スマウグ †
概要 †
カテゴリー | 人名 |
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スペル | Smaug*1*2 |
異訳 | スモーグ |
その他の呼び名 | 黄金のスマウグ(Smaug the Golden) 悪竜スマウグ(Smaug the Dragon) おそろしきかの竜(Worm of Dread) 山の下の王(King under the Mountain) |
種族 | 龍 |
性別 | 男 |
生没年 | ?~†第三紀2941年 |
解説 †
詳細な来歴は定かではないが、ドワーフ繁栄の噂を聞きつけて第三紀2770年に灰色山脈からエレボール(はなれ山)に飛来し、山の下の王国と谷間の国を滅ぼした。そして両国の莫大な財宝のすべてを我が物とし、山の最も奥まった大広間に積み上げて寝床とする。このため山の周辺は竜の荒らし場と呼ばれる荒廃地と化した。
2941年、トーリン二世とその仲間達は財宝と王国を奪回するため、ガンダルフの助力を得てビルボ・バギンズを仲間に加え、エレボールへの遠征を決行した(『ホビットの冒険』)。
「おれのうろこは、
十重 のたて、また、歯はつるぎ、爪はやり、尾の一ふりは雷をおこし、つばさはあらしをよび、はく息は、すなわち死だ!」*3
能力 †
口からは炎を吐き、翼によって空を飛ぶことができる、金色がかった赤色の龍。邪悪かつ高い知能を持っており、言葉を話すことができる。
特に言葉巧みに相手を翻弄し、疑念を植え付けてまじないにかける力を持つ。一方でなぞなぞや言葉遊びの魅力に抗えないという性質もあった。だがひとたび怒れば凶暴性をむき出しにするため、愚弄するのは賢明ではない。
鱗は非常に硬く、通常の攻撃は全く寄せ付けない。腹の側は龍族の宿命として柔らかかったが、自分でもその弱点を承知しており、沢山の金と宝石をこびりつかせて固めることで鎧代わりにしていた。このため完全無敵に思えるが、この財宝の鎧には左胸に一箇所ほころびがあり、唯一の弱点となっていた。
その貪欲かつ執念深いことは、はなれ山の莫大な財宝の一つ一つを完全に把握しているほどで、ビルボが金のカップを盗むとそのことに即座に気づき、怒り狂った。
聴覚に優れ、眠っていても棲家に近づく者の気配を聞きつける。嗅覚にも優れ、ドワーフ・人間・エルフなどを匂いで嗅ぎ分けることができるが、出会ったことのないホビットの匂いはわからなかった。
『ホビットの冒険』 †
ビルボは魔法の指輪の力で姿を隠し、財宝の中から金のカップを一つ盗み出すことに成功したが、一行の気配と嗅ぎ慣れない匂いによって目覚めたスマウグは即座にカップが無くなっていることに気づき激怒。山の周囲を旋回して荒れ狂うが、やがて夜が明けると静かに大広間に戻り、半ば眠ったふりをして「どろぼう」が再びやってくるのを待ち受けた。
再びビルボが広間に降りてくると、スマウグはビルボに話しかけ、姿を現すよう誘いかけると共にドワーフへの不信を植えつけて彼をまじないにかけようとする。しかし龍の手管を聞き知るビルボは謎めいた言い回しによって上手くスマウグの追及をかわし、逃げおおせることに成功した。この時ビルボはスマウグの鎧にほころびがあることを発見したが、スマウグもまたビルボとの問答から、彼らがエスガロスから来たに違いないとの確信を抱く。
やがて音もなく外に出たスマウグは、はなれ山の隠し戸の入口付近を強襲して破壊。さらに報復を加えるべく、火柱を上げてエスガロスを襲撃した。
その硬い鱗と財宝の鎧のため、エスガロスの人々が放つ矢はスマウグに全く傷を与えることができず、スマウグは思うがままに上空を飛び回っては人々をなぶりものにし、火炎を浴びせかけて町を焼き払った。だが、ビルボが鎧の左胸に弱点があることを話しているのを傍で聞いていたツグミが、それを弓の名手バルドに伝える。そのため最後にバルドが放った黒い矢の一射によって仕留められた。
スマウグの落下と断末魔のあがきによってエスガロスは完全に破壊された。
スマウグの死後 †
スマウグの死によってはなれ山に残された財宝を巡り、トーリンらドワーフと、湖の町の人間・闇の森のエルフが対立することになる。そこにオーク(ゴブリン)とワーグが加わったことで五軍の合戦が引き起こされた。
その後「竜の黄金病」にとりつかれた湖の町の統領は、バルドから贈られたはなれ山の黄金を持ち逃げし、仲間に見捨てられて荒野でのたれ死にしたという。闇の森の王国の援助もあってエスガロスは再建されたが、スマウグの死体を恐れて、以前あった場所よりも北の湖面に移った。かつて町があった浅い水域では、天気が穏やかな日には杭の残骸の間にスマウグの巨大な骨が見えたという。その鎧であった財宝は共に水底に眠っていたが、龍への恐れから、取りに行く者は誰もいなかった。
『追補編』および『終わらざりし物語』の記述によると、指輪戦争の前にスマウグが倒されたのは幸運であり、もしそうでなかったらサウロンに利用されたスマウグがエリアドールを席巻し、裂け谷をも襲撃していたかもしれないとガンダルフは語っている。
画像 †
グッズ †
備考 †
出自について †
スマウグの出自は灰色山脈から飛来したこと以外は不明であるが、スマウグ自身が「エレボールを襲撃した時は、まだ若く柔だったが、今は古く強い」という旨の発言をしているため、第三紀における龍の根城として知られていたヒースのかれ野で生まれた龍であろうと推測される。
参考として龍の祖グラウルングは未成熟の状態から完全に成熟するまでに195年かかっているが、スマウグがエレボールを襲撃してから斃されるまでが171年であるため、おおよそ同じ期間で成長したことになる。
大きさについて †
トールキンがスマウグの大きさについて言及した資料は残されていない。数少ない描写の一つは、「ドアの高さが1.5m以上、通路の広さは3人が並んで歩けるほど」とされる秘密の入口は、エレボールを襲撃する以前の若いスマウグにとっても小さすぎ、成長したスマウグはその戸口に鼻先を突っ込むことしかできなかった、というものがある。
トールキン自身が描いた黄金を抱いて眠るスマウグの挿し絵からは20~25m程度に見えるが、この絵についてトールキンは「スケールは正確ではない」と述べているため、ここからスマウグの大きさを推し量るのは困難である。
同じくトールキン自身が描いた「スマウグの死」のイラストでは上述の数値より巨大に見えるが、やはりスケールが正確とは限らないため参考にするのは難しい。
盗人がカップを盗む †
龍の寝床に入り込んだ盗人が金のカップを一つ盗み出したために龍が怒り周辺に破壊をもたらすという展開は、トールキンの専門である古英語の叙事詩『ベーオウルフ』のエピソードを思わせる。
1938年に実際にそのことを尋ねた質問に対し、トールキンは以下のように答えた。
『ベーオウルフ』はもっとも大切な種本のひとつです。けれども、執筆の過程で意識的に心においていたということはありません。盃を盗む場面も、あの状況の中から自然に(そしてほとんど必然的に)出てきたものです。あの時点で、あれ以外のかたちで物語を進めるのは困難です。『ベーオウルフ』の作者だって同じことを言うだろうと思います。*4
Iron Crown Enterprisesによる設定 †
アンカラゴンの直接の子供たち内の一匹で、第一紀の怒りの戦いを生き延びて灰色山脈に逃れたとされる。また、スロクマウ(Throkmaw)、ルインガルス(Ruingurth)、ウトゥムコドゥール(Utumkodur)といった兄弟たちが登場する。
姉に当たるウトゥムコドゥール(Utumkodur)はスマウグと大きさも力もスマウグと同等で、第二紀の初めに東方に向かい、そこに住む人間に崇拝されたという。詳細はウォマウ、ウォマワス・ドラスを参照。
ジーン・ダイッチ版アニメ『The Hobbit』における設定 †
1966年製作の短編アニメ。この作品は所々の設定が原作から大幅に変更されており、スマウグもトーリンによる蔑称である「スラグ」が名前であり、「古代の地球の化け物」とされている。ビルボ、トーリンの一行、プリンセス・ミカが全員でバリスタを引き、矢先にハート型のアーケン石を装着し、スラグの寝ているところを射抜き倒した。
ランキン・バス版アニメ『The Hobbit』における設定 †
1977年製作のTVアニメ映画。『キングコング』と共に、ピーター・ジャクソンが映画監督を目指すきっかけの一つとなったとされる本作のスマウグは、毛や耳を持つ哺乳類のような頭部をしており、たくましい胴体を持つ。アラン・リーによるイラストのように目からは光を放つ他、その涎も高温であり、宝物が溶けていた。
この作品はスタジオジブリの前身であるトップクラフトが制作しているため、「毛が生えているのはアジアの龍の影響も入っているからではないのか」という推測がなされたこともある。*5
映画『ホビット』における設定 †
俳優 | ベネディクト・カンバーバッチ(モーションキャプチャ及び声) |
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日本語吹き替え | 大友龍三郎 |
カンバーバッチは声を担当しただけでなく、モーションキャプチャで表情を取り込み、CGで描かれるスマウグの表情の参考にされているほか、「CG制作者にインスピレーションを与えたい」と、全身でスマウグを表現しつつ収録が行われた。また、ニュージーランドに大型の爬虫類が存在しないため、制作チームはオーストラリアに赴いてアニメーションの参考にしたとしている。
大きさについては詳しく言及されておらず、場面によっても描写が変動するため諸説ある:54m (イラストが描かれたニュージーランド航空の航空機そのものの機体長)、全長61.8m弱で親指から翼端まで23m以上 (エレボールの金貨一枚の直径からの推定値)、全長64m弱~94m以上 (ビルボと比較した推定値)。*6
『竜に奪われた王国』のいくつかの制作ドキュメンタリーによれば、「ボーイング747の2倍の全長と翼開長」または「ボーイング747の2機分より大きい」とされており、(ボーイング747の形式によって変動するが) 全長130m~152m、片翼は少なくとも60mから70m以上あると思われる。
劇場公開時の『思いがけない冒険』では、トールキンの絵と同じく、四本足でさらに翼があるデザインの予定だったが、二作目となる『竜に奪われた王国』では前足と翼が一体化したデザインに変更されており、『思いがけない冒険』でスマウグの前足が一瞬描かれたシーンも、DVD/BD版では翼に修正されている。これは、原作における「長虫」という表現を強調するためだと言及されている。
原作では、宝石で固め損ねたとされている弱点の左胸は、本来あるべき鱗が谷間の国を襲った際に、ギリオンの黒い矢を受けて一枚だけ剝がれたという設定になっている。
口から吐く火炎の描写も、質量を伴うナパームか溶岩のような状態 (着弾時に爆発する場合としない場合がある)、通常の火炎、それらの中間の液体ような状態と、場面によって違いが見て取れる。なお、ベネディクト・カンバーバッチはスマウグに関するコメントで「ナパーム」という表現をよく使用している。*7
劇中での活躍 †
『竜に奪われた王国』でトーリンたちは、エレボール内の溶鉱炉などを使ってスマウグと戦うが倒すことはできず、スマウグはエスガロスの人々を巻き込んで殺すために飛び立っていった。
『決戦のゆくえ』では、はがれていた鱗をバルドに見つけられ(ビルボが見つけた弱点をツグミによって知らされる描写はなく、ギリオンの矢が鱗をはぎ取ったことが人々に伝承されていた形となった)、黒い矢によって仕留められる。だが、その後のトーリンの財宝に対する執着・言動に、スマウグの呪いのような影響が現れていることが強く示されており、トーリンの声の一部が、スマウグの声と合成されている場面もある。
余談 †
「今までに誰も見たことのない竜を作る」というのが根幹にあったアイディアであるらしく、コンセプトの段階ではバルログのようなものも含めた様々なデザインが見られた。完成作品のデザインにも、世界中の龍にまつわる意匠が込められているという。
また、もっと巨大で恐ろしい姿にする予定もあったが、キャラクター性を深めるために現在の姿に落ち着いた、そしてこれはゴラムにも取られた措置である、と劇場公開直前のコメンタリーにて言及されている。
また、アメリカのトーク番組「コルベア・リポート」にスマウグ「自身」が出演した際*8はひょうきんな姿を見せており、トールキンの名前を聞いても分からず、他の映画のドラゴン達について述べたり、「原作の『ホビット』をまだ読んでいないからネタバレは止めてくれ」などのコメントをしていた。また、スマウグ「自身」がアフレコしている姿も公開されていた。
ベネディクト・カンバーバッチは、スマウグについて「セクシー」だとコメントしている。
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