スランドゥイル†
概要†
解説†
闇の森にある森エルフの王国の王。レゴラスの父。『ホビットの冒険』中では名前は出てこないが、13人のドワーフを牢に閉じこめたエルフ王とはこの人物である。
森エルフの中でも無類の酒好き。財宝にも目がなく、特に銀と白い宝石を好む。
『終わらざりし物語』によるとスランドゥイルの王国の民はシルヴァン・エルフだが、彼自身はシンダール・エルフであり、彼の宮殿の様式はドリアスのメネグロスに由来するものであるという。ただしスランドゥイル自身がドリアスに住んだことがあるかどうかははっきりしない。父の名はオロフェル。
自然石を刻み残した柱のたくさん立っている大広間に、エルフ王が、ほりものをほどこした木のいすにすわっていました。その頭には、木の実と赤い木の葉でできた冠がのっています。秋がもう来ていたのです(王は春になると、森の花々であんだ冠をかぶります)。手には、ほりものをしたカシの杖をもっています。*1
『終わらざりし物語』におけるスランドゥイルについての記述†
彼の父オロフェルはドリアス滅亡後に緑森大森林(後の闇の森)に落ち延び、アンドゥイン以東一帯のシルヴァン・エルフの王として認められるようになった。
最後の同盟の戦いにはオロフェルと共に森エルフの大軍を率いて参戦し、オロフェルの戦死後は元の3分の1にまで減少した自軍を引き連れて森へと帰還。父の跡を継いで森エルフを統治するようになった。
スランドゥイルはこの戦いで目にしたモルドールの恐怖を忘れることができず、その後も南の方角を望むたびにサウロンの再度の勃興を予感して慄いていたという。
『ホビットの冒険』におけるスランドゥイル†
宴会の人々のつづく列のまっさきにはボンブールが夢の話でのべたのとそっくりのかっこうで、森の王が、黄金色の髪の上に木の葉の冠をかぶって、すわっていました。エルフたちは、手から手へと、ごちそうをもった鉢をわたし、焚火をこえていったり来たりしています。たてごとをかなでる者もあって、多くの者がそれにあわせて歌をうたっています。みなかがやくような髪に、花をさしていますし、緑の宝石や白く光る石を、えりもとやバンドにきらめかせています。顔にも歌にも、うきうきする楽しさがあふれています。歌声は高く、澄んできよらかです。*2
ビルボ・バギンズと13人のドワーフは、闇の森の空地で森エルフ達を引き連れて狩りの宴会をしているスランドゥイルの姿を目撃し、食べ物を求めて(その度に幻のように消えうせてしまうにもかかわらず)三度も宴会の輪に乱入したことで、彼らの怒りを買ってしまう。
スランドゥイルはソーリンをはじめ13人のドワーフを宮殿まで連行して尋問。ソーリン達は財宝の分け前を要求されることを恐れて旅の目的を明かそうとしなかったため、怪しんだスランドゥイルは彼らを地下牢に閉じ込めた。ところが魔法の指輪の力でエルフの目を逃れていたビルボの手引きによってソーリン達は脱出してしまった。
やがてスマウグがバルドに討たれたとの報せが広まると、自らはなれ山の財宝を回収するために森エルフの軍勢を率いて出陣。
その途中で湖の町がスマウグに壊滅させられたことを聞くと、湖の人の窮状に同情して進軍を中断し、彼らが冬を越せるように援助した。そこからスランドゥイルとバルドは行動を共にして、はなれ山の財宝の回収を目指すことになる。
しかしスランドゥイルとバルドにとっては予想外なことにソーリン達は生きており、山の表門に障壁を築いて籠城の準備を進めていた。財宝の分け前を主張するバルドに対し、トーリンは彼が自分たちを牢に閉じ込めたスランドゥイルと一緒にいるのを見て態度を硬化させ、交渉は決裂。スランドゥイル達はやむなく山の表門を包囲してトーリンから譲歩を引き出すほかなくなってしまった。
とはいえスランドゥイルは財宝のために戦を起こすことまでは望んでおらず、バルドが先制攻撃をかけようとした時には彼を諫めて自陣が早まった行動を取らないよう抑え役に回り、ビルボが交渉打開のためにアーケン石をもたらした時には、ビルボの真価を見抜いて称賛した。
だがそうした願いもむなしく、ソーリンの救援にやってきたダーイン率いるくろがね連山のドワーフが包囲を強行突破しようとしたことでなし崩し的に戦闘に突入。さらにそこにゴブリンとアクマイヌからなる連合軍が襲来したことで事態は急変し、バルド、スランドゥイル、ダインの三者は一時休戦して共同戦線を張り、五軍の合戦へと展開していった。
合戦ではスランドゥイルの軍勢はからすが丘に布陣し、ソーリンの一行から追放されたビルボも彼の許に身を寄せていた。
合戦が勝利に終わると、財宝の分け前を手に入れたバルドからは友好の印としてギリオンのエメラルドを贈られた。またビルボからは、彼が宮殿に潜んでいたときに盗み食いを働いていたことを告白され、その償いとして銀と真珠の首飾りを贈られた。この正直かつ気高い申し出に対し、スランドゥイルはビルボを「エルフの友」と呼んで敬意を表した。
『指輪物語』におけるスランドゥイル†
スランドゥイルはガンダルフに協力し、アラゴルン二世が捕らえたゴクリの身柄を闇の森の王国で預かっていた。しかし第三紀3018年(大いなる年)の6月20日、サウロンが命じたオークの攻撃によってゴクリを逃がしてしまい、その申し開きを兼ねて息子のレゴラスを裂け谷へ派遣した。
指輪戦争ではドル・グルドゥルの軍勢と闇の森樹下の合戦を戦い、森は火災によってひどく破壊されたものの、最後には勝利を収めた。
エルフの新年の当日*3に、スランドゥイルはケレボルンと闇の森の真ん中で会見を行い、二人は闇の森をエリン・ラスガレンすなわち「緑葉の森」と改名し、スランドゥイルは闇の森山脈より北の森を自国領とした。
スランドゥイルとその民の森エルフたちは、第四紀に入ってからもエリン・ラスガレンで落ち着いて暮らしていたようである。
ランキン・バス版アニメ『The Hobbit』における設定†
エルロンド達とは異なり、一般的なエルフには見えない緑色の肌と毛髪をしたヒューマノイドとなっている。
映画『ホビット』における設定†
馬の代わりに、ギガンテウスオオツノジカと思われる鹿に乗り*4、戦う時は長刀の二刀流も使いこなす。永遠に続く命に倦み疲れていることを伺わせる、厭世的な発言が多い。映画設定における定命の種族との価値観の違いや溝を体現した人物。
スマウグ襲来前のエレボールを訪れ、スロールに謁見していた。だがスマウグが襲ってきたとき、スマウグによって森エルフ達が害される事を危惧し、闇の森の王国の軍勢をスマウグと戦わせずにエレボールのドワーフを見捨てた。これがソーリンの、エルフに対する不信の大きな理由となり、後々まで大きな禍根を残す。
またソーリンとの会話時、過去に龍と戦ったことがある旨の発言をしているが、いつ、どんな龍と戦ったかは不明。
原作とは異なり、(かつてスロールと会ったときなどに、ソーリンとも顔を合わせているためもあり)ソーリンの旅の目的に直ちに気がついている。
ソーリンの一行を捕らえたとき、エレボールの財宝の中にあるラスガレンの白い宝石を自分に渡すことを条件として、スランドゥイルはソーリン達に協力することを申し出るが、かつて自分たちを見捨てたスランドゥイルを信用しないソーリンはこの申し出を拒否。その結果ソーリン達はスランドゥイルによって、牢に入れられる形となっている。
シンダールである息子レゴラスの后にシルヴァン・エルフのタウリエルはふさわしくないと考え血統を気にする、エレボールのドワーフの財宝のなかにあった、本来自分たち一族伝来の品と主張するラスガレンの白い宝石を欲する、自国領の安全のことだけを考えるなど、シンゴルを連想させるキャラクター付けが行われている*5。
特に『決戦のゆくえ』では、同族の損害だけを恐れて五軍の合戦からの撤退を考えたほどの極端な孤立主義者として描かれているが、その理由はかつてグンダバドにおけるアングマールとの戦いで、妻を失ったことが原因であることが示唆されている。
また、闇の森に戻らず旅に出ることにしたレゴラスに対し、北方のドゥーネダインの族長であるストライダーと呼ばれる者を探すように助言している*6。
画像†
グッズ†
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