ゴクリ

概要

カテゴリー人名
スペルGollum
異訳ゴラム
その他の呼び名スメーアゴル、スメアゴル(Sméagol)
こそつき(Slinker)
くさいの(Stinker)
種族元来ホビットストゥア
性別
生没年第三紀2440年付近?*1~†3019年3月25日
不明
兄弟不明
配偶者なし
なし

解説

ゴクリ*2とはいつも喉を鳴らしていることに由来する通称で、本名はスメーアゴル*3。スメーアゴルの名は、時に彼本来の(善良な)性質を表す時に、ゴクリとは分けて使われることもある。サムワイズ・ギャムジーは「スメーアゴル」のほうをこそつき、「ゴクリ」のほうをくさいのと呼んで区別した。
がりがりに瘦せて老いているが、生命力だけはぎらぎらしている哀れな生き物として描写されている。

ホビットの冒険』において描かれている、ビルボ・バギンズが手に入れる前に一つの指輪を持っていた生物であり、続編の『指輪物語』では、指輪を滅びの山へと持っていくフロド・バギンズ達の後をつけ回し、紆余曲折の末、旅に同行することになった。

「sss...」と摩擦音を強調した喋り方をし、これは邦訳ではハ行がサ行に置き換わった口調として翻訳されている(例、いとしいひと→いとしいしと)。また孤独な生活のため、いつも自分自身に語りかけるような喋り方をし、自分のことを半ば指輪と同一視して一人称には「わしら(we)」を使用する。ただしこれらの特徴は、前述の「スメーアゴル」の人格が優位な時にはなりをひそめることがあった。
全身がぬらぬらしたものに覆われた黒っぽい小さな生き物で、手足には水かきがあり、カエルやイモリのように岩壁に垂直に張り付くことができる。飛び出てうるんだ目は普段は青色をしているが、怒りなどで感情が高ぶると緑の炎が灯ったように見える。
生の魚を特に好んで食べる。しかし食べられるものなら何でも喜んで食べるようで、虫や小動物はおろか、オークホビットまでも餌食にしようとする。太陽のことを「黄色い顔」、のことを「白い顔」と呼んで忌み嫌い、昼も夜も光を避けて行動するのが常であった。

一見弱々しい外見とは裏腹に、油断のならない危険な存在であり、獲物に忍び寄っては強い力で首を絞め上げ、息の根を止めることを得意とする。
性質は険悪で、生き延びるためなら罪を犯すことにも誓いを破ることにも良心の呵責を感じない。特に「いとしいしと」(一つの指輪)にまつわることには恐るべき執念と意志の力を発揮する。また、レンバスヒスラインのロープ、エルフのマントなど、エルフにまつわるものには強い拒否反応を示す。
その一方で、かつての善良だった頃の性質を完全に失ってしまったわけではない。

生い立ち

「わしには悲しい話に思える。」と、魔法使はいいました。「そういったことは、他の者にだって起こりえたじゃろうよ。わしの知り合いのホビットたちにだって、な。」*4

スメーアゴルは、アンドゥイン上流のあやめ野の近くに住んでいたストゥア族に近縁のホビットであった。
第三紀2463年頃、親族で友人であるデーアゴルと釣りにでかけ、そこでデーアゴルが川底から一つの指輪を発見する。するとスメーアゴルは直ちに指輪の魔力に捉えられ、その金の指輪を「誕生日の贈り物」として自分に渡すよう要求。断られると、デーアゴルを絞め殺して指輪を奪い、死体を隠した。

ほどなくして、その指輪をはめると自分の姿が見えなくなることに気付くと、元来の詮索好きな気質を増長させて仲間の秘密を嗅ぎ回るようになる。そのため一族から忌み嫌われ、いつも喉を鳴らすようになった様子からゴクリと呼ばれるようになった。
やがて同族から追われたゴクリは、太陽の光から逃れるためと「根源にあるでっかい秘密」を求めて2470年頃、霧ふり山脈の地下に潜入し、地底湖を見つけてそこに棲み着いた。

すでに精神の大部分を指輪に食い尽くされていたゴクリは、それ以上新たなことを行う気力が残っておらず、地底湖に棲息する目のない魚を捕らえて食べては、実に600年近くもの歳月を暗闇の中で生き続けた。やがて洞窟の上方にゴブリン町が築かれ、オークなどが迷い込んでくるようになると、それすらも襲って食べるようになる。
彼は孤独と良心の呵責から絶えず自分自身と指輪に向かって話しかけるようになり、指輪を手に入れた一件についても「誕生日の贈り物」として族長であった祖母がくれたのだという嘘の話をでっち上げ、自分でもそれを信じ込むようになった。

ホビットの冒険』でのゴクリ

深い地のおくの、この暗い水のほとりに、年よりのゴクリというものが住んでいました。これがどこから来たのか、だれなのか、どんなやつなのか、なにもわかりません。それはただ、ゴクリでした。二つの丸くて青い大目玉をのぞけば全身くらやみのようにまっ黒でした。*5

2941年、ゴブリン町から逃げ出して地底湖へ迷い込んだビルボ・バギンズが、ゴクリと遭遇する。
ゴクリはビルボの持つエルフの短剣を恐れたのと、その前にゴブリンの子供を捕食してそれほど空腹ではなかったために、彼に話しかけ、成り行きからなぞなぞ遊びでゴクリが勝ったらビルボを食べ、ビルボが勝ったらゴクリが彼を洞窟の出口まで案内するということになった。
ビルボとなぞなぞ遊びをする内に、かつてホビットであった頃の記憶が蘇ってきたゴクリはイライラを募らせ、最終的に勝負に負けてしまったことでその怒りは頂点に達する。ゴクリはビルボを裏切って彼を食おうとするが、その時になって自分が指輪を失くしてしまったことに気付く。

半狂乱の末、ビルボがそれを手に入れた可能性に思い至ったゴクリはいよいよ怒り狂い、逃げたビルボを追跡して洞窟の出口へ向かったが、その後ろを、偶然指輪を指にはめて姿が透明になっていたビルボがつけていた(ゴクリはビルボの存在に気づかず、彼を追跡しながら指輪の秘密を口走ってしまい、そのためビルボは指輪の透明になる力を知ることになる)。
洞窟の出口にいたる道で待ち伏せするゴクリを、ビルボは短剣で殺そうという誘惑に駆られるが、姿が見えない自分の有利と、ゴクリの哀れな様子から思い止まり、危険を冒してゴクリの上を飛び越えて脱出することを選んだ。

ビルボに指輪を奪われて逃げられたことを悟ったゴクリは、「どろぼう」の「バギンズ」をあらん限り呪詛して生き続けることとなった。

『ホビットの冒険』から『指輪物語』までのゴクリ

さんざ蹴とばされ、穴の中に追いやられ、あげくの果ては大事なものを強奪される、こんな目にあって黙って我慢してられるもんかどうか、見てておくれ。おれには今ではいい友達がたくさんいるぞ。みんな、いい友達で、とても強いんだ。きっとおれを助けてくれるだろう。バギンズに思い知らせてやるぞ。*6

一度は外界とオークへの恐怖からビルボ・バギンズの追跡をあきらめたゴクリだが、指輪から切り離されたことで幾分気力を回復したのと、それでも断ち切ることのできない執念から、2944年には棲家である洞窟を捨てて「どろぼう」の追跡をはじめる。
ビルボの跡をたどってエスガロス谷間の国まで来たゴクリは、立ち聞きをしてビルボが「ホビット庄(Shire)」なるところにいることを突き止めたが、まっすぐそこには向かわず、おそらく指輪から受けた影響のために2951年にモルドールへ引き寄せられた。2980年頃にはシーロブと出会う。
だが、3009年頃にはモルドールの境界で捕らえられてサウロンの許に引き据えられ、拷問を受ける。そこでゴクリが白状した内容から、サウロンは一つの指輪が再び見出されたこと、それが「なんとか庄(Shire)」の「バギンズ」なる者の手に渡ったことを知るに至った。
この時以来、ゴクリはサウロンを極度に恐れる一方で、自分のいとしいしとを奪おうとしている最大の対抗者と見なすようになった。

3017年、モルドールから釈放されたゴクリは、死者の沼地アラゴルン二世に捕らえられ、闇の森エルフの王国へ連行された。そこでガンダルフはゴクリを尋問し、ビルボも知らなかったゴクリの出自、指輪がアンドゥインから発見されたこと、ゴクリがモルドールでも尋問を受けたことなどを知る。
そのままゴクリは森の王国の牢に留め置かれたが、森のエルフは彼を親切に扱ったらしく、監視の下で森を散歩したり木に登ったりすることが許されていた。

しかし3018年(大いなる年)6月20日、サウロンの命を受けたオークの部隊が闇の森を襲撃し、ゴクリはその混乱に乗じて逃亡する。
エルフとオーク両方に追われたゴクリは8月頃にモリアへ逃げ込んだ。だが道に迷い、かろうじて西門まで辿り着くがそこから出ることができず、飢え死に寸前の状態でモリアに閉じ込められてしまった。

指輪物語』でのゴクリ

「スメーアゴルは、かわいそうによう、かわいそうによう、ずっと前にどっかへ行ってしまったよ。スメーアゴルはいとしいしと取られた。それで行方知れずになったのよ。」
「お前が一緒に来てくれたら、また見つけられるかもしれない。」と、フロドがいいました。*7

3019年(大いなる年)1月、ゴクリにとっては幸運なことに指輪の仲間モリアへとやってくる。ゴクリはそのままモリアからロスローリエン国境まで、さらにアンドゥインでは丸太を舟代わりにしてエミュン・ムイルまで一行を追跡。指輪の仲間が離散した後も、指輪を持つフロドサムワイズをつけ続けた。しかし二人はゴクリの追跡を察知しており、エミュン・ムイルにおいてゴクリは二人に捕らえられる。

フロドはゴクリを憐れんで助命したのみならず、本来のスメーアゴルの名で呼び、彼が善良な性質を取り戻せるように接した。この呼びかけに応えて目を覚ました「スメーアゴル」はフロドに懐き、可能な限りフロドの力になろうとした。一方で「ゴクリ」の性質も消え去ったわけではなく、指輪を奪い返す機会を虎視眈々と伺っていた。
モルドールへ入るための道案内を任されたゴクリは、死者の沼地から黒門へ、そこが不通であることがわかってからはイシリエンを南下してキリス・ウンゴルの秘密の抜け道まで、二人を導いた。その間も「スメーアゴル」と「ゴクリ」は葛藤を続け、サムワイズはそんなゴクリに不信の念を抱き続けた。

キリス・ウンゴルへ至る階段において、スメーアゴルは一時心底から年老いたホビットとしての性質を取り戻すかに見えた。だが結局は指輪の魔力から逃れることはできず、トレヒ・ウンゴルにおいてゴクリはフロドとサムワイズを裏切り、二人をシーロブの餌食にしようとした。
この試みはサムワイズの活躍により失敗し、モルドール国内で再びゴクリは隠れ潜みながら二人を追跡することになる。

滅びの山に三者が達した時、ゴクリはようやくフロド達の目的が指輪の破壊であることに気付き、最後の襲撃を試みる。サンマス・ナウルにおいてサムワイズを打ち倒し、フロドに襲いかかったゴクリは、彼の右手の薬指*8ごと噛みちぎってついに一つの指輪を取り戻した。
だが狂喜したのもつかの間、バランスを失ったゴクリは足を踏み外し、いとしいしとと諸共に滅びの罅裂へと身を落としていった。

深い奥から、「いとしいしとおお」と、泣き叫ぶかれの最後の声が聞こえ、そしてかれはいなくなりました。*9

こうして、かつてガンダルフが憐れみの意味を説き、わしの心の奥底で声がするのじゃ。善にしろ悪にしろ、かれ(ゴクリ)には死ぬまでにまだ果たすべき役割があると。そしてその時が至れば、(ゴクリを殺さなかった)ビルボの情は多くの者の運命を決することになるかもしれぬと。*10と予言したとおり、ゴクリの働きによって最終的に指輪所持者の任務は達成された。

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アラン・リー作画によるフロド、サム、ゴクリ

備考

ブラジルで発見された新種のザトウムシに、スメーアゴルの名に由来するIandumoema smeagolの学名が付けられた。ひっそりと洞窟に住んでいたことに由来する*11

映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定

俳優アンディ・サーキス(モーションキャプチャ及び声)
日本語吹き替え長島雄一

字幕、吹き替え共にゴラムと表記・発音されている。
モーションキャプチャを駆使したフルCGによって表現されており、その優れた「演技」は高く評価された。背などにモルドールでつけられた拷問の傷跡がある。

アラゴルンガンダルフのゴクリ追跡、それと二人のゴクリの尋問と闇の森の王国からの逃亡の話は省かれている。
旅の仲間』のモリアのシーンでゴラムが少し登場するが、その後『二つの塔』以降で、アンディ・サーキスの表情を反映させるためにゴラムのCGが改良されたため、外見が多少異なっている。
王の帰還』でシーロブの元に行く前に、ゴラムは荷物のレンバスを捨て、フロドサムの仲を割くための演技をして、サムを追い払った。また、サンマス・ナウルではフロドから一つの指輪を奪ったのちに、狂喜乱舞した弾みで足を踏み外したのではなく、フロドと指輪の奪い合いになり、そのはずみで滅びの罅裂に指輪とともに落下した。

『王の帰還』冒頭では、スメアゴルがデアゴルを殺して指輪を奪い、それがために仲間から追われてゴラムに変貌していく様が描かれた。

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『ロード・オブ・ザ・リング』におけるゴクリ 『ロード・オブ・ザ・リング』におけるゴクリ 『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』におけるゴクリ 『ロード・オブ・ザ・リング』における過去のスメーアゴル

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映画『ホビット』における設定

俳優アンディ・サーキス(モーションキャプチャ及び声)
日本語吹き替えチョー*12

原作と同様、ゴブリン町の地下深くの洞窟にいるところにビルボ・バギンズと遭遇。その直前にゴラムが落とした一つの指輪をビルボが拾っている。またゴラムとビルボはなぞなぞ遊びで勝負している。
外見はほぼ『ロード・オブ・ザ・リング』の時と同じだが、モルドールに行く前であるため、そこで拷問によってつけられた事になっている傷はない。

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『ホビット』におけるゴラム(ゴクリ)

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ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定

ブルイネンの浅瀬の近くで、川の魚を漁り、オークに追われているゴクリの姿を見ることができる(ただし「ゴクリ」という名前は冒険者にはわからない)。エルフとオークに追われて、モリアに逃げ込む直前の様子と思われる*13

さらにその後闇の森でゴクリを追跡し、同じくゴクリを追うオークと争うことになるクエストがある。
時間軸としては、指輪の仲間ロスローリエンに滞在している前後の話と推定される。
さらに、キリス・ウンゴルで葛藤するゴクリや、サンマス・ナウルでのゴクリなどを追体験するクエストもある。

『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるゴクリ 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における死者の沼地でのゴクリ

ゲーム『シャドウ・オブ・モルドール』『シャドウ・オブ・ウォー』における設定

タリオンに宿るケレブリンボールの幽鬼を「輝ける主」と呼んで崇める。
『シャドウ・オブ・ウォー』ではシェロブの意を汲んでタリオンを誘導する。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • 直近で出たゲームがゴラムだからゴクリって言われると誰ってなるw -- 2023-08-03 (木) 14:54:39
  • ニュージーランドで「こいつ腹減るとゴラムみたいになるんだよ」っていうスニッカーズのCM作ればウケたかも -- 2023-08-24 (木) 00:05:30
  • 等身大ゴクリいとしいしと抱き枕 -- 2024-01-09 (火) 03:08:14
  • <br></br>すき -- 2024-01-17 (水) 12:37:38
  • こいつがある意味でVtuberたちの先祖だと考えると......w -- 2024-02-11 (日) 23:53:05
    • ?????? -- 2024-02-12 (月) 06:24:32
    • ?????? -- 2024-02-12 (月) 06:24:35
  • ゴクリにバラムツを食わせてみたらどうなるか -- 2024-03-05 (火) 00:24:52
    • アブラソコムツも一緒にお造りにしてキモ醤油や白子卵巣も添えて出したら 「おいしい おいしい!」 と喜んで食べてくれると思います。
      沢山食べたしまいには、全身の皮膚や開口部から未消化のワックスエステル成分を分泌しながらそれでも美味しいと食べ続け、
      全部食べたらドロドロしながら元気に帰って行くと思います。 -- 2024-03-05 (火) 23:17:45
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