シルマリル†
概要†
カテゴリー | 物・品の名前 |
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スペル | Silmaril*1 |
その他の呼び名 | 大宝玉(Great Jewel)、三つの宝石(Three Jewels)、太古の大宝玉(Primeval Jewels)、フェアノールの宝玉(Jewels of Fëanor) |
解説†
フェアノールが作った三つの大宝玉。
悪に汚されたことのない始原の光が込められており、上古の宝玉戦争の中心となった。
外見はダイヤモンドの結晶の如くに見え、しかも金剛石より堅固で、いかに激しい力を加えようと、これを傷つけ、あるいは毀ち得る者は、アルダの世界広しといえども、いなかった。しかし、この堅固な結晶は、シルマリルにとっては、イルーヴァタールの子らにとっての肉体の如きものであった。即ち、内なる火を入れる家なのである。内なる火はその中にあり、しかもそのすべての部分にあり、その命なのである。そして、シルマリルの内なる火は、ヴァリノールの二つの木の混ざり合う光からフェアノールが作り上げたもので、二つの木はとうに枯れ果て、もはや輝かないのに、その光は、シルマリルの中に今なお生きているのである。*2
シルマリルの創造†
二つの木の時代にフェアノールによって作られる。
シルマリルには、月と太陽が作られるより前に至福の地アマンを照らしていた二つの木(テルペリオンとラウレリン)の生きた光が不滅のものとなって込められていた。そのため、たとえ地の底の暗闇に置かれたとしても天空の星々の如くに自ら光り輝き、また他の光を受ければそれを喜んで見事な光彩を照り返した。シルマリルの命にあたるその光は、ダイアモンドの結晶のようでありながらダイアモンドよりも硬く、何人も傷つけることの出来ない器を肉体として宿っていたが、これがいかなる物質から造られていたのかはフェアノールの他に知り得る者はいないという。
フェアノールの最高傑作であり、その美しさに驚嘆しない者は一人としていなかった。
シルマリルはヴァルダによって聖められ、死すべき者、不浄の者、悪しき者が手にするとその身を焼かれるようにされた。
またマンドスは、大地も、海も、空気も、アルダの運命はすべてシルマリルの中に閉じ込められていると予言した。
モルゴスによる強奪†
大敵メルコールはシルマリルの輝きを渇望し、ウンゴリアントと共謀して二つの木を殺害すると、フォルメノスを急襲してシルマリルを奪い取る。彼はそのままアマンから中つ国に逃亡し、かつての拠点のひとつアングバンドを再建すると、シルマリルを鉄の冠に填め込んで頭上に戴き「世界の王」を僭称した。
二つの木が害された時、ヤヴァンナはシルマリルに込められた光さえあれば瀕死の二つの木を蘇生させることができると訴えた。だがフェアノールは、自らが魂を込めて作り上げた作品を進んで差し出すことを拒否する。その直後にフォルメノスよりシルマリル強奪の報がもたらされたため、いずれにせよ二つの木が救われることはなかった。
この時、シルマリルが奪われると共に父フィンウェが殺害されたことを知ったフェアノールは、メルコールを「黒き敵」の意であるモルゴスと呼んだ。さらに復讐とシルマリル奪回を果たすため中つ国に帰還するようノルドール族の大部分を扇動し、七人の息子と共にフェアノールの誓言と呼ばれる恐るべき誓言を立てた。フェアノール自身は中つ国に帰還して間もなくダゴール=ヌイン=ギリアスで戦死したが、誓言は後々まで禍根を残すことになる。
ベレリアンドにそれぞれ王国を築いたノルドールの公子達は、他のエルダールやエダインとも協力してモルゴスと戦ったが、アングバンドの守りを打ち破ることはできず、一つまた一つと滅ぼされていった。
ベレンとルーシエンによる奪回†
アングバンドの地の底で、モルゴスの鉄の王冠に守られていたシルマリルだが、その一つを人間の勇士ベレンとエルフの乙女ルーシエンが取り戻すという功業を成し遂げる。このことはレイシアンに謳われている。
ベレンはベオル家の最後の世継であり、ルーシエンはシンダールの王シンゴルと、マイアのメリアンとの間に生まれた娘であった。
最愛の娘が死すべき運命の人間の男と恋に落ちたことを知ったシンゴルは、ベレンにモルゴスの冠からシルマリルを奪って、予のところに持って参れ。その上で、ルーシエンが望むなら、お前との婚約を許してやってもよい。と難題を課し、暗にベレンを葬り去ろうとする。
しかしベレンはエルフ王フィンロドやヴァリノールの猟犬フアンらの助けを得て、ついには彼を追ってやってきたルーシエンと連れ立ってアングバンドに潜入し、モルゴスの玉座まで辿り着く。そこでルーシエンが眠りの魔法を使ってモルゴスと召使達を眠らせている間、ベレンが短剣アングリストを使って鉄の冠からシルマリルの一つを取った。この時、ベレンの手は焼かれなかった。だが二人がアングバンドから脱出する時、巨狼カルハロスが立ち塞がって、ベレンの右手ごとシルマリルを飲み込んでしまう。
体内をシルマリルに灼かれて狂乱したカルハロスはベレリアンドに恐るべき禍をもたらしたが、最後にはシンゴルとベレンらの狼狩りに同行したフアンと相打ちになって倒され、シルマリルはその体内から取り出された。カルハロスの毒牙で致命傷を負ったベレンはあらためてシルマリルをシンゴルに捧げて息絶えた。こうしてベレンに課された難題は成し遂げられる。
この後、死んだベレンを追ってマンドスの館まで赴いたルーシエンは、自分の不死の命と引き換えに、ベレンと共に中つ国へと帰還する。二人は死すべき運命の人間としてトル・ガレンの島に住まったが、取り戻されたシルマリルの一つはシンゴルの手許に残された。
奪回されたシルマリルを巡る悲劇†
だが奪回されたシルマリルを巡ってフェアノールの呪われた誓言が発動することになる。
フェアノールの息子たちは高圧的な言葉でシルマリルを引き渡すようシンゴルに要求したが、シンゴルはこれを拒否。シンゴルは次第にシルマリルに魅了され、これをいつまでも自分の手許に置いておきたいとの思いを強くしていった。
やがてシンゴルの許に首飾りナウグラミールがもたらされると、シンゴルはシルマリルとナウグラミールを一つにすることで、世に比類なき宝を作り出そうと考える。だが細工を依頼されたノグロドのドワーフたちもまたシルマリルに魅了された。シンゴルとドワーフはシルマリルの填め込まれたナウグラミールを巡って諍いを起こし*3、ドワーフたちはシンゴルを殺してついには宝を奪い取った。
これを知ったベレンは緑のエルフらを率いて帰路を急ぐドワーフたちを待ち伏せし、シルマリルの填め込まれたナウグラミールを奪い返した。(サルン・アスラドの合戦)
ベレンはルーシエンのためにこれをトル・ガレンに持ち帰った。そのため二人が暮らす地は束の間ではあったが、シルマリルによって増したルーシエンの力によって、ヴァリノールと見紛う程に美しい地になったという。
ルーシエンが生きている間は、フェアノールの息子たちもあえて手出しをしようとしなかった。だがベレンとルーシエンが死に、ドリアスを再建しようとしていた二人の息子ディオルの許にシルマリルが送られると、フェアノールの息子たちは再びシルマリルの引き渡しを要求する。これにディオルが返答しなかったため、フェアノールの息子たちはドリアスを襲撃してこれを滅ぼし、ディオルを殺害した。
しかしシルマリルはドリアスの遺民が持ってシリオンの港へ逃れ、その中にはディオルの娘エルウィングがいた。
エアレンディルの航海と、星になったシルマリル†
やがてベレリアンドの自由の民の王国はすべてモルゴスに滅ぼされ、シリオンの河口付近のわずかな地が最後の避難所として持ちこたえていた。
ゴンドリンからこの地に逃れてきた半エルフのエアレンディルはかれらの主君となり、ドリアスから逃れてきた半エルフのエルウィングと結婚。シルマリルも彼の手に渡る。エアレンディルの持つシルマリルの力により、この地には祝福と癒しがもたらされたという。
エアレンディルは優れた航海者となり、中つ国のエルフと人間への慈悲と助力を請うため、ついに西方のアマンへ船出したが、エルウィングは留守を守っていた。
この間にフェアノールの息子たちから再びシルマリルを引き渡すよう要求があったが、エルウィングとシリオンの港の民はシルマリルを手放そうとはせず、フェアノールの息子たちは今度はシリオンの港を襲撃してこれを滅ぼした。エルウィングはシルマリルを抱えて海に身を投げた。
だがエルウィングはウルモの手によって波間から抱き上げられ、白い鳥の姿に変えられてエアレンディルの乗る船ヴィンギロトへと辿り着く。シルマリルの光に導かれたヴィンギロトはヴァリノール隠しを突破してアマンに到達し、エアレンディルによるヴァラールへの慈悲と助力を請う願いは聞き届けられた。
ただしエアレンディルは中つ国に戻ることは許されず、ヴィンギロトに乗って世の終わりまで天空を航行する運命が課せられ、彼の持つシルマリルの光は中つ国の民に希望を与える明星として空に輝くことになった。
残された二つのシルマリルの運命†
残った二つのシルマリルはモルゴスの手許に残っていたが、怒りの戦いでモルゴスが滅ぼされると鉄の冠から取り外され、エオンウェが預かった。
フェアノールの息子たちの生き残りであるマエズロスとマグロールは、残り二つのシルマリルを要求したが、エオンウェはシルマリルに対する彼らの所有権はフェアノールの誓言による数々の凶行によってもはや消滅したと伝え、二人にヴァリノールに戻って裁きを受けるよう命じた。マエズロスとマグロールは彼ら自身倦み疲れていたが、なお誓言に呪縛されていたため、エオンウェの営舎に忍び込み、衛士を殺してシルマリルを盗み出そうとした。彼らの行いはその場で見咎められたが、エオンウェは二人を殺すことを禁じたため、マエズロスとマグロールは戦わずして遠くへ逃れ、銘々が一つずつシルマリルを取った。
だが彼らはすでに正当な所有者とは認められず、シルマリルは彼らの手を焼いた。マエズロスは絶望してシルマリルを抱えたまま火の燃え盛る大地の裂け目に身を投じて死に、マグロールはシルマリルを海中に投じた後、海辺をさまよいながら苦しみと悔恨の歌を歌い続け、二度とエルフの間には戻らなかったという。
かくてシルマリルは一つは天空に、一つは世界の中心に燃える火の中に、そして一つはわたつみの深き底に永住の場所を見出し、いつの日か世界が造り直される時まで再び一つ所に集まることはなくなった。
その後のシルマリルの光†
今となっては、シルマリルの輝きはエアレンディルの星にのみ見出される。
『指輪物語』でフロド・バギンズがガラドリエルから贈られた玻璃瓶は、水鏡に映じたエアレンディルの星の輝きを集めたものであり、つまりシルマリルの輝きである。
「おや、旦那、おら、今まで一度も考えつかなかったな! おらたちの持ってるのは――いま持ってるのはそれの光の一部ですだよ、奥方から旦那がおもらいになったあの星の玻璃瓶にはいってるのは! おやおや、考えてみれば、おらたちもまだ同じ話の中にいるっちゅうこってすだ。話はまだまだ続いてますだねえ。えらい話というのはおしまいにならないんですかね?」
「そう、お話としては決しておしまいにならないね。」と、フロドがいいました。「だけどその中の人物たちは登場してき、やがて自分の役割がすむと行ってしまうんだよ。 … 」*4
第三紀の終わりに指輪所持者たちがアマンへ船出する時、フロドは玻璃瓶を携えて行き、見送るサムたちの目からは船上にある玻璃瓶の光がちらちらと明滅し、やがて水平線に消えていくのが見えたという。
コメント†
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