:45
  • これに某隠者の紫を接続したらどうなるのか、そもそも繋げるのか、某アニメを見返しててそんな疑問が頭をよぎった。まあ無理だろうけど... -- 2023-11-23 (木) 13:15:38
  • 映画では、ガンダルフがパランティアは危険だって言っていましたよね。
    敵に見つかると思っていたのでしょうか? -- 2023-12-04 (月) 21:19:29
    • 映画では、他のパランティアが行方不明なので、どこから誰が見ているかわかったもんじゃない、という意味で「危険だ」と言っていたのだと思われます。
      原作では、イシルの石がサウロンに奪われたことがほぼ確定していたので、他の石を使うとサウロンに繋がってしまう危険が明らかだったので、長い歴史の中で誰も使用しようとしませんでした。
      しかしそんな中で、サルマンとデネソール侯が禁を破って使用してしまったところから、物語が始まります。(ほんとは物語の発端はもっと沢山あります) -- 2023-12-04 (月) 22:35:11
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