ハラドリム †
概要 †
カテゴリー | 種族 |
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スペル | Haradrim |
その他の呼び名 | ハラド人(the Harad) ハラド国人(Men of the Harad) 南方人(Southrons) 褐色人(Swarthy Men)*1 スワート人(Swertings) |
解説 †
シンダール語で「南方の民」の意。特定の民族を指す言葉ではないが、ゴンドール及びモルドールから見て南のハラドに住む人間の総称。浅黒い肌の人間を中心とする。ゴンドールでは南方人、褐色人とも呼ばれる。ホビット庄ではスワート人の名でその存在が伝え聞かれていた。
彼らはゴンドールと一時期通商関係があったこともあり、ゴンドールのウンバール領有を認めていたが、同盟関係にあったことはない。やがてサウロンに影響されたハラドリムはウンバールを奪い、ゴンドールと長年戦闘を繰り返すようになる。指輪戦争ではモルドールの同盟軍として、海からはハラドとウンバールの海賊がゴンドール南部の沿岸地域を攻撃し、また陸路からはムマキルを伴い、イシリアンの戦闘やペレンノール野の合戦、黒門の戦いなどに現れた(詳細はハラド及びウンバールの項目も参照)。
「黒い顔だよ。あんな人間たち、わしら前に見たことないよ。スメアゴルないよ。たけだけしいやつらだよ。目は黒く、髪の毛は長くて黒いよ。それから耳には金の輪をつけてる。そうよ、たくさんの美しい金だよ。それから
頬 ぺたに赤いものを塗ったやつもいる。それから赤いマントもだよ。それから旗も赤いし、槍の先もだよ。それから奴らは円い盾を持ってるよ。黄色と黒で大きな鋲がついているよ。いい人たちじゃない。とても残忍で性悪な人間みたいだよ。オークと同じぐらい悪そうだ。それにもっと大きい。スメアゴルの考えじゃ、やつら大河が終わった先の南から来たと思うね。」*2
第三紀のハラドリム †
「話によれば、その昔にはゴンドールと南のさいはての国、ハラドの王国との間には通商関係があったということだ。といっても友好関係は一度もなかったが。その当時はわれらの
国境 はアンドゥインの河口を越えて南のかなたにまで伸びていた。そしてかれらの国土の中でも一番わが国境に近いウンバールはわれらの主権を認めていた。しかしそれからもう久しくなる。両国の間に往来があった頃から何代もの年月が経った。そして最近になって知ったのだ。われらの敵がかれらの間に影響力を持ち来 り、かれらはかの者に乗り換えた、いやかの者のもとに帰参したということを――かれらは昔からいつでもかの者の意を甘受しておったからな――東に住む者もまた多くがそうであるように。」*3
- 第三紀のハラドリムに関する年表
年 事象 933 第13代ゴンドール王エアルニル一世がウンバールを陥落させ、ゴンドールの拠点とする。 1015 ウンバールを追放された諸侯に率いられたハラド国人がウンバールを攻撃し、第14代ゴンドール王キアヤンディルが戦死。ウンバール自体はゴンドール海軍により陥落せず。 1050 第15代ゴンドール王キアヤヘアがハルネン川を渡ってハラドを攻撃し屈服させ、ヒャルメンダキル(南の勝者)の名を得る。 ヒャルメンダキル一世の治世でゴンドールの国威は絶頂に達し、南はウンバールの半島と港を含む海岸沿いとハルネン川までの地域を支配する。
ハラドの王たちはゴンドールに忠誠を誓い、息子たちを人質としてゴンドールの宮廷に送ることになる。1448 簒奪者カスタミアの息子たちとその一党が船でペラルギアからウンバールへ去る。以降ウンバールは海賊の根拠地となる。 ウンバールを失ったことでハロンドールは海賊との領有権係争地となり、ハラド国民への支配が弱まる。 1540 第23代ゴンドール王アルダミアがハラド人とウンバールの海賊との戦いで討ち死にする。 1551 第24代ゴンドール王ヴィンヤリオンがハラド国人を撃退し、ヒャルメンダキル二世を名乗る。 1634 第25代ゴンドール王ミナルディルがペラルギアを荒らしたウンバールの海賊によって殺害される。海賊を率いていたのはカスタミアの曾孫のアンガマイテとサンガヒャンド。 1810 第28代ゴンドール王テルメフタールがウンバールを奪取してカスタミアの子孫を滅ぼし、海賊を駆逐する。彼はウンバールダキルの称号を名乗る。 1851年に馬車族の侵攻が始まり、その後の混乱の中ウンバールがハラド国人の手に落ちる。 1944 ハンド人・近ハラド人が馬車族と同盟を結びゴンドールへ攻め込む。南軍の指揮官エアルニルがハラド軍を南イシリアンで破る。 2758 ウンバールとハラドの三つの大艦隊(海賊)がゴンドール沿岸部に来寇し、アイゼン川の川口でも上陸する。(大侵略)
第19代執政ベレンの息子ベレゴンドはこの年の長い冬が終わる前にこれを撃退する。2759 ベレゴンドが同時期に攻撃を受けていたローハンに援軍を送る。 2885 サウロンの密使に扇動されたハラドリムが、占領していたハロンドールからポロス川を越えてイシリアンを襲撃する。
第14代ローハン王フォルクウィネはエオルの誓いに基づいて援軍を送り、第23代執政トゥーリン二世はポロスの渡しで勝利するが、ローハン王の息子ファストレドとフォルクレドが戦死する。2980 第25代執政エクセリオン二世に仕えていたソロンギルが小艦隊を率いてウンバールを奇襲し、海賊船の大半に火を放ち、港の大将を波止場の合戦で倒す。
指輪戦争でのハラドリム †
指輪戦争においてハラド及びウンバールの海賊はモルドールの同盟軍として参戦した。
ペレンノール野の合戦では、黒い蛇を指揮官として投入され、当初ペレンノール野に展開していたハラド軍の数だけでもロヒアリムの三倍はあった。またこの合戦では遠ハラドから来た「半分トロルのような黒い人間たち」も増援として投入された。
彼らは黒い目をした色の浅黒い男たち(swarthy men)で、黒く長い編髪を金で結わえている。「残虐にして身の丈すぐれたハラドリムたち」と呼ばれることから背は高いようである。
赤ないし緋色の衣服に身を包み、金の装身具(
武器は先端が赤い槍、赤い剣、三日月刀、矢を使用し、防具は真鍮の薄板を重ねた胴鎧と、大きな鋲の付いた黄色と黒の円盾を用いる。
旗は赤く、セオデンが倒したハラドリムの首領(黒い蛇)は緋色の地に黒の蛇を置いた旗じるしを用いていた。
彼らが戦闘に使用したムマキルも、ハラドリムと同じく緋色と金色の飾り物を帯びていた。
年 | 月 | 日 | 事象 |
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3018 | 6 | 20 | ハラドリム、東夷を含むモルドール軍がオスギリアスを攻撃。ゴンドール軍の駐屯部隊が全滅する。 |
3019 | 3 | 5 | ハラドリムの部隊が黒門を通過する。 |
3 | 7 | イシリアンの街道でファラミア率いるイシリアンの野伏とムーマクを伴ったハラドリムの戦闘が発生する。 | |
3 | 11 | 灰色の一行がリンヒアに着き、ラメドン領主アングボールと戦っていたウンバールとハラドの敵を遁走させる。 ハラドリムの大部隊がミナス・モルグルを発った部隊と合流し、オスギリアスへ進軍する。 | |
3 | 13 | 退却中にファラミアがハラドの矢で負傷する。 灰色の一行がペラルギアでウンバールの主力艦隊(黒の艦隊)を捕捉し、ハラドリムの敵を死者の軍勢で破る。 | |
3 | 14 | ハラドリムを含むモルドール軍によってミナス・ティリスが包囲される。 | |
3 | 15 | ペレンノール野の合戦。ペレンノール野に展開していたモルドール軍が壊滅し、戦場には多くのムマキルの死骸が残される。 | |
3 | 25 | 黒門の戦い。サウロンの消滅によりモルドール軍が崩壊。 ハラドリムと東夷の一部は最後の抵抗を示すが大部分の者は東へ逃げるか投降する。 | |
4 | ハラドリムと東夷の残党による西軍への抵抗が続く。 | ||
5 | 1 | エレスサール王が即位。その後王はハラドの国民と和を結ぶ。 |
画像 †
映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定 †
イシリアンでの戦闘や、ペレンノール野の合戦にその姿が見られる。ムマキルとの戦いがアクションシーンとして演出される一方、騎兵は登場しない。エクステンデッド・エディションではイシリアンの戦闘で死んだハラドリムを見てファラミアが感慨にふける*4シーンと、ペレンノール野の合戦でメリーがオークやハラドリムの歩兵と戦うシーンが追加されている。
グッズ †
ゲームズ・ワークショップによる設定 †
ムマキルに乗った軍団にマフードという氏族名がつけられている。また、映画に登場しなかった騎兵部隊もユニットとしてフィギュア化されており、中には馬ではなく駱駝に騎乗している部隊もある。彼らを率いていた指揮官(原作でセオデンから黒い蛇と呼ばれている)にはスラダーンという個人名と「蛇の王」の称号が与えられている他、近ハラドの軍勢は黄金王と呼ばれる王に率いられている。
映画『ホビット』における設定 †
エスガロスの住民や谷間の国の商人にハラド出身と思われる黒人系の人物が多数混ざっているのが確認できる。
ドル・グルドゥアで白の会議と戦ったナズグールの一人はハラドリムの王だったという設定でデザインされている。
Iron Crown Enterprisesによる設定 †
特徴 †
- 外見
- 近ハラドの民は比較的小柄で、明るい肌をしているが、遠ハラドの民の肌は黒く、背も高い。この傾向は南に行くほど顕著になっている。
- 文明・文化
- ハラドワイスではエルフとの交流が希薄なため、文化的な発展の多くはヌーメノールとの交易によるところが大きい。ムーマカン人のように野蛮で好戦的な氏族がいる一方で、平和的で高度に組織化された文明社会を持つ氏族もいる。国や部族ごとに規模も形態も異なる多くの宗教が存在しているが、信仰の対象となっている神々の中には、西方でヴァラールやマイアールとして知られる存在も含まれている。彼らはいずれもクウェンヤとは異なる独自の名前で呼ばれており、例えばマンウェはナディ=マンジェ(Nadi-Manje)、ウルモはマリキアム(Malikiam)、ヤヴァンナはリリス(Lilis)などという。また、このような宗教上の重要な知識の多くが、タラト・バラザイン(Tarat Balazain)とカト・ポロザジュ(Kat Polozaj)という二冊の経典に記録されていた。
- 偏見
- 他の種族に対する態度や関心の度合いが氏族ごとに大きく異なっている。ハラドにはクインド(Cuind)やキン=ライといったアヴァリの氏族も暮らしていたが、人間とエルフが親しい間柄になることはなかったようである。また同じように、エレド・ララノールやエレド・ハムラルには黒巻毛族や鉄拳族のドワーフたちも住んでいたが、彼らとも交易以外の形ではそれほど頻繁に交流することはなかった。反対に、最南端の地のキラン人などはエルフの友人となり、積極的に交流を持っている。
- 言語
- ハラドリムのうち、比較的北方(近ハラド)に住むものはハラダイク語(Haradaic)、南方(遠ハラド)に住むものはアピュサイク語(Apysaic)という言語を主に使用する。
歴史 †
ヌーメノールの航海者たちが、始めてハラドの沿岸を訪れたとき、そこには黒い肌をした特異な風習を持つ人々が住んでいた。以来、ドゥーネダインはそうした人々を「南の人」を意味するカライ(Kharai)や「沿岸の人」を意味するサカ=ライ(Sakal-Lai)などと呼び、学者や知識人たちは彼らがどこから来た何者なのかについて考察した。その大方の見解は、彼らは第一紀の頃、影の支配下にあった東方に住んでいた人間アヴァリム(Avarim)の子孫で、その中でも悪しき力への信奉を拒み、第二紀の頃までに、定住に適さない南方まで逃れてきた者たちだろうというものであった。この見方がどこまで正確かは定かではないが、これらの民は人括りにアヴァリ語でハルネリム(Harnerim)またはナルネリム(Narnerim)と呼ばれた。時代が進むと、ヌーメノール人は次第に中つ国に定住するようになり、北のウンバールから、ベルラカール(Bellakar)、キアヤタンドール(Ciryatandor)、タニ・ハザド(Tani-Hazad)、南端のタントゥーラク(Tanturak)に至るまで、海岸沿いに数多くの植民地が築かれていった。それにより、長年原始的な石器文化の中で暮らしていたハラドの民の多くが、そうした植民地と交易品の取引を行うようになった。
第二紀の中頃から、自らの力へ驕りを覚えたヌーメノール人が、中つ国の民への圧制者へと変わり、植民地に対する支配体制が苛烈なものになるにつれて、多くの南方人がモルドールで台頭してきた冥王や悪に染まった人間たちの建てた国々の影響下に置かれることになる。これらの領域にはヌーメノール本国と、王に対して反旗を翻した植民地も含まれていた。サウロンから力の指輪を受け取り、下僕であるナズグールとなった3人のヌーメノール人の公子、エル・ムーラゾール、アドゥナフェル、アコーラヒルは元々、それらの領地の君主であった。また、4人目のナズグールは南方人で、インドゥアという名前のキラン人の貴族だった。また5人目のナズグールであるレンも、東夷とハラドリムの混血であるチャイルーザ人(Chailuzan)の魔術師だった。力を増したドゥーネダインの植民地は、次第にヌーメノール本国へ反発するようになり、最終的には多くの領域が宗主国から独立して黒きヌーメノール人の支配する領域となった。対して、カライの諸部族はハラドの内陸部の砂漠に領地を確立した。サウロンが弱体化すると、ハラドリムは短期間ではあったものの、自由を取り戻した。一方で、古い闇の国々の一部は冥王去りし後も、いくつかの地域が残り行き長らえていたという。
氏族 †
太陽の第一紀にヒルドーリエンを出て、パリソールを経由して南方に進出した民ナルネリム(Narnerim)を祖とする。そのうち北の方に住んだカライはゴンドールの先住民や褐色人の祖先であるダエンという民の一部と合流し、ハルザニ(Harzani)という近ハラドの住民となった。より南方のハラドワイスの民はアピュサン(Apysan)といい、ハルザニよりも肌が黒く、背も高かった。黄の山脈を挟んだ南側の地は中つ国の最南端地域(Utter South)で、ゴンドール人やアヴァリからはモルネダイン(Mornedain)やモラタニ(Moratani)などと呼ばれる氏族が住んでおり、彼らもやはり背が高く黒い肌をしていた。モルネダインは地域ごとにキラニ(Kirani)やトゥクタニ(Tukutani)という氏族に分かれており、西の半島に住む者たちはアピュサンの一部と交わり、アデナ(Adena)、ドレル(Drel)といったさらに細分化された部族に分かれていた。チュイの国々(Chyan Lands)に代表されるハラドの東部は山脈を挟んでリューンの平原と隣接しており、チャイルーザ人(Chailuzan)をはじめとする住民は、アピュサンと東夷の一派タラセリム(Taratherim)の混血であった。
- FarjimtとHarzani
- 第二紀の初めに近ハラドとその周辺に住むようになったグループ。沿岸に住んでいた西方系の人間ダエンの族に属する民、サカ=ライとの混血が進んだため、遠ハラドへ向かったナルネリムの従兄弟たちと比べると、比較的明るい肌をしている。定住した後は、黄金の人々(Golden people)を意味するハルザニという氏族となった。ハルザニは大河ハルネンの流域に沿って多くの国を建て、しばしばゴンドールの王たちと争う姿勢を見せた。国境ではハロンドールの領有権をめぐる扮装が頻発し、第三紀に入っても、ウンバール人の海賊行為がゴンドールを悩ませた。
ハルザニ系ハラドリムの分類 | |||||||||
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Narnerim | |||||||||
Farjim | |||||||||
Haruzani | |||||||||
Eraguk | Eastern Haruze | Arysis | Chellkar | Harzan | Kajah | Lurnas Akun | Pazarsan | Urewan | Umbarean |
Harwan | Jelt |
- Apysan
- ハラドワイスに住む、背が高く黒い肌をした人間。南方人の中では比較的ハドル家に近い血筋の者たちで、数多くの部族が広大な砂漠地帯に点在している。
アピュサン系ハラドリムの分類 | ||||||||
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Narnerim | ||||||||
Apysan | ||||||||
People of Far Harad | Chailuzan | |||||||
Bellakarani | Men of Bozisha-Miraz | Sandmen | Chyan | Siranian | ||||
Bellakze | Mardruak | Akuag | Ayten | Qarsag | Bausairin | Muranians |
- Moredain
- 黄の山脈を越えて、ハラドの最南端地域であるアルドール(Ardor)に入った人々。経済の基盤となる肥沃な土地に住んだため、古くから活発な農耕や商業を営み、各地に都市を築いて栄えていた。ヌーメノールの築いた植民地が多く築かれていた西部に暮らす部族の多くはドゥーネダインとの交易に従事していた。また、アルドール中部にすんでいたキランの民はアヴァリと親しい間柄にあって、彼らから知識を学んでいた。反対に、東部にあるムーマカンに住む人間たちの間には、早い時期からサウロンの息のかかった者たちがいて、南方における冥王の強力な同盟者となっていた。
モレダイン系ハラドリムの分類 | |||||||||||
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Apysan | |||||||||||
Moredain | |||||||||||
Sea Peoples | Kirani | Men of Tur Betak | Akanli | ||||||||
Adena | Anbalkkhorian | Drel | Khurn Nagla | Pel | Sorjan | Men of Koronande | Tuktani | Elornan | Mumakani | Tanturaki | |
Kharadunian | Etulian | Farijin |
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