シルマリルの物語 †
概要 †
解説 †
『ホビットの冒険』『指輪物語』の前史となる本。トールキンはこれを完成する前に他界。死後に息子のクリストファーの編集を経て、1977年に出版された。
作中では、唯一なる神エルによる地球(アルダ)の創造、アルダの支配権を争うヴァラールとメルコールの戦い、エルフ、人間、ドワーフの誕生、エルフの中つ国から至福の国への移動(大いなる旅)、シルマリルを巡るノルドール・エルフの中つ国帰還とベレリアンドでの戦い(宝玉戦争)、ベレンとルーシエンの物語(レイシアン)、トゥーリン・トゥランバールの闘い(ナルン・イ・ヒーン・フーリン)、エアレンディルの航海までの第一紀の物語、ヌーメノールの繁栄と没落(アカルラベース)、指輪戦争に至るまでの経緯(第二紀と第三紀)、そして索引とエルフ語に関する資料が収録されている。エルフ、ドワーフ、人間のことはあるが、ホビットのことにはほとんど触れられていない。
『指輪物語』序章にある、(西境の赤表紙本の写本のうち)フィンデギルの筆写した写本の一番重要な点は、この本にだけ、ビルボが「エルフ語から翻訳したもの」のすべてがのせられていることである。その三巻は、一四〇三年から一四一八年の間に、ビルボが裂け谷であたれるだけの資料にあたり、聞ける限りのひとに聞いて書いた、博識達文の著作であった。とはこの本の事と考えられ、ビルボ・バギンズの編纂とフロド・バギンズの整理によって当世に伝えられたという形になっていると思われる(ただし先述の通りトールキンはこの本を完成させる前に死去したため、その構想はやや不完全な物となっている)。
この本に採用されなかったトールキンの原稿や草稿などは、『終わらざりし物語』や『The History of Middle-earth』などに収録されている。またこれらの本の記述をクリストファー・トールキンが纏めて再編集し、物語の一部分をピックアップした『The Children of Húrin』『ベレンとルーシエン』『The Fall of Gondolin』がある。
目次 †
- アイヌリンダレ (AINULINDALË)
- アイヌアの音楽 (The Music of the Ainur)
- ヴァラクウェンタ (VALAQUENTA)
- クウェンタ・シルマリルリオン――シルマリルの物語 (QUENTA SILMARILLION The History of the Silmarils)
- 第一章 世の始まりのこと (Of the Beginning of Days)
- 第二章 アウレとヤヴァンナのこと (Of Aulë and Yavanna)
- 第三章 エルフたちの到来と虜囚となったメルコールのこと (Of the Coming of the Elves and the Captivity of Melkor)
- 第四章 シンゴルとメリアンのこと (Of Thingol and Melian)
- 第五章 エルダマールとエルダリエの公子たちのこと (Of Eldamar and the Princes of the Eldalië)
- 第六章 フェアノールと鎖から解き放たれたメルコールのこと (Of Fëanor and the Unchaining of Melkor)
- 第七章 シルマリルとノルドール不穏のこと (Of the Silmarils and the Unrest of the Noldor)
- 第八章 ヴァリノールに暗闇の訪れたこと (Of the Darkening of Valinor)
- 第九章 ノルドール族の逃亡のこと (Of the Flight of the Noldor)
- 第十章 シンダールのこと (Of the Sindar)
- 第十一章 太陽と月とヴァリノール隠しのこと (Of the Sun and Moon and the Hiding of Valinor)
- 第十二章 人間のこと (Of Men)
- 第十三章 ノルドール族の中つ国帰還のこと (Of the Return of the Noldor)
- 第十四章 ベレリアンドとその国土のこと (Of Beleriand and Its Realms)
- 第十五章 ベレリアンドのノルドール族のこと (Of the Noldor in Beleriand)
- 第十六章 マイグリンのこと (Of Maeglin)
- 第十七章 西方に人間の来住せること (Of the Coming of Men into the West)
- 第十八章 ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと (Of the Ruin of Beleriand and the Fall of Fingolfin)
- 第十九章 ベレンとルーシエンのこと (Of Beren and Lúthien)
- 第二十章 第五の合戦、ニアナイス・アルノイディアドのこと (Of the Fifth Battle: Nirnaeth Arnoediad)
- 第二十一章 トゥーリン・トゥランバールのこと (Of Túrin Turambar)
- 第二十二章 ドリアスの滅亡のこと (Of the Ruin of Doriath)
- 第二十三章 トゥオルとゴンドリンの陥落のこと (Of Tuor and the Fall of Gondolin)
- 第二十四章 エアレンディルの航海と怒りの戦いのこと (Of the Voyage of Eärendil and the War of Wrath)
- アカルラベース (AKALLABÊTH)
- ヌーメノールの没落 (The Downfall of Númenor)
- 力の指輪と第三紀のこと (OF THE RINGS OF POWER AND THE THIRD AGE)
- 力の指輪と第三紀のこと
標題紙のテングワール †
ð taləs v ð first ajə ƕen morgoþ dwelt in middlə earþ
nd ð elvəs madə wor upin him for ð rekoverī v silmarils
to ƕich arə appended ð downfall v numenor nd ð historī v
riŋs v powr nd ð þird ajə in ƕič ðesə taləs komə to ðeir endThe tales of the First Age when Morgoth dwelt in Middle-earth and the elves made war upon him for the recovery of the Silmarils, to which are appended the Downfall of Númenor and the history of the Rings of Power and the Third Age in which these tales come to their end
訳し方については、フェアノール文字の項を参照。
日本語版について †
『ホビットの冒険』『指輪物語』の翻訳を行った瀬田貞二が他界したため、指輪物語で瀬田を手伝った田中明子が翻訳を勤めた。
日本では、2003年に本書の新版が出版された。旧版では上下別巻だったものが、新版では一冊に纏められた。新版では原書のSecond Editionを底本にしており、冒頭にトールキンの手紙(『The Letters of J.R.R.Tolkien』Letter131)の文章が入っているほか、クリストファー・トールキンによる修正も入っている。またエルフ語の日本語表記も、より正しい発音に近いと思われる片仮名表記に改められた。
映像化について †
何度か映画化など、映像化の企画は上がっているが、権利を持つクリストファー・トールキンが許可していないため、全て実現していない。
コメント †
最新の10件を表示しています。 コメントページを参照